2017年03月19日

ちょっとずつ頑張る

 いつもよりは多少余裕がある中で、なんとか久しぶりに創作更新できただけでも僥倖かな。。。
 一応チマチマとフェアリーテイルも進めているのですが、まだ敢えてああだこうだ書くほどの進捗でもないし、そして地味に明日も赤い日で忙しかったりするから、トータルで見るといつもの週末と変わらない感が否めないというね。

 ワガハイの続編は素直に楽しみですねー。いやまあ追加ヒロインは委員長くらいしか興味ないんですが、やはりこの作品は兎亜と未尋の漫才コンビを楽しむものですから(笑)。特にまた未尋に会えると思うだけでワクワク出来ます。
 ピュアリングガーデンのCVは…………悪くはない、むしろ結構好みな感じではあるのですが、もう一歩絶対的に背中を押してくれるほどの強みはない、かなぁ。一先ず体験版待ちになりますかね。
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フィリスアフタークエスト <崩れかけた岩場の向こうに何が?目的に叶う爆弾を作れ!>

フィリス
「じゃーんっ!ここがエルトナ自慢の採掘場だよっ!」
イルメリア
「なんであんたがそんな偉そうなのよ…………」

 両手を広げてドヤ顔のわたしに、イルちゃんはなんだか苦笑いを浮かべつつ、ぐるりと周囲を見渡す。

 エルトナ採掘場。
 悠久の昔から、この地でしか取れない特殊な鉱石のエルトナイト、エルトナ水晶を産出し続け、わたしたち住民の豊かな生活の基盤を紡いでくれる場所。

 なんだかんだでここまで来たのは久々だけど、鉱山特有のひんやりした空気と、硝石が混じった独特の匂いに、不思議と心落ち着くものがある。

イルメリア
「…………でも、確かに自慢したくなるのもわかるわ。壁面が水晶の色を写し取ったみたいにキラキラ発光してて、すごく神秘的で綺麗ね…………」
フィリス
「でしょでしょ〜!鉱山全体がエルトナイトの性質を含んでて、極端に坑道を広げなくても、自然に成分が凝縮して結晶化、鉱石化していくんだよ!」
イルメリア
「ふぅん、それってなんだか随分と都合のいい話に聞こえるけれど…………。でも逆に、そうやって別用途に転用できるくらいしっかりした形のまま掘り出すのは難しそうね」
フィリス
「ふっふふ〜、だからこそわたしみたいな存在が重宝されるんだなぁー。生まれつきに備える鉱石レーダーでビビッと採掘OKな部分を見極めて、今日はここー、今日はこっちー、って指示してあげるわけですよ」
イルメリア
「なるほど、それがここから出る前にあんたが続けてた仕事なのね。…………確かにその力は、錬金術士の素材集めの嗅覚に類似した才能だと思うけど…………うーん…………」
フィリス
「な、なに?突然むつかしい顔して?」

 やいのやいのと言い募るわたしの鼻息の粗さをいなすように、イルちゃんが顎に手を当てて考え込む。
 いつもながらそういう仕草が悔しいほどに似合っていて、わたしのお気楽なテンションで遮っちゃいけないような気配を醸すのだけど…………まぁいい加減慣れたね、即座に疑問をぶつけられるくらいには。

イルメリア
「いえ、ソフィーさんがここの鉱石は気難しい、なんて言ってたのが少しわかる気がして。私自身はそういう特質にあまり恵まれている方じゃないけど、それでもこの場所の雰囲気は、ちょっと違う気がする」
フィリス
「え〜、そうかなぁ?わたしはすっごく馴染むものがあるけど」
イルメリア
「それよ。フィリスの家系って、代々こういう山師的な仕事を生業にしてきたのよね?」
フィリス
「や、山師ってなんか言い方酷くない?」
イルメリア
「悪かったわね、他に適当な表現が思い当たらなかったのよ」
フィリス
「ま、まぁいっか、イルちゃんだし…………。えっとね、おばあちゃん、お父さんのお母さんの代まではそうだったらしいの。でもこの能力って何故かわたしの血族でも女性にしか発現しないらしくって。それでお父さんは一人っ子で、おばあちゃんはわたしが生まれるずっと前に…………だから」
イルメリア
「なるほどね、この町であんたがああまでチヤホヤされる理由がようやくわかったわ。言い方は悪いけどあんたは町にとっての金のなる木であり、同時に繁栄をもたらす象徴的な存在なのね」
フィリス
「…………ふぇー」
イルメリア
「な、なによ、呆けた顔して」
フィリス
「ううん、わたしそんな風に考えた事なかったなぁ、って。そっか、だからあんなにわたしが町を出ることに反対、されたりしたのかなぁ…………?」

 わたしがずっと不思議だったのは、なぜこの町の人はみんな、外の世界を見聞したいという意欲が薄いんだろう?と言う事で。

 あの時はそれが当たり前には思えなかったけれど、今にしてみればわかるものもある。
 結局のところ、この町は色々不便はあれ、暮らしやすい場所なのだ。
 わたしは幸いにも、外の世界でも口に糊していけるだけの技術を手にすることが出来たけれど、この町で、限定的な産業に関わってきたみんなが、いざ外に踏み出して同じような暮らしを手に出来るかと言えば、きっとそれは容易いことではない。

 勿論イルちゃんが指摘するように、より楽な暮らしを営む上でわたしの才能は大切なものだったと思う。
 けど一方で、外の世界での労苦の厳しさを一端でも知ればこそ、その限定的な才能が外で役立つと限らないとわかっていればこそ、老婆心を込めた忠告、反対だったのだろうとも気付くことが出来て。

フィリス
「…………だったら最初からそう言ってくれればいいのに。…………うーん、でもあの頃のわたしじゃ、その話で納得は出来なかっただろうしなぁー…………大体お母さんってば、今更だけどあんなつっけんどんな言い方ってないと思うんだよね!うーっ、思い出したらなんかまた腹立ってきたー!」
イルメリア
「なにを風船魚みたいにほっぺ膨らませてんのよ。いいじゃない、なんだかんだであんたには理解ある大人が沢山支えになってくれてた、って話でしょ?」
フィリス
「ぶー、なんかイルちゃんあてつけがましい!わかってる?共感できないお節介って、有難迷惑ってゆーんだよっ!!」
イルメリア
「それも含めて、よ。あれやこれや反対されたり心配されたり、それでもやりたい、って思えたことだから、今に至るまでその道を見失わずに頑張ってこられてる、って考えなさい」
フィリス
「でたよ優等生!そーゆー正論、耳タコっ!!」

 鹿爪らしい顔のイルちゃんを見てると、なんとなくあの頃のもやっとした反発心が蘇ってくるんだよね。
 そして、こういう時のイルちゃんに一番効くのは…………!

フィリス
「…………でもそうだねー、そのおかげでイルちゃんっていう無二の親友と出会えたんだし、やっぱり感謝すべきだねー」
イルメリア
「そうね、私もこの運命の導きを紡いでくれたこの町には感謝しないと」
フィリス
「…………あれ?なんで?いつもなら顔を真っ赤にして『そっ、そそっ、そんな恥ずかしい事わざわざ口にするんじゃないわよっ!』とか可愛い反応してくれるのに…………っ!」
イルメリア
「いい加減私だって、旗色が悪くなるとからかいに逃げて誤魔化すその手管は耳タコなのよ。ほ、褒め殺しが来るとわかってれば慌てたりするもんですか」
フィリス
「…………ふっふー♪」
イルメリア
「な、なによ?」
フィリス
「んーん、なんでもー♪」

 とか言いつつ、ちょっとだけ目線が逸れてたり、頬がほんのり赤く染まってるのがイルちゃんらしいところで。
 きゅーん、と膨れ上がる胸の温もりを噛み締めながら、だったら尚更に今回のお仕事はしくじれないな、と肝に銘じる。

フィリス
「…………さって、じゃあとりあえずまず、ぐるっと一周回って見よっか。細かいところは昨日のうちにリア姉達が調査してくれてるだろうし、差し当たってはプラフタさんの言う違和感を大掴みで感じ取っておきたいしね」
イルメリア
「そうね、それでいいわ。…………でも、今日は採掘も中止、なのよね?」
フィリス
「え?うん、町の復興に人手がいるし、一応大きな崩落とかはなかったみたいなんだけど、地盤が緩んだところもあるかもしれないから念の為、って」
イルメリア
「…………そう考えるとアレよね、昨日あんたの真正面に落盤があったのって、随分と不幸というか、奇跡的というか…………」
フィリス
「…………なに?その奥歯にものが挟まった物言いは?」
イルメリア
「…………日頃の行いって本当にあるのかしら?って考えちゃうのよね」
フィリス
「今度は歯に衣着せなさすぎっ!もうっ、イルちゃんのいじわるぅっ!!」

 含み笑いのイルちゃんに、わたしもちょっと大袈裟に膨れっ面を見せて。
 こういう様式美的なやり取りが、最近楽しくて仕方ない――――しみじみと思いながら踵を返して、先だって進もうと思いきや。

フィリス
「わっ!?と、ととっ!?」

 一寸先は闇、足元注意。
 水晶の放つ自然光だけではぼんやり薄暗いだけに、思わずお留守になった足元が何かに絡めとられて――――。

イルメリア
「危ないっ!」
フィリス
「ぐぇっ!?」

 間一髪、転びかかったわたしを、イルちゃんが襟元を引っ張って助けてくれる。

フィリス
「えほっ、げほっ!ちょ、ちょっとー、イルちゃんてば、助けるならもちょっと優しく助けてよぉ〜」
イルメリア
「ご、ごめん…………で、でも仕方ないでしょ、咄嗟、だったんだし…………。大体今のは、あれこれ浮かれて足元不如意なあんたが悪いっ!」
フィリス
「むぐっ、そ、それはそうだけどぉ〜」
イルメリア
「…………ったく、そそっかしいんだから。ほら、探索用ランタン、つけるわよ」

 そう言ってイルちゃんがランタンをかざすと、ぽぅっ、と暖色が世界を照らす。
 鮮明になった視界の中でよくよく見れば、普段はきっちり整地されている地面に、いくつも細かな破片が散乱し、地震の爪痕を伺わせる。

フィリス
「そっかぁ、普段わたしが足を踏み入れる時って、その前にみんながきちんと綺麗にしてくれてたんだよね」
イルメリア
「それだけこの町にとって、この場所が大切ってことでしょ。だったら私達も、気を引き締めて調査、しないと…………だからその、ね?」
フィリス
「えっ?」

 おずおずと傍に寄ってきたイルちゃんに、有無を言わさず手を取られる。

イルメリア
「そ、その…………。ほらっ、またあんたがころけたりしたら危ないからっ!こうしてれば少しは安心でしょっ!」
フィリス
「イルちゃん…………!」

 小さくて、冷たくて。
 普段から錬金に勤しんでいるために、少しだけかさついた、頑張り屋の手。
 引っ込み思案の子供のように、指先にだけ力を入れて握ってくるのがいじらしい。

フィリス
「…………もしかしてー、自分が怖いだけなんじゃないの?」
イルメリア
「んなっ!?そそっ、そんなことないわよっ!い、いえ、誰もいない坑道ってちょっと不気味だなー、とは思ったけど、けどねっ!?」
フィリス
「もー強がっちゃってー!イルちゃんてばほんっと可愛いなー♪」
イルメリア
「あぁもぅっ!!よっ、余計な戯言はいいからっ、いい加減真面目にやんなさいっ!今はあんたの感覚だけが頼りなんだからねっ!!」
フィリス
「はーい、じゃあイルちゃん、いっくよー♪」

 繋いだ手の温もりを、なによりも大きな心の縁に。
 わたしは感覚を研ぎ澄ませて、円環になっている坑道のメインルートを、気配を手繰るように進む。

 しばらく訪れていなかったせいか、あちこちから鉱石の気配は漂ってくる。
 けど、なんだろう?
 わたしに向けて訴えかけてくるものと同じくらい、彼らの意識が別の方向に向いているような感覚が確かに伝わってきて――――。

イルメリア
「…………あ、戻ってきたわね。なるほど、これで一周…………聞いた通り、そこまで広いというわけでもないのね」
フィリス
「うん、これだけで充分に町の人の暮らしは賄えるから。勿論いくつかの支道は伸ばしてるところもあるけど、不必要に広げ過ぎても危ないし」
イルメリア
「それで?実際に回ってみた感じはどうだった?」
フィリス
「うん、なんかね、みんなどこかそわそわ落ち着いてない。あと、腰が引けてる?そんな気配は確かに伝わってくるけど…………ねぇイルちゃん、ちょっとひとつ掘り返してみるから、手、離してもらってもいい?」
イルメリア
「う、うん…………その、気をつけなさいよ」
フィリス
「へーきへーき、伊達にわたし、ここでずっと暮らしてなかったんだから」

 採掘は女子供の仕事じゃない、というイメージがあるのか、イルちゃんはどこか不安げ。
 でもわたし自身はそれに全く抵抗はないし、それに以前よりも性能の高いつるはしを持っているから大した手間でもなく。
 近場の岩盤を軽く掘り崩すだけで、ギュッと神秘の光が凝縮した、手のひら大のエルトナ水晶が見つかった。

フィリス
「えっへへー、いっちょあがりぃー♪」
イルメリア
「…………へぇ、手際がいいわね。もしかして、各地の洞窟でもこんな風に希少な鉱石を拾い集めてたの?」
フィリス
「そだよ。今までイルちゃんそういうとこにはあんまり付き合ってくれなかったもんね…………実はやっぱり、暗くて狭いとこ苦手?」
イルメリア
「そ、そうよっ、悪かったわね…………。それに非力な私が無茶するより、専門家が集めたものを買い回ったほうが手っ取り早いって思ってたし…………」
フィリス
「ぶー、なんかわたしが怪力みたいな物言いー。わたしだってリア姉ほど力強くないもん、こういうのはコツを掴めば結構簡単なんだよ」
イルメリア
「確かに、随分と豪快なのに繊細な手つきだったものね。いつもががさつそのものだけに、ちょっと見直したわ」
フィリス
「が、がさつそのもの…………」

 ま、まぁ確かに、普段の生活諸々、リア姉に任せっきりで何もしてないから、そういう評価も甘んじて受けるしかないのはわかるけど。わかってるけどっ!
 それでも密かに心にダメージを負いつつ、わたしは慎重に鉱石を拾い上げ、手のひらに乗せて意識を集中する。

フィリス
「(…………お願い、あなたたちが心に留めているものの在り処を、わたしに教えて――――)」

 より直接的にぶつかってくるざわめきに、強い意思をぶつけ返すと、水晶は二度三度チカチカと激しく明滅する。
 けど、目の奥を焼くような眩しさはすぐに鎮静し、やがて淡くも鮮烈な、それこそ意思を感じさせる色に落ち着いていって――――。

イルメリア
「フィ、フィリスっ、ちょっと、あれ…………壁の中からこれと同じ光が漏れてきてるわ」
フィリス
「えっ、あ、本当だ…………」

 イルちゃんに袖口を引っ張られて、改めて周囲を見渡せば、その指摘通り、ぽつ、ぽつと、手のひらの上で輝く幽玄な光と似通った色が、染み出るように内壁に浮かび上がっていて。
 試みに数歩近づいてみると、呼応するように明度が上昇し、更に奥の方からも光が漏れ出してくるのが見て取れた。

イルメリア
「…………ひょっとしなくても、これって誘われてるのよね?」
フィリス
「うんっ、きっとそうだよっ!わたしたちが求めるものは、この輝きの先にあるんだっ!行こう、イルちゃんっ!!」

 不気味そうに眉を顰めるイルちゃんを奮い立たせるように手を引きながら、わたしたちは改めて坑道の奥深くを目指す。
 その幻想的な光は、わたしたちを導くかのように皓々と煌き、入り組んだ構造にも迷うことなく、やがて一本の脇道に辿り着いて――――。

イルメリア
「…………あら?なによここ、行き止まりじゃない?」
フィリス
「あ、あれぇ…………?でも確かに光の点灯の感じだと、この場所が目的地のはずなんだけど…………」

 眼前には、ただの無機質な岩肌が聳える。
 こんな風に、なんらかの理由で掘り進めるのを放棄した道はいくつもある筈なので、その変哲のなさに拍子抜けしかかるも、その刹那、握り込んでいた水晶が再びチカチカと輝き――――。

フィリス
「…………えっ、あれぇっ!?」

 視界がぐらん、と揺れる。
 それはまるで、世界がすげ代わるかのような衝撃。けれどすぐに揺り戻しが起きて、万華鏡のようにくるくると、世界の光景が入れ替わる。
 その最果て、彼岸の彼方で目にしたものは――――。

フィリス
「…………黒曜石の、壁?」
イルメリア
「ちょ、ちょっとフィリスっ、いきなりどうしたのよっ!」

 イルちゃんが不安げに、ぐらぐらとわたしの身体を揺さぶってくる。
 すると、今の今まで見えていた世界はスゥッと音もなく霧の向こうに姿を消していく。

 これは…………これって、もしかして――――。

フィリス
「…………ね、イルちゃん、これ握って」
イルメリア
「え?い、いいけど、なんで…………?」
フィリス
「いいからっ!そんでもって、この壁にもう片方の手を当てて…………うん、それで意識を水晶に集中してみて」
イルメリア
「わ、わかったわよ…………でも本当に私、こういうの苦手な部類なのよね…………って、えっ!?」

 怪訝そうにしながらも素直にわたしの指示に従ってくれていたイルちゃんが、寝起きに万年樹氷を背中に突っ込まれたかのようにビクン、と大袈裟に反応する。
 まん丸に見開いた眼を幾度もしばたかせ、更には目を眇めて、それは一変した世界の様の真贋を見極めようとしているかのように――――。

フィリス
「…………イルちゃんにも、見えた?」
イルメリア
「な、なによこれ…………明らかに人工的な、黒の壁…………。さっきまで見えていた岩肌は…………そうか、これはもしかして、錬金術の幻覚作用、なの?」
フィリス
「やっぱりそう思う?もしかしなくても、プラフタさんが言ってた、この採掘場に潜む錬金の気配ってこれじゃない?」
イルメリア
「…………そう考えるのが妥当ね。けど、今まであんた、まるで勘づくこともなかったわけ?」
フィリス
「う、うん、恥ずかしながら…………。で、でも仕方ないんだよっ、町から出る前は錬金の知識なんてからっきしだったし、それにまさかこんな…………」
イルメリア
「それはそう、なのかもだけど、それだけで理由がつくのかしら?これは明らかに結界的な働きをしているはずだし、やっぱり昨日の地震でより大きな綻びが出来たからこそ、こうして私達にも覚知できているのかも…………」

 興味深げに顎をさすりながら、イルちゃんはスラスラ可能性を指摘してみせる。
 うんうん、こういう時の頭の回転の速さと柔軟さは、やっぱりすごく頼りになるなぁ、と感心しながら、改めて返してもらった水晶に意識を寄せると、どうにもここから更に奥に向かえ、と唆しているようにしか思えなくて――――。

フィリス
「…………やっぱり、この奥になにかあるみたい。となると…………爆破してみるしかないかな?」
イルメリア
「短絡的な発想ね。…………とはいえ、こうして仮説を積み上げるだけじゃ埒は明かないでしょうし、そうね、威力の弱いものから試してみるのはどうかしら?」
フィリス
「あれ、イルちゃんにしては即断即決」
イルメリア
「…………だってこれ、水晶の力がなければ本当にただの壁にしか見えないのよ?幻の向こう側を垣間見られるのだってほとんど一瞬だし、例えみんなでそれを繰り返して、これ以上作業仮説を捻っても建設的な打開案が出そうにないもの」
フィリス
「はぁー、相変わらず小難しい事考えるよねぇー」
イルメリア
「あんたは考えなしに過ぎるのよ…………。それに、ここだって一度は掘削しようとした形跡はあるわけでしょ?つまり現実的な手段ではこの先を掘り起こせなかったわけで、きっと生半可な事では崩れたりしない、と思うのよね」
フィリス
「りょーかいっ!んじゃ早速…………そりゃっ、いっけー、フラムー!」

 ――――ドォォンッ!

イルメリア
「…………周囲一帯含めて傷ひとつつかない、か。想定内だし、ここが長らく放置されていたのもむべなるかな、って話ね」
フィリス
「で、でも爆破の衝撃が走った一瞬だけ、チラッと景色が変わらなかった?」
イルメリア
「ええ、綻びが出来ているのは間違いないわ。となるとやはり、物理的作用よりも、錬金的な封印処置のほうに働きかけないと根本的な…………ってちょっとっ、あんた何する気よっ!?」
フィリス
「え?なにって、もっと強い爆弾使おうかな、って。じゃーんっ、指向性抜群、特性のN/A〜!!」
イルメリア
「ちょまっ、あっ、あんたそれ、手持ちで最強の――――っっ!!」

 ――――チュッドォォォォォォンンンッッッ!!!

イルメリア
「ケホッ、コホッ!!あっ、あんたねぇっ、もう少しは後先考えてっ、ゲホッ、ゴホッ!!」
フィリス
「ケホケホ…………っ、あ、ありゃ〜、ちょ〜っちやり過ぎた?」
イルメリア
「当たり前でしょっ、いくら指向性が高くても、こんな密閉空間で使ったらフィードバックだけでえらい威力じゃないっ!!まだ肌と喉がチリチリするわよっ!」
フィリス
「ごみんごみん。…………でも、うーん…………」

 粉煙が収まった先の光景は、強烈な爆風がまるでそよ風であったかのように、微塵も揺らぎを見せずに健在していて。
 わたしにもようやく、力押しではどうにもならないという理屈が腑に落ちる。

フィリス
「…………やっぱり、幻覚を解除しないと無理っぽいね」
イルメリア
「そうね。けどそのメカニズムを解明するのは大分骨が折れると思うわよ。多分これ、近代的な錬金技術とは一線を画した理論が使われてると思う」
フィリス
「そうなの?プラフタさんならなにかわからないかな?」
イルメリア
「可能性はあるわね。ただそれより、普通の爆弾でもごくごく一瞬だけなら、封印に揺らぎが出るのは確かだし、理屈そのものを解き明かすよりは、その隙間をもう少し長く押し広げる方法を見つけて、時空の歪の向こう側に直接物理的威力を届かせる算段をした方が現実的かも」
フィリス
「…………ふぇー」
イルメリア
「な、なによ?」
フィリス
「うん、つくづく珍しいな、って。普段のイルちゃんだったらもっとこう、知的探求の為に時間をかけてもきちんと手順を追いかけましょう、とか言いそうじゃない?」
イルメリア
「そ、それは…………」
 
 自分でも自覚があったか、イルちゃんはバツが悪げに目を逸らして――――。

イルメリア
「…………だって、ここはフィリスの大切な故郷でしょう?その安寧を脅かす原因がこの壁の向こうにあるとしたら、まどろっこしい事をしていたら手遅れになりかねないじゃない」
フィリス
「〜〜〜っっ!?」

 そこまで考えてくれたんだ――――胸奥が熱く綺麗ななにかで満ちていく。

イルメリア
「っっ、そっ、それにっ!これだけ大掛かりな仕掛けだもの、絶対この奥には、もっともっと沢山の錬金術の秘奥が埋まっているに違いないわ!だとしたら、入り口でグズグズと手間取ってるわけにはいかないもの、たっ、ただそれだけ、それだけなんだからねっ!!」
フィリス
「ふふ、えへへっ!ありがとっイルちゃんっ!大好きっ!」
イルメリア
「あ、うっ、そっ、だからそういうの軽々しく言わないのっ!!とっ、とにかく実地検分はこれくらいでいいわ、一先ずアトリエに戻って、色々考えてみましょっ!!」
フィリス
「そだね、リア姉達はまだまだ復興のお手伝いで忙しいだろうし、まずは二人でこの結界をどうにかできる手段、探してみよっか!」

 一度方針が決まれば、後はトントン拍子だった。
 アトリエに戻ったわたし達は、額が触れ合うほどの距離で、様々な素材を引っ張り出しては、どう組み合わせれば適切な効果を発揮できるか、互いの発想をぶつけ合い、磨き上げていって。
 それはなによりも楽しく、充実した時間で――――。

「…………やった〜っ!で〜きた〜っ!!」


フィリス
「…………うん、出来た、ね」
イルメリア
「ええ、物理と錬金要素に同時に作用して、その阻害要因を中和して破壊をもたらす爆弾、その名も――――」
フィリス・イルメリア
「まほろしきえ〜るくんっ!」「ミスティックボムッ!」

 そして、相変わらず最後の最後で全く息の合わないわたしたちなのだった。

イルメリア
「ま、またあんたは奇天烈な名前を…………」
フィリス
「イルちゃんこそ、なんでも小奇麗に飾ろうとするの良くないと思うんだけどなー」
イルメリア
「ぐむむ…………」
フィリス
「うぬぬー…………」

 互いに眉尻を寄せ、唇を尖らせて睨み合っていると――――。

リアーネ
「はい、そこまで。本当に、喧嘩するほど仲がいい、を地で行くわよね二人とも」
フィリス
「あ、あれっ、リア姉?戻ってたの、いつの間にっ?」
リアーネ
「戻ってたの、って、もう随分夜も更けた時間よ」
イルメリア
「あ、ホントに…………随分と集中、出来ていたのね…………」

 呆けたような呟きに釣られるように時計を見れば、とっくに普段の夕食の時間は過ぎていて。
 それを自覚した途端に、くぅーっ、と小さく腹の虫が騒ぎ出す。

フィリス
「あ、あぅ…………っ」
ソフィー
「ふふっ、空腹も忘れるほどに熱中、してたんだね」
プラフタ
「やはり二人とも素晴らしい資質の持ち主ですね。…………ちなみに私は、まぼろしきえ〜るくんが可愛いと思いますが」
ソフィー
「えー、ミスティックボムのほうがカッコ良くない?なんかズババーン、快刀乱麻を断つっ、て感じで!」
リアーネ
「私はフィリスちゃんがつけたい名前が一番だと思うの」
イルメリア
「リアーネさんっ、そういうとこまで依怙贔屓やめてくださいっ!そ、それにもっと早く声、掛けてくださってもいいじゃないですか…………」
ソフィー
「いやぁー、ちょっと二人の邪魔をするのは、ねぇ?」
プラフタ
「えぇ、すごく息が合っていて、見ていて羨ましいくらいでしたよ。これからもそうやって才能を切磋琢磨していければ、二人とも一角の人物になっていくでしょうね」
フィリス
「え、えへへっ、そうですか?そうかなぁー、わたしもっと立派な錬金術士になれちゃうのかなぁー?」
イルメリア
「調子に乗らないっ!皆さんもあまりおだてないでください、私達がまだまだだってのは重々承知の上で、その…………二人で一人、くらいのつもりで遮二無二頑張ってるだけ、なんですから…………」

 褒められて満更でもないわたしを嗜めるように、イルちゃんは自戒の言葉を口にして。
 けどそれは、聞きようによっては…………。

ソフィー
「…………うわ、かわいいね」
プラフタ
「ええ、微笑ましいです」
リアーネ
「うんうん、フィリスちゃんの次に愛らしいわ」
イルメリア
「ちょっ!?な、なんでそうなるんですかぁっ!!」

 慌てて食って掛かるイルちゃんをいなしている様を見ると、やっぱり先生達は大人なんだなぁ、叶わないなぁ、なんて思う。
 でも、無理に背伸びしたって仕方ない。
 わたし達はわたし達に出来る事を、精一杯頑張っていくより他に、近道なんてないんだから。

リアーネ
「ともあれ、腹が減っては戦は出来ぬ、よ。まずはみんなでご飯にして、それから色々話し合いといきましょう」
ソフィー
「炊き出しで作った兎肉のシチュー、たんまりもらってきたんだー。きっとよく味が沁みて、滋味が溶けだしててすんごく美味しいよっ!」
フィリス
「わっ、やたっ!!ごちそうごちそう〜♪」
イルメリア
「はぁ、まったくもう…………」

 弾む足取りで食卓に向かうわたしを見て、能天気ね、とばかりに疲れた溜め息を吐きながらも、やっぱりお腹は空いていたのか、いそいそとイルちゃんも後をついてきてくれて。
 うん、こんな風にイルちゃんが私の背中を支えてくれているなら、きっとどんな困難にも立ち向かっていけるし、打ち勝ってみせる。

 例えそれが、この町の根幹を揺るがすものだったとしても――――。
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