2019年10月13日

一応足跡

 結局昨日は台風絡みのゴタゴタで、帰宅したのが23時半……。
 一応朝に創作アップしたので記事埋めは出来てますけど、メモ代わりに。また今日から頑張る。
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無垢百合の少女 第1話 眩しき家族の肖像

クラウディア
「え、えっと……。こんにちは、ライザ」

ライザ
「クラウディア!遊びに来てくれたの!?」

クラウディア
「う、うん……。その、ごめんねこの前は……。不躾にフルートを聴いてもらったのに、いきなり逃げ出すような真似をして……」

ライザ
「あははっ、恥ずかしかったんでしょ?」

クラウディア
「う、うんそうなの。あまりに人前で演奏するのが久しぶり過ぎて……」

ライザ
「ふぅん、あたしは楽器なんてやったことないからわかんないけど、でも良かった、またこうして直ぐに遊びに来てくれてっ!」

クラウディア
「……ふふっ、うん。私も、ちょっとだけ勇気を出してみました。あんな事で気まずくなって、距離が出来たら嫌だもん」

ライザ
「大丈夫だって!もしもクラウディアが引っ込み思案になっちゃっても、無理やりあたしが引っ張りだすから!」

クラウディア
「うん、ありがとう、ライザ」

<ライザ>
(わっわっ、すっごい綺麗な笑顔っ!クラウディアってホント、深窓の令嬢って感じで儚可愛いよねぇ……っ!)

クラウディア
「……そ、それでね。無遠慮ついでに、今日はひとつお願いがあるんだけど……」

ライザ
「お願い?いーよいーよ、クラウディアの頼みならもうなんだって聞いちゃう!」

クラウディア
「もう、そんな中味も訊かない内に安請け合いして、ライザってば調子いいのね」

ライザ
「違うよ〜、クラウディアが変な遠慮しなくていいように、敢えてざっくばらんに胸襟を開いてるのっ!」

クラウディア
「ホントかなぁ?ライザってば裏表がなさそうだし、誰に対しても態度なんて変えられないんじゃない?」

ライザ
「そ、それはそうかもしれないけど……。で、でもクラウディアは特別っ!なんていうかなぁ〜、一目見たあの時から、この子と友達になりたい!もっとお近づきになりたいっ!って気持ちがどんどん溢れてくるの!」

クラウディア
「そ、そうなの……?すごく嬉しい、私も同じ気持ちよ、ライザ」

<ライザ>
(うわうわぁっ、照れ笑顔も格別に可愛いっ!な、なにこれ、なんかあたし、ドキドキしてる……?)

ライザ
「ん、んんっ、そ、それでお願いって?」

クラウディア
「あ、うん、良かったら、でいいんだけど……一晩、このお家に泊めてくれないかなぁ、って」

ライザ
「……へ?泊まるの?ウチに?あんな立派なお屋敷借り上げたのに?」

クラウディア
「お父さんがね、ちょっと緊急に隣村まで行かないといけないんだって。それで……、一緒についてくるか?って尋ねられたんだけど……」

ライザ
「あぁー、確かにあのお屋敷に一人きりは寂しいよね」

クラウディア
「……ふふっ♪」

ライザ
「あれ?今笑うとこあった?」

クラウディア
「ううん、ライザってやっぱり、村と村のみんなが大好きなんだなぁ、って」

ライザ
「え?えぇ〜そうかなぁ?代わり映えしない顔ぶれで見飽きてるし、普段からなにもない退屈な村だし……」

クラウディア
「それはきっと、当たり前過ぎて大切なものに気付けていないだけだと思うなぁ」

ライザ
「あたしからすれば、旅から旅でいつも新鮮な景色と生活を楽しめるクラウディアが羨ましいんだけど」

クラウディア
「ふふっ、きっとこういうのを、『隣の芝生は青い』って言うのね」

ライザ
「ふーん、そんなものなのかなぁ?でも了解、つまり折角だからこの機会にお泊りで親睦を深めよう!って事だねっ!」

クラウディア
「そう、パジャマパーティー!」

<ライザ>
(パ、パジャマパーティーっ!なんてアーバンな響きっ!これっ、これだよきっとあたしが求めていたものはっ!!)

クラウディア
「ど、どうしたのライザ、急にガッツポースなんてして?」

ライザ
「おっと、内心の歓喜が漏れ出しちゃった。とにかくあたしには全く異存なしっ!もしも母さんがウチではダメって言ったら、あたしがクラウディアのお屋敷に泊まりに行っちゃう!」

クラウディア
「わぁっ、嬉しい!私、本当にこの島に来て、ライザに出会えて良かったわ」

<ライザ>
(うひゃあぁ、こっ、こんな花が咲くような笑顔を一晩中見ていられるかもなんて、ちょっと幸せ過ぎるんじゃないっ!?)


………………

…………

……


ミオ
「構わないよ」

ライザ
「ホントっ!?やったぁ!」

ミオ
「ただし、ひとつ条件があるさね」

ライザ
「うわ出た、ぬか喜びさせといて後付けで面倒な話持ってくるとか性格悪……あいたっ!?」

ミオ
「親に向かってなんて言い様だい!全く、本当に誰に似たんだか……」

クラウディア
「ふふっ、仲がよろしいんですね」

ライザ
「うー、どこをどう見たら仲良く見えるのさっ!」

ミオ
「お恥ずかしいところを見せて悪いね。本当にこんな娘だけど、仲よくしてくれると有難いわ。……はぁ、少しでもお嬢さんのおしとやかさを学んでくれればいいんだけどねぇ……」

ライザ
「お・母・さ・ん?その、『どうせこのお転婆娘には無理な相談だよねぇ』って顔はなにっ!!」

ミオ
「よくわかってるじゃないか。悔しかったら礼儀正しさと、親に対する従順さを身に着けてくる事だね」

ライザ
「残念でした〜、それはお母さんのお腹の中に置き忘れてきちゃったんです〜」

ミオ
「ったく、口だけは減らないんだから……。ともかくっ、この子を泊めてあげたいなら、ライザ、あんたは今から夕方までお父さんの手伝いに行ってきな!」

ライザ
「ほらきたっ、やっぱり農作業じゃん!あのねお母さん、今あたしはそれどころじゃない高尚なお勉強をだねぇ」

ミオ
「なにが高尚だい、訳の分からない不思議な奇術に目を晦まされて、あれこれ役にも立たないものを作り散らしてるだけじゃないのさ」

ライザ
「い、今はそうでもこれが将来の肥やしになるのっ!こないだだって草刈り鎌作ったし!」

ミオ
「そんな普通に鍛冶屋さんでも出来る仕事で威張らない!誰かの役に立ちたい、ってのは立派だけどね、だったらまずは家族の役に立って御覧よ!」

ライザ
「ぐ、ぐぐぐ……」

<ライザ>
(確かに、何もまともな成果を出せていない現状じゃ、言い返す術がないよ……っ!)

クラウディア
「……あの、おば様?」

ミオ
「おや、なんだいクラウディアお嬢さん」

クラウディア
「おば様は、ライザが錬金術に打ち込んでいる姿を、一度でもご覧になった事はおありですか?」

ミオ
「いいや、全く。この子が嫌がるし、こっちとしても子供の遊びに付き合ってる暇はないからねぇ」

クラウディア
「でしたら、ライザの本気を疑ってかかるような事だけは止めてあげてくれませんか?ライザはライザなりに、はじめて心から真剣に打ち込めるものを見つけられたんだと思うんです。そこまで否定されちゃったら、ちょっと可哀想です」

ライザ
「ク、クラウディア……」

ミオ
「……ふぅ、そうだね。多少売り言葉に買い言葉だったかもしれないね」

クラウディア
「確かに錬金術は得体のしれない学問かもしれません。ですが正しき心の持ち主が奮えば、大きな可能性を秘めた力だとも私は思っています。ですので、もう少し長い目で見てあげて欲しいんです」

ミオ
「うーん、言いたい事はわかるけどねぇ。といって、日々の家業を蔑ろにされても困るんだよ」

クラウディア
「うん、それはライザも反省すべきだね。アンペルさんも言っていたんでしょ、錬金術士の目で世界を見つめ直せば、新たな色が浮かび上がってくるって」

ライザ
「うぐ、それは確かに聞いたけど……」

クラウディア
「だったら猪突猛進に根を詰め過ぎないで、色んな事柄に心の窓を開いていこうよ。なにより、あまり窮屈なのはライザに似合わないよ」

ミオ
「……驚いた。お嬢さんだって聞いていたけど、結構ズバズバとした物言いをするんだねぇ」

クラウディア
「ご、ごめんなさい。失礼かな、って思ったんですけど、折角の仲のいい家族なのに、互いの想いがきちんと伝わっていないのは勿体ないな、って思ったら、つい……」

ライザ
「いーんだよぅこんなわからず屋のお母さんなんてー。どーせ農作業を手伝え、以外の話なんてしないんだから、そっちの方が閉塞してるもん」

クラウディア
「ラ・イ・ザ?」

ライザ
「すみません調子に乗りましたぁっ!!」

ミオ
「確かに最近は、互いに踏みつけにしたり、聞き捨てにしたり、すれ違っていたかもしれないねぇ」

クラウディア
「はい。お互いが少しずつ歩み寄れるなら、それが一番だって思います。その上で、ひとつお願いがあるんですけど、今日の農作業、私もお手伝いさせていただけませんか?」

ライザ
「へっ?」

ミオ
「おやまぁ……。ウチとしては構わないけど、どうしてまた」

クラウディア
「まず単純に、農作業って興味があるんです。私の家は、そうやって育まれたものを流通させることで稼がせてもらっているのに、その現実をきちんと知らないままでここまで来てしまいましたから、是非この機会に、と思いまして」

ミオ
「はぁ、そりゃあ立派な心掛けだねぇ。誰かさんに爪の垢でも煎じて飲ませたいよ」

ライザ
「ク、クラウディア、考え直した方がいいよ?農作業なんて単調で力仕事ばっかりで、楽しい事なんてないんだよ?」

クラウディア
「それはライザの物の見方でしょ?結果的に、確かに面白くなかったな、って後悔するとしても、その後悔は私だけのもの。それはそれで一つの財産だもの」

ライザ
「後悔も、財産……」

クラウディア
「それに、私がやるって言えば、ライザも逃げられないよね?初心者の私に、手取り足取り手ほどき、してくれるよね?」

ライザ
「わ、わかったよもぅっ!やるよ、やりますっ!たっくさん材料取ってくるから、だからお母さんっ、今夜はとびっきりの御馳走にしてよねっ!」

ミオ
「はいはい任せときな。あんたがやるべきことをやるってんなら、こっちだってその気概には応えるさ」

<ライザ>
(あ……。お母さんがあんな風に笑ってるの見るの、久し振りかも。確かに最近、全然まともに喋る機会がなかったもんね……。クラウディアって、すごいなぁ……)

クラウディア
「……うん?どうしたのライザ、私の顔になにかついてる?」

ライザ
「うっ、ううんっ、ただ、クラウディアってあんな風に理路整然と自分の意見が口に出来てかっこいいな、って……」

クラウディア
「そ、そうかなぁ?私はどっちかって言うと頭でっかちだし、真っ直ぐな気持ちをそのまま口に出来るライザも凄いって思うよ?」

ライザ
「そ、そう?あ、あはは、なんかお互いで褒め合ってて、ヘンな感じっ!」

ミオ
「そうだよお嬢さん、あまりこの子をつけ上がらせないでおくれ。この子のはただの向こう見ず、考えなしって言うんだから」

ライザ
「もうっ、折角人がいい気分なのに混ぜっ返さないでよっ!もういいっ、行こっ、クラウディアっ!!」

クラウディア
「ふふっ、はぁい♪」

………………

…………

……


カール
「ははは、それで二人して手伝いに来てくれたのかい」

ライザ
「うん、そう。そーゆーわけで、出来れば二人で出来る簡単な作業を割り振ってもらえるといいなー、って」

クラウディア
「もー、ライザってそこまで農作業が嫌なの?」

ライザ
「これは本能に刻まれた拒絶反応なんだよっ!小さい頃からやれやれ言われ続けてきた結果なのっ!」

カール
「ははは大袈裟だなぁ、僕も母さんも、そこまで無理強いした記憶はないんだけどね」

ライザ
「お父さんの見えない所でお母さんがしつこいんだよぅ……」

カール
「ともあれ、だったら二人にはクーケンフルーツの方を任せようかな。じゃあ、これを」

ライザ
「あ……それ、あたしがこないだ作った鎌……」

カール
「うん、これは軽いのに切れ味も素晴らしくて重宝させてもらってるよ。出来れば今度、村の他のみんなにもプレゼントしてあげたいね」

ライザ
「そ、そうなの……?そう、なんだ……。えへへ、だったら今度、時間がある時に作ってみちゃおうかなぁ♪」

カール
「うんうん、よろしく頼むよ」

クラウディア
ふふっ、おじ様の方が、ライザを乗せるのが上手ね。すごくバランスの取れた夫婦、なんだね……

ライザ
「ん?クラウディアなにか言った?」

クラウディア
「いいえ別に。じゃあおじ様、今日はご迷惑をかけてしまうかもしれませんけど、宜しくお願いします」

カール
「こちらこそ。日差しが強いから、水分の取り忘れにだけは絶対に気を付けて。ライザも、よく注意しておくんだよ」

ライザ
「はぁい。じゃあクラウディア、こっち来て来て」

クラウディア
「うんっ♪」

ライザ
「わ、ご機嫌そうだね」

クラウディア
「だって気持ちいいもの。一面の農作物が日差しに映えて、気持ちいい風が頻繁に通り抜けて、その都度に土の香りが鼻孔を擽って……やっぱりここって、すごくいい島だわ」

ライザ
「うーんそっかぁ……。クラウディアの目には、この平凡な畑の風景もそんな風にキラキラして見えるんだ」

クラウディア
「でもそれも、ライザたちのおかげかな」

ライザ
「え?どうして?」

クラウディア
「ほら、私って旅から旅の生活で、すぐにその土地でお友達なんて普通は作れないもの。だから部屋の外の世界を輝かしく思っても、これまではそこに踏み込む勇気がなくて、ただ指を咥えてるだけだったから」

ライザ
「そっか……。じゃあ、あんな九死に一生!って出会いだったけど、それで互いの距離が一気に縮まったなら、やっぱりプラスの方が大きかったんだね」

クラウディア
「お父さんには寿命の縮む思いをさせて申し訳ないって思うけど……。でも私、この島では出来る限りの事をやりたいな、って思ってるわ。ライザには迷惑かけちゃうかもだけど……」

ライザ
「迷惑なんて事ないよ!あたしも同世代の女の子が少ない村だから、こんな風に色々教えたり、遊んだりするの凄く新鮮だもん!っと、はい、ここがウチのクーケンフルーツの畑だよっ!」

クラウディア
「わぁっ、凄いね!おいしそうな実が沢山鈴なりになってる!」

ライザ
「繁殖力の強さだけが取り柄の作物だからね。正直地元の人間は食べ飽きてるところはあるけど……クラウディアのお父さんって、これを広く流通させるためにここに来たんだっけ?」

クラウディア
「そうね、それが一番の理由みたい。ふふっ、ちなみにこの実ひとつが、都会ではいくらで取引されるか知ってる?」

ライザ
「え?うーん、10コールくらい?」

クラウディア
「正解はそのおよそ20倍から30倍くらい」

ライザ
「さんじゅうばいっっ!?!?えっ、えぇぇっ!?って事は、こ、これひとつで300コール……?う、嘘でしょお?そ、それってあまりに儲け過ぎなんじゃ……っとごめん、クラウディアのお父さんを悪く言うつもりじゃないんだけどっ!」

クラウディア
「ううんいいのよ、商人ってのは多かれ少なかれ、そういう目で見られる事はあるから。でもね、今のお父さんみたいに流通路を開拓するための先行投資に、運送の手間賃もあるし、より広く市場に出回らせるためには、細かく地域ごとに取り次いでくれる人も必要になるの」

ライザ
「そ、そっか……。食べる人のところに届くまでが大変だから、その為のコストが必要なんだね……」

クラウディア
「それに今は流通量がとても少ないから、その希少価値も含めての値段になってるの。けれどお父さんが大々的な販路を作り上げてしまえば、流石に50コールくらいで買えるようになるはず」

ライザ
「な、なるほど……。いっぱいあればそれだけ、欲しい!って人の需要を十全に満たす事が出来るもんね」

クラウディア
「うん。だから時に阿漕だ、って言われる事はあっても、私はお父さんの仕事をとても立派なものだと誇りに思ってるんだ」

<ライザ>
(わぁ、クラウディアってばすごく綺麗な目をしてる……。本当に、自慢のお父さんなんだね)

クラウディア
「ねぇ、ライザも想像してみて。ライザのお父さんが一生懸命育てた作物が、遠く離れた土地の、ささやかな生活を営む人たちの食卓の幸せを彩ってる姿を」

ライザ
「……う、うーん、ちょっとピンとこないなぁ。ほら、あたしにとってはずっと、この島だけが世界の全て、だったから。……でも、そうだね。そうやって誰かが喜んでくれるってのは、尊い事だよね」

クラウディア
「うんうん、その一翼を担うと思えば、今からの仕事も楽しみに思えてこない?」

ライザ
「う……そ、それとこれとは別と言いますか〜」

クラウディア
「あらら、ライザの農業嫌いは筋金入りなのね。でもいいわ、いきなり意識をガラッと変えるなんて、誰にだって無理だもの。一先ず今日は、私にクーケンフルーツの採取の仕方、教えてくれる?」

ライザ
「りょーかい。えっとね、見ての通り地面から伸びた弦にいくつか実がつくんだけど、その中から弦の淵近くまで濃く色づいたものだけ収穫するの。こんな風に実を支えながら、下から上に鎌を動かして、実を傷つけないようにそーっと、ね」

クラウディア
「な、なるほど……。やってみるわ。えっ、と……、このくらい熟したものを、こうやって実を持って、下から鎌、えっと、あら?う、上手く切れない……」

ライザ
「あー、その持ちかたじゃ危ないよ。ちょっといい?」

クラウディア
「え?きゃっ!?」

ライザ
「えっとね、こうやって持ち手は逆手にして、なるべく鎌の重さを感じないように付け根近くでそーっと動かしていくと、ほらっ、綺麗に切り取れるでしょ?」

クラウディア
「あっ、う、うん……っ」

ライザ
「あれ?どうしたのクラウディア?」

クラウディア
「あっ、あのっ、ねっ、い、いきなり後ろからギュッてされて、手、握られたからビックリ、しちゃって……」

ライザ
「へっ?……あっ、ああっ、ごめんっ、いきなり近かったねっ!あたしってばどうにも馴れ馴れしいから、つい気を許すとすぐこんな距離感になっちゃって……」

クラウディア
「べっ、別に嫌ってわけじゃないのよっ!ただ私、最近はほとんどスキンシップの機会がなかったから、だからドキドキしちゃって……」

ライザ
「……ホントだ、背中越しにクラウディアの心臓の音、聞こえる……」

<ライザ>
(……って、なんかあたしまでドキドキしてきたかも?もーっ、さっきもそうだったけど、なんなのこの気持ちっ!?)

クラウディア
「あっ、あのねっ、とりあえずやり方はわかったから、その、今は……」

ライザ
「あ、ああっ、うんっ、離れる、離れるねっ!」

クラウディア
「ご、ごめんね。こういうのも慣れていきたいんだけど……」

ライザ
「ううん、こっちこそ……あーあ、こういうところがあたしって、がさつでダメなんだよねぇ……」

クラウディア
「そんな事ないよ。分け隔てなく人と触れ合えるって素敵な事だと思うし、見習いたいもの。……あ」

ライザ
「ど、どうしたのクラウディア?」

クラウディア
「うん、ちょっとじっとしててね」

<ライザ>
(ってぇっ!?言ってる傍から近づいてきて……っ、うわうわぁっ、クラウディアって、すっごく睫毛長い……っ)

クラウディア
「……はい、取れた。ふふっ、ほっぺたに葉っぱの欠片、くっついてたよ」

ライザ
「ふぇ!?あ、あーうん、葉くず、葉くずねっ、あっ、ありがとねクラウディアっ!」

クラウディア
「どういたしまして。……ふふっ、おかしいね私達、女の子同士なのにこんなに照れちゃって」

ライザ
「そっ、そうだねおかしいよねっ、あはっ、あはははっ!」

クラウディア
「さっ、じゃあ気を取り直してバッチリ収穫しよう!手取り足取りやり方も教えてもらった事だし、おじ様をびっくりさせるくらい沢山頑張ろうねっ!」


………………

…………

……


クラウディア
「ふぅっ、お風呂、いただきました」

ライザ
「あ、クラウディアお帰り〜……って、うわぁっ、そのパジャマすっごく可愛いねっ!!」

クラウディア
「そ、そう?ふふっ、私も結構お気に入りなの。ペパーミントグリーンって、涼やかな気分になっていいよね」

ライザ
「うん、色合いも素敵だし、あと手足の七分袖の裾の飾りとか、細かいところでオシャレっ!はぁ〜、やっぱり都会の方だと、そういうのも沢山流通してたりするの?」

クラウディア
「そうね。逆に種類が多過ぎて、好みのものを探すのが大変だけど」

ライザ
「うわぁいいなぁ……。この島じゃそもそもパジャマ、なんてオシャレな呼び方しないもん。あたしのこれだって、私服としてはぼろっちくなったもの、ってだけだし」

クラウディア
「ふふっ、でもライザはその、タンクトップにホットパンツって開放的で健康的な格好が、とても良く似合ってると思うよ」

ライザ
「そ、そうかなぁ?いかにもがさつで、女の子らしくない島娘、って感じじゃない?」

クラウディア
「へぇ、ライザって結構そういうとこ、気にしてるのね。レント君やタオ君の前では、そういう性別を意識させるような言動や行動はほとんどしない、よね?」

ライザ
「そ、そりゃまぁ、あいつらは家族みたいなもんだけど、それでもあんまり余計な気は使わせたくないし?ただでさえ日々振り回してる自覚はあるしね」

クラウディア
「ふぅん……。ねね、異性として意識したりはしないの?」

ライザ
「う、うーーーん、しない、かなぁ……。そりゃあね、男女の違いが顕著になってきた時にふわっと違和感があったりはしたけれど、それでもなんというか、小さい頃の感覚から地続き、っていうか……。こういうのも、島の生活に変化が乏しいからかもしれないけど」

クラウディア
「ふふふっ、でもそれもライザらしさ、だと思うよ。ね、少し窓、開けていい?」

ライザ
「勿論いいよ。でも湯冷めして風邪、引かないでよ」

クラウディア
「わかってます。……わっ、いい風!クーケン島って基本的に暑いけど、でも夜の風は爽やかで、海っぽい香りもして素敵よね」

ライザ
「ウチは比較的高台にあるから、風が通り抜けやすいんだ。それにここからの景色も、悪くないでしょ?」

クラウディア
「そうね、ボーデン区からクーケン港の辺りまでうっすらと見えて、この時間でもぽつぽつ灯りがともっているのがすごく幻想的……。それに星空も澄み切っていて、今日は殊更に月が、綺麗ね……」

ライザ
「えぇー、空なんてどこでも変わらないんじゃないの?」

クラウディア
「そうでもないのよ。夜でももっと街に沢山光があると、星も見えなくなっちゃうものなの。その点この島の素朴な在り方は、自然の素晴らしさを楽しむにも最高のロケーションね」

ライザ
「そうなんだ。空なんてどこでも一緒で、どこまでも繋がっている、って思ってたけど……。でも、ここでしか見られない空、というのも、確かにあるんだね」

クラウディア
「それに、こうやって隣り合って、二人で見上げた夜空はやっぱり特別。きっと長い間、私は今日の星の瞬きを、月の光の美しさを忘れないと思う……くちゅっ」

ライザ
「あははっ、ムードたっぷりの台詞だったのに、最後で台無しっ」

クラウディア
「わ、笑わないでよぉ……。でもそうね、名残惜しいけど、この格好でずっと外を眺めているのは良くないわね……あふっ」

ライザ
「ありゃ、もう眠い?クラウディアって基本早寝早起きの人?」

クラウディア
「そうね、お父さんが規則正しいし、私もその方が性に合っているから。それに今日は農作業をしたから、楽しかったけどやっぱり疲れちゃったかも」

ライザ
「う、うーん、楽しい、楽しい、ねぇ……」

クラウディア
「……やっぱり私と一緒でも、つまらなかった?」

ライザ
「うぐっ、その聞き方と顔はズルいよっ!」

クラウディア
「うん、わかっててやってます」

<ライザ>
(ウインクっ!?お、お茶目なところもあるんだね……っていうか、昼よりもっとくだけてくれてる感じで、うん、嬉しいなぁ……)

ライザ
「え、えっとそれじゃ、勿体無くはあるけどもう寝ようか。クラウディアはベッド使っていいよ、あたしはこっちのソファで寝るから」

クラウディア
「それはダメよ、部屋の主を差し置いて私だけがベッドを使わせてもらうなんて」

ライザ
「いやでも、ただでさえ枕が替わるのに、窮屈なところで寝かすのはこっちも気が引けるよー」

クラウディア
「…………ね、だったらこのベッドで、一緒に寝ない?」

ライザ
「……ふぇっ!?い、一緒にっ!?そ、それって狭いよ?ほとんど抱き合って眠るような感じだよっ!今日だってお昼に、あまりベタベタするの慣れてない、って……」

クラウディア
「うん、慣れてないからこそ、慣れたいな、って。こういうのに憧れもあったし……ライザは、嫌?」

ライザ
「だからその聞き方はズルいんだってばぁ!!イヤなわけないよっ、じゃ、じゃあここ、どうぞ……っ」

クラウディア
「う、うん、お邪魔、するね……っ」

<ライザ>
(うわわわぁっ、なっ、なんかクラウディアすっごくいい匂いするっ!それに、なんかこれ、懐かしいあったかさ……)

クラウディア
「……ふふふっ、や、やっぱり少し恥ずかしいけど……でも、ライザの体温が伝わってきて、心地いいわ。ね、手を繋いでも、いい?」

ライザ
「い、いいよっ、ごめん、ヘンな汗かいてたらアレだけどっ!」

クラウディア
「もぅっ、ライザまで緊張しないでよ。こんな風に誰かと添い寝するの、慣れてないの?おば様たちと一緒に寝たりとか……」

ライザ
「そ、そんなの小さい頃に卒業したしっ!大体、寝入る寸前まで催眠みたいにお説教されたらたまったもんじゃないよっ!」

クラウディア
「……ライザは少し、そのあたり贅沢よね」

ライザ
「え?ぜ、贅沢?」

クラウディア
「そうよ。普段から常に気にかけてくれて、細かく為を思ってガミガミ口を酸っぱくしてあれこれ言ってくれる、それは確かに鬱陶しいと感じる時もあるかもだけど……。だけど、それは誰にとっても当たり前、ってわけじゃないのよ」

ライザ
「……えっと、あの……。それ、クラウディアのお母さん、って……」

クラウディア
「あ、心配しないで、お母さんも健在だから。ただ元々少し体の弱い人でね、お父さんの、旅から旅、って仕事についてくるわけにはいかないの」

ライザ
「じゃあ、クラウディアはお母さんとは……」

クラウディア
「結構長い間、顔を見ていないわ。勿論手紙のやり取りはしてるけど……やっぱり、私も寂しかったのかな?だからこんな風に、人肌の温もりを、甘えられる相手を心のどこかでずっと求めてたの、かも」

ライザ
「クラウディア……」

クラウディア
「だから、ライザはもっとちゃんと、ご両親と向き合った方がいいって思うの。おば様も仰っていたように、錬金術の力を、家族の幸せの為に用いよう、って意識は、心のどこかに置いておいてほしいな、って」

ライザ
「……うん、ありがとう、クラウディア。確かにあたし、最近は反発するばかりで、甘えすぎていたのかもしれない」

クラウディア
「ふふっ、そうやってすぐに自分を省みて、素直に気持ちを切り替えられるのも、ライザの素敵な長所ね。勿論わざわざ無理に探してまで、って事じゃないの。ただふとした時に、こうしてあげたい、って浮かび上がった気持ちを蔑ろにしないであげてね」

ライザ
「クラウディアは、そういう気持ちを、どうしてるの?」

クラウディア
「日記に残してるわ。いつか実家に戻れた時にしてあげたい事、色褪せないように時々読み返して……」

ライザ
「わ、クラウディアらしいね。でもうん、その話を聞いて、あたし益々クラウディアの事が好きになれたかも」

クラウディア
「私も、私の押しつけがましい気持ちを素直に抱き留めてくれるライザの事、とっても好きよ」

ライザ
「あははっ、相思相愛、だねっ!ねね、これからも時々、こういう泊まりっこ、しようよ。やっぱり女の子相手にしか言いにくい事もあるし、でもあたし、溜め込むのは苦手だから」

クラウディア
「ええそうね、二人きりの女子会、今後も続けていけたらすごく嬉しい。……ふぁふ……、本当に……ここでライザに出会えて……良かった……ぁ……」

ライザ
「クラウディア?」

クラウディア
「……すーっ、すーっ………………」

ライザ
「わ、一瞬で寝ちゃった。やっぱり疲れてたのかなぁ……」

<ライザ>
(ふふっ、でもそれだけ気を許してもらえてる、って事だよね。嬉しいなぁ……。それにクラウディアの寝顔、天使かっ!ホンットに可愛いなぁこの子…………)

<ライザ>
(…………少しくらいなら、ほっぺふにふにしても?…………いやダメダメっ、ヘンな悪戯して、起こしちゃったら悪いもんねっ!!でもっ、あぁでもっ!!)

<ライザ>
(ってぇっ、またなんか変なドキドキがーっ!うぅっ、あたし、ちゃんと眠れるかなぁ…………っ?)


<続く>


posted by クローバー at 06:06| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クラウディアの秘め事日記 2ページ目

 目覚めた時、隣に誰かがいてくれる。
 それは人として、根源的な幸せのひとつだと思う。

 でも、誰しもが子供から大人になっていく中で、一度はそれを手放す必要があって。
 だからこそ、いつかその想いを取り戻すために、好きな人を探す旅に出るのかな、なんて思ったり。

 けれど、疑似的にならそれを埋める術もあるんだって、気付いた。
 今朝目覚めて、ライザの無垢な寝顔を目の当たりにした時の気持ちは、きっとそれに近しいもの、だったから。

 ライザは同じ年頃の同性の友達がいないって嘆いていたけど、それは私も一緒。
 私の場合は、作ろうと努力してこなかったのも悪いんだけど、実際にここまで気持ちを動かされる相手に出会わなかったのも確か。

 やっぱり、ライザは私にとって特別、なのかも。
 昨日だって余計なお節介を沢山しちゃって、嫌われてないかな?って怖くもなるけど、それでも次から次に、してあげたい事が心に浮かんでくるの。
 それに、しばらく寝顔を眺めていたら、心臓がドキドキして、少しだけ変な気分になってきたりして……や、やっぱりちょっとおかしいよねっ、友達が出来るのが久しぶりで、浮かれ過ぎてるのかもしれない。

 ……でも、この気持ちを、頭から否定なんてしたくない。
 そもそもライザに、心の赴くままに、とか言っておいて、自分だけ常識にかまけて蓋をするのも、なんか違うよね?
 うん、もう少しきちんと、この気持ちの正体に、重さに、向き合ってみなくちゃ。その為にも、もっともっと一緒の時間を作らないとね。

 
posted by クローバー at 04:53| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする