2020年03月17日

然るべきハーレム

 天使の羽根はトゥルーをクリアして無事にコンプリートです。
 この入れ子構造の世界観の壮大さは、改めてプレイしても前提が薄いのでおやっ?ってところはあるのだけど、実際にそれだけの事が出来る在り方と、神の存在の立場、想いの方向性を、様々な解釈を糾合して再構築している、という点ではやはり流石の出来だな、と思います。
 その中で流されつつも絶望に打ち克ち、みんなの力を糾合して立ち向かっていく姿は王道的で実に美しいな、と感じますし、その流れの中で誰しもが主人公に一目置く、元々仄かに抱いていた想いを発露させていくのもまた必然、という色合いでとても好きですねー。

 でもねでもね、やっぱり全部プレイが終わっても、可愛いな、と思えるヒロインはつみれとアーリャだったりするのだ。。。
 特につみれ先輩の凛然とした在り方と意思の強さ、真っ直ぐさは、確かにそれは罪を植え付けられていないが故の自然体、という意味で他と比べられない面はあるとしても、イメージとしてすごく綺麗に映るわけで、こっそり攻略させて欲しいヒロインではありましたねぇ。まあ一人遊びのシーンはあったけど、最後のルートで捕まった後の凌辱でもそれはそれでアリだったのに(笑)。
 そして自分の感想改めて読んでみたら、やっぱり当時もつみれが一番好きだったらしい。。。変わるものもあるけど変わらないものもある、いいものはいい、という事ですな。

 次は多分かにしのをやると思います。
 色々手を付けたい作品はありますが、3月末からは仕事もまた一気に忙しくなるし、新作との兼ね合いも出てくるので、残りの時間を踏まえて、それなりにオールクリアするとなると時間が掛かるものをひとつやってしまいたい、ってところですかね。

 無垢百合の少女10話を更新しました。
 それこそ独り善がりではあるのだけど、やっぱり個人的にあの作品で、一番幸せになって欲しいキャラはキロだったりするのですよねぇ。
 勿論聖地に水が戻って、長いスパンで見れば、という希望は持てるのだろうけど、でもより即物的に、折角繋がった絆をより砕けた形で紡いであげたかったし、その想いがベクトルとして、ライザとクラウディアの二人が共に在れる土壌とリンクすれば、というのは構想通りではあります。
 それにまぁ、アトリエと言えばトラベルゲートはお約束ですからね。。。ともあれ残りは2話、ここまではなんとか、新作の27日までに片づけたいところです。
posted by クローバー at 17:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

無垢百合の少女 第10話 分かち難い想い

クラウディア
「……ライザ、いるの?」

ライザ
「あ、クラウディア。待ってたよ〜。っていうかなに、その神妙な態度は〜?」

クラウディア
「だ、だって……。……ライザ、怒ってないの?お父様の事まで含めて、とことんお世話になりっぱなしだったのに、不義理な事しちゃって……」

ライザ
「不義理?……あぁ、もっと前から、ここを離れなきゃいけない時期はわかってたのに言えなかった事?」

クラウディア
「う、うん……」

ライザ
「もー、クラウディアってば、あたしがそんな心の狭い女だと思ってたの?だって、普通に切り出しにくい話なのはわかるし、そもそも元からそういう立場なんだから仕方ないじゃん」

クラウディア
「それは……理屈ではそうかもだけど、感情は別物でしょう?ましてや私達は、戦友、親友という間柄を超えた絆を紡いで、だからこそ今度の危機だって乗り越えられた、って……」

ライザ
「こっちこそ、だからこそ、だよ。クラウディアと結ばれたから、どんな困難にも挫けず、絶望的な状況にも悲観せずに勇敢に立ち向かっていけた。大団円を迎える事が出来た。それは全て、クラウディアがいてくれたからだもん」

クラウディア
「そ、それは買いかぶり過ぎよ……。私がいなくたって、きっとライザは……」

ライザ
「そんな事ない!どの道あたし達がどうあろうと、この夏にフィルフサは到来していたし、島の危機も避け得ないものだった。でもそこにクラウディアがいなかったら……あたし、きっと逃げちゃってた。全てに目を瞑って、今迄みたいに自分の無力に歯噛みしながら逼塞して……」

クラウディア
「それこそ自分を卑下してるわ。ライザはみんなの危機に、手を拱いてるような子じゃないもの!」

ライザ
「それはクラウディアが来る前のあたしを知らないから言えるんだよっ!あたしが島でどんな扱いをされてたか、知ってる癖にそういう事言っちゃうの?クラウディアこそ、自分の影響力を過小評価してるっ!!」

クラウディア
「私の影響力なんてっ!私なんか、自分ひとりじゃ何も出来ない臆病者で、ライザの顰に倣って、その手に引っ張られて、やっと色々な事に立ち向かえたくらいなのにっ!!」

ライザ
「あ、あたしだってクラウディアが、色々励ましてくれたり、新しい世界の色を見せてくれたりしなかったら、こんな風に自分を成長させることすら覚束なかったってのっ!!」

クラウディア
「…………ぷっ」

ライザ
「…………な、なにさ、珍しく人が真面目に話してるのに、いきなり噴き出したりして?」

クラウディア
「だって、今の私達、客観的に見たらかなり滑稽じゃない?互いに自分はダメで、相手のおかげでここまで辿り着けたって、声高に譲り合って喧嘩腰になってるなんて」

ライザ
「う、うぐっ、そ、そうかもだけどさぁっ、クラウディアだってエキサイトしてた癖に、いきなり素に戻ってそういう事言うのズルいっ!そんな風に梯子を外されたら、あたしのこの鬱屈はどこにぶつければいいのさっ!?」

クラウディア
「ごめんなさい。……確かに私、負い目があるからって必要以上に卑屈、だったわね。自分が口にした事は正しい、とは思うけど、でもそれは真実の全てじゃない。やっぱり私達にはお互いが必要だったし、だからこそ全てが上手くいった、そういう事にしておきましょう」

ライザ
「ちぇっ、すーぐそうやって大人ぶった対応、するんだから。……まだ全然、全てが上手くいった、なんて言えないのに」

クラウディア
「えっ?」

ライザ
「……だって、クラウディアがいなくなっちゃう。いつかは、ってわかってたし、仕方ない。でもクラウディアの言う通り、感情はそれを認めてくれない。当たり前じゃん、本当の意味で相思相愛になれたのに、離れ離れなんて嫌に決まってるもんっ!」

クラウディア
「ライザ……。うん、私もよ。考えるだけで心の芯がきゅぅっ、と握りつぶされるように痛んで、だからこそ、それが現実だって、口にして、認めてしまうのが嫌だった。怖かったの……」

ライザ
「うん、そうだよね。あたし達の関係はもはや不即不離、分かち難い強い想いで結ばれているんだもん。だからこそ、クラウディアと二人三脚で紡いできたあたしの力と諦めの悪さ、ここで発揮、しないわけにはいかないでしょ?」

クラウディア
「……うん、そうよね。最初から諦めたらどうにもならないもの、ね……。とはいえ、私はまだ自立できるわけでもなく、ライザだって、まだ不安定さが残るこの島を離れるつもりはないのでしょう?どうしたって、物理的な距離が生じてしまうのは……」

ライザ
「……うん、それは動かしがたい事実、だね。というわけで、ひとつあたしの実験に付き合って貰おうと思って、こんな風にお別れパーティーの前に、こっそりと呼び出したんだ」

クラウディア
「実験?」

ライザ
「うん。まずははい、これを受け取ってくれるかな」

クラウディア
「これ、ブレスレット?少し重たいけど、綺麗なデザインね」

ライザ
「うん、普段使いでも目立たないように設計したからね。まずはそれを両手でギュッと握って、一分ほどじっとしていてくれる?」

クラウディア
「ギュッと……こ、こんな感じかしら……。…………わわっ、急に光って……ってあら、これ、この感覚、って……」

ライザ
「例の義手の技術を応用した、神経接続と生体認証を組み込んであるの。今のでクラウディア固有の神経パターンが登録されたから、そのブレスレットはクラウディアにしか使えない専用アイテムになったんだよ。そしたらそれ、腕に嵌めてみてくれる?」

クラウディア
「え、えぇ……。不思議な感覚ね、確かに重さは感じるのに、自分の腕と一体化して、何かを着けているって気にならないって……」

ライザ
「あはは、まぁそれは単なる副産物だけど。したらぁ、ぎゅーっ!!」

クラウディア
「ラ、ライザ?いきなり後ろから抱きついて、どうしたのよ?」

ライザ
「いいからいいから。次にクラウディアは、頭の中に異界の、キロさんの野営地を思い浮かべて欲しいんだ」

クラウディア
「キロさんの?え、えぇと、確かあそこは……んぅ、中々イメージを鮮明にするのって難しいわね……」

ライザ
「大雑把で大丈夫だよ、多分。……よしっ、それじゃあその光景を頭に描いたまま、ブレスレットの内側のボタンを押して」

クラウディア
「……ね。ねぇライザ。このアイテムって、これ、以前にちょっと口にしていた……?」

ライザ
「……なはは、流石に気付く?」

クラウディア
「ここまでくれば流石に勘づくわよ。……本当に、平気なの?私達、生身のままで、異界に転移なんて、可能なの?」

ライザ
「……理論上は間違いない、って確信してる。ただ、実際に起動するのはこれが完全にはじめて、なんだ。確かに危険はあるけど、こればっかりは、独り善がりで先走るよりも、クラウディアと一緒に、って思ったから」

クラウディア
「ライザ……。そう、ね。先に一人で危ない事してた、ってなったら、怒ってたかも」

ライザ
「でしょ?だからこうして二人一緒に、なにがあっても一蓮托生、って。……もしも万が一変なところに飛ばされて、こっちに戻ってこられない、なんてなっても、クラウディアと二人なら平気だって、強く生きていけるって思うから」

クラウディア
「ふふっ、なんかそれ、もしもそうなったら私達、駆け落ちしたようなものね」

ライザ
「うん。最悪今手にしている全てを捨てても、最愛を手放さない覚悟。あたしはそれでもいい、って思ってるけど、クラウディアは巻き込まれて、迷惑、かな?」

クラウディア
「馬鹿。わかりきった答えを訊こうとしないの。行きましょうライザ、そこが世界の果てでも、滅びの地でも、二人でならなにも怖くなんてないわ」

ライザ
「うん、ありがとうクラウディア。大好き、だよ」

クラウディア
「私も愛してるわ。……スイッチ、オン」

<ライザ>
(どうか、どうか上手くいって!あたしは、みんなの覚悟や決意、信念を踏み躙ってでも、それでも、本当の意味での大団円に、満たされた幸せな生活に辿り着きたいの…………っっ!!)


………………

…………

……


クラウディア
「…………ライザ。…………ライザ、ライザっ、目を覚ましてっ!!」

ライザ
「…………ぅっ、うぅん……っ、あ、あれ?クラウディア、おは、よう……?」

クラウディア
「っっ、はぁ……っ。もぅっ、なにを寝惚けてるのっ!変な心配、させないで頂戴っ!!」

ライザ
「寝惚け……?あ、あれ、あたし、確か……?」

<ライザ>
(そ、そうだ、確かクラウディアに抱き着いて、はじめての跳躍実験をして、そしたら光に包まれて、意識と身体がふわぁ〜ってなって……)

ライザ
「ってここっ!?そっ、そうだっ、実験はっ!?ここはっ……て、あ、あぁ……っ!!」

クラウディア
「えぇ、ちゃんとキロさんの野営地よ。流石ライザね、実験は、大成功よ」

キロ
「全く、突然藪の中から光が膨れ上がって何かと思えば……。久し振り、という程ではないな、良き錬金術士、ライザ。いや、この場合、良き、という形容は省いた方がいいのかもしれないが」

ライザ
「キロさんっ!す、すいませんいきなりビビらせるような形になっちゃって……」

キロ
「ビビる?それはこの驚愕の気持ちを表現する言葉か?ふむ、ビビったー、とでも言えばいいのか?」

クラウディア
「あ、相変わらずちょっと天然ね……」

キロ
「それにしても、異界に繋がるゲートは、リラの連れである錬金術士の手で閉じられたのではなかったのか?お前たちはどうやってここに辿り着いたのだ?」

ライザ
「それは、かくかくしかじかで……」

キロ
「……ふむ、異界を繫げ、閉じ込めるアーティファクト。その性能を分析して、ゲートを用いずに個体でこの世界に跳躍する技術を編み出した、というのか。いつもながら、突拍子もない事を思いつき、あっさりとやり遂げてしまうものだな」

ライザ
「い、いやぁ、それほどでも……」

キロ
「だが、危険だ。ある程度原理を解明したとはいえ、本来世界と世界は特別な力で隔たれている。その壁を無理にこじ開けて、均衡を崩してしまう可能性を考慮しなかったわけでもあるまいに。そこまでしてお前は一体、この世界に如何なる用があるというのだ?」

ライザ
「うぐっ、す、すいません……。で、でもっ、やっぱりあたし、このままじゃ納得いかなかったんですっ!!」

キロ
「納得?なにをだ?」

ライザ
「そんなの勿論、キロさんが一人ぼっちでここにいることが、ですっ!」

キロ
「…………私が、か?だが今まで数百年ずっと、明るい未来など見通せもしない中で、私は一人で生きてきたのだ。それと比べれば、聖地に息吹が戻り、もしかしたらこの世界のいずこかで隠れ住んでいるかもしれない同胞を迎える事も出来る、その現状は希望に溢れているのだが」

クラウディア
「わ、わかってはいましたけど、幸せの閾値がとことん低いですねぇ……」

ライザ
「そうですよっ!そんなささやかな希望で満足しないでくださいっ!だって折角こうして知り合って、仲良くなれたのに、これ以上なんの手伝いも出来ずにこれっきり、なんて、あまりにさみしいじゃないですかっ!!」

キロ
「……まさかお前は、私を一人にしないためだけに、こんな馬鹿げた行為に出た、というのか?」

ライザ
「ぐさぁっ!?ば、馬鹿げたって……。そ、その、ひょっとして迷惑、でした?一人の静謐な暮らしの方が落ち着く、とか……?」

キロ
「…………わからない。ただ、なんだろう?以前にお前たちが訪ってきたとき、胸の奥底にチリチリと焦がすような不思議な想いがあった。それは忘れるべきと、あの日の別れで封印したつもりだったが……。今、ライザの想いに触れて、あの日よりも鋭い、焼けつくような痛みが……」

クラウディア
「キロ、さん……」

ライザ
「あ、あははは……。そっか、なら、なら良かった……」

キロ
「なんだろうか、この気持ちは。苦しいのに、痛いのに、不思議と手放したいと思えない。だから本当はお前たちを叱るべき、なのだろうが、そういう気持ちにもなれない。むしろ、いつぞやの、やったー、という感覚に近い、ような……」

クラウディア
「……それはきっと、もう逢えないと思っていた相手に出会えた驚きと、嬉しい、という気持ちだと思いますよ」

キロ
「……そうか、これが友を迎える喜び。友を懐かしむ、という感情だったのか……。あまりにも、あまりにも誰かを待ち過ぎて、それが成就した時の気持ちなぞ、とうに忘れてしまっていた……」

ライザ
「キロさんっ!!」

キロ
「な、なんだなんだ!?い、いきなり抱き着くな、ビックリするだろう」

ライザ
「いいんですっ!嬉しい、って気持ちは、こうやって表現するのが一番伝わるんですからっ!ほらっ、キロさんもあたしの事ギュッとしてくださいっ!それにクラウディアもっ!!」

クラウディア
「はいはい。ごめんなさいねキロさん、ライザったらどこまでも本能的だから……」

ライザ
「本能的って、まるで人を動物みたいに言うなぁー!」

キロ
「構わない。確かにこうして、二人の温もりを直に味わうと、うん、わけもなく、ただ原初的に、嬉しい、な。誰かの温もりが、こうも心を落ち着かせてくれるものだと、私も知っていた、はずだったのに……」

ライザ
「これからは、いつでもこう出来ます……っ!あたしたちに、少しずつでも、キロさんがキロさんなりの幸せを見つけていくお手伝い、させてください……っ!!」

<ライザ>
(キロさん、こんな華奢な身体で、どれだけの悲しみを背負ってきたんだろう?……うん、やっぱり、それが全てじゃなかったとしても、こうしてキロさんと触れ合えるようになって、本当に良かった……っ!)

キロ
「……ふむ、それにしても、だ」

ライザ
「……あ、あの、キロ、さん?そ、そんな風に胸元で頭をグリグリされるとくすぐったいんですけどぉ……」

キロ
「そなたら、いくつだ?」

ライザ
「いくつ……って、サッ、サイズですかっ!?えっ、ええぇっ、なっ、なんでいきなりそんな……?い、いやっ、こないだちゃんと測ってもらったからわかり、ますけどぉ……」

クラウディア
「馬鹿。ちょっと脳みそが桃色に染まり過ぎ。キロさんが尋ねているのは、年齢の事でしょう」

ライザ
「あっ、あぁっそうだよね齢だよねっ!!えっとぉ、もうすぐ16になります、けど……」

キロ
「……育ち過ぎではないか?」

ライザ
「ってやっぱりそっちの話じゃんっ!!」

クラウディア
「あ、あらら……。というか、キロさんってそういう世俗的な事から超越してるようなのに……体型、気にするんですか?」

キロ
「別に羨むわけではないが……。そなたらとこうしてくっついていると、否応なく古い古い記憶が蘇ってな」

ライザ
「あー……もしかして、オーレン族って基本的にはその、体格に恵まれた人が多かった、とか?」

クラウディア
「確かに、リラさんも色々とすごいものねぇ……」

キロ
「まぁそうだな。だから私はこんな風に、みんなから可愛がられる事が多かった。当時はそれを疎ましくも思ったものだが、まさしく贅沢な話だ。やはりこうして、女性らしい柔らかさに包まれているのは落ち着……いや、やはり少し癪に障るな」

ライザ
「結局どっちなんですかっ!まーいいですよ、あたしの胸くらいで、キロさんが懐かしい記憶を取り戻して、楽しんでくれるなら」

キロ
「楽しいだけ、とは流石に言えないが……。でもありがとう、良き錬金術士ライザ。一人で思い出すには辛い記憶も、誰かと触れ合いながらなら、懐かしく、温かく感じられるもの、なのだな」

ライザ
「ととっ、あれ、もういいんですか?」

キロ
「あぁ、充分過ぎるくらい活力を貰えた。それより、お前たちはここで成し遂げたい事があるのではないか?ここはお前たちの世界とは時間の流れも違う可能性があるのだ、急いだ方がいいと思うが」

ライザ
「あっ、そうでしたそうでしたっ、じゃあちょっとクラウディア、テントの裏側まで来てくれる?」

クラウディア
「えぇ……って、あら?この装置……」

ライザ
「うん、これは転移用座標機。でも……あちゃー、やっぱこれだと一回使い切りが限度だったかぁ。危ない危ない」

クラウディア
「……ねぇライザ。それって、もしも私達がここに転移しきるまでにエネルギーが切れてたら……」

ライザ
「次元の狭間に真っ逆さまだったかもねぇ。あー、やっぱりクラウディアに抱き着いて、二人分の質量で飛んできたのも無茶、だったかも?本当はあんな風に気を失ったりするはずじゃなかったんだよねぇ」

クラウディア
「もぅ、馬鹿っ!結果的に無事だったからいいけど、ホントに向こう見ずなんだからぁっ!」

ライザ
「なはは、ごめんごめん。でも、この前ここに来た時は女王戦の前だったし、あの時に用意できるのは、これが限界だったんだよねぇ」

クラウディア
「むしろあの切迫した状況の中で、こんなに先を見据えての手を打っていた方に驚くのだけど」

ライザ
「だ、だってさぁ、暗い事ばかり考えてても仕方ないし、厳しい戦いでも、それをクリアして明るい未来が待っている、って思わないと心折れそうだったわけで。その支えと言うか、希望と言うか、もうやるならとことん、理想の未来を、って願ったら居ても立っても居られなくて……」

キロ
「ふふ、ライザらしい前向きさだ」

ライザ
「わわっ、キロさんっ!?」

キロ
「しかし、まさか無断で人の住処の裏側にこんな機材を設置していくとは。気づいてはいたが、処分せずにそのままにしておいて正解だったな」

クラウディア
「……あ、あのねぇライザ、いくらなんでも非礼ってものでしょうそれは」

ライザ
「うぅっ、だってだってぇ、あの時点でそれに気付かれたら、絶対アンペルさんとリラさんに反対されるってわかってたし……」

キロ
「まぁ別に咎めるつもりはない。リラにはリラの生き方があり、それ故の信念もあるだろうが、私はやはり、こうしてお前たちが尋ねてくれるようになるのは嬉しい、みたいだから」

ライザ
「ありがとうございますっ!その、事後承諾になってしまって申し訳ないですけど、この機材はこのまま、ここに冒せてもらって構いませんか?」

キロ
「それがある事で、こちらからお前たちの世界へのゲートが開く、という危険性はないのだな?」

ライザ
「はい、あくまでこれは信号に応じて一時的にゲートを開く座標を設定するだけの装置なので、これ単体で転移は出来ませんから」

クラウディア
「つまり、この腕輪とセットではじめて意味を成す、という事なのね。でもそれ、壊れてしまったのではないの?」

ライザ
「ううん、単なるエネルギー切れ。だからちゃんと交換用のコアを持ってきました。それも、真紅の輝石作成で培ったノウハウを駆使して作った特別製っ!これなら何百回でもゲート解放に耐えられるはずだよっ!」

クラウディア
「はぁ……。ライザって猪突猛進に見えて、意外と一つの事を一つの目的でやらないというか、色々な事に応用するの得意よねぇ」

キロ
「その天才性があればこそ、これだけの事を短期間で成し遂げられたのだろう。末恐ろしい、という言葉がピッタリと似合うが、もしも正しさを見失う事があったら怖いな」

ライザ
「うっ、それを言われると……。あたし、どうしてもこれっ!って思ったら突き進んじゃう悪癖があるしなぁ……」

クラウディア
「ふふっ、ライザがライザらしくない事をはじめたら、私が止めてあげるわ。キロさんもこれから、きっと長い付き合いになるはずですし、ちゃんと見ていてあげてくださいね」

キロ
「引き受けよう」

ライザ
「むぅ、なんか変なところで同盟が出来ている気が……。っと、これで交換しゅーりょー♪」

クラウディア
「……凄いわね。今は仄かに光ってるだけだけど……」

キロ
「あぁ。途方もないエネルギーを感じる。まぁそなたらの島を動かしていた原動力を援用しているのであれば当然か。つくづく人の可能性とは、利便への探求心とは凄まじいものだ」

ライザ
「ともあれ、これで次からは問題なく転移できるはずっ!……というわけで、最後に、キロさんにもこれ、受け取って欲しいんですけど」

キロ
「……これは?クラウディアが身につけているものと同じようだが……」

ライザ
「こっちが転移発動装置になってます。生体認証で、ひとつにつき一人しか使えないように設定されていて、今のところそれを持っているのはあたしとクラウディアだけです」

キロ
「そんな貴重なものを私に?というより、それを量産すれば、誰でも異界に転移が可能になるのではないのか?だとすればそれこそ危険な発明に感じるが。お前たちはともかく、周りに知られたらタダでは済まないぞ」

クラウディア
「……そうね。人の業はいつの時代でも変わらない。かつてのクリント王国が、オーレン族の聖地を蹂躙し、搾取したように、もしもこれから復興していくはずのこの世界に、向こうの誰かが価値を見出し、踏み躙るような事があったら、それこそ申し訳が立たないわ」

ライザ
「……うん、わかってる。だから出来る限りこの事は秘密にするし、実際のところ、この三つしか現状作れないんだ」

キロ
「どういう理屈でそうなる?」

ライザ
「やっぱり異界転移には、こちらの素材、それもとびっきり純度の高いものが必要で。色々試してみたのだけど、結局女王を退治した時に手に入れた超高純度のコア以外では、転移に耐えられる品質と性能を確保出来なかったんだ」

クラウディア
「……つまり、またあの蝕みの女王クラスの敵を倒さない限りは、そのアイテムを作るに足る素材が手に入らない、って言いたいのね」

ライザ
「勿論この世界を探索すれば、それが可能な代替品は出てくるかもだけど、そこまではするつもりないから。このアイテムを手にして欲しい、最小限の相手に、ちゃんと正しく、あたしの幸せの為にも使ってもらえるなら、それで充分。だからキロさん、受け取ってもらえますか?」

キロ
「そこまで言うのなら。どうすればいいい?」

ライザ
「まずこのブレスレットを、両手で包み込むようにしっかり持って、しばらくそのままじっとしていてください」

キロ
「……ん、じわぁっと光が溢れてきて……。こ、これは……」

ライザ
「はいっ、それで大丈夫です。そのまま腕に嵌めてみて下さい」

キロ
「……これは不思議な感覚だな。確かに腕に重さは感じるのに、それがまるで自分の身体の一部のようにしっくりと馴染む……。ふむ、特に武器を振るうのにも邪魔になる感じはない、な」

クラウディア
「えぇ、この感覚、本当に不思議ですよね。でも、ライザはまだ身につけてないのよね?」

ライザ
「うん。実はこれひとつで、さっき向こうに設置したゲート発生装置としての役割も果たすんだ。だからもし万が一変なところに迷い込んだ時の保険として、あたしのアトリエに置いてきてあるの」

キロ
「それで、これをどう用いれば転移が可能になるのだ?……もしかするとこれは、私がお前たちの世界を覗き見る事も可能だと言うのか?」

ライザ
「勿論ですっ!というよりそれが最大の目的ですからっ!それは大っぴらには出歩けないかもですけど、キロさんにも是非、あたし達が過ごしてきたクーケン島を知って欲しいんですっ!」

クラウディア
「ふふっ、そうね。あの美しい島の光景を楽しんで欲しい。きっとこの場所も、かつては風光明媚な景色が広がっていたはず、だから……それを思い出すきっかけにして欲しいわ」

キロ
「……全く、お前たちのお人好しは底抜けだな」

ライザ
「それだけキロさんと仲良くしたい、素敵な人だって思ってるんですよっ!」

キロ
「……う、うむ、ありがとう」

クラウディア
「あ、ちょっと照れましたね?ふふっ、キロさんもそういう可愛らしい反応、する事があるんですね♪」

キロ
「からかうな。……仕方ないだろう、誰かとこうして無邪気に戯れるなど、夢のまた夢だと思って、いたのだからな……」

<ライザ>
(……っっ、わっ、か、可愛いなぁこの人ホントに……。なんかアレだ、いつぞやのクラウディアとロミィさんが、あたしにオシャレさせてみたいって、あの気持ちが分かった気がする。この素朴な魅力を、もっともっと華やかに飾りたい、って……)

クラウディア
「……ラ〜イザ〜♪」

ライザ
「アタタタッ!?ちょっ、クラウディアなんでお尻つねったのっ!?」

クラウディア
「さぁ、なんででしょうね?それより、キロさんを私たちのアトリエにご招待、しなくていいの?」

ライザ
「う、うん……。えっとそれじゃあ、一先ずキロさん、クラウディアの身体のどこかにしがみついてもらえますか?一先ず今回の転移は、クラウディアの腕輪でやりますから」

キロ
「わかった。え、と……」

クラウディア
「ふふっ、キロさん、こちらの腕に抱き着いてもらえますか?」

キロ
「うん、こう、だな」

クラウディア
「もっとギュッとして構いませんよ。うふふ、キロさんの身体、柔らかくてあったかいですね♪」

ライザ
「…………っっ!クラウディア、わざとでしょ?」

クラウディア
「ふふっ、さっきの仕返しよ」

キロ
「仕返し?」

クラウディア
「キロさんはお気になさらず。ほら、ライザもまた後ろから抱き着くのでしょう?はやくはやく♪」

ライザ
「ったくもぅ、隙あらば、なんだからなぁ。はい、じゃあこれで、クラウディアはアトリエの光景を思い浮かべながらスイッチオンしてね」

クラウディア
「それじゃ、行きますよキロさん」

キロ
「あ、あぁ……っ」

<ライザ>
(これで最後……!この転移が上手くいけば、あたしの夢は、理想は、きっと全て叶える事が出来る、はず……っ!)


………………

…………

……


キロ
「……まぶ、しぃ……っ。……こ、ここが、ライザたちが生きる世界、なのか……」

ライザ
「はい。綺麗な空でしょう?」

クラウディア
「青い空と、青い海。クーケン島はどこを切り取っても美しいけど、やっぱり白眉はそのふたつよね」

キロ
「……懐かしい、な。かつては私たちの世界も、同じように光に溢れていたのに、いつしか滅びの赤に覆われて、この肌を刺すような温もり……あぁ、素晴らしい、な……」

ライザ
「あはは、喜んでもらえて良かったです。転移もバッチリ成功したし、けどクラウディア、最初から外に転移するとか狙ってたでしょう?」

クラウディア
「ふふっ、でもこっちの方がインパクト、あったでしょう?でもオーレン族の皆さんって基本的に肌が真っ白ですけど、日差しとかに弱かったりします?だとしたら少し配慮が足りなかったかも……?」

キロ
「確かに長時間日差しを浴びるのは得意ではないが、でも少しくらいなら平気だ。なによりこの感覚は、どんな言葉よりも顕著に、世界が生きている事を、温もりに満たされている事を教えてくれる。……私は、幸せ者だな……」

ライザ
「大袈裟ですよぉ。これからはいくらでも味わえるんですから、そこまで噛み締められるとこっちがこそばゆくなっちゃいます」

キロ
「そう、か。これからは、いつでも…………すぅーーーっ」

ライザ
「??」

キロ
「…………あーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!」

ライザ
「わわっ、ビックリしたぁっ!?」

キロ
「すまない、わけもなく叫びたくなった。しかし、ふふっ、ははははっ、こんな爽快な気分は、本当に、あははははっっ!!」

クラウディア
「ふふっ、でもその気持ち、よくわかります」

キロ
「あぁ、本当に、心から感謝するぞ、良き錬金術士ライザ。今までは使命感だけが私の身体を動かしていた。それが、この世界の空気を吸った事で、この世界に存在を刻みつけるように叫んだ事で、ようやく本当に、私が生きていると感じられるようになったんだ」

ライザ
「だったらそれ、クラウディアのお手柄ですよ。あたしじゃそこまできめ細かい配慮は出来なかったもの」

クラウディア
「謙遜しないの。ライザの発明が、努力がなければ、そもそも根底から成り立たない、奇跡のような状況なんだから。だからもっと胸を張って、いつもみたいに、あたしすごくない!ってふんぞり返ってればいいのよ」

ライザ
「えぇー、あたしそんな自慢しぃじゃないつもり、なんだけどなぁ……。いや、クラウディアにはそーゆーとこ一杯見せちゃってる気もするけどぉ……」

キロ
「ふふ、本当に二人は仲がいいのだな。羨ましい事だ」

クラウディア
「んふふ、それはもう。とびっきりの仲良し、ですから。ねーっライザ♪」

ライザ
「う、うん、そう、だね」

キロ
「??」

ライザ
「そっ、それよりっ、折角こっちに来られたんだから、キロさんもみんなとのお別れ会、参加していきませんか?」

キロ
「お別れ会?」

ライザ
「はい。あの時のみんなは、これからそれぞれの道を切り拓くために、この島を出ていかなくちゃならないんです。あたしはまだ、この島がきちんと安定しているのか、見定めなくちゃいけないって思うから、ここに残る事になるんですけど……」

キロ
「…………なるほどな。だが、そこに顔を出すのは流石に遠慮、しておこう。少なくとも顔見知りに出会ってしまっては、ライザのこの発明がバレてしまうだろう?それは信頼のおける面々だとは思うが、それでも慎重になるに越したことはない」

ライザ
「う、それはそうなんですけど……。でもリラさんとかボオスのやつとか、喜ぶと思うんだけどなぁ……」

キロ
「私とて逢いたい気持ちはある。けれどその二人とは、別れの時にしっかりと約束を交わしている。それぞれの道を貫く果てに、理想の未来で再会しよう、と。その決意まで、こういう手段で蔑ろにするのは良くない、と私は思う」

クラウディア
「ふふっ、ライザの負けね。そういうしがらみが薄い私たちはともかく、安易に再会する事が本当の意味で幸せに繋がらない、そういう事もきっとあるのよ」

ライザ
「そう、なのかなぁ?……うーんでも、二人がそういうなら、その気持ちは尊重しなくちゃ、だよねっ!」

キロ
「うん、だから今日のところはもう私は自分の居場所に戻ろう。要するに、このブレスレットのスイッチを押しつつ、移動したい場所を思い浮かべればいいのだな?」

ライザ
「はい、そこに座標があれば転移できます。こちらに来る場合は、このアトリエの風景か、或いはあたしかクラウディアの顔を思い浮かべれば、該当した場所に来られると思います」

キロ
「ふむ、人そのものもブレスレットと一体化しているから座標に出来るのか。……では、また会おう二人とも」

ライザ
「はいっ、また是非遊びに来てくださいっ!あんまり来てくれないと、こっちからまた迎えに行きますからねっ!!」

キロ
「あぁ、楽しみにしているぞ(――――シュウゥゥン)」

ライザ
「…………ぁ」

クラウディア
「…………行っちゃった、わね」

ライザ
「うん。でも最後の笑顔、とびっきりだった。……押し付けかな、って思ってたけど、喜んでもらえて、良かったぁ」

クラウディア
「そうね、私もキロさんには幸せになって欲しい。ううん、幸せにならなきゃいけない人だって思うもの。だから、ライザのやった事は概ね正しい、立派だった、って思う、けどぉ」

ライザ
「痛い痛いイタイっっ!!お尻っ、お尻つねらないでっ!!もーっ、なにっ、そんな嫉妬するほど見惚れてないでしょっ!?」

クラウディア
「どうかなぁー、ライザ、ああいうどこか素っ気ないけど、放っておけない寂しさを抱えている人、好きじゃない?一杯構って、纏わりついて、振り向かせようって頑張りたくならない?」

ライザ
「う、そう言われると確かにそういう気持ちが微塵もない、って言ったらウソになるけどっ!でもっ、あっ、あたしが好きなのは、愛してるのはクラウディアだけだからっ!」

クラウディア
「うふふ、ありがと♪言わせちゃったみたいで悪いわね♪」

ライザ
「ぜったいぜったい、一ミリも悪いなんて思ってないよねっ!?うーっ、まぁそういう蠱惑的にあたしを振り回す感じも好きだけどさぁっ!!」

クラウディア
「でもライザは、本質的には誰かを振り回す方だったでしょう?だからこっち方面でも、そういうつまみ食いがしたくなるんじゃないかって。まぁちょっとくらいの浮気は、正妻の余裕で受け止めて見せますけどね」

ライザ
「し〜ま〜せんっ!!っとにクラウディアはぁ……。……その、ね。キロさんの事が上手くいって、だから、クラウディアにも、きちんと話したい事、あるんだ」

クラウディア
「…………うん」

ライザ
「でもそれ、パーティの後でいい、かな。みんなでワイワイ盛り上がった後は、やっぱり、二人でゆっくり、イチャイチャしたい、から」

クラウディア
「ふふっ、言われなくても誘うつもりだったけど、ライザも本当に色々な意味で成長、したわね」

ライザ
「な、なんか複雑だけど……それじゃあ、お願いします。クラウディアはこれからまだ、パーティの準備、するんでしょう?」

クラウディア
「えぇ、とびっきりの料理、持ち込みたいから頑張ってくるわ。ライザもそれまでは、やりたい事、やるべき事をきちんと済ませておくのよ」

ライザ
「…………うんっ!」




posted by クローバー at 09:11| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クラウディアの秘め事日記 11ページ目

 この日記もそろそろ、役目を終える時が近い。
 元より誰にも見せられないものではあるけれど。
 でもいずれ、ここに綴った想いと一緒に、封印、しなくちゃいけないって。

 そう、思ってたのに、ね。

 ライザは、本当にすごい。
 世界の常識なんてすっ飛ばして、自分の欲しいものに我武者羅に手を伸ばす。
 そのひたむきさに、どれだけ救われたのだろう?

 キロさんの、魂全てを剥き出しにしたような、あの叫び。
 不思議とあの時、私の中に根付いていた鬱屈までが、綺麗に消えていった。
 今を諦めず、受け入れていいのだと、問答無用に信じられた。

 ずっとライザを見てきたんだ、このアイテムを作った真の意味くらい、わかる。
 わかるけど、やっぱり直接伝えて欲しいから。
 このドキドキを、少しでも長く感じていたいから。

 今の私に出来るのは、とびっきりの感謝を込めて、美味しいものを作るくらい。
 そろそろオーブンから出してもいい頃合いかな?

 この日記に頼らずともいい、頃合いかな――――?

posted by クローバー at 09:03| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする