2007年09月13日

サナララ

 なかなかシナリオがよいという評判と、ロリな絵柄が気に入っていたところに、ふと売っているのを見つけてしまったのでこっそり購入。まあ値段が値段だったので。が、中身もそれなりの長さでしたけどね(涙)。

シナリオ(24/30)

 “想い”ときっかけ。

 
 誰にでも一生に一度だけ巡ってくるという、大それたものでなければほぼどんな願いでも叶えてくれるという、神様のギフトのようなシステムがありました。それは継承式のもので、願いを叶えてもらったものが次に対象者以外に姿の見えないに等しい存在であるナビゲーターとなり、常に1対1でそのシステムを継承していき、そしてナビゲーターの役割を終えたときに全てを忘れてしまう、そうしてこのシステムは歴史の中に埋もれたまま、密やかに人の想いを応援し続けていました。 
 この作品は、幸せの輪廻転生ともいえるシステムの発動下の中で繰り広げられる、オムニバス形式での4編の中篇集になります。登場人物同士には多少の繋がりはあれど、基本1対1の話の上、1章から順番にしか読めないので、攻略順も何もあったものではありません。特に思想的な偏忌も見えないのですが、1章はどうしてもシステム設定に尺を割かなければならない分だけとっつきにくさがありますかね。

 〜〜〜あなたに一生で一度のチャンスが巡ってきました〜〜〜、明らかに無茶なことでない限り、必ず一つだけ願いをかなえることが出来る、果たして突然そういわれたときに、迷うことなく自分の願いを言える人はなかなかいないでしょう。人は普段から幸せになりたいとは思っていても、自分が望む幸せの明確な形を理解していることは少ないというのが真理だからです。
 要するにこれは、幸せ探しに名を借りた成長の物語なんですね。今の自分の立場をもう一度しっかりと見据えて、今一番欲しいものは何か、今一番叶えたい願いは何か、それを見つけることで、自身の進むべき道を浮き彫りにすること、その過程を与えられることそのものが贈り物であるとも言えます。また、対象者とナビゲーターが1対1で向かい合うというシチュエーションにおいて、本来自分が望んでいたもののきっかけを得るという部分において、その非日常性の影響力の強さを浮き彫りにしていると言えます。

  この作品の登場人物たちは、最長でも一週間という短い時間の中でその答えを探求し、そしてそれを見出していきますが、決して願いをその解決そのものに向けることはしません。それは、ただ単に与えられた幸せが長続きするものではないと理解するからです。
 現実でも、宝くじに当たった人の9割が、五年もしないうちに自分の元の生活に戻っていくといいます。世の中のほとんどの人は無造作に与えられた幸せに疑いなく胡坐をかき続けていられるほど傲慢ではなく、かといってその降って湧いた幸運を踏み台にしていけるほどの強さも持たないということでしょう。
 人は誰しも幸せになりたい。でもそれは、与えられたものではなく、自ら掴み取ったものでなくてはならない。だけど掴み取るための勇気や決意が足りない。だから、ほんのちょっとだけ、背中を押して欲しい。
 
 この作品は、そんなささやかで、でも本人にとってはとても大きな一歩を踏み出すためのスターターとしての位置付けがすごく色濃く出ていると思います。そして設定上秀逸なのが、あくまでそれはきっかけでしかないから、一週間という短い期間の中で手にした大切なものを、一度手放さなければならないという部分なんですね。
 この話が切ないところは、大切なものや想いに折角気づいても、その想いを失わないようにするという願いだけは叶えられないという制約下で、最後まで精一杯その想いを大切に大切に、すごく繊細な手触りで余韻を残して切り取られているからでしょう。そういう部分の演出はすごく力が入ってますし、すごく雰囲気が出ていて素晴らしいです。
 そして記憶はなくなってもどこかに想いは残る、そんな甘酸っぱさをも内包していて、読んでいて胸がきゅんとする話です。その想いの証はシナリオによってそれぞれですけど、それが生まれた過程がすごく丁寧かつそのシナリオの本質に即するように作られている分、読み手の完成をすごく刺激するんですよね。
 
 単純にシナリオ評価としては、3>>4>1>>2章って感じですかね。
 全てがハッピーエンドではないですが、紡いだ想いがとても純粋できれいなので、決して後味が悪いということはなく、どれも短い中にギュッとエッセンスが詰まっていて、まさしく春の風のようにすごく新鮮で爽やかな気持ちを味あわせてくれますね。
 話としては常に1対1である以上、章の数は増やせても一つ一つの内容は嵩増し出来るイメージではないし、また同じテーマ性で違う切り口の物語を更に紡ぐと言うのも蛇足になりそうですから、この作品はこのスケールで間違いなく完結していると思えます。実にいい作品ですね。


キャラ(18/20)

 全体的に話が短いので、圧倒的な個性というのはほとんど発揮されずじまいなんですが、それでも各々の性格の違いが物語の色調とあいまっていて、きちんと主張すべき部分は主張しています。
 
 個人的には、シナリオに続いて涼がお気に入り。一人だけ存在としては異質の彼女ですが、その分想いを真っ直ぐに叶えようとするひたむきさと、そんな中でもキャラ本来のどこか惚けた雰囲気が出ていて、夜の学園という幻想的な世界観の中ですごく生き生きと存在感を放っていると思います。
 次に希未かな〜。ものすごく引っ込み思案なキャラだけに、シナリオに引き付けておくまでの部分にやや強引さは感じるものの、そうした中で出てくる等身大の想いや悩み、そしてごく普通の女の子らしい愛らしさがいい具合に噛み合っているなあと。


CG(16/20)

 絵柄はかなり特徴あるとは思いますが、基本的にロリ大好きですし、話の雰囲気にもよく合っているとは思います。まあ安定感があるかといえば微妙なのでこの点数ですが。立ち絵はともかく、一枚絵であまりにもふっくらしすぎじゃないの、ってのがちらほらありましたね。

 立ち絵に関しては、本に隠れる希未は可愛いですね〜。
 一枚絵のお気に入りは、希未が見えない力に引かれて、涙は想いとともに、初めて手を繋いで、屋上で抱きしめて、届いた手のひら、Hシーン正常位、あゆみが朝起こしに、手を握り締めて、おでここっつん、Hシーン1枚目、涼が教卓の中で、ヨーイドン、屋上での涙、Hシーン後背位、由梨子が雨中で水遊び、突飛なカラーにげんなり、Hシーン背面騎乗位あたりですね。


BGM(20/20)

 とても名曲揃いです。
 曲単体でも素晴らしいのですが、何より素晴らしいのがその統一感で、作品の色合い付けにものすごい力を発揮しています。一曲も外れがないんじゃないかってくらい。
 
 ボーカル曲は2曲。
 『春風』は神曲ですね。恐ろしいくらい作風にぴったりな、穏やかでどこか切なく、それでいて前に進もうとする想いを後ろから優しくふんわりと支えてくれる風というイメージが、だんだん増幅されていくサビのイメージとすっきり二重写しになりますね。
 『サナララ〜花咲く月曜日〜』は一見明るい雰囲気なんですけど、噛み締めていると痛みも想起させる部分が多い、深みのある曲ですね。

 BGMで特にお気に入りは『スカーレット2004』。流れる場面がまず反則的ではありますが、この曲の出だしの、届かない、ってイメージはすごく鮮烈です。片恋のスプティアクラス。作風にあわせて全く攻撃的なイメージがないのも個人的に加点対象です。
 その他お気に入りは、『不思議な出来事』『5月の空』『春の終わり』『葉桜』『思い出して』『浮き足』『お出かけ』あたりですね。


システム(8/10)

 演出は悪くないですね。立ち絵の使い方とかこの当時としては良く動くほうだし、背景との噛み合わせも悪くないし、ここぞという場面での音楽画面演出総出での下支えはポイントが高いと思います。

 システムはやや独特ですね〜。必要最低限は揃ってますがちょっと使いづらいかも。
 シナリオを進めるのに章立てになっていて、いちいち次に進む、を選ぶのはテンポという意味では微妙。後で読みたいトコだけ抽出するのにほぼセーブいらずってのは楽かもしれませんけど、そもそもそこまでの嵩じゃないし。。。
 後は特に問題ないですかね〜。 


総合(86/100)
 
 総プレイ時間10時間。
 短いですが、色々なエッセンスがつまった良作ですね。作風に好き嫌いは出ると思いますが、好きな人にはとことん好きな作品になるのではないかと。かく言う私も、この雰囲気にやられました。

 以下2010/11/23に追記です。
 記事のエントリ自体は三年以上前なんですが、完成度が低かったのでお蔵入り気味だった感想に手を加え、点数調整しました。後半四項目についてはほとんどまともに書いてなかったのでほぼ書き直し、シナリオについては趣旨と方向性は当時と意見の一致を見たので、言い回しの調整や説明不足の部分を書き足すという形にしました。
 efみたいに並列方式も考えたのですが、あれは書き直した時点でシナリオに対するイメージが変わっていたというのもあるので、これに関してはこの形で問題ないと思います。ちなみに点数は、キャラで1点、システムで1点プラスしてあります。
posted by クローバー at 18:59| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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