2007年11月30日

そして明日の世界より―――

 リトバス以降における、今年発売の作品の中で三指に入る期待作ですので、もう猫まっしぐらで購入。ライター買いであるのは勿論ですが、絵にもキャラにも惹かれたので、発売まで一日千秋でしたね。

シナリオ(29/30)

 これぞ健速さんのシナリオ、といわんばかりの力作でした。
 三ヵ月後、地球に隕石が衝突し、人類は滅亡する。話の本筋はこの一行で説明が終わってしまうくらい単純明快です。ですが、このシナリオの秀逸なところは、あくまで一部の例外を除いて、作品内の時間を隕石が落下するという発表があってからの二週間という短い期間に絞っていることです。
 要は、隕石云々はシナリオの味付けでしかなく、あくまでメインとなるのは、そういう終末の世界という環境に突然投げ出された人たちの、それぞれの生きる意味に対する苦悩と解決にある、ということで、良くも悪くもこの人はこういう話しかかけないんだなあと思う次第。テキストの構成もいつも通り、無駄なく理詰めで構築されているので、肌の合わない人には一生合わないんだろうと確信させます。なにしろライターがそういう部分でプレイヤーに迎合する気が全くといっていいほどないですから(笑)。
 結論から言えば、そのテーマは単純明快、人は一人では生きられない、そして人は死ぬまで生き続けなくてはならない、ただそれだけなんですよね。それでも、作中の登場人物たちはそれぞれ違うパーソナリティを持ち、それぞれ違う生き方をしてきたわけで、その結論に至るまでの経緯は千差万別であり、その辺を実に上手く汲み取っています。
 もっとも、最終的な答えが見えている段階ならともかく、初回プレイでの重苦しさはかなりのものです。もうよくもこの短い期間に、これでもかこれでもかと問題を詰め込んでくれたなあと感心してしまいますね。
 個別ルートを大まかに分類すると、朝陽と青葉がある程度恋愛成立過程での問題寄り、夕陽と御波が人が生きる意味という問題寄りに偏っていますかね。その中で、朝陽と青葉では、より青葉のほうが内面的な問題が色濃いので、ある意味この作品のテーマ性からは一番離れてしまっています。夕陽と御波はシナリオ自体も、発生する問題も似ているのですが、御波のほうが哲学的な記述がはるかに多くて、より深く掘り下げてあるかと。
 それで朝陽と夕陽はやはりシナリオにリンクする部分があるので、攻略順としては朝陽→夕陽と続けるのがよさそう。たぶん先に夕陽をやると朝陽ルートでイヤになる。。。
 んで、シナリオの波乱度は、より作品のテーマから離れたほうが高いですね。青葉>>朝陽>夕陽>>>御波ってところでしょうか。ちなみにこれが今回の私の攻略順でもあったのですが、これはかなり失敗。しかも、後述しますが青葉の次にトゥルーエンドいってしまったので、ある意味最悪の展開でした。。。個人的には朝陽→夕陽→青葉→御波→トゥルーが鉄板だと思う。
 でまあ、個別ルートでも十分に面白かったのですが、個別で見るとかにしのの梓乃シナリオほどの威力はないです。ですが、トゥルーとアフターでやられた。ゲームの性質上、特定の誰も選ばないと入れるルートを普通トゥルーとは呼ばないですが、私はあえてこう呼ぶ。特に、全員のシナリオを読んで、それぞれがいずれ訪れる災害を前にして、何を想い、どう行動したかを踏まえてプレイすると、それぞれの強い想いがしっかり理解できて素晴らしい。ほんと、青葉のみ攻略したその次って、テーマ性も読み込めてないし、キャラ特性も理解不十分でしたので、最悪のタイミングだったですよ。最後にもう一回やって、その意味がわかって初めてメインと成り得るシナリオです。ほんと、久々に神判定を出せるシナリオでしたよ。何よりこのシナリオがすごいのは、実はこのルートだけ、ちゃんと結論出してないんですよね。個別だとどうしてもその特定の誰かのために、お互いに一緒にいたいからという形でシェルター行きを取りやめるわけですが、ここではまず自分が自分らしく生きることが最前提であり、そして今までの暖かい世界を一度破壊して、その上で前だけを見てこれから楽しいことを積み上げていこう、そのために必要ならば、結果としてのシェルター行きも選択肢としてありうる、というスタンスなんですよね。
 で、それを踏まえて上でのあのアフター。あの日付が中途半端だなと思いきや、あれってシェルター行きの期限ギリギリなんですよね。その結果として昴がどうしたか、なんて無粋な話はしなくてもわかる。ここに生きた証を残した、そしてそれはみんなの力で成し遂げた、そういう満足感に満ち溢れたあの写真は、その後の展開を想像したとしても決してそれが悲惨なだけではないと思わせてくれます。本当に最高の結末だと思いますよ、これは。
 他のレビューサイトさんとか見ると、面白いけど中だるみ、みたいなことも書かれてるけど(それを差し引いても軒並み高評価だけど)、このライターさんの創り出す独特の世界観はツボに嵌るととても没入度が高く、それにどっぷりつかっている私には、日常の緻密な描写も全然苦にはなりませんでした。
 しかしまあ、今日は朝から風子に泣かされ、親父とじいちゃんに泣かされ、温泉の写真に泣かされ、大変でしたよ。

 ・・・最後にどうでもいいことだが、18年前の4月15日に生まれた主人公の同級生の誕生日が11月29日って、それは大丈夫なのか?まあ御波なら体が弱いから実は留年してます、とか言い逃れられそうですけどさ。。。

キャラ(20/20)

 もう御波だけでご飯三杯はいけます。。。
 しかし、明らかに夕陽と御波は優遇されてますね。立ち絵のバリエーションが豊富すぎます。性格付けもさることながら、感情の表現がこの二人は飛びぬけてはっきりしているので、それこそ見ていて画面越しでも頭を撫でてあげたくなるほど情が移ります。それにこの二人は、昴との掛け合いが面白すぎる。作中で、夕陽はなんでも昴の真似をしたがり、青葉は対抗したがるみたいな書き方されてましたが、こと会話に関しては、青葉はなるべく昴のノリに沿う方向で話すので、結構画一的なんですよね。夕陽のほうが思いも寄らぬ方向に流れていくので楽しいです。まあ一番面白いのは御波なんですが。ライターさんの語彙の豊富さに裏打ちされているとはいえ、キャラ設定もあって他のメンバーとは一段上の掛け合いと言い回しを見せてくれます。
 そういう点では、感情を内に秘めてしまうタイプの朝陽と青葉は割を食ってますね。表情の変化も夕陽と御波に比べれば全然少ないし。まだ青葉は妖艶モードの印象があるけど、朝陽は全く印象がない。。。
 あと、登場人物が少ないうえに、同年代のサブキャラは全く出てこないので、必然的に五人の絡み以外はみんな大人なんですけど、これがみんなとてもいい性格していて、色んな意味できちんと日常を支えてくれる、頼りになる人たちだという印象が強いです。特にじいちゃんはおいしいとこ持っていきすぎ。。。
 極めつけは、その全員がひどく善人だということ。決して弱さは見せても汚さは見せない。まあこうまで美しさを徹底されてしまっては、文句のつけようもないですよ。
 そういうわけで全員好きですが、やっぱり群を抜いて御波が好きですね。容姿・性格、もう完璧にツボでした。

CG(18/20)

 もう御波だけで(それはもういい)。
 確かに癖のある絵描きさんですね。特に目の書き方が特徴的です。上でも少し言及したけど、立ち絵でも目の書き分けがとっても多くて、目を見ればその感情が大体わかるくらいでした。正直エロゲ向きの絵だとは思わないんですが、そもそもシナリオもエロゲ向きじゃないので(笑)、世界観としてみた場合釣り合いは取れています。
 また、人物や背景を含めて、塗りの丁寧さと繊細さがすごい。全体的に淡い色調で統一されているけど、その中でもしっかり光の当たり方や肌の隆起などでしっかり質量感を出していて、とても印象強いです。
 減点は、多少一枚絵にムラがあることかな。特に人物は、遠景になればなるほど雑な印象が否めません。至近距離でだとすごい綺麗な絵を描くので、余計に目立ってしまっているかと。
 にしても、御波の二回目のHシーンの二枚目と三枚目は個人的に凄まじくヒットした。基本的にHシーンなんてクリック連打、下手すればスキップの私が、あの絵見たさに三回もプレイしちゃったし。まあ私が御波大好きすぎるせいもありますが、少なくともHシーンを二回以上見たのは、いつ空の此芽以来だと思う。
 まあ多少不満はあれど、水準ははるかに超えてるかなと。

BGM(18/20)

 なんというか、はずれようのない曲ばかりですな。
 あまりにED曲が多すぎてほとんど聞き込んでないので、もしかしたら更に評価が上がる可能性はありますが、下がる可能性は・・・ないな。全体的にやわらかい曲調で統一されていて、シナリオと絵との統一感もばっちり、それでいてちゃんと大切な場面では強い曲を使って、ほとんどお手本のような出来です。突き抜けてくるほどのものがなかったのでこの点数ですけど、減点法でなら間違いなく満点ですね。

システム(8/10)
 
 いちいち起動のたびにフルスクリーンに戻すのは面倒だったけど、他には特に問題なし。共通ルートが長いから、選択肢ジャンプがあればより嬉しかったかな。

総合(93/100)

 総プレイ時間は25時間くらい。
 うわ、これ書いた中では最高点だし。シナリオ評価が最後のトゥルーのやり直しでガラッと上昇したのが大きいですね。何しろ、他に欠点らしい欠点がないし、挙句に今期トップクラスのお気に入りキャラが出来てしまったことがこの結果に現れましたね。御波かわいいよ御波。
 ともあれ、私には劇的にツボな作品でしたが、シナリオが人を選ぶのは確かなので、大手を振ってはお勧めできないのが悲しいところ。テキストにも、あからさまな媚とか、キャラ特性を最前面に押し出したサービス的な部分はあんまりないので、それこそドミノ倒しのようにシナリオが受け付けられないと全てが楽しみきれないという連鎖反応を起こしそう。
 それでもあくまで私の中では今期トップの評価ですので、どれだけ内容が重くて、平坦で、ご都合主義でなくても、ここが「無理のし時」と想い定めて最後までやって欲しいですね。絶対にトゥルー〜アフターだけはガチだと思いますから、はい。
posted by クローバー at 13:14| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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