2007年12月17日

キラ☆キラ

 発売日前日に初めて、結構有名なライターさんの作品と知ったものの、同日に買うものがいっぱいあったので頑張ってスルーするつもりでしたが、ネット上であまりにも評判がいいので後日衝動買い。。。
 いや、ほんと買ってよかったけどね。11/22発売の三作品は、正に今年を代表するレベルであり、これらが同日に集中したこと自体奇跡的なことですねぇ、ほんとに。

シナリオ(28/30)

 噂にたがわぬすごい作品でした。
 一般的にパンクバンドというと、どうしてもアウトローのイメージが付きまとうわけですが、この作品ではそういう先入観をある意味逆手にとって、一見そうは見えないものの、どこかしらに世間と相容れない後ろ暗い部分を持っている四人にバンドを組ませることで、斬新さと退廃の空気を上手くミックスした青春活劇に仕立て上げています。
 とにかくまずこの作品、というかこのライターさんに触れて驚いたのが、その文章の感情移入性の高さ。これは主人公のキャラ設定の勝利でもあるのでしょうが、普段どこか冷めた視点で物事を俯瞰しているようで、いざ大事な場面になると深く深くのめりこんでいく、そのバランスがとても秀逸で、油断しているといつの間にか読み手を作中内の青春活劇気分に容赦なく引きずり込んでいきます。
 まあ実際、やってることは割と青春の定番コースみたいなことで、始まりは文化祭においての、今年でなくなってしまう第二文芸部の最後の花火を打ち上げるネタとしてのライブであり、そこからいくつもの幸運が手助けしているとはいえ、ひと夏の思い出としてのライブ旅行にまで発展するのですが、ここまでの話の持っていき方と緩急のつけ方は、余人には変えがたい独特のセンスを感じました。
 まあ他の作品と比べるのもあまり意味のあることではないんですが、同日発売のよしみで三強比較をするなら、明日世界は基本的に物語の内側に引き込みっぱなしであり、逆にNGは、主人公がフルボイスであることもあって、かなりの部分客観的に突き放して書かれていると思うのですが、キラ☆キラはちょうどその中間くらいといったところで、もしかしたらこういった部分でも人の二面性とか青春の揺らぎ的なものを表現しようかとしているのかとまで思ってしまったり。
 とにかく、明日世界がずっと引き込まれっぱなしのせいでかなり重苦しいのや、逆にNGが突き放されていてさらっと読めるのに比べて、ものすごくバランスがよくて、その分物語に没頭できたというのが実情。少なくとも夏休みのライブツアー編まででも買う価値は十分にありますね。このライブの開放感と旅の旅情感は病み付きになりますよ。

 で、個別ルートですが、こっちは前半ほどのインパクトは感じなかったというのが正直なところ。これは私の感じ方が不自然なのかもしれませんが、どうしても話が前半の勢いに引きずられているので、いきなり話がダークな方向に行って、しかもルートによっては雰囲気がガラッと変わるのに戸惑ってしまった部分はあると思います。
 旅の途中、大阪の先からルート分岐するのですが、ここは紗理奈の九州・沖縄編が一番面白かった。きらりの福岡編はちょっとすごいところまで昇ってしまったなあという一抹の寂しさ、逆に千絵の神戸編は活動の締めとしては中途半端だなあという感じ。
 もっともその分、いきなりライブハウスみたいな騒がしい環境とは180度違う田舎の本宅に引き篭もってしまった紗理奈ルートは、他のキャラがほとんど絡んでこないのもあって、どうしても物寂しさが拭えないままでした。まあシナリオとしては、心理描写がすごく丁寧だし、結末もご都合主義ではないし、一番よく出来ている気はするのですがね。
 千絵ルートは、一番序盤から中盤にかけての雰囲気を引きずっているシナリオなので取っ付きやすかったかと。抱えた問題もまだ軽いほうではあるしね。果たして天然毒舌翠ちゃんが必要だったのかは疑問の余地もありますが。。。あの投げっぱなしがまさか最後の出番だとはね。それでも卒業式ライブとか、やっぱりあのメンバーでドーンと登場してくると、脳裏にあの夏が蘇って、みたいなノスタルジーを一緒に体感できるあたり、素敵な出来なんですけどね。ロックンロールは勇気の合言葉。。。
 で、色んな意味で問題のきらりルート。
 きらりだけはEDが二つあって、ED1だけは最初から見られるようなのですが、少なくともこんなのを一番最初に見せられたら色んな意味で重過ぎるので、前出二人をクリアしてからED1→2の順番で見るのがいいかと。
 ED1はねえ・・・、ある程度の鬱展開は覚悟していたのですが、あそこまで徹底しているとは思いませんでした。その後のアフター的ストーリーは、なんとなく渚アフターの汐編を意識させる作りですが、あちらがあくまで閉じられた世界でのファンタジーであるのに対して、こちらはそれでも生きていかなきゃならないという、ある意味一番残酷な部分を容赦なく突きつけてくるので、道中の痛さは比較になりません。その上安易な救済には走らないので、物語的にすごくまとまっているのはあっても、あくまでも傷跡は消えたのではなく、ただ絆創膏を貼っただけ、という印象でした。
 で、じゃあED2はハッピーエンドであるかというと決してそんな単純ではなく、こちらはこちらでかな〜り重い展開が待ち受けています。簡単に言えば、きらりが一番大切にしていたものが失われたことで、二番目以降の全てがあっさり手に入ってしまったということなのですが、その過程の最後の引き金を引いたのが主人公だったせいで、二人の間が難しくなってしまうわけですね。
 ともあれ、振って湧いたようなきらりの歌手デビューの話をきらりが素直に受け入れられないところから、主人公の罪の告白、そしてきらりの沈黙とそして出した結論までの流れは正に秀逸でしたね。「これからは、私が鹿クンを守るよ」の台詞にはしびれました。このわずかな沈黙の間に、きらりは自分の世界での優先順位の位置づけをきっちり再構築し、そしてその世界を今度こそ守るため、ただそれだけのために、それに必要な力を手に入れるという決心をしてしまうきらりは、本当に強い子だなあと思いました。

 とまあ、かなりべた褒めでここまできましたが、細かい部分では拾いきれていない設定とか結構あるし、それに千絵ルート以外はどうにもバンド活動そのものはなおざりな扱いになってしまっているのがちと残念でしたね。
 しかしまあ、よくきらりはこの境遇でライブツアーのお金なんか捻出できたものですよね。。。この話は外に外に話が広がっていく物語ですので、お金云々やその日の身の振り方など、NGみたいに毒は含めないまでも、かなり社会性の強い作品ですけど、それだけに逆に違和感を感じてしまったり。
 また比較論になるのですが、CLANNADみたいな閉じられた輪の中の物語だと、例えそこに社会性を持ち込まなくても違和感はないんですよね。あの世界でだって、普通に考えれば岡崎家の生計が成り立っている理由が見当たらないのに、少なくとも朋也が衣食住に困っている風情は全く感じませんし、けどあれを読んでいるときにそれが気になってしまうこともまたないわけで。要するにあれはそういう作り物の話に必要ない部分を完膚なきまでにそぎ落とすことで完成度を高めている御伽噺なのであって、そこに社会性ははじめから「ない」、もちろんこの傾向はリトバスでもそうで、これがkey作品の方向性だというわけなんですよね。
 ともあれ、少なくとも一人頭最低五万はくだらないだろうこの旅に対して、きらりが自分のバイトも休んで、その上これだけのお金を使って遊びに行くという我が侭を本当に通せるのかなあ、なんて邪推してしまうのも、それだけこの作品が緻密に社会性と世界観を紡いできたからなのでしょう。
 何にせよ、これは歴史に残る傑作だと思います。

キャラ(18/20)

 なんで妹の立ち絵が(マテ)。
 ともあれ、ヒロインの三人はみんなかなり魅力的なのですが、どうしてもシナリオの強烈さに食われてしまっているというか、あるいはこれから魅力を発揮し始めるのにってところで物語が終わってしまっていたりとかで、ちと不完全燃焼ではないかという印象が拭えずにこの点数になりました。またこの作品は、サブキャラもとってもアクが強くて魅力的なので、相対的に色々と削り取られているかもしれませんね。これはあくまで等身大の人間を書くことにこだわったからなのかもしれませんが。
 一番好きなのはカッシーですかね。なんで病弱お嬢様ってのは、いざとなると芯の強いのが多いのかと思ってしまいますが。。。まあ御波のはっちゃけたところや、瑠璃子のちょっと毒々しいところとは違う、真性のおっとりお嬢様ってところに別の魅力を見た気がします。
 で、結局どっちが舞で美雪なんだろう?
 あと声もなあ・・・、なんとなく聞いたことはあるにせよ、私って声優の区別つかないんですよねぇ。誰か教えてください。

CG(18/20)

 立ち絵より一枚絵のほうがかわいいという、私的にはちょっと珍しい絵描きさんですね。まあこれは立ち絵のバリエーションのなさや、エフェクションの少なさにも起因するとは思いますが。
 とはいえ、一枚絵も絶対安定というほどではなく、どちらかと言えば可もなく不可もなくというところなのですが、じゃあなんでこんなに点数がいいのかというと、胸の描き方がすごく好きだから。。。
 私の胸のストライクゾーンはかなり狭くて、微乳〜普通くらいが最大幅なんですけど、この手のゲームってどうしても胸の大小を極端に描く人が多い上、大抵実質より大きめに描かれているのが普通じゃないですか。そのせいで、キャラはお気に入りでも一枚絵でちょっとげんなりってパターン、かなり多いんですよね。
 その点この作品、立ち絵での差異はかなりのものながら、意外に一枚絵になると差がないんですよね。特に巨乳だ巨乳だと最初から言われているカッシーの絵が、確かに大きいけどかなり常識的なサイズで、しかもすごく形よく描かれていたので、安心して萌えることが出来たというのが大きいです。きらりもペタじゃなかったしね。。。

BGM(20/20)

 バンドをメインにしている作品だけあって、流石にここにはけちのつけようがない出来ですね。もう出だしのスタジェネの熱唱シーンから心を鷲掴みです。
 ボーカル曲が全部で10曲というのも圧巻ですよね。個人的には「君の元へ」「a song for」あたりが好きですが、どれも素晴らしい出来だと思います。
 BGMも、ボーカル曲ほどインパクトの強いのはなかったですが、きっちり場面には合わせてきていて合格点だと思います。にしても、カッシーのテーマ曲はどこがで聞いたような曲だなあ・・・。

システム(6/10)

 このゲーム最大の欠点。何より演出がしょぼい。日常シーンのエフェクトはまだしもとして、せめてライブシーンくらいはもっと躍動感と統一性を感じさせる作りに出来なかったものか。しかも中途半端に演出が入って、その間はスキップできず、かといって大人しく見ていても楽曲一曲分まで作り込んでいないので、中途半端に曲がつぎはぎになってしまうという駄目っぷり。せめて初出の曲だけショートコーラス分だけでも演出カット不可、とかメリハリのある作りなら納得できたんですけどねえ。
 あとテキスト全画面表示で作るなら、画面の透過度の変更くらいはつけて欲しい。ボイスカット解除機能もないし、セーブ&ロードもちょっと使いづらいし、なんとも勿体無い限りです。

総合(90/100)

 総プレイ時間20時間かな。
 てか、こういう作品こそ、紫の演出力で作って欲しいんですが。きっと神の出来になっていたと思うのですが、世の中なかなか上手くはいきませんねえ。
 傑作でした。
posted by クローバー at 09:46| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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