2008年01月19日

もしも明日が晴れならば

 体験版の一章が素晴らしい出来。
 そのほか、キャラも音楽も好みだったので購入。

シナリオ(26/30)

 一言で言えば明穂に始まり、明穂に終わる作品。
 夏休みを直前に控えたある日、今までの関係から一歩踏み出して恋人同士になった主人公と明穂は、それまでとは一味違う夏が楽しめることに胸を躍らせていたのに、その想いが少しも果たされないうちに、突然明穂が病に罹って、そして呆気なく命を落としてしまいます。
 あまりのことに呆然とし、泣くこともできないまま徐々に心を壊していく主人公と明穂の妹のつばさ。けれど、二人の張り詰めた糸が切れてしまう直前、二人の前に突如幽霊となった明穂が帰ってくる、こんな感じの話ですね。
 一応攻略キャラは四人いますけど、どのルートでも最後の最後で明穂がおいしいところを持っていくので、結局このゲームの評価は明穂が好きになれるかどうかで定まるといって過言ではないでしょう。

 筋立ては、共通ルートが五章までで、そのうち四章までが各ヒロイン一人ずつにスポットを当てた話、五章が学園祭でルート分岐が発生し、六章が個別ルートという感じです。共通ルートの話もとても素晴らしいんですが、基本的に長い上にほとんどシナリオの差分がないので、二周目以降は結構だれます。ついでに五章の時点で既に全員主人公にラブラブなので、そんな展開でも優柔不断な主人公に少しイライラさせられるかもしれません。
 でもそんな事は気にならないくらい、シナリオの出来はいいです。共通ルートの中では、やっぱり四章が一番好きかな。

 もちろん個別ルートもなかなかの出来。
 基本的に、如何に幽霊であるとはいえ、主人公と明穂は恋人関係というデフォルト設定があるので、その他のキャラだとまずその前提を覆すところから始まるわけですが、まあ色々と主人公がただ優しいだけで全然自分で決断しようとしないので、結局複雑な感情を抱えつつも明穂が二人の後押しをするってのが基本パターン。
 もちろんそれぞれのキャラにもそれなりの葛藤とか問題とかあるので、そのパターン次第で明穂の感情の行き所も変わってきて、このあたり上手く設定されているなと思います。珠美ルートの野々崎姉妹の嫉妬ぶりなんかは迫真ですね。
 明穂本人のルートだけはご都合主義の結末になってますが、そこに至るまでの葛藤や、上手く伏線を使っての感動シーンの演出には目を見張るものがあります。
 ですが、やっぱりもっとも出来がいいのはつばさルート。
 確かにちょっとつばさのものの考え方は自虐的に過ぎて、見ているこっちが痛々しくなってしまいますが、そんなつばさを決して見捨てることなく、少しずつ少しずつ心の殻をはがしていく過程が上手く書かれています。そして最後の海岸のシーン、まあ出てくるのはわかっていたにせよ、あえて顔を合わせずに語り合う姉妹の姿、そして明穂の真情の吐露によって救われていくつばさ、そして明穂の別れの台詞、正に素晴らしいとしか言いようのない演出でしたね。

 どちらにせよ、設定が幽霊ものである以上、色々とご都合主義なこととか、超常現象とかも色々出てきますけど、そういう細かい設定に一々突っ込まなければ、シナリオの組み立てとか、丁寧な心情の書き込みとかは素晴らしいので、充分に楽しめるはずです。
 強いて言うなら、テキストに笑いの成分が少ないのが、読んでいると眠くなる、なんて言われる原因かと。まあシナリオの内容的にもあまりギャグに走れないし、キャラ的にもそういう立ち位置のキャラがいないので、どうしてもメリハリをつけるのは難しかったと思うのですよ。まあこれはこういうものだと諦めるしかないです。
 逆に言えば、今どき安易な笑いに頼らずにシナリオ一本で勝負してこの評価なのだから、如何に設定勝ちとはいえ対したものだと思うのですよ。ちなみに次回作のさくらではきちんとテキストにメリハリがありそうな感じだし、その上でこのレベルのシナリオ書いてくれればいいな、と期待しております。

キャラ(19/20)

 上記の通り、あくまでシナリオありきの作風なので、あまりキャラクター性が前面に出てくる描写は少ないし、あまりキャラに萌える感じのところはないんですよね。
 とはいえ、シリアス描写が秀逸な関係で、感情移入だけは存分に出来るわけで。とはいっても、ほとんど明穂に対するものですが。良くも悪くも、明穂の性格はお節介の一言で片付けられるくらいなのですが、そのおかげで対する相手が違えば対応もそれなりに違って、様々な表情を見せてくれるので、明穂を追いかけているだけで充分に楽しめます。
 珠美も千早もそれなりに可愛いし、性格付けも絶妙ではあると思うけど、やっぱり明穂と張り合えるレベルではないんですよね。ある程度張り合えるのはブラックつばさくらいかな。個人的にはつばさはブラック入っているときのほうが好みです。
 まあこの項目でも明穂次第なのは変わりないですね。

CG(19/20)

 かなり特徴のある絵柄ですね。基本的に可愛いというよりは綺麗に近いイメージです。時々表情のバランス、特に目の描き方が崩れてるかなって思うときがあるけど、それ以外は全くもって安定、背景含めて隙のない出来です。この絵柄そのものが気に入らないというのでもない限りは、安心して楽しめるレベルだと思います。
 減点の理由は、立ち絵の表情バリエーションの少なさと、後はこの絵そのものがどうしてもHシーンとそぐわないなあ、と感じてしまうところですかね。とはいえ、作品の雰囲気的にはあまりくだけた立ち絵もどうかと思うし、文句つけるところでもない気はするのですがね。

BGM(20/20)

 完璧です。
 個人的に今までやってきたADVの中で、三指に入る出来だと思っています。
 ボーカル曲は全四曲ですが、どれも作風にあったすばらしい出来、特に挿入歌の「凪」は、その曲がかかるシーンとあいまって神クラスの出来となっています。
 BGMも、基調は物寂しい雰囲気を醸し出しながら、それでもシーンごとにメリハリのある曲を使い、そしてシリアスシーンの曲が全て秀逸すぎます。「二人の時間」「その奇跡を」「記憶の残滓」などなど、この他にも素晴らしい曲ばかり、初回限定版のサントラがこれほど嬉しかったゲームは、他には車輪くらいのものですね。
 正に、音楽だけでも聴く価値のあるゲームです。

システム(7/10)

 演出はそれなりの出来。流石に重要なシーンにはかなり力が入っていますが、日常シーンでは特に目立ったものはなく、躍動感もあまり感じられないので、テキストとあいまって睡眠導入の火付け役になっています。まあそれなりの感情表現だけはしっかりされているから、問題ないっちゃないんですが。
 スキップはそれなりに速いけど、共通もまた長いのでちと追いつきません。選択肢ジャンプが欲しいところですね。あとセーブ画面が、再起動時に必ず一ページ目に戻るのがちょっと面倒でした。

総合(91/100)

 総プレイ時間、17〜8時間くらい。まあ二周目以降の共通ルート全スキップすれば、ですけど。
 まあ良質の泣きゲーです。
 基本的に一章の雰囲気から大きく逸脱するところはないので、体験版をやってみてこの雰囲気と明穂の性格が好きになれれば、間違いなく楽しめることでしょう。逆にこの時点でNGなら、購入は控えるべきかと。
 どうでもいいですが、私このタイトル名大好きです。何事も第一印象が大切なのは当たり前のことですが、これくらい秀逸なのは小説レベルでも滅多に見かけませんね。
posted by クローバー at 18:10| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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