2008年02月28日

Dear my friend

 個人的に鉄板コンビの作品だし、評判も上々なので買ってきた。

シナリオ(24/30)

 予想に違わず、そつのない良作でしたね。
 タイトルから見られるとおり、友情が作品の大きなテーマの一つですが、その示し方もシナリオによって様々で、大別すれば男女間における愛情と友情(あるいは家族愛)の線引きの曖昧さというか、揺らぎの部分をメインに据えているものと、単純に困難に直面するカップルを、性別の壁関係なく優しくサポートする形でのものに分けられるでしょうか。まあどのシナリオでも、どちらの面が大きく顔を出しているかの差異だけとも言えますが。唯一月夜シナリオだけはちょっと違う感じですけどね。

 主人公は基本的にかっこつけで、かなり恋愛に対して臆病な性格をしています。この手のゲームによくある、ただの鈍感ヘタレ野郎とは一線を画していて、ヒロイン達の好意に気づいていながらも、どうしても一歩を踏み込めないことに対して、ちゃんと作品内で理由付けがされています。まあこれを語ると都香シナリオの壮絶なネタバレになるのでスルーしますが、基本設定としてはパルフェと似ているな〜という印象。
 ただし、説得力という意味合いではかなりパルフェより劣りますが。特に主人公の恋愛に対するトラウマの原因そのものの心情に対して、ですね。
 ともあれ、この設定のおかげ(?)で、友情と愛情の間でフラフラ彷徨うせつなさっぷりが増幅されて、シナリオに味を加えています。

 その上で、各々ヒロイン達もそれぞれかなり重たい設定を持っています。
 基本的には、なかなかお互いの気持ちが噛み合わずにやきもきして、やっと結ばれたかと思ったら、そのヒロインにまつわる問題が浮上してきてまたやきもきする、というシナリオばかりですね。。。
 ただ、共通ルートからの個別へのルート派生が比較的早いのと、ストーリーのテンポがかなりいいので、どのルートでも違和感なくシナリオに没入できる感じで、このあたりのすり合わせは上手いな〜と感心しました。

 シナリオ評価は、色々迷いましたがやっぱり麻衣を一番に取りますかね。
 麻衣シナリオの一番の欠点は、確実に相思相愛の二人が結び付けない障害そのものが、もうほとんど引き返せない段階になって明かされることです。ここは主人公の父親のあのいい加減さが悪いほうに出ていて、父親的にはああいう時点での告白になったことにもそれなりの理由付けはあるにせよ、あの態度がそれを打ち消しているように感じるんですよね。
 実際問題、この麻衣シナリオにおける二人の関係性の問題は、もし最初にそれが暴露されていたらシナリオそのものが成り立たない、という性質のものなのですが、そういう話の都合とは別問題に、本来なら最初に父親が主人公に告げるべき話であるところを、黙っていたら面白いかも、くらいの気持ちで敢えて話さなかったように感じてしまいまして、どうにも駄目でした。
 挙句この主人公、それでも決して父親に責任転嫁することないんですよね。そのあたり、立派というか頑固というか微妙なんですが、おかげで逆にこっちがフラストレーション溜まりました。。。
 でもその点を除けば、後半の展開とかはかなり好みですね。
 最後の最後で明かされる、麻衣が本当に欲していたもの、それは普通であれば当たり前に手に入るものであり、当たり前であるからこそ、普通の幸せを手にしている主人公にはなかなか気が付けなかった、そんな二人の根幹的なすれ違いが痛いほど沁みてくるシナリオです。

 で、ある意味ラスボス的シナリオである都香なんですが、これは個人的にはイマイチでしたね。
 これは一言で言ってしまえば、愛情は涸れ行くものだが友情は普遍である、という都香の勘違いが全てじゃないかと。
 作中内で主人公が言及するように、麻衣と都香は本質的に似ている部分があって、それは自分を必要としてくれる存在を欲している、という点なのですが、その飢えに対する対応の形は、麻衣が向こう見ずに抱え込めるだけ抱え込もうとするならば、都香は確実に自分が零さないで済む量だけを抱えておこう、というものなんですね。それが、理不尽な理由で親を失った麻衣と、不条理な理由で親から突き放されている(と感じている)都香の違いなわけです。
 結局二人が友情という形にしがみつこうとすればするほど、男女の間での友情の曖昧さが如実になっていく、せつないシナリオです。後半の重い展開ともあいまって、なかなか鬱にさせてくれました。
 ともあれ、そういうテーマ性の書き方は秀逸なんですが、やっぱり最初の告白のときの都香の対応がちょっと信じられないのと、ラストの展開があまりにあっさり手のひらを覆しすぎていて、全体的に締まりが足りない、という印象です。

 月夜シナリオは他のシナリオとちょっと違って、ファンタジー要素を含んでいるのが特徴。その特殊能力のせいで虐めを受けている月夜を気にかけているうちに、というのが前半の流れですが、このあたりの雰囲気作りが物凄く上手いです。月夜の、普段のお茶目な部分や、時として見せる不気味な部分に隠された、本当の心に辿り着くまでの展開はいいですね。
 虐め問題もひと段落した後半は、月夜のもつ特殊能力の弊害が大きなテーマになります。このあたりは、まあちょっと強引な展開も目に付きますが、最後のオチのつけ方はなかなか上手いです。序盤でそんなに問題にされていなかった部分が実は大きな伏線であり、逆にそれがあったおかげで最後の起死回生の結末を引き込めた、という流れは、ご都合主義だとしてもそれ以上に充分の面白さと感動がありました。何より、ラストシーンでの挿入歌「月神の調べ」が名曲で、このシナリオの雰囲気を際立たせていたと思います。

 小麦シナリオは微妙。
 どうしても小麦のコンプレックスが、他のヒロインのそれと比べて重さを感じさせないのと、お互いの好きになる過程などがあまりに曖昧なのが一番の原因で、その上ラストも大して盛り上がりがないので、あれ?もう終わりって感じでした。
 まあキャラとしては好きですし、序盤のギャグの応酬はかなり笑わせてもらいましたけどね。でもそのせいで、最後までシリアスになりきれなかった印象。

 冴香シナリオはかなり鬱ですね。。。
 というかこのシナリオは主人公がヘタレすぎます。恋愛が苦手とか云々の前に、まず意志が弱すぎ。そして臆病すぎ。周りの人間を傷つけたくないから、と言い訳して、結局自分が傷つくのを先送りにしているだけですからね。このシナリオの麻衣は本当に不憫です。まあ麻衣も思い込みの激しい性格なので、余計に問題をこじらせていますからある程度自業自得なのでしょうが。

 総じて見ると、小麦と冴香のシナリオが質・量ともにやや劣るものの、それでも充分に良作レベルの出来で、メインの三人はかなり楽しめました。けど残念なことに、どのシナリオでも個人的にどうしても引っかかる部分があるせいで、名作、とまでは言い切れないですね。それでも、これだけしっかりプロットが作りこまれていて、心理描写も精密に描かれていて、かつ読みやすい話はそんなにはないですから、そういう目線で見れば充分に名作かと。

キャラ(18/20)

 飛び抜けて好きなキャラはいないですが、なんというかヒロインやサブキャラに至るまで、全員が実に人情味に溢れていて、あるいは人間臭さにまみれていて、すごく人間関係が噛み合っているな〜、という印象です。まあ、自分がメインのシナリオのときより、サブに回ったときのほうがいい人に見えるキャラばかり、ともいいますが。
 まあ選ぶなら麻衣が一番好きですね。
 あの妙に子供っぽいところと、たまにそうでないときのギャップや、その陰に隠しているせつない心情には、共感は出来ずとも、優しく見守ってあげたいという想いを存分に抱かせてくれます。

CG(18/20)
 
 流石の安定度ですね。
 ややCGの量や立ち絵のバリエーションで見劣りはしますが、この柔らかい雰囲気の絵柄はやっぱり好みですし、これだけ安定しているとCGが出てくるたびにしっかり期待できるので楽しいです。
 麻衣の添い寝シーンの絵が一番ツボに嵌りました。。。

BGM(18/20)

 作品の雰囲気にそぐわったいい曲ばかりですね。
 ボーカル曲は、主題歌の「Dear my friend」もかなりいい曲ですが、月夜シナリオ挿入歌の「月神の調べ」が個人的に大ヒットでした。White−Ripsさんの声は、ああいう神秘的で物悲しい曲を歌わせたら相性抜群です。
 BGMでは「霜どけの刻」「背中合わせ」「雪中の帰路」あたりが気に入りました。

システム(7/10)

 演出はまあ、だいぶ昔の作品ですしこんなものではないかと。
 雪の演出は綺麗ですが、キャラとかぶると映らないのが難点。あと文字のエフェクトが最初ちょっと違和感がありましたね。ONOFFがないのはちょっと減点。まあ慣れたらあれで味わいがあっていいとは思いましたけどね。
 システムはまあ、最低限は装備しているかと。
 ややスキップが遅いのと、セーブ画面まで2クリック必要なのがちょっとだけ不便ですが、後は問題ないかと思います。

総合(85/100) 

 総プレイ時間16時間くらい。
 でも、CD−ROM一枚の割には容量ありましたね。そしてフルインストールでも680MBとは、かなりPCに優しい作品です。
 昨今、無駄に容量を増やして、演出にばかり力を入れている作品が多いですが、やっぱりノベルゲームはシナリオが命、そこさえよければ多少の環境の違いなど問題にならない、というのをしみじみわからせてくれる作品でした。
posted by クローバー at 18:40| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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