2008年04月08日

Princess Frontiar

 今までAXLは絵が好みじゃないので敬遠してたけど、評判が尋常ではなかったので勢いで購入。。。

シナリオ(27/30)

 評判に違わぬ名作。
 物語は、主人公が騎士叙任の式典で王女の胸を揉むという大失態をやらかし、辺境の村の警備隊隊長として左遷されるところから始まります。世界観はかなりファンタジー仕立てですが、特別難しい設定とかがあるわけではないので、話にはとっつき易いです。
 前代未聞の大失態をやらかして左遷された変態騎士として、最初のうちは村人達から蛇蝎のように忌み嫌われていた主人公ですが、警備隊の部下であるロコナや、村の神官であるレキなどの尽力、そしてある事件をきっかけとして、次第に村に打ち解けていきます。
 そんなところに突然、この村に伝わる幻の花を探しに王族の少年とその護衛がやってきます。二人に振り回されてまたドタバタし始める日常、その上、実はその王族の少年が、男装していた件の胸揉み事件の当事者である王女様、アルエであると発覚し、更にそんな辺境の村に王族が逗留していることに目をつけた商人であるミントまで加わって、穏やかな村の中で日々ドタバタが繰り広げられる、こんな感じの話です。

 序盤から中盤にかけては、幻の花を巡っての事件や、村の中でのイベントの話がほとんどです。基本的にテキストはかなり読みやすく、決して奇を衒った文章ではないものの、笑うところは笑い、悲しむところは悲しみ、と、しっかりメリハリの利いた出来で、しかも文章に無駄がないので物凄くテンポがいいです。
 その上で、魅力的なヒロイン達や個性の強すぎる男キャラ達が織り成す日常シーンは、まあかなり面白いですね。テンポもよければ一つ一つの話の長さもちょうどいいので、気がついたらのめりこんでしまう感じです。やや共通ルートが長いものの、この面白さのおかげで再読もそれほど苦にはならないですね。

 個別ルートに入ってからも、テンポのよさと掛け合いの面白さは決して損なわれることはありません。
 そもそも世界観設定に特に物語全体に影響を及ぼすようなものがほとんどないため、各キャラごとに等身大の難問が設定されていて、それをまた主人公をはじめとする仲間たちが一丸となって解決する、というパターンがほとんど、その上解決方法そのものもかなりしっかり地に足を着いた手段を選ぶので、ストーリーがすごく自然で、なおかつしっかりとハッピーエンドになるのでとても後味がいいです。
 そんな感じで、しっかり人の力で問題を解決する意識が強いので、急所で出てくるファンタジー設定が逆に生きていますね。特に幻の花の使い方や、失われた魔術の使い方は、正にここぞ、という場面で発動するので、しっかり納得させられてしまう感じです。

 シナリオは評価順にロコナ>>ミント>レキ>>アルエといったところ。
 とにかくロコナシナリオの出来は素晴らしいです。後で詳しく書きますが、この作品にはあまり表面的にはならないテーマ性があって、それを一番しっかり書いているのがこのシナリオですね。
 というか、基本的に個別に入って問題発生した後、大まかに分けて舞台が村になるのがロコナとミント、王都が舞台になるのがレキとアルエで、ぶっちゃけ村から問題が離れるほどシナリオとしてイマイチになっていきます。。。まあ個人的に一番評価の低いアルエシナリオでも、そのへんの凡百の萌えゲーシナリオには全く負ける余地はないんですが。

 でまあ、この作品のテーマというか、表現したかったことは、基本的には人と人とのつながりの大切さ、もっと具体的に言えば家族の大切さになるのでしょう。
 舞台が辺境の村ということもあって、最初はその輪の中に打ち解けるのに苦労していた主人公ですが、持ち前の明るさと優しさで一生懸命触れ合いを求めるうちに、いつの間にか村人達にとっても大切な人間になります。
 これは、主人公以前に村に赴任していたレキや、主人公の後に村に現れるアルエやミントなどにも同じことで、何気ない日常の触れ合いや助け合いの中で、いつしか村にとってなくてはならない人間に成長していくわけですね。
 ここで生きてくるのがこの村という設定で、一般に言われる村気質、一度仲間だと認めた人間には際限なく助け合うという精神性が、集合体としての擬似家族のような役割を果たしています。その中で特に中心になるのが、警備隊兵舎に集まる仲間達、というイメージで、いわば家族のようなつながりが主人公を中心に二重の輪で取り巻かれている、というのが、この物語がとんでもなく暖かい所以になっています。
 それと対極的なのが、王都、更に言えば宮殿での生活で、くしくもアルエシナリオでアルエが言うように、宮殿の生活とは出るのは容易く入るのは難しい、いわば二重の意味で閉鎖されている世界なのですね。

 そういう意味合いで見ると、村で騒動が起こった場合には助け合いの精神が村全体にまで波及するのに対して、王都での事件だと、どうしても仲間内だけでの話になってしまうので、ややスケールダウンというか、物足りない印象を受けるわけです。
 そして、ロコナシナリオが群を抜いて素晴らしい理由も、ロコナが村のあり方を象徴するような存在であり、それでいながら実はもっとも家族という形に恵まれていないという、前提の理由付けが秀逸だからです。

 そもそも、主人公をはじめとして兵舎に集う仲間たちは、それぞれが十全ではない家庭に対する負い目や不満を抱えています。その理由は人によって様々ですが、一つ確実に言えるのは、ここに集まった面々のほとんどが、家族のような幸せな集合体に隠れた憧れを抱いているということです。
 ではこの場合、家族の定義とは何なのか、ということになりますが、この話で最も重要視したいのは、おそらく自分がありのままの自分でいられる場所、という意味合いでしょう。何も心配なく素の自分をさらけ出せる空間、それを言葉にして示した場合、統計値の一番上に来るのはやはり家族というものであり、あるいはそれに準ずる仲間の集合体、ということになるでしょう。いわば擬似家族、ですね。
 主人公たちにとって兵舎がこんなにも居心地のいい場所になった理由、それはみんながそれぞれそういう気の置けない空間を欲していたからであり、その中心にいるのは主人公ですが、それを繋ぎとめているのは間違いなくロコナです。村から見ると明らかに部外者である集団を、村の空気に染め替える存在、それがロコナであり、だからこそそのロコナが真の家族と村での生活とで揺れ動くというシナリオは、それぞれが等価値として天秤の両側に揺られており、それが透けて見えるからこそ展開的には平凡であってもあれだけの感動を与えてくれるのだ、と自分なりには解釈しています。

 その上、この作品は選択肢の出し方が秀逸なんですよね。
 上で書いたようなテーマ性を踏まえた上で各々の選択肢を見ていくと、大概の選択肢が、ヒロインの内側にまで踏み入って助言するものと、あくまで傍観者として客観的に助言するものに分かれているのですよ。
 これって勿論好感度選択であるのに違いはないんですが、その裏に、村における人間関係のありようと、一般的な社会、この場合は王都におけるそれとの対比が如実に示されていて、表面上の付き合い方ではなく、誠実にヒロインの問題に対処したからこそ二人の仲が進展した、というイメージがすごく膨らませやすいんですよ。
 昨今は単純なマップ移動のみでの好感度管理や、そもそも選択する意味がわからないような選択肢ばかり突きつけてくる作品が横行する中で、こういうちゃんと考えればわかる選択をさせるストレートな作品はすごく好感が持てます。

 というわけで、色んな意味で隙がなく、その上笑いや感動に溢れているという、かなりの名作です。大仰な設定はないにしろ、この世界観の統一性と雰囲気は実に秀逸ですし、決して手にして損をすることはないと断言できる仕上がりですね。

キャラ(20/20)

 ロコナとミントはかなり好きですね。ええ、ロリコンですし。。。
 冗談(?)はさておくとしても、まあ世間に対する知識の差はあるにせよ、基本的にお人よしで正直な二人は本当に姉妹みたいで微笑ましいです。
 というか、この作品のヒロイン達は何でここまでこぞって恋愛音痴なんでしょうね。基本的には収穫祭でのパイ合戦あたりからルート分岐し始めるんですけど、恋心を恋心と気づかずにオロオロと振り回されているヒロイン達は本当に可愛いです。まあここで一番可愛いのはレキですけどね。。。
 そして、基本的には牧歌的なヒロイン達の中で、最初は異端であったアルエが、徐々に村に溶け込んで穏やかになっていくのは見ていて微笑ましいです。この作品は、単にキャラ造詣が素晴らしいだけでなく、目でわかるくらい成長を遂げていくのがいいですよね。
 そして、作品の盛り上がりを影から支えている、ジン、ホメロ、アロンゾの男キャラ三人衆、彼らのおかげでストーリーがバラエティに富み、そして常に笑いが絶えない展開を提供してくれます。
 その上、普段は三枚目なのに、やるべきところではきっちり活躍してくれるので、物語が主人公とヒロインだけの狭い世界にならず、仲間たちの物語として確立する手助けをしていて、その点でも得がたい存在です。
 そんな感じで、活躍度や印象度から見ても、キャラとしては申し分ないですね。最高の仲間たちだと思います。

CG(16/20)

 まあ最初に断ったとおり、私はこの絵はあんまり好きではないです。
 基本的に立ち絵のデッサン、特に目の描き方が気に入らないんですよね。目はヒロインキャラの個性として描き分けられることが多いですが、この作品も例に漏れず、釣り目や垂れ目で性格の一端を表しているのですが、なんか形が極端すぎて違和感があります。
 だから、どちらかというと目を瞑っている絵のほうが好きですね。ミントのハテナ顔とかはすごく好きです。

 一枚絵も、まあ絵はそこまで好きではないですね。
 でも全体的なバランスは悪くないし、絵によって出来不出来が酷かったりすることはなくそれなりに安定はしているし、たま〜に好みの絵柄もあったりするので、最初に危惧していたほどの違和感はありませんでした。
 そうですね〜、ロコナの月光の下でのキスシーンとか、後ろからミントを抱きしめるシーンとかは好きですね。

 一番気に入ったのはSD絵。
 これはすごく可愛いですね、その上デフォルメの割にはしっかり感情表現が的確になされていて、使われる場面の選択も秀逸なので、出てくるたびにすごく和みました。アルエのピコピコ足をばたつかせているのとか、ミントが嫉妬にかられているときのとかが特に好きです。

 まあ総合して、やや甘めにしてこれくらいですかね。

BGM(17/20)

 なかなか印象に残る曲が多かったです。
 OP曲はまあそれなり、でしょうか。イメージ的にフロンティア(この場合、探索者、でいいのかな?)、というタイトルにマッチした感じで、旅情感がかなり感じられる曲です。カタハネのOPっぽいですが、曲そのものとしては普通ですねえ。
 ED曲は各ヒロインごとに用意されているという豪華な布陣。
 どれもこれも曲としてはイマイチですが、歌詞そのものがそのヒロインのストーリーをタイアップしているような形になるので、シナリオに共感した場合はしんみりと聞き入れます。私もロコナとミントのEDは好きになりましたし。

 BGMは、平和な田舎村での生活、というわりには意外とアップテンポの曲ばかりだった印象ですね。まあキャラの掛け合いのテンポとはよくマッチしていたと思いますが。
 テキストで喜怒哀楽の振り分けがしっかりされているのと同様に、BGMもかなりメリハリのあるラインナップですね。抜けて素晴らしい曲はないですが、『空気の上手い村』『溢れる歓喜』『悲しみの記憶』『揺るがぬ信念の刃』『共に歩む幸福』あたりがお気に入り、平均してレベルは高いと思います。

システム(8/10)

 演出はそれなりですかね。
 他社では類を見ないほどのドアップの立ち絵が複数ありますが、ちゃんと場面を選んで使っているので違和感はなく、逆にシナリオの盛り上がりを助長していていい印象。立ち絵の動きそのものが少ない分を、切り替えの速さで代用している感じです。
 まあ戦闘シーンとかのエフェクトはもう少し頑張れるかなという気もしますが、それがメインの作品でもないしこんなもんでしょう。どうでもいいけど、アルエの料理を食べたとき限定で雷が落ちるって。。。忠義の男アロンゾの本領が遺憾なく発揮されていましたね。

 システムも普通ですね。
 足回りは標準ですが、決して使いにくいことはなく快適です。そこそこシナリオが長いので、ボイスカットオフがあるのも個人的には助かりました。
 シナリオスキップはかなり便利・・・だと思うのですが、私の場合テキストが面白すぎたのでわざわざちゃんと読み返していたりして、ほとんど使いませんでした。でも、ジャンプのときにあらすじが出るのは親切ですね。

総合(88/100)

 総プレイ時間、22時間くらい。
 共通も個別も程よい長さで、その中にイベントがぎゅっと詰め込まれているので、体感的にはもっとさっさとクリアした印象があります。それだけ面白いってことですね。
 絵のせいで、総合点にするとさくらッセには及びませんが、間違いなく現時点で今年一番面白かった作品ですね。少なくとも、シナリオは今年はこれが基準になりそうです。
 タイトル通り、序盤から中盤にかけてはアルエによる幻の花の探索がメインですが、本当に探し出したかったのは自分の居場所、そういう二重の意味が込められた、本当に正統派のストーリーですので、基本的に人を選ばないと思いますし、自信を持って勧められる作品です。
posted by クローバー at 12:35| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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