2008年05月03日

11eyes〜罪と罰と贖いの少女〜

 面白そうな雰囲気が漂ってたし、実際体験版もかなりの出来だったので、迷わず購入。

シナリオ(22/30)

 一周目だけなら最強。。。
 
 主人公は、五年前に実の姉が自殺して以来、心に深い傷を負い未だに世を儚んで暮らしています。ですが、幼馴染のゆかをはじめ、周りの人間が何くれと気にかけてくれるのを感じて、いい加減歩き出さなきゃならない、と思い始めています。
 そんなある日、主人公とゆかは、突然漆黒の月が照らし出す赤い夜の世界に放り出されます。
 周りに人の気配はなく、そして悪意を持った謎の物体がひっきりなしに襲い来る不条理な場所に放り出され、生き延びようと必死にあがくうちに、やがて同じように赤い夜に取り込まれた仲間がいることがわかり、それと時を同じくして、主人公達の命を狙う黒い騎士達も現れ、主人公たちは力を合わせてこの赤い夜で生き残ることと、この世界の謎に挑む、というストーリーです。

 とりあえず、あからさまにファンタジーではあるのですが、プロットがしっかりしている上、美鈴という格好の解説役がいるので、世界観はつかみやすいです。
 美鈴が登場するまではやや面白みに欠けますが、美鈴登場によって反撃の手段が成り立ったところからかなり面白くなります。数日ごとに襲ってくる赤い夜と、平和な日常とのバランスもよく、賑やかしの雪子や賢久が混じってくる頃にはメンバーの仲間意識も強くなり、どんどんストーリーが盛り上がっていきます。
 この作品は、クロスビジョンモードという、主人公以外のキャラの視点でのエピソード鑑賞が出来るのですが、視点が開放される順序とかもよく出来ていて、物語の連続性を失わないままに、時にはしっかりと枠組みされたサイドエピソードへ流れていったりして、なかなかに多重性のある作りになっています。
 後半の謎解きに関しては、まあ伏線はあったにせよ、基本がファンタジーなので流石に読めないんですが、内容にはきちんと説得力がありますし、どんでん返しの緩急の付け方もなかなかなので、しっかり鬱になれます(笑)。
 まあ流石に最後だけはちょっとご都合主義に走りましたが、シナリオの熱中度はかなり高く、それでいて長さも存分にあるので相当楽しめました。

 ですが、問題は一周目しか楽しめない、ということなんですよね。
 いちおう攻略対象としてのヒロイン格が四人いるわけなんですが、ほとんど個別イベントというものがありません。。。
 それこそ99%共通ルートで、残り1%が個別イベント、しかも菊理を除く三人はエピローグもほぼ一緒で、Hシーン回収の意味合いしかなかったりします。唯一菊理だけは、最後の最後の謎の回収イベントがあったりしますが、ぶっちゃけこれはメインのシナリオのラストに更に輪をかけてご都合主義なオチなので、強いてラストに固定してまで見るほどのものでもないかなあ、と個人的には思います。
 なので、基本的には一周目に一番お気に入りのヒロインを攻略すべきだと思うのですが、ここにも微妙に問題が。
 というのも、このシナリオ、明らかにヒロインが等分に活躍するわけではないんですよ。はっきり言ってしまうと、ほとんど美鈴のためのシナリオのようなものです。戦闘での活躍は勿論のこと、日常シーンでもほぼ常に中心にいるので、かなり印象度が高い。まあそもそも、黒騎士に致命打を与えられるのが美鈴と栞しかいない時点で、明らかに贔屓されているわけですが。
 逆に不憫なくらい活躍しないのがゆか。一応メインヒロインのはずが、赤い夜では足手まとい、日常でも仲間と溶け込んで生まれ変わろうとしている主人公に不満を抱えて悶々としているだけで、なんとも痛々しいです。
 そして一番問題なのが雪子。メインははれないとはいえ、戦闘でも日常でも活躍度はそれなりなんですが、彼女を攻略しなかった場合のサイドエピソードのほうが面白い、という最大の難点があります。特に一周目は、ほぼ全ての人がきちんとクロスビジョンを見ると思うので、はっきり言ってお勧めできません。。。一周目しかシナリオは楽しめないのに、一周目にクリアするのに向かないっていうのは、ちょっとヒロインとしてどうなの?と思います。

 そもそもこのシナリオ、基礎設定の作りこみはしっかりしているくせに、恋愛要素の理由付けが適当すぎます。大したことしてないくせに、なんで誰も彼もいつの間にか主人公ラブになっているのだか。特に栞なんて、Hシーン入れるためだけの無理設定でしたしね。
 少なくともシナリオ的な面から互いが惹かれ合う可能性があるのは美鈴だけだと思うし、やっぱり最初に美鈴が正解だと思います。バッドエンドとかも結構壮絶ですしね。

 まあ後はクロスビジョンモードですが、確かに二周目以降サイドエピソードを見なくて済むのはいいんですけど、あそこまでメインが一本道だとその有難みがほとんど感じられません。攻略が煩雑になるので痛し痒しではありますが、クロスビジョンを選んだ順番でシナリオが多少分岐する、くらいの仕掛けがあっても良かったのでは、と思いました。
 そして11eyesってそういう意味か。。。

 ともあれ、一周目は凶悪に面白いものの、二周目以降の回収作業は結構だれます。しかもスキップも選択肢スキップも何気に動作が遅いので、無駄に時間がかかった挙句ただのHシーン回収にしかならないので、思い切って気に入ったヒロイン一人+一応菊理だけで終わらせてしまうのも手ですね。
 でもその場合雪子は選びにくいわけで、なんとも不親切な設計ではありますね。

キャラ(18/20)

 最終的には栞が一番好きかなあ。
 無口ロリという性格・外見とCVとがあいまって、某さくらッセの猫キャラを髣髴とさせるわけですが、どうも私の好みには合っているらしいです。そもそも出番が少なくて、活躍の場は終盤しかないんですが、かなりおいしいところを持っていくので印象度は高いですね。終盤の素直クールな雰囲気と一線を画した、戦闘シーンでの熱情に惚れました。万魔図書館、無駄にかっこいい。
 ゆかみたいなタイプは好きなんですが、明らかにシナリオとミスマッチでした。中盤までの鬱々とした感じもイマイチですし、終盤は暴走気味ですし、その魅力を発揮する場面があまりにも少なかったなあというのが正直なところで、期待していただけに残念でした。
 逆に美鈴は最初の印象よりかなり好感度アップですね。
 シナリオに恵まれているのは確かですが、実は登場キャラの中で一番感情の振れ幅が大きくて、強い部分や弱い部分、意地っ張りなところ、凛としたところや女の子らしいところなど、様々な顔を見せてくれて、すごく感情移入しやすいキャラでした。
 菊理はそりゃ可愛いですけど、やっぱり喋れないというのはマイナスですよね。喋れないことが更に引っ込み思案を促進させて、美鈴とは逆にほとんど感情の振れ幅を見せないので、主人公が感じるのと同様にどうにも本音が掴みづらいキャラでした。
 まあその分、ラストでの押しの強さにギャップ萌えできたりもするのですが、個人的にはそうなるまでの過程に不満があったせいで、存分には萌えきれませんでしたね。
 雪子は・・・個人的には苦手。賢久にあげます。。。
 賢久は、あの下品な笑い方はなんとなく好きですわ。意外と情に厚くて照れ屋だし、憎めないキャラです。それだけにあのラストは・・・。

 まあシナリオメインの作品ですし、期待していたキャラであまり萌えられなかったので、素材がいいのは認めつつこのくらいの点数で。

CG(17/20)

 ヒロインごとに原画家が違うということで、確かに当たり外れはありましたが、全体的にかなり高いレベルですね。
 特に立ち絵は全体的に安定していて好印象です。差分もかなり多い上、いくつかの立ち絵ではちょっとした仕草などもついてきて、魅力を存分に発揮しています。デフォルメっぽいのが少ないのも、昨今の作品では珍しいですね。
 ゆかの指ツンツンと泣き顔、菊理の文字を書く仕草と、髪がふわっとするモーション、美鈴の呆れ顔、栞の横目使いあたりが好きですね。

 一枚絵は、美鈴・ゆか・菊理はほぼ文句なし、栞がちょっと微妙、雪子は・・・ドンマイ。雪子は立ち絵との違和感がありすぎるんですよね、特に眼鏡を外しているときの目付き、あれはとんがりすぎでしょ。

BGM(20/20)

 個人的にはかなりの名曲揃いだと思いますね。まあ私がこういう戦闘系の音楽のほうが好きだという贔屓目もありますけど。

 OPの『lunatic tears』は超名曲。もう初めて聴いた時に痺れました。シナリオとかなりリンクしている歌詞ですし、特にBメロのせつなさと激しさが同居したような雰囲気、そこからサビで一気に熱情が爆発するようなイメージを醸し出すのがとっても好きです。
 暫定的に今年のボーカル曲第一位にランクされましたね。
 挿入歌の『忘却の剣』は、かかるシーンがずるいですね。曲としてはそこそこなんですが、あの切なさと物悲しさ大爆発のシーンにはぴったりマッチしています。
 EDの『穢れ亡き夢』は、EDにしては珍しくそこそこアップテンポで、とりあえず一つの大きな戦いは終わったものの、その戦いに込められた人たちの想いの重さを強く感じさせる、なかなか重厚な曲です。確かにEDっぽくはないけど、個人的にはかなり好きです。

 BGMもなかなかの名曲揃い。
 シナリオの性質上明るい曲はほとんどなく、切ない曲やバトルチックな曲が大半ですが、印象の強いのが多いです。『欠けた想いを胸に抱いたまま』『見よ、我が剣(こころ)はまだ折れぬ』『無限抱擁』『聖詩篇666〜the last testament〜』などが気に入りました。
 あと、二つほど気になることが。
 まずどうでもいいことですが、『赤き死のワルツ』はなんでワルツと名がついているくせに四拍子なのか。。。
 もう一つ、こっちはわりと重要で、一曲かなり好きなのにBGM鑑賞に入っていない曲がある。結構色々な場面で使われるけど、一番わかりやすいのは「ビブリオティカ・バンマギカ」のシーンで開幕から流れるところかね。まあたぶんOP曲のアレンジっぽいんですけど、かなりかっこいいのに勿体無いですね。

システム(9/10)

 演出はかなり頑張ってます。
 立ち絵の動き方がかなり細かく、その上スピーディーなのでかなり自然な感じです。まあ標準以上の出来ではあるかと。
 戦闘シーンでは、ほとんど対峙の絵がなくて、個々人が勝手に動いている印象ながらも、かなりスピード感があり、やや単調ながら迫力だけは充分に伝わってきます。赤い夜の雰囲気などもかなりしっかり作りこんであって、雰囲気の切り替えがとてもスムーズに出来ているかと。
 あと、地味ながら結構いいなと思ったのは、会話分のときと心象文のときで、画面方式をADV方式とVN方式で頻繁に切り替えているところ。これのおかげで、かなりシナリオにメリハリが感じられたと思います。
 
 システムは普通。
 即BADの選択肢が多いので、セーブ数が多い&使いやすいのは重宝します。クロスビジョンへの移行も簡単に出来るし、ボイスカットがないくらいで後はほとんど不備はないです。
 ただ、スキップが遅い。
 そして、共通がこれだけ長いので、前後への選択肢ジャンプもちゃんと完備してはいるのですが、これも結構進みが遅いです。それこそ、他社の神速スキップとさほど変わらないくらいだったりして、周回プレイのときにややうんざりしました。

総合(86/100)

 総プレイ時間、27〜8時間。
 とりあえず一周目だけで20時間はかかります。でも内容はかなり濃密なので、熱中してすいすい読めますから、印象よりはかなり時間かかっているかと。その代わり、周回プレイのときが逆にとても長く感じますが。。。
 一周しか楽しめない、という意味では、車輪を彷彿とさせますね。あと、シナリオがかなり偏っているので、キャラの魅力を生かし切れていないのがやや残念なところ。
 それでも、総合的にあらゆる面で高いレベルは維持していますし、買って損をすることだけはまずないと思います。純粋に面白い作品でした。
posted by クローバー at 17:05| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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