クル☆くるが是非にも欲しいので、予習をかねて購入。世間の評価の高い作品でもあるしね。
シナリオ(23/30)
愛すべき馬鹿。。。
主人公は幼い頃からヒーローになりたいと思い続けていて、昔祖父から譲り受けた錆び付いた刀を家法のごとく持ち歩くちょっと危ない人ですが、一本気で馬鹿でスケベで、まあ悪意の一片も感じさせない、正義のヒーローらしい性格をしていますので、委員長や林檎などを筆頭に、周りの人間からはそれなりに温かい目で見られています。
そんな中、主人公の住まう全寮制の学園で、夜な夜な女子だけが襲われるという事件が発生、それを解決しようと警邏を始めた主人公は、いきなりドラゴンと遭遇し(笑)、そしてそれと戦う魔女界からやってきたヒロイン、クルルと出会うのでした。その戦いのさなか、アクシデントで口付けを交わす二人、するとクルルの魔力が主人公の持つ刀に流れ込み、あらゆる魔法を跳ね返す刀として覚醒します。代わりに力を吸い取られてしまって弱体化したクルルと力を合わせ、なんとかモンスターの撃退に成功した二人は、学園の平和を乱す黒幕をとっちめることで意気投合、ここに最強のヒーロー&ヒロインが誕生するのでした。
二人は学園内のモンスターと戦う組織として魔女っ娘委員会を結成し、林檎や転校生のかれん、委員長などを仲間に加えて奮闘し、やがて黒幕の撃破に成功します。その勝利の余韻に酔いしれている最中、クルルが魔女界に戻る日が近づいてきて・・・、というのが序盤の展開ですね。
とにかく序盤の学園編は、ドタバタでノリノリです。
主人公がとにかく愚直なまでに馬鹿でスケベを貫き通すので、やや下ネタに偏っているのさえ気にならなければ、腹を抱えて笑えること請け合いですね。いちいち太字で出てくる英雄の誓い〜第○条〜とか、あまりにくだらなさすぎて、でもそれを馬鹿真面目にやってくれるから決して小馬鹿にする気分にはならないんですよね。
そんな序盤とは打って変わって、魔女界編はドシリアスです。
思いっきりネタバレしてしまうと、この作品はループ仕立てで、一周目の正義編が終わると真実編が登場し、そして真実編をクリアすると英雄編に入れるという流れになっていて、ぶっちゃけ正義編はクルルバッドエンド、真実編は委員長バッドエンドだったりします。。。
まあこのあたり、序盤のテンションと打って変わってしまうので、その落差にびっくりすることは請け合いですね。まあ別に、シナリオに落差があること自体は悪くないのですが、この作品の場合その緩急のつけ方が非常に強引というか、読み手が全く想像し得ない方向に一気に流れていくので、そのあたりは減点ですね。しかも、結構凄惨なシーンが多いですし。
なので、謎もほとんど明らかにならない正義編はそんなに面白くないです。ですが、学園編に巻き戻っての真実編あたりから急激に面白くなります。正義編終盤で、あからさまにキーキャラですよといわんばかりだった委員長&かれん側にスポットを当てた話で、まあおかげでクルル&林檎はほとんど出番がないんですが(笑)、物語の真相が明らかになるまでの流れは上手く出来ていますし、ラストも凄惨で救いがないのは確かですが、それでもあの絶望があったからこそ英雄編での覚醒があるわけですから、まあ避けては通れない道と割り切ることは出来るレベルだと思います。
そしてラストの英雄編、まあこれはぶっちゃけ強くてニューゲームです。。。
全てを知りえた上で、問題を解決するために魔女っ娘委員会の全ての力を結集させ、そして誰も犠牲にしないという超ご都合主義のシナリオですが、この英雄編に至る上での仕掛けはそれなりに面白いですし、あれだけヒロイックストーリーだったくせに勧善懲悪にはならず、全てをあるがままに受け入れる姿勢で事態の解決に当たるのはすごく好感が持てます。
何より、このルートだけは魔女界に入っても学園編のノリをある程度維持したまま進むので、それだけでも明るい未来が待っていると感じさせられていい感じです。最後も涙涙というほどではないですが、あらゆる問題に一応の解決をみて、大団円を迎えるので素直に感動できますしね。
もちろん悪い点も多々あります。
・・・まあはっきり言って、ループ仕立てということもあってシナリオの内容そのものは結構スカスカなんですよね。ただそれを、ひたすらノリでカバーしているのと、様々な角度から少しずつ謎を剥いでいくように見せることで水増ししているわけで。
後は謎の根源設定に関してですかね。ある意味このへんは「魔法だから」で全てが片付いている部分が多くて、だからこそ真面目に検証する気も起こらないんですが(笑)、なんでもかんでも勢いで押し切ればいいってものでもないし、そのへんもう少し構成が丁寧であればもっと良かったのになあと思います。
後は林檎とかれんの扱いが。。。
まあ確かにこのシナリオは、クルルと委員長のためのものですけどね。でもなんか、ヒロイン二人じゃ格好がつかないからとりあえず入れてみました、みたいな雑な扱いをされているのは残念です。特にかれんは後半のシナリオではかなりの重要キャラだけに勿体無い。
あと触れておかねばならないのはカードバトルですかね。
昨今はゲーム性の低いエロゲばかり巷に氾濫する中で、RPGでもSLGでもない普通のADV形式の中にこれだけのゲーム性を盛り込んでいるのはなかなかないので、その点だけでも評価に値しますね。
そしてカードバトルの内容も秀逸。
基本的にはジャンケンの要領に味付けした感じですが、チュートリアルがわかりやすいのでやり方そのものには誰でもすぐに慣れると思います。如何に相手に攻撃させずにこちらの攻撃を連続して当てるかがキモで、コンボが増えていくごとにダメージも増加するので、戦略が上手く嵌った時の爽快感はかなりのものですね。必勝パターンは気絶コンボで、これを計算して繋げられれば大抵の敵は楽勝できます。
確かに英雄編の最後のほうの敵はHPも高く、攻撃色のパターンも(味方含めて)かなりランダム入ってくるのでそれなりに苦戦しますが、それでもダメージを最小限に抑えつつ勝機を待つ戦法ならば、時間はかかっても負けることはないですね。個人的には、ラスボス戦よりも、ある程度コンボを繋がないとダメージを与えられないメイヴィス戦のほうが苦戦しました。
まあ中毒性、というほどまでは嵌りませんが、時間がかかる割にはシナリオの流れを阻害するような印象はほとんどなく、そのあたりもよく出来ていると思います。決め台詞とかもいちいちかっこいいしね。しかし、クリムゾンセイバーって一回しか見られなかったんだけど。。。
ついでに触れておくと、この作品結構エロにも力入ってます。
本番そのものはやたら少ないんですが、一回ごとの内容がやたら濃く、果てしなく連戦するので食傷気味になるほどです。ですけど、Hシーン発生がやたら序盤に偏っていて、英雄編に至っては一回もないのはちょっと残念ですね。特にエピローグで、クルル&委員長はもう一回くらいあってもおかしくないと思うのですが。
ともあれ、粗はかなりあるものの、全体的に見ると物凄く楽しめたなあというのが素直な印象なので、それなりには点数付けておこうと思います。ですが、万人に受け入れられるシナリオか、と言われたら首を捻らざるを得ないですね。
キャラ(20/20)
最初は委員長が一番好きで、僅差でクルルだったんですけど、真実編のあたりからかれん株が急激に上昇してきて、最終的にはクルルを抜き去り、委員長と甲乙付けがたいくらい好きになりました。魔女っ娘委員会のなかでは冷静なツッコミ役ながら、好きなものにはフラフラ引き寄せられていってしまう無邪気さもあり、でも序盤は全然感情が見えないので萌えきれなかったんですよね。
しかし、真実編でわかるかれんの歩んできた人生の苦しさと、そしてそれを委員長に感情あらわに吐露する場面でズギャーンとやられました。それから後は、表情もだいぶ豊かになって、基本的な部分は変わらずともどことなく温かみが感じられるキャラになるので、どんどん好きになっていきました。個人的には、クルル&委員長側の親子より、かれんの親子愛のほうが心に沁みましたね。
もちろん委員長も大好きです。というか、本名はないのか?いや、あるにはあるんですけど、和名というか・・・。
基本的に生真面目委員長で通っているのですが、そこはかとなく抜けているところやふにゃっとしている部分があり、そういう隙をいつも主人公達につつかれて振り回されているあたりが実に可愛く、それでも決してめげることなく時には反撃に出たりと、実は結構いい性格していて、挙句にはエロエロだったりとか、画面に登場するたびに色々な面を見せてくれるので、物凄く愛着の湧くキャラですね。
それでいて終盤でみせる心の弱さや、愛に殉じる強さなども見せてくれるので、それこそ魅力青天井といったところです。英雄編ラストでも、一番おいしいところをもっていきますしね。
クルルももちろん好きですが、彼女にはほとんど裏がない、基本ハイテンションキャラなので、かれんや委員長に比べると奥行きがないというか、最初の好きのレベルから動かなかったなあというのが素直な印象。シナリオ面でも、真実編〜英雄編でそれほど活躍しないというのもあって、上二人に水をあけられる結果になりました。それでも、普通レベルの作品ならトップクラスの愛らしさなんですけどね。
林檎もそれなりには可愛いですが、あんまり言葉の暴力系のキャラが好みでないのもあって、この豪華な布陣の中では埋もれてしまいましたね。というか、一恋のほうが攻略した・・・ンンッ。。。
CG(16/20)
とても可愛い絵柄だと思いますが、個人的には目の描き方(特に立ち絵の横向き)があまり好きになれませんでしたね。
でも立ち絵のバリエーションは豊富ですね。まあ顔から上しか変化しないといえばそれまでなんですが(笑)、それでもデフォルメチックな表情もかなり多く用意されていて、エフェクトとの組み合わせで膨大なパターンになるので、表情に見飽きることは全くありませんでした。上で文句付けた目の描き方も、正面向きのときは特に違和感はなく、キラキラとか炎とかの派手な演出とセットで、とても躍動感がありました。
一枚絵は、やや終盤に枚数が少ないことを除けば及第点でしょうか。
基本的に抜群に可愛いとまでは思えず、ややデッサンに粗も感じるのですが、時々クリティカルヒットするのがあったりするので侮れませんでした。とりあえず、変身シーン&バトルウェイト画面でのウインクルル、あれだけはガチ。あまりの可愛さに、あのクルルが消えるまではスキップせずに毎回見てましたからね。
クルルに限らず、バトルシーンや変身シーンでの絵は全体的に頑張っている印象があります。そしてHシーンもエロさが滲み出てくるような雰囲気があるのでOKなんですが、やっぱり一番駄目なのは日常シーンのCGですかね。特に引きの絵になると、雑さが際立っていた気がします。
BGM(17/20)
作風にそぐわった、ハイテンションな曲が多いです。
ボーカル曲は2曲。
OPの『I'll try my best!!』は明るく前向きな印象のいい曲なんですが、Bメロまでは好きなんですけどどうもサビの部分が急にチープになった印象が拭えず、あまり好きになれませんでした。
んで2ndOPの『Refrain』、ぶっちゃけこれバッドエンド専用曲だったりしますが(笑)、子を想う母の気持ちが存分につまった、切なさ溢れるバラードナンバーです。個人的にはこっちの曲のほうが好きですが、まあ抜群というほどではないですかね。
BGMは、学園編&バトル編のハイテンションな曲調と、魔女界編での重苦しさや荘厳な雰囲気を印象付ける曲調が二極端になっています。まあやっぱりどちらかと言えば、ハイテンション系のほうがいい曲が多かったですね。
バトル曲では『Aerial Rave』と『Assault Fight』が好きですね。全体的にアクションRPGをイメージしたような曲が多く、それだけに程よい緊迫感と高揚感があって、このバトルシステムにもよく合っていたと思います。
通常BGMでは、『Viva La!!魔女っ娘委員会!!』が何故か個人的に物凄く好きですね。なんというか、作品のイメージに一番よく合っている曲で、聴いていてとても清々しい気分になります。
その他では、『Fearless spilits』『Raising soul』『Refrain−dreamy』などが気に入りました。
システム(9/10)
演出は、発売時期を考えれば珠玉の出来。伊達にハイスペック要求しているわけではないですね。
とにかく日常シーンでは、キャラが画面が吹き出しが動く動く、もう一瞬たりともじっとしていない感じで、これでもかってくらいドタバタ感が伝わってきます。更にその中に太文字を使っての強調や、パロっぽい特殊画像を織り込んだりと、全く飽きることをさせてくれない怒涛の演出でしたね。このあたりも、後半のシリアスモードでは影を潜めてしまうのが勿体無いところ。
システムはイマイチかなあ。
基本的に周回プレイを要求しないとはいえ、スキップの遅さ&不便さはいただけないですね。アバンとか全く飛ばせませんし、演出効果もカットできないのでかなり鈍足です。まあそれ以外はそんなに気になるところはなかったんですけどね。
総合(85/100)
総プレイ時間20時間くらい。
バトルにどれくらい手こずるかでだいぶクリア時間に変化が出るとは思います。私は基本的にこういう数学的な戦術は得意なほうなのと、ラスボス戦でコンボが完璧に決まったのもあって結構サラッと終われました。
まあ基本馬鹿ゲーでいいと思うんですが、中途半端に凄惨なシリアスが紛れ込んでくるので、そのへんは覚悟しておいたほうがいいと思います。ですが、エロゲとして求められるあらゆるニーズを、ほとんど水準以上のレベルでクリアしている稀有な作品ではあるので、かなりお勧めできる作品ではありますね。
2008年06月16日
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