プリッち買ったらついてきた。。。
シナリオ(24/30)
まさしくハートウォーミングストーリー。
主人公は、実家がひよこ館というケーキ屋を営んでおり、幼い頃からパティシエとしての修行をしていましたが、ちょっとした理由から父親と仲違いしてしばらく家元から離れていました。しかし、ある日突然父親が倒れたことによって、家業を支えるためにやむなく帰郷します。
幼馴染のかなでに温かく迎えられ、先輩パティシエのみちるにはやや冷たい視線で迎えられ(笑)、それでもともかくひよこ館を建て直すために一生懸命働く決意をする主人公。ところがその日の夕方、店の裏手で猫の尻尾を踏んでしまった主人公は、ちょうどその場に居合わせた自称猫魔法使い(笑)のミオに見咎められ、魔法で夜な夜な猫に変身する体質に変えられてしまいます。
すぐにミオは勘違いに気づき謝罪しますが、どうにも魔法そのものは解除できない模様。かくして、お詫びの代わりに店で働くことになったミオを加え、昼はパティシエ、夜は猫という、主人公の波乱万丈の日々が始まり、やがてそれに妹の茉理、そして何かとひよこ館をライバル視する向かいの喫茶店のオーナーの娘である冬華などを加え、より一層ドタバタの毎日が繰り広げられるのでした。
とまあ、導入はこんな感じですね。
好感度選択は単純なマップ選択方式に加えて若干の選択肢といったところで、難易度は普通かやや低目といったところですかね。
とにかく日常のドタバタシーンがとても面白く、やたら謎言語や謎展開が乱舞する割には違和感なく受け入れられます。まあもちろん、こんなケーキ屋実際にあったら勘弁ですが(笑)、特に茉理とミオの巻き起こす問題はバラエティに富んでおり、実に笑わせてもらいました。
シナリオもかなりいい感じです。
基本的にどのシナリオも、これといって大変な事件は起こらないのですが(せいぜいお向かいさんとの対決くらいで)、概ね心理描写や状況描写が丁寧で、なおかつ主人公が猫になるという特性を生かして、普通では聞けないヒロイン達の本音を上手いタイミングで引き出していて、物語の作り方として好感が持てます。
個人的に頭一つ抜けていると思ったのが冬華シナリオ。
冬華の不器用な優しさが、序盤から中盤にかけては悪い目ばかりを引いていて、父親に認められたいという想いと、ひよこ館のケーキ作りの姿勢に対する感銘の間でふらふらしていて、見ていて痛々しいくらいですが、冬華(というか向かいの店)の魂胆に薄々気づきながらも、常に冬華に悪感情を向けずに自分のケーキに対する想いを語る主人公がなかなか格好いいので救われますし、その主人公にだんだん惹かれていく冬華がとても自然に見えました。
そして終盤、冬華が見せる不器用な優しさが初めてプラスに作用し、そしてそれに追随する形で見せる主人公の冬華に対する思いやりがまた素晴らしく、かなり感動させられましたね。かなり名シナリオだと思います。
その他では、みちるとかなではそこそこですね。
みちるシナリオはちょっと対決ムードに入るのが安直過ぎたのと、主人公の猫化があまり意味を成していないのが減点ですが、対決の決着からラストにかけてのシーンはかなり好きです。自分の真意を言葉でなく行動で伝えるため、そして後顧の憂いをなくさせてあげるため、主人公が徹底して取った行動は、痛々しいながらもその本気度がヒシヒシと伝わってきてよかったですよ。
かなではまあ、幼馴染シナリオとしてはありがちなすれ違いシナリオですが、かなでの待ちぼうけのシーンとあの告白のシーンはかなり印象に強いですね。んで、そのシーンでなんとなく気づいてるんじゃないかな〜的言動があったのでどうかなと思っていたら、ラストの台詞でやっぱりわかっていたみたいだと確認できて、尚更切なさが増しましたね。あとかなでは、主人公が他ルートに入ったときにふと漏らす一言が切なすぎて泣けました。。。
私的にはミオシナリオはイマイチ。
他ルートでは猫化の魔法が解ける要因として、ヒロインとの真剣な恋愛がキーになっているのだから、このシナリオでもそうかと思いきや、ここだけ設定が違うのにちょっと違和感がありました。まあその辺は、一応魔法をかけた当事者だからとか言い逃れられますが、ラストの別れから再会までの流れ、あれはちょっとご都合主義過ぎるでしょう・・・。それで何とか出来るなら、最初からそんな悲壮感漂わせなくてもいいのに、とか思ってしまいます。シナリオの構成そのものはかなりの出来ですし、二人の惹かれあう過程とかもかなり綿密に書いていていい話なんですが、流石にここまで単純な奇跡を見せられるとね。
そもそも、作品の根底としての猫化にほとんど明確な理由がなかったことが失敗ともいえますね。他のシナリオでも、その辺の解決はかなり曖昧な感じで終始していますし、ここがもう少し論理的にきちっと嵌っていれば、もっと素晴らしいシナリオになったと思います。
そして、茉理と亜里沙シナリオがまともにないのに全米が泣いた。。。
喫茶店を舞台にした作品というのは今でこそ数多いですが、当時では結構レアな企画だったはずで、その上更に猫化などというアクションを加えて、ともすれば色物に落ちかねない設定をここまで上手く消化している時点である意味成功なんですが、更にその内容までしっかりしていることで、プレイしていてほとんど嫌悪感のない、優しい作品に仕上がっていますね。かなりの掘り出し物でした。
キャラ(20/20)
かなでが抜群に可愛いですね。
良妻賢母型でちょっと天然が入っている、まあよくいるタイプの幼馴染ではあるのですが、基本的に主人公に対する想いを、あからさまにはせずとも特に隠そうともせず、常に自然体でありのままの自分で勝負しているのがとても好印象です。基本的にやきもち焼きではなく、常に主人公の幸せを一番に考えてくれるタイプなので、他ルートのときのチラッと漏れる悲しみの告白が心に沁みること沁みること。
次点は冬華ですかね。
ツンデレ、というほどツンツンはしていないと思いますが、どうしても心に後ろめたさがあるせいか素直にはなりきれない序盤、徐々に心を開きながらもまだ一線があり、でも猫のときにチラッと不器用な優しさが垣間見える中盤、そして自分の気持ちに素直になることで、その優しさが全面的に押し出される終盤と、それぞれ魅力のあるヒロインの顔を見せてくれます。本質的には素直で可愛い女の子なので、隠されていた顔が見えてくるたびにいちいち萌えさせてくれます。
非攻略なのが何とも惜しいのが亜里沙と茉理。
まあ茉理は流石に実妹だから自重するにしても、亜里沙は中途半端にシナリオはあるのにくっつききらないなんて生殺しもいいところです。。。二人とも実にいいキャラなのになあ・・・。
ミオは勿論可愛いですが、恋愛対象としては逆にイマイチ。萌えるは萌えるんですが、どうにも娘溺愛モードスイッチのほうが入ってしまったようで、恋人モードは最後の展開の印象も含めて好きになれませんでした。
みちるもかなりいいキャラなんですがね、この破壊力の高いメンバーの中では一歩落ちますか。一見クールに見えて、実は物凄い照れ屋やところとかはかなり好きです。
CG(16/20)
まあ可愛いんですが、なんかカクカクしている絵ですよね。。。
立ち絵はそれなりに差分もあり、活発に動いている雰囲気がよく出ているポーズが多くて、作品の明るい雰囲気によく映えています。なんか、失敗して「ごめんなさ〜い」って感じのポーズが誰も彼もやたら可愛かったイメージ。
一枚絵もまずまず。
かなでの朝の目覚ましとか、やたらと顔が潰れている印象の絵も多いですが、全体的に見れば可愛げは全く損なっていないのでまあいいかな、と。あと、個人的にはHシーンのボディバランスがやたら上手いなあと思いました。
BGM(17/20)
明るく、アットホームなイメージの曲が多いです。ドタバタしている割にはハイテンポの曲が少ないのが意外と言えば意外ですが、むしろそれが微笑ましさを生み出しているのかなと。
ボーカル曲は3曲。
OPの『放課後のパティシエ』はいい曲ですね。最初聞いたときはちょっとサビが弱いかなとも思いましたが、聞きこんでいくうちに気にならなくなりました。ティータイムを待ち焦がれたお客様たちの、ケーキを口にしての笑顔が浮かんでくるような、いわば「ケーキの魔法」のイメージがしっくりくる曲です。
挿入歌の『笑顔のメリークリスマス』もかなり名曲。一昔前のポップスみたいなメロディラインで、特にサビの部分のスキップとともに歌い上げられるような、クリスマスの喜びの躍動感が滲み出ている部分がかなり好きです。
EDの『君と奏でる季節』もまたなかなかの曲で、この作品はボーカル曲が全てそこそこ当たりという珍しい現象が起きています。この曲はとても幸せな未来を感じさせますが、作品の雰囲気を踏まえてかしっとりとはなりすぎずに明るく歌い切っているのが好印象ですね。
BGMは、ボーカルに比べると弱いですがまずまずですかね。
特に『冬化粧の散歩道』は好きです。特に普段のいつでも周りに人がいるドタバタな雰囲気を一歩離れて、ちょっと一人でしっとりと町並みを眺めているときとかの雰囲気にぴったりで、いいアクセントになっていると思います。
後は『君と奏でる季節〜on piano〜』『届かぬ想い』『雪の幻想』『こみかる・もーど』などが好きです。
システム(8/10)
演出はかなりの出来(発売当時にしては、ですが)。
キャラがよく動く割には画面の切り替えもスムーズだし、雪の演出とかも自然で綺麗だし、OPムービーの出来もかなりいいですからね、特に文句はないです。
システムはやや不良。
とりあえずバックログでの音声再生がないのはいただけないですね。これだけの萌えボイス乱発しておいて、もう一回聞こうと思っても出来ないってのはかなり残酷です。
後はスキップがかなり遅いのと、開始時に必ずウインドウモードに戻るのも面倒。
それ以外はまあ問題ないレベルかと。
総合(85/100)
総プレイ時間、18時間くらい。
うん、これは個人的には掘り出し物でしたね。システム以外はとても2003年発売とは思えないクオリティですし、キャラもかなりツボにはまったし、シナリオも平均以上の出来で、欠点の少ないエロゲであったと思います。中古でプリッちと同梱されて3000円しないので、コストパフォーマンスとしては相当いいですね。
安心してお勧めできる一作でした。
2008年06月28日
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