2008年11月19日

コンチェルトノート

 体験版はかなり面白かったのと、評判がかなりいいので駆け込みで購入。

シナリオ(26/30)

 因果が奏でるシンフォニー。

 人より運が悪い。
 幼い頃に親を失い、自分の力だけを頼りに必死で生きてきた主人公ですが、生来の運の悪さが様々な形で阻害し、日々が苦労の連続。道を歩けば物を落とし、他人に絡まれ、落とし穴に踏み込んで怪我をし、他人と触れ合えば周りの人間をも不幸に巻き込み、いつしか異端と迫害され、やがて無視される。そんな生活を続けてきた主人公ですが、持ち前の負けず嫌いと生まれ持った高い能力のおかげでなんとか生きてきました。
 しかし、ある日チンピラに絡まれていた女生徒と子供を助けたときに、チンピラたちと一緒に橋の上から川に落ち、“運悪く”感染症を併発して三ヶ月の入院。そのせいで奨学金も打ち切られ、生活費も底をつき、これ以上の就学は不可能になったところに救いの手が差し伸べられます。
 主人公が昔父親と暮らしていた街、そこで知り合い、友情を育んだ幼馴染の莉都が、どこからか主人公の窮状を知り、自分の運営する学校へと招いてくれたのです。かくして主人公は懐かしの街に降り立ち、そして莉都とも10年来の再会を果たすのでした。
 10年の間に莉都を取り巻く環境も大きく変化し、元々大企業の令嬢であった莉都は内紛を起こして実家と縁を切り、生まれついた類稀なる能力を使って実家と企業紛争中。主人公が編入する学園も、そのあおりで莉都の持ち物となった場所で、主人公の編入もある程度莉都が権力を使って横紙破りをした部分もあり、しかしそんな立場と状況でも昔と何なら変わることなく打ち解けることの出来た二人ですが、新生活に踏み出そうとした主人公に新たに問題が降りかかります。幽霊とも知れない、小さなお人形のような少女。他者の目に見えないその少女は、主人公に告げます。

 「お前、あと十日ばかりで死ぬぞ―――。」

 その言葉を聞いた翌日、学園の案内中に突然寄りかかった屋上のフェンスが壊れ墜落する主人公。ここは咄嗟の莉都の機転と、“幸運”にも吹いた突風のおかげで軽い怪我程度で済んだのですが、その事故をきっかけに主人公と莉都にははっきりと小さな少女の姿が見えるようになります。
 主人公に憑いているその少女は運を司る精霊・幸御魂であり、主人公たちを助けたのもまたその少女でした。しかし、主人公を救うために幸運を前倒しで使ってしまったため、その分の幸運を回収するまでは二人には数知れない不幸が襲うと警告されます。
 その言葉を裏付けるように、次の日から主人公と莉都に降りかかる様々な不運。その結果を見て、聡明かつ能動的な二人は幸御魂である少女、タマの存在をあっさり受け入れ、問題の解決に乗り出すのですが、その騒動はやがて周囲の人間、莉都のメイドである小夜璃、クラスメイトで主人公の元クラスメイトでもある和奏、同じく不幸体質の少女白雪、型破りな生徒会長の星華などをも巻き込んで発展していくのでした。

 とまあ、序盤の展開はこんな感じですね。
 前置きにしてはかなり長くなりましたが、この作品の場合前提条件がはっきりわかっていないと物語の整合性や繋がりを理解するのが難しいのでね大雑把でも一通り書いておくべきかなと。
 基本的にシナリオは、選択肢によるオーソドックスな分岐型ADVですが、フローチャートを併用しているのでイベントごとの区切りや繋がりがわかりやすくなっています。最初はほとんどのルートへの分岐が閉ざされているのですが、クリア人数が増えたり、シナリオの途中でアイテムを手に入れることによってロックが解除され、最終(莉都)シナリオへと繋がっていく流れです。自分で検証したわけではないので正確にはわかりませんが、おそらく莉都以外の全てのルートを開放しないと、莉都シナリオの真・EDには到達できない仕組みになっているはずです(たぶん途中までや、ノーマルエンドなら到達可能だと思いますが)。

 基本的なシナリオ展開は、主人公たちに降りかかるであろう災難を回避するために、幸御魂であるタマの運を操作する能力と、主人公と深い絆が結ばれた人でないとタマの姿は見えないという状況を上手く使って幸運を回収するために、様々な事件を解決してその犯人から運を回収したり、あるいは自分達に関心を持たせ繋がりをつくることで浅く広く運を回収したり、という感じです。
 そのシステムについてはここで詳述しても長くなるだけなので省きますが、タマの存在はとても便利ではありながら、半面制約もかなり多くて、その理に乗っ取った上で主人公たちは行動しているので、その元々の不幸体質も手伝ってかご都合主義的に解決することはほとんどなく、見せた能力に見合った結果が示されるあたりはしっかり書かれているなという印象です。
 その上で、キャラもきちんと個性が際立っているので、特に狙ったような笑いどころを作らずとも、人と人とのつながりのなかできちんと笑いとシリアスのバランスが取れており(特に莉都絡みになると顕著)、またきちんと筋道の通った話になっているので、テキストはかなり読みやすく、また面白いです。まあかなり理屈っぽい部分もあるので、このあたりは多少好き嫌いは出るかもしれませんがね。

 莉都以外のシナリオについては、物語の本筋からするとノーマルエンド的な解決にしかなっていないのですが、その時点ではそれは理解できない仕組みになっています。ですので、単純に主人公とヒロインのつながりをメインにした流れになっており、不幸問題を解決する傍らで、それぞれのヒロインたちが持つ問題も少しずつあきらかになっていき・・・、というごく普通のストーリーです。
 ですが、それぞれのシナリオにもきちんと見せ場は用意されており、その部分はかなり熱い展開が繰り広げられるので、読んでいてかなり面白かったですね。特に和奏シナリオのソフト対決や、星華シナリオの異種格闘技対決の場面などは白熱の展開でした。どうにも、話し合って駄目なら最後はバトルではっきり白黒つける、という傾向に偏りがちですが、闘いに委託された想いがしっかり滲み出ているテキストなので、すんなり乗れる印象ですね。
 んで、個人的には白雪シナリオが一番面白かったです。白雪が抱える問題よりも、主人公の想いが先に来る構成と、ちょっと切ないながらも二人の結びつきが強く感じられるラストの余韻がいいですね。他のシナリオは途中の展開はともかく、ラストが少し弱かったのですが、このシナリオだけはしっかり完結している印象です。あと、さり気にバッドエンドも好き。

 で、本丸の莉都シナリオ。
 正にこのシナリオだけが、コンチェルトノートの表題に相応しい、人と人との絆を強く意識付けられるシナリオであり、また作品の根底に流れる問題の大元をきっちり解決するシナリオとなっています。
 そして、その出来は秀逸の一言。
 莉都シナリオに入るや否やの急展開から紡がれる構成はとてもわかりやすいし、見せ場もふんだんにあって緩急がはっきりしており、途中でだれることが全くありません。その上で、共通や他シナリオでの伏線は全てしっかりと回収し、タマの存在と能力の本質をもしっかりと定義づけ、そしてタマの能力を最大限に生かすことで解決にもっていく流れ、そして全てが集約されたラストシーン、実に隙のない名シナリオです。
 ここまでくると、何故この作品がわざわざフローチャートシステムを採用しているか、そしてアイテム獲得のシステムに何の意味があるかが明確になり、あらためて作品全体のデザインの方向性が一貫していることがわかります。更に、作品内の全ての人と人とのつながりが、きれいに因果関係で成立していることに、感銘を受けること間違いなしです。
 その中でもやはり中心になるのは主人公と莉都とのつながりであり、それが表向きの顔だとすると、主人公とタマとのつながりが物語の裏を彩る顔で、その両面が最大限に上手く噛み合ったのが莉都シナリオ、という位置づけになりますね。

 まあもちろん、作り物ですから多少は強引さが見える部分もありますし、タマの知覚しない因果に含まれるIFではこの街はどうなっていたのだろうとか疑問も残らなくはないですが、普通に面白く、そして感動できる素敵なシナリオでした。

キャラ(20/20)

 世間で言われているようにまさしく莉都ゲーなのは間違いないんですけど、作中の莉都が莉都らしくある主因は主人公の存在であり、また二人が噛み合い、切磋琢磨することでどんどんポテンシャルが引き出されていくような話の流れから、正確には莉都と主人公のゲームというべきなんでしょうね。
 だから、ではないでしょうが、この作品の主人公は素晴らしい。理不尽な体質を背負いながらも前向きに強く生きる姿勢は好感が持てますし、何より自分の気持ちに嘘をつかないところがいいです。基本的にADVゲームが主人公視点で進む限り、主人公がウダウダしているゲームはテキストのテンポも滞りがちですが、彼の場合思い立ったら即実行で、しかもそれが不幸体質を背負うが故の生きる知恵という形で設定付けられているのがまた上手いところです。

 そしてそれ以上に素晴らしいのが莉都の設定付け。
 頭の回転が速く合理主義的で、しかし人間関係は苦手、というところまでならそれなりにありがちな設定ですが、そのバックボーンをしっかり理由付けた上で、そこから脱却した理由に主人公との思い出を据えてくるのが心憎いところ。ですので、一回プレイしたあとに再プレイすると結構印象が変わります。
 にしても、莉都シナリオラストでのタマの台詞、「ああ、我らには遠すぎる。」が個人的にはものすごく感傷を呼び起こしましたね。主人公を表と裏から支えたきた二人が、最後に持った共通認識、そこにタマ、そして莉都にまで連なる存在の悲しみの全てが込められています。

 とまあ堅い話はここまでで、単純に一番可愛いのはぶっちぎりで白雪。。。主人公が、なんだこの可愛らしい生き物、とか思うときに、激しく同意、とか思ってしまうのはもはや条件反射。シナリオが良かったのもありますが、一番主人公と共感を呼び寄せやすいキャラだったとも思いますね。
 もろちんいつも明るく元気で、個別での語り回しがちょっぴり面白い和奏や、姉御肌で気風がよく、それでも時に可愛らしい星華、優秀なメイドとお茶目なお姉さんの両面を併せ持つ小夜璃など、他のヒロインもかなり魅力的ですし、男性女性限らずサブキャラもそれぞれしっかり見せ場があり魅力的です。個人的には終盤の深弥先生の活躍が一番印象深いですね。

 そして最後にタマ。
 作品のマスコットであり、根幹をなすキャラでもあり、途中までは位置づけの難しいキャラなんですけど、莉都シナリオのラストになってようやく垣間見えるタマの本心には感涙を覚えざるを得ません。生前の想いをこれ以上ない形で清算し、そしてその想いを胸に消えていくタマは、きっと幸せだったでしょう。

CG(15/20)

 残念ながら、この作品の一番の欠点となるのがここかなと。
 基本的に立ち絵のバランスと構図が崩れてます。まだ釣り目系のキャラ(莉都・星華)あたりはまともなんですけど、垂れ目系の白雪や和奏などは、特に向きを変えたときの崩れ方がかなり酷いです。白雪の上目遣いとか、駄目だしポーズの和奏とか、かなりヘン。
 まあバリエーションはそこそこありますし、莉都だけはまずまずの出来なので、壊滅的に駄目ってわけじゃないですが、やっぱりイマイチですね・・・。

 一枚絵も出来・不出来の差が激しいです。時々別人がいます。。。
 基本的にイメージの悪い絵は、大抵輪郭がおかしいですね。そのせいで表情のバランスも崩れてしまっているのが多いです。
 でも可愛い絵もそこそこあるんですよね。
 個人的に一番好きなのは、幼少時莉都。特に主人公に手を伸ばすシーンの笑顔は秀逸。あれを最後の最後で持ってくるのはずるいですね。あれは間違いなく莉都が主人公との出会いによって得た笑顔であり、それが起こり得ることの奇跡を語られた直後でしたから、より一層輝いて見えます。それには及びませんが、一生のお願いのシーンの顔もいいですね。
 後は個別に列挙すると、莉都は屋上からのダイブ、誘拐のシーン。
 和奏は黒セーラーで佇むシーンと、二回目Hのバック。
 白雪はお風呂での遭遇とおんぶ、屋上での再会、そして一番好きなのが手紙のシーン。莉都の台詞じゃないけど、あれはまさしく恋する顔。。。
 小夜璃は出会いの場面と、EDのシーン。
 星華はお茶漬けのシーンと学校での出会いのシーン、あとは文化祭の司会のシーン。いやこれは、星華というより上杉とクラウスだけど。。。
 その他では、タマのかんざしを抱くシーンに別れの場面、そして主人公の泣き笑いあたりですね。

 ともかく、決して悪くないのも多いながら、駄目なのは本当に駄目なのがこれ以上評価を付けられない原因ですね。ちなみにシナリオ的にもCG的にも、莉都のHシーンはなかったことにしたいのは私だけでしょうか?

BGM(18/20)

 弦楽器を基調とした、印象的なBGMが多かったですね。
 ボーカル曲は3曲。
 OPの『コンチェルトノート』は明るくテンポのいい曲で、一つ間違えばくらい方向に落ち込んでいきそうなシナリオ展開ながら、主人公達の前向きさがそれを救っている内容と上手く合致していますね。曲そのものはまずまず、サビ後半がちょっと好きです。
 通常EDの『あの頃のように』は、しっとりとした余韻のある曲ですね。シナリオを全て消化してから聴くと、主人公をどんなときでも見守るタマ、という構図が見えてきますが、これが流れる時点ではそれに気付けないというのが憎い仕掛け。
 ラストシーンの挿入歌『輝いたまま』は、もうこれはかかるシーンが反則。。。曲そのものにはさほど技巧も凝らしていない、ストレートなバラードなんですが、補正がかかるとやたら名曲に聞こえる罠。私的にはこんにゃくの『pieces』と同じようなイメージですね。サビをひっそり支える弦楽器の響きが素晴らしいです。

 BGMもかなり秀逸。雰囲気のある曲が多いですね。
 いちばん好きなのは『孤高の少女』。基本的には莉都のメインテーマに近いですが、他ヒロインでも、誰にも言えない悩みをさらけ出すシーンなどで流用されています。この重々しさと切なさを兼ね備えたメロディが実にお気に入りです。
 メインテーマの『Concert note main theme』もかなりいい曲ですね。更に、盛り上がるシーンなどで使われたオーケストラバージョンはもっと好きです。
 その他では、『月光館−月明かりが差し込んで−』『みんなでツッコミマーチ』『仲間がいるなら』『二人の気持ち』『空虚な時間』なとが気に入りました。
 全体的に、質・量とも安定していましたね。

システム(8/10)

 演出はそこそこですね。
 キャラや画面の動かし方などは最近の標準レベルにはあるでしょうし、アイコンの使い方がシャープでよろしい。個人的にはタマの背景が感情でコロコロ変わるのが面白かったです。
 システムはかなりいいですね。
 なんだかんだいってフローチャートはゲーム性の意味合いでも便利ですし(おかげでほとんどセーブとか使いませんでしたが)、コンフィグも充実、とまではいかないにせよ、平均には達していたと思いますし、レスポンスの良さがいいですね。カーソル追尾機能とかは地味に便利。

総合(87/100)

 総プレイ時間、18時間くらい。
 ただ、私は最初から最後まで攻略頼みでプレイしたので、自力だともっと時間がかかると思います。結構分岐条件とか複雑だと思いますしね。
 そこそこボリュームがあるにも拘らず、イベントが次々に押し寄せてくるのでほとんど中だるみがなく、それでいて書き足りない部分もほとんどなくしっかり完結していて、見せ場もしっかり充実しているという、ノベルゲーかくあるべきといいたくなるくらい良質なシナリオです。絵さえ良ければSクラスも見えたのに、実に勿体無い。
posted by クローバー at 07:26| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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