2009年01月26日

夜明け前より瑠璃色な

 ぶっちゃけ絵買いですね。買った時はこれがエロゲ3本目とかの初々しい(笑)時期だったので、今より絵買いに耐性がなかったです。。。

シナリオ(21/30)

 テーマ性と勢いは買います。

 かつて、月と地球の間で大きな戦争がありました。
 その戦争は、お互いの文明を宇宙世紀以前に衰退させるほどの人的被害を両国家にもたらし、今ではかなり復興が成し遂げられてきたものの、依然として地球と月は大規模な交流を取り戻していない、そんな時代のお話です。
 主人公は早くに両親を亡くし、今では義理の妹の麻衣と、従姉妹で月学の権威であり、今は月博物館の館長代理を務めているさやかとの三人暮らし。両親やさやかの影響で自身も月学に興味を持っており、やがては月関連の仕事につきたいと思いつつ、隣の家のレストランで隣家の住人でもある幼馴染の菜月とともにアルバイトをしながら過ごす日々。
 
 そんなある日、さやかが突然、明日からホームステイを受け入れることにしたと宣言します。

 「ホームステイしにくるのは・・・、月の国のお姫様なの。」

 今では細々とした交流しかない、神秘に包まれた月の王国からの突然の来訪者に主人公と麻衣は驚愕するものの、月の国のお姫様であるフィーナと、そのお付きのメイドであるミアともすぐに隣家ぐるみで仲良くなることができ、今までよりちょっと賑やかで目新しい日々がスタートするのでした。

 まあ導入はこんな感じで、あとは普通に好感度選択を積み重ねていくパターンですね。ただし、一周目に関してはフィーナルート固定で、フィーナクリア後に他の四人がルート解放、そしてその四人をクリアすると謎の少女・リースルートが解放され、そして最後にフィーナメインルート(夜明け前より瑠璃色な)解放という独特の流れになっています。
 ぶっちゃけ、フィーナルートと最終ルートは完全に一繋がりの話なので、何故に一周目にフィーナが固定なのかがイマイチわからんのですが、まあシナリオのネタバレの関係上リースを最後にしなければならないのは納得できるので、だったらあえて最初に持ってきて、このシナリオは基本的にフィーナシナリオのための構成であるとアピールしたかったのでしょうかね。
 テキストは平凡ながら、暖かい空気に包まれた日常と、キャラ造詣の素晴らしさのおかげでそれなりに楽しめます。やや一つ一つのエピソードのぶつ切り感が否めませんが、ダラダラ続くよりはいいのかなと思ったり思わなかったり。

 シナリオに関しては、フィーナシナリオは全部まとめて後回しにするとして、まず真ん中四人からにしますが、良くも悪くも平凡、といった印象です。
 この作品全体を通してのテーマのひとつが「家族」になりますが、どのシナリオもある程度そこを意識した構成になっていると思います。特にさやかシナリオと麻衣シナリオは、それぞれが今の家族環境を作り上げることに努力を積み重ねてきた経緯もあって、その形を崩すことに恐怖に近い感情を持っていて、それがシナリオの根幹となっています。
  ・・・まあ正直、麻衣シナリオでのさやかは誉められたものじゃないんですし、さやかシナリオの主人公もちょっとどこかおかしいので、この二つはシナリオとしてはあんまり評価できませんね。まあ家族のことを思うがあまり、疎外感に耐えられないという感情はわからないでもないんですが、最年少の麻衣が比較的大人な対応なだけに目立ってしまう部分がありまして・・・。
 
 ミアシナリオのテーマは、受け継がれてきたもの、でしょうか。普段は自信がなさげにしていながらも、自分の立場と仕事に誇りを持っているミアの根底にあるもの、それは親の代から受けづいてきた大切な想いであり、それがシナリオの終盤で上手く機能していた印象です。またそれに絡めて、主人公との立場の違う恋模様の問題も上手く解決の方向に導いており、相対的に見てメインシナリオを除けば一番良くできているかなと思います。
 菜月シナリオはややテーマ性とはそぐわない独自の内容になっていましたね。前半は実に幼馴染シナリオっぽいじれったさと、お約束の展開にやきもきしてしまうのですが、二人が恋心を自覚してからはなかなか面白いです。
 幼い頃からずっと側にいた関係、それが恋人関係に変わった途端にちらつく避け得ない別離、そのあたりの感情の複雑さが上手く書けていますし、後半の展開もお約束ながら、テンポよく進展していくのできつい印象はないですね(まあフィーナの後なら・・・というのもありますけど)。
 リースシナリオに関しては、完全に最終シナリオの伏線含みでの展開なので評価しづらい部分はありますけど、生まれたときから義務を果たすことだけが求められてきたリースという存在が、朝霧家の中に入って徐々に家族というものの価値を知っていく過程は読んでいてとても和みますね。

 んでメインのフィーナシナリオですが、前半は当然ながら、身分違いの恋に対してどう周りを納得させるか、という点がメインになってきます。カレンの突きつけたきつい(と思える)要求に対して、真摯に、誠実に立ち向かっていく二人の姿は痛々しいながらも清々しさがあり、そして二人が自分自身であることを曲げずに正々堂々と振舞うさまはとても好感が持てます。
 まあオチは、カレンのあの独特の言い回しを聞いたときからそうじゃないかとは思っていましたが、それにしてもあのシーンのカレンのかっこ良さは尋常じゃないですね。まあここまでなら良シナリオレベルの出来です。
 そして後半、夜明け前より瑠璃色なシナリオに入ってから展開が急変します。
 フィーナが地球へ留学にきた目的のひとつに、前女王であった母親の挫折した事業を受け継ぎたい、そしてその行動がきっかけで失脚に追い込まれた母親の名誉を回復したい、というものがあり、主人公との関係に対する問題が一段落ついたことで、本格的にその調査をしたいと主人公に伝えます。
 最初は快諾した主人公ですが、やがて月側からの反応で、その行動が周囲に複雑でよからぬ影響を与えることを知り、目的に向かって盲目に突き進もうとするフィーナとの齟齬に苦しむことになります。が、やがて自らの想いを整理した二人は今まで以上に絆を深め、そしてその絆は二人の想いもよらぬ繋がりを導き出し、それがきっかけとなって全ての問題解決に突き進む、といった流れですね。
 ここで浮き彫りになるのが、「家族」というテーマですね。フィーナは偉大な母親に対して、主人公は研究のために家族を捨てて出奔した(と信じている)父親に対して、形は違えど固執した感情を持っていましたが、その感情のしこりが解決することで、両親が二人に残してくれた想いがわかるようになる、という構成になっています。
 まあ終盤の一大活劇については色々と突っ込みたい部分もありますが、筋立てに迫力がありますし、最後のフィーナの演説のシーンは威厳に満ち溢れていて、そういう不満を打ち消してしまうほどの威力がありました。二人が最後まで自分らしさを失わずに支えあったからこその結果というのもあり、妻子有的に話が壮大に膨らみすぎたとはいえ、綺麗にまとまってはいますし、よく出来ていると思います。

 とはいえ、抜群に面白いというわけでもなく、あくまでキャラの魅力を上手く生かしたシナリオ構成がメインになっているので、評価としてはこの程度になるでしょうか。悪く言えば、色々と小手先の工夫は感じますが、深みが足りないということになりますかね。

キャラ(20/20)

 このメーカーは、キャラの魅力を十全に発揮することにかけては屈指の実力がありますね。出来すぎな人間が多いとはいえ、キャラ造詣に際して嫌悪感を抱きやすい要素はほとんど省いて、可愛い面やかっこいい面だけをプッシュしてくるので、安心して楽しむことができます。

 にしても、麻衣可愛いよ麻衣。
 基本的にはしっかりもので、でもそれなりに甘え上手で、性格も順良とくれば理想的な妹像となるんですが、更に麻衣の場合は、それがすごく自然体で出来ているように見せているのがとても魅力的なんですよ。性格付けのイメージに囚われず、場面場面ごとにちょっとずつ違った反応を見せてくれるので、いつまでも新鮮な可愛さを味あわせてくれる最高のキャラです。どれだけデスマーチ連発されようと、麻衣の笑顔だけでご飯三倍はいけます(落ち着け)。

 まあこんな感じで麻衣がぶっちぎりで好きすぎるせいで、他キャラの印象がやや薄いんですが、流石にメインヒロインのフィーナの魅力は印象的ですね。この手のゲームに多数存在するお姫様って、基本的に庶民ずれしているとはいえどこかしらくだけた印象が強いんですけど、フィーナの場合は姫であるという事に一本芯が通っているというか、そういう内面的な威厳が上手く表現できているなあと。
 そしてまた、その性格付けそのものがメインのシナリオにきっちり味付けされているので、シナリオと比例して成長していく姿を感じられるのがいいですね。

 その他のヒロイン及びサブキャラもみんなそれぞれ魅力的なんですが、一人挙げろと言われたらカレンがお気に入りですね。なんであんなにかっこいいんでしょうかね。普段の立ち居振る舞いから、ちょっとくだけた場面、そして見せ場での台詞回しがいちいち神がかっています。

CG(17/20)

 そりゃまあ元々絵買いしたくらいなんで好みだし可愛いんですけど、時々一枚絵が別人なのは気になります。特にHシーンの絵があまり上手じゃないですよねえ・・・。あと赤面顔も。むろんそれらの欠点を補って余りあるほど、日常シーンの絵は可愛いんですけどね。

 立ち絵に関しては、時々体のバランスがおかしいかなって思うこともあるけど、おおむね文句はないです。立ち絵のポーズも表情差分も服装の差分も沢山用意されていますし、どれもこれも可愛さを引き立てていていいと思います。
 麻衣の正面向き、上目遣いの表情は神の出来です。
 そして後ろで手を組んでの見返りポーズでの拗ね顔も神です。
 やや右肩下がりの立ち絵だけイマイチなのが非常に残念です。。。
 部屋着の可愛さは神です。
 ちなみに、髪を下ろしている立ち絵のほうが更に好みです。
 その他?・・・えーと、フィーナの横向き困り顔とか、ミアのびっくりデフォルメ顔なんかは好きですね。

 一枚絵に関しては、量に関しては文句ないんですが、上に書いたようにややHシーンの出来が全般的に好きじゃないんですよね。表情が微妙な上に、バランスが崩れていることが多いので。
 ちなみに、圧倒的に安定しているのが菜月です。立ち絵では言及しませんでしたが、立ち絵でもすごく可愛いってのがないだけで減点式に見るなら間違いなくトップクラスですし、一枚絵では紛れもなく一番可愛く描けています。特に窓際での会話シーンの絵と、主人公と翠がデートの約束をしているシーンでの切なそうな表情が最高ですね。その他にも夜景を見ながらのキスとか、エピローグでの半泣きの笑顔とかも素晴らしく、かつHシーンも一番崩れが少なく感じました。
 逆に頑張って補正値つきで見ても一番微妙なのが麻衣だったり。。。
 菜月以外でのお気に入りは、海辺でのフィーナ、ミアの耳かき、空でのリースとの別れ、くらいですかね。

BGM(17/20)

 曲数も多く、また場面に応じて多彩なBGMが上手く使われていますね。
 ボーカル曲は3曲。
 イメージテーマの『Lapis Lazuli』は個人的にかなりの名曲だと思っています。ややAメロが弱いですが、Bメロからサビに向かっての壮大な雰囲気は気に入っていますし、聴き応えのある曲だと思います。リースルートでのアレンジも、特に序盤のイントロがかっこいいですよね。
 OPの『Eternal Destiny』は、神秘的な雰囲気と明るさが同居した曲ですが、個人的に途中からの変調がイマイチかなあと思っていたりも。まあ悪くはないんですけどね。
 個別のEDにはボーカルはついておらず、グランドEDの『WAX&WANE』はあまり印象に残らない曲ですね。シナリオの壮大さに対して大人しすぎるし、曲そのものがイマイチでした。

 BGMのなかでは、『掌に』が出色。感動的な場面で使われることが多いですが、柔らかなピアノのメロディが優しく包み込んでくれて、後半の想い出が流れていくようなメロディも印象深い曲です。
 あと、麻衣のテーマ曲である『Pastel Melody』もかなり好きです。出だしは穏やかな印象ですが、後半のピアノパートに入ってからの音の連なり方がものすごく気に入ってます。
 その他では『breezing summer』『silent moon theater』『…no more』『天海の鼓動〜オルビス・ラクテウス〜』などが好きですね。

システム(10/10)

 演出は今見てもなかなかの出来ですね。三年前の作品ということを加味すればかなり評価できます。
 決して派手さはないんですが、立ち絵の画面効果や遠近多用による印象度のアピール、多人数同時描写による賑やかさの表現など、今でも主流な演出効果がしっかり使われていますし、背景効果とのかみ合わせもしっかり出来ていて、いい仕事しているなあという印象ですね。

 システムも優秀ですね。必要な要素がしっかり揃っている上に使い勝手もよく、これまた今現在でも立派に評価対象に出来るレベルだと思います。まあFAで更に進化していたあたりも踏まえ、ゲームを下支えする部分の構築に力を入れているというのはやっぱり好感が持てますね。

総合(85/100)

 総プレイ時間は20時間ちょっとでしょうか。まずまずのボリュームですね。
 シナリオにもキャラにもそんなに癖はないですし、展開が冗長すぎたり難解すぎたりすることもないので、まさしくライトエロゲユーザー向けの内容と言えますが、深く突っ込まれていないだけで表現したいテーマ性にはなかなか薀蓄のあるものもあるので侮れません。まあ万人向けであることは違いないですし、普通にお勧めできる作品ですね。
posted by クローバー at 15:03| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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