2009年01月29日

あやかしびと

 廉価版が出たので購入。

シナリオ(26/30)

 ほのぼのと燃える展開のバランスが絶妙。

 人妖―――。
 第二次大戦後、古のあやかしのような特殊能力を持つ人間が突然変異で発生、その存在は日増しに膨れ上がり、彼らは人妖と呼ばれ、恐れられ、嫌忌され、差別されて暮らしてきました。その動きの中で、外界から隔離されてやがて人妖だけが暮らす街、神沢市が成立し、いわれなき差別にあいながらも、その街の中では穏やかな生活が許されるようになったのでした。
 主人公は、人妖の中でも特に危険な能力の持ち主だと認定され、幼い頃から離島の強制収容所のような施設で過ごしてきました。幼いときに親から引き離され、10年近くもの間外れの森に住む子狐だけを友として暮らしてきましたが、ある日ちょっとしたトラブルからその子狐が本物の妖怪であることを知り、そしてトラブルの影響で島にいられなくなった主人公は、すずと名づけた妖狐の力を借りて島から脱出し、新しく穏やかな生活を営もうと考えます。そんな時脳裏に描いたのは、人妖の暮らす街、神沢市でした。
 色々と騒動を起こしながらも、主人公とすずはなんとか神沢市に入ることに成功します。そこで普通の若者のように、学校に通い友達と遊ぶ、そんな穏やかな日々を期待していた主人公ですが、すずが抱える人間不信や、すずを狙う不穏な勢力の動向もあってなかなか落ち着いた日々を送ることが出来ません。果たして主人公は、最後まですずを守り、胸に抱いた平和な生活を手に入れることが出来るのか、そんな感じの話ですね。

 とにかくまず基本的な設定が面白いですね。神話の世界の妖怪の話をベースに世界観を構築しながら、そこに様々な要素や伏線を加えてごた混ぜにして、最終的には熱いバトルが繰り広げられる流れで、また主人公の性格が上手くその境遇を生かした素晴らしい設定なので、決して自分の力に溺れることなく、かといって自分の手に及ばないような事態でも悲観することなく、今の自分に出来る最善のことをしようと真摯に努力するあたりが、様々な思惑の渦巻く物語の中ですこぶる清涼剤となっています。
 また、大きな形では人類の枠から省かれた人妖という存在の意義そのものから、登場人物個々人の、家族に対する想いや自分の居場所を見つけるための頑張りなどが物語の根底にしっかりと根付いており、決してそれが大きくぶれることはないために芯が一本シナリオに通っていて、またその要素を引き立てる伏線の回収の仕方も見事なので、どのシナリオも最後まできっちり楽しめます。
 
 個人的にシナリオで一番好きなのは刀子シナリオですね、ラストの愁厳が見せるかっこよさと、妹の刀子に対する思いやりの深さは正に感涙ものでした。バトル的な面では薫シナリオ、特に虎太郎先生のバカ強さと格好の良さといったら男でも惚れるレベルでした。
 無論、メインヒロインのすずシナリオも上手く纏まっていますし面白かったですが、エンドによっては流石に行きすぎじゃね?と思ったのもあったりなかったり。トーニャシナリオは一番スケールの意味では劣りますが、仲間の団結、的な意味合いでは一番しっくりくる内容で、まあどれをとっても外れのない、考えつくされたシナリオだなあと思いました。

 ここまで物語が盛り上がる理由としては、敵役の存在感がとても大きくてしっかり書かれていることが挙げられますね。ドミニオン(人妖追跡機関)の存在は、主人公の過去との繋がりも含めて圧倒的ですし、その大きな山を越えたところでもう一山、のような存在までいるので、主人公達が如何にして立ち向かっていくのか、中盤以降は一時も気が抜けない感じでした。
 まあ世評の通り間違いなく名作レベルであるとは思うのですが、その割に点数の歯切れが悪いのは、こういうシナリオにありがちな、全てが綺麗に解決した大団円、的な部分がなく、あくまで巨視的に見て嫌忌される存在から抜け出せない人妖という存在の悲しみを引きずった終わり方であり、またそれは個々人レベルにも反映されていて、どうしてもあちらを救えばこちらが立たず、ということになってしまうので、当然その背後にこめられた思想的意味合いは感じ取れるものの、個人的感情として物足りないなあと思ってしまったわけです。
 まあある程度FDで補完されていた部分もありますし、むしろおざなりな大団円だと逆に説得力がないとかわがまま言い出すのが私のスタンスでもあるので、これはこれで完成度を損なわないという意味では必然的な終わり方なんでしょうけどね。

キャラ(20/20)

 圧倒的なまでに魅力溢れるキャラ造詣ですね。
 特に男キャラ、主人公を筆頭として全員がいい意味でバカで、至極単純かつ明快な行動論理で動き、それでいていちいちそれが格好いいものだから、思わずため息が出てしまいます。虎太先生とか九鬼先生とか、もう存在感が圧倒的過ぎますよね。
 逆にどちらかと言えばヒロインキャラのほうが複雑に揺れ動く部分が多くて、それを真っ直ぐに支えようとする主人公の構図が物語の流れにぴたりと嵌っています。しかし、薫シナリオのすずとか怖すぎるぞ。。。
 ちなみに女性キャラの中では圧倒的にトーニャが好きですね。プレイ前に思い描いていたのを、いい意味で裏切られました。ある意味あやかしのキャラの中で一番人間味があるキャラなのではないかと、特にトーニャシナリオで家族と仲間の間に板挟みになって苦悩するあたりで強く感じましたね。そしてほのぼのモードのときの得がたいツッコミ役としても大車輪の活躍でしたし。

 他のヒロインやサブキャラもそれぞれしっかり魅力が描かれていて、かつその魅力をシナリオがしっかり拾い上げてくれているのが素晴らしいところです。まさかこんなところで、みたいな場面で、思いもよらぬキャラの活躍があったりして、生徒会というチームの結束を強く印象付けられることが多々ありましたね。文句なく満点です。

CG(15/20)

 この人の絵も大分慣れましたし、確かに作風にはよく合っていると思いますし、男キャラは比較的上手く描けていると思うんですけど、やっぱり女性キャラがイマイチ可愛くないというのは、この手のゲームとしては物足りない部分ですよねぇ。

 立ち絵は、どうも全体的にバランスがイマイチな印象がありますが、雰囲気はすごく上手く描けているなあというのが素直な感想ですね。比較的差分もありますし、まずまずの出来ではないかなと。個人的に、トーニャの立ち絵のはっちゃけかたはすごいと思いましたが。あちゃー、って顔の立ち絵がすごくお気に入りです。あとふわふわモードも。

 一枚絵、やっぱりこの人の絵はバトルシーンに特化しすぎているような・・・。かっこよく絵を描かせたら素晴らしいのに、可愛く描こうとしてもイマイチなのは残念な部分です。しかもロリキャラになればなるほど崩れやすくなるというのが個人的にいただけないところ。刀子関連は、出色の愁厳との別れのシーンをはじめとして比較的安定してますけど、すずとかトーニャとか比較的頻繁に別人ですよね。。。
 Hシーンに関しては半々、くらいの出来ですかね。すごくいいのもいくつかあるのですが、微妙なのも多いです。トーニャHの一枚目の駄目さと二枚目の神がかった出来の落差にはびっくりしてしまいました。。。
 バトルシーンはカットイン含めて安定していい出来だと思いますが、その中でも特に好きなのが、虎太郎先生の車破壊シーンとトリガーハッピーのシーン、それに主人公の焔螺子かな。
 
BGM(18/20)

 熱い曲と切ない曲が半々くらいで、そこからも世界観の物悲しさが感じられるラインナップになっていますね。
 ボーカル曲は2曲。
 OPの『虚空のシズク』はまぎれもなく名曲ですね。どこか物悲しいながらも、背骨の一本真っ直ぐ通った生き様を感じさせる力強い曲です。
 EDの『in the break of down short』は、闘い終えた男達の挽歌、という印象で、静かながら重々しいメロディラインがかなり気に入りました。特に最初のサビの部分が終わった後に重なってくる低音のリズムパートが雰囲気が出ていて好きです。

 BGMでは『五位鷺』が出色ですね。最初の弦楽器のパートもいいですが、ピアノパートになってからの切なさといったら抜群のものがあります。
 その他では、『迷い家』『豆腐小僧』『鵺』『姑獲鳥』『蛟』『座敷童』などがお気に入りです。曲数は少なめですが、全体的に力の入った名曲が揃っていますね。

システム(8/10)

 演出はそこそこですね。
 全体的に画面を動かせてはいないのでややスピード感には欠けますが、その分カットインや一枚絵の使い方などで上手く動きをイメージさせるように最大限意識している雰囲気はすごく伝わってきます。特にバトルシーンは、テンポのいいテキストと相俟っていいリズム感を作り上げていると思いました。

 システムは上々ではないでしょうか。
 スキップも速くセーブも使いやすく、その他にも欲しい機能はしっかり揃っていますし、2005年の作品ですからかなり充実していると思えます。唯一、音量調整のゲージが色分けされていないのは(音でしか判断できない)ちと不自由ですね。他には特に問題ないと思います。

総合(87/100)

 総プレイ時間、18時間くらいかな。
 序盤、生徒会の一員になるあたりまでは若干面白みに欠けますが、それ以降はほぼ非の打ち所のない出来になっているので、そこさえ乗り切れれば存分に楽しめると思います。一番上で書いたように廉価版も出ましたし、バトルものが好きなら迷わずお勧めできる一作ですね。
posted by クローバー at 20:48| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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