2009年04月10日

星空のメモリア −Wish upon a shooting star−

 キャラもシナリオも期待できそうだったので購入。

シナリオ(27/30)

 とっても理知的な御伽噺。

 大人になったら再会して結婚しよう―――。
 かつて主人公が、唯一の友達だった展望台の少女と交わした約束。
 母親の死をきっかけに、かつて生まれ育った街、雲雀々崎に七年ぶりに帰ってきた主人公。彼は早速思い出の少女と再会するため、約束の場所である展望台へと足を運びます。しかしそこには、立ち入れ禁止の札とともにフェンスが築かれており、何とか迂回して侵入してみると、そこで主人公を待っていたのは、幼い当時の展望台の彼女と瓜二つの容姿を持った死神少女、メアでした。
 あまりに酷似した容姿に主人公は戸惑いますが、メアはそんな主人公に言います。

 「私は悪夢を刈る死神だから。」

 メアは主人公の悪夢を刈る約束を果たすためにここで待っていたと言い、その手の鎌を主人公の胸に突き刺します。すると主人公は、再会への唯一の手がかりだった展望台の彼女の名前を忘れてしまうのでした。

 あまりに非現実的な事実に打ちのめされつつも、主人公は地元の学校に通いながら、時間をかけて展望台の彼女を待ち続けることにします。そうして転校した学校で、かつてのクラスメイトである明日歩と再会し、彼女に天体観測愛好サークル、通称天クルへの入部を持ちかけられます。
 元々展望台の彼女の影響で天体観測に興味のあった主人公は、雲雀々崎の星空を観測しながら待つことを決めますが、いざ入部してみた天クルには問題が山積み。まともな部員は部長と明日歩とこさめしかおらず、部に昇格できる最低人数を割り込んでいる上、こさめの双子の姉で生徒会役員であるこももから目を付けられ、廃部の危機にあるのでした。
 妹の千波にはすげなく入部を断られ、最後の希望として妹のクラスメイトで天体観測に興味のありそうな依鈴に目をつけ、入部を打診しますが返事は捗々しくありません。果たして天クルは存続できるのか、そしてその先にある未来は―――、という感じのストーリーです。

 全体のバランスからすると、やや導入が長くて冗長なきらいがないとは言えませんが、この作品はとにかくトータルバランスに優れています。序盤の冗長さもしっかり後半のための布石として生きていますし、何よりシナリオの構成が絶妙。
 ルート制限がかかっていて、最初は明日歩か依鈴しか攻略できず、明日歩→こもも→こさめ、依鈴→千波の順番でルートが解放され、全員をクリアすると最終ルートである夢(&メア)シナリオに入れるようになっています。かなり制限が厳しいので、攻略順はある程度固定的になってしまうのは止むを得ないのですが、その不自由さを補って余りあるほど、しっかりルート制限に意味が持たされています。
 基本的には明日歩ラインで隕石の話とまつろわぬものの話が語られ、依鈴ラインでヒバリ高の都市伝説と主人公たちの出生にまつわるエピソードが語られます。一つ前のシナリオに次のシナリオの伏線が実に巧みに引かれていて、一つ一つの物語としての完成度も高いんですが、それ以上に全体の世界観の融和性が高く、ものすごく雰囲気のいい作品になっています。
 特にこの五人の個別で出来がいいのはこももシナリオ、次点でこさめシナリオですね。この双子関連の物語は、この作品が内包するロジカルな側面と御伽噺の側面が非常に上手くマッチしており、かつ終盤に向けての盛り上がり方が秀逸です。明日歩シナリオはまあ導入として無難な出来、依鈴シナリオは綺麗な話ではあるのですが個人的に嫌いな部分がちょっとあるかな、って感じで、千波シナリオは多分に最終シナリオの伏線的意味合いが強いですね。まあ主人公と千波の掛け合いの面白さは抜群ですけど。

 で、ここまでをクリアすると解放される夢(&メア)シナリオが抜群の出来。
 ここまでで見て来たシナリオに引かれた数々の伏線やイベントのつながり、果ては主人公の内的心理に至るまで全てにしっかりとした解決を導いた上で、最初から最後まで息の抜けない濃密な物語を展開してくれます。
 この作品は割り切って言ってしまえば超常現象のオンパレードではあるのですが、作品内でも「オカルトは現代科学が追いつけない物理現象」と言い切るように、出来る限り科学的・論理的に一つ一つの現象について解決しようとします。けれど、それはあくまでこう考えられる、というレベルで抑えられており、作品の本質が御伽噺であることを決して否定しません。
 過去と二重写しになった現実、この土地にまつわる様々な言い伝えと、それに対する科学・オカルト両面からの綿密なアプローチ、そうして積み重ねてきた様々な傍証が、夢シナリオ終盤の、ともすれば陳腐に陥りかねない展開を素晴らしく重厚な説得力でもって下支えし、この世界観に引きずり込まれた読み手に大きな感銘を与えてくれます。
 まああまりに夢シナリオの出来が良すぎて、最後のメアシナリオが蛇足になってしまっているのが勿体無いところではありますが(まあEDを見る限りでもおまけっぽい感じですしね)、それを差し引いても個人的には素晴らしい作品だと感じました。ぶっちゃけ、ものすごく好きなタイプの作品です。なのでかなり贔屓目は入っていると思いますが、序盤の冗長さで挫折しそうな人も、頑張って夢シナリオまで辿り着く価値は絶対にあると思いますよ。

キャラ(20/20) 

 これはもう、ごちそうさまでしたと言わざるを得ないですね。個人的にかなりクリティカルヒットしました。

 ほぼ全てのキャラが好きではあるんですけど、やっぱり一番好きなのは明日歩になりますかね。最初は元気系キャラだし可愛いけどどうかな、と半信半疑だったんですが、シナリオが進むにつれてそのあまりに裏表のない真っ直ぐな心根と、あまりにわかりやすい主人公ラブな雰囲気にどんどん惹かれていきました。
 その上個別では、実は消極的で臆病な部分や、めっちゃ甘えん坊な部分なども存分に見せてくれて、久々に悶え転げましたね。三回目のHシーン直前のトークとか、もう私を殺す気ですかと。。。久々にふーりんキャラでの大ヒットです。

 以下同率二位でいいや、こももと夢とメア。
 こももはもう、これ以上ないくらいの見事なツンデレっぷりと、だけどそれだけではない芯の強さと優しさを兼ね備えた、ある意味キャラゲーとしての優等生(笑)キャラですね。この、甘えたいのに甘えられない、という性格設定が、実は最終ルートで主人公に裏返ってくるあたりがこの作品のすごいところですが、それはさておき個別前半〜中盤での距離感があまりに可愛過ぎて仕方ありませんでした。

 夢はまあ、一応ネタバレキャラですのであまり語るのも何なんですが、やっぱり一番の魅力は、意地でも自分の願いを貫き通そうとして、でも表面的にはそれを絶対に見せない芯の強さにあるでしょう。言葉を二度繰り返す口癖も、一度目は相手に、二度目は自分に言い聞かせているんだという切なさが滲み出ていて、そして最後に明かされる本音がまた凄まじいんですよね。明日歩には申し訳ないんですが、この作品のメインヒロインは、と聞かれたらやっぱり夢だと答えてしまう、それくらい出番が少ないのに存在感の強いキャラです。

 メアの一番の魅力はやっぱりそのアンバランスさでしょうか。
 自分を死神であり大人であると定義しながらも、本質的には何も分からない自分や世界に怯え、寂しがっていて、でもやっぱり大人びた透徹した部分も持ち合わせていて、その両面がコロコロ切り替わるのが見ていて楽しいところです。リアクション的にも千波以外では一番面白いですしね。
 ぶっちゃけ無理に攻略キャラにしなくても良かったのでは、と個人的には思わなくもないです。メアの魅力はそういう部分以外にふんだんに盛り込まれていますからね。まあ、なかったらなかったで文句言いそうなのですが。。。

 千波はまあ、鬱陶しいと思う時も多々ありますが、いいキャラだなあと思う部分も同じくらいあるのでそこそこ好きです。依鈴に関しては、ごく個人的な理由もあってどうしても好きになれませんが、自分のシナリオ以外での飄々としたスタンスは結構好きですね。

CG(18/20)

 基本的に可愛い寄りの絵柄なので実に私好みです。塗りがすごく淡い雰囲気なので、最初背景とかみ合っていないかなあとか思ったりもしましたが、すぐに慣れました。

 立ち絵は服飾、ポーズ、表情とどれもバリエーションが多彩で、出来もかなりいいですね。
 一番お気に入りなのは明日歩のギャグ泣き顔でしょうか。「どうせあたしは〜だよ〜。」みたいな物言いとセットでよく使われてましたね。ある意味明日歩というキャラの魅力が一番良く出ている立ち絵だった気がします(笑)。
 その他では、明日歩は正面向きの困り顔、こももは右肩下がりの怒り顔と憂い顔、こさめも同じく右肩下がりの忠告顔、千波は万歳ポーズでの笑顔とデフォルメ顔、メアは右肩下がりの呆れ顔と、正面向きでの興味津々な顔、夢は正面向きのちょっと困った笑顔なんかが好きですね。

 一枚絵は、時々デッサンが微妙だったり、塗りが雑だったりしますが、平均的には高水準だと思います。量もそれなりにありますしね。
 一番好きなのはメアがかーくんを膝抱きしているシーンと、こさめと腕を組んで歩いているシーンかな。前者はメアの寂しい気持ちが透けて見えるくらい強く浮き出ているあたり、後者は本当に望外の幸せを得ている、という実感のこもったこさめの万遍の笑顔が印象的です。
 その他では、メアは夢シナリオでのラストシーン、明日歩は海でのボートの上での抱擁、腕組みデート、フォークダンス、メイド服での騎乗位、こももはこさめとのキスシーン、中庭でのお弁当、こさめは満月の舌での抱擁と1回目のHシーンの1枚目、千波は鈴葉のお見舞いシーンと裸エプロン、夢は夕日差し込むベットのシーンに、Hシーンの三枚目が好きですね。

 あと、結構SD絵のタッチ好きなんですけど、回想で見られないのが残念です。

BGM(18/20)

 曲数は多いですが、基本的にはメインを張るいくつかの楽曲の出来が断然素晴らしいですね。

 ボーカル曲は三曲。
 OPの『Eternal recurrence』は、イントロから打ち込みの音がやたらと派手で、如何にもゲーム的なOPだなあという印象ですが、雰囲気がすごく作品に合っていて、曲としても結構好きですね。特にAメロの、流星をイメージさせる繋ぎの音が好きです。
 EDの『星の夢〜Gathering the stars of love〜』は、序盤のしっとりした雰囲気から、後半は明るい未来をイメージさせる流れで、まあ特筆することのないEDらしいEDと言えるのではないでしょうか。
 夢シナリオEDの『星空のメモリア』は、歌詞が夢シナリオとのシンクロ率が高すぎて、やたら感情移入度が高くなってしまいますね。曲としては、いつか届く想い、といった雰囲気の、ちょっと切ないながら希望は失われていない、優しさを感じさせる曲で、特にBメロの切々とした雰囲気が大好きです。ちなみに補正がかかった私的には超名曲だったり。

 BGMでは、なんといっても『ふたりの未来』が神曲。穏やかな出だしから、徐々に音を重ねて盛り上がっていく雰囲気と、星空の祝福を受けているような音の連なりがシナリオ終盤の雰囲気と抜群に噛み合っています。
 その他では、『水面の月』『恋水』『同じ星に生まれて』『ゆめ』『小さくも強き心』『星空のメモリア(arrange)』などが好きですね。日常系の明るい曲はイマイチツボに入らなかったんですけど、シリアスシーンでの曲がとても印象的でした。
 あと、好きとはちょっと違うんですが、耳から離れないという意味で『千波ism!』を挙げておきます。あからさまにどこかで聞いたような出だしのイントロなんですが、このとぼけた雰囲気が恐ろしいくらい千波のキャラには合っていますね。

システム(9/10)

 演出はなかなかの出来ですね。
 多少スペックが足らずに演出のスピード感が削がれてしまったのは残念なところですが、それをおいても相変わらず隙のない動かし方ですね。特筆するほどすごくはないんですが、平均して高い技術力がある感じで、使い方も派手すぎないのが好感の持てるところ。
 あと個人的にOPが結構気に入りました。よく動く割に、記号的意味合いがしっかり丁寧に込められていて、なかなか味のあるOPだと思いますよ。

 システムも相変わらずキメ細やかでいいんですが、出来れば共通がこれだけ長いと、後ろ向きだけでなく前向きへの選択しジャンプも欲しいところですね。決してスキップが遅いとは思わないんですが、それ以上に長いですから。。。
 あと、システム画面まで2クリック必要なのも改善点ですか。それ以外は全く文句ないです。

総合(92/100)

 総プレイ時間27〜8時間ですかね。かなりボリュームあります。
 共通が6時間くらいで、個別は平均して3時間程度ですが、キャラによって大分差があります。明日歩、こももはやや長めで、千波とこさめが短め、そして夢が一番長く、メアはおまけ程度、といった配分でしょうか。
 総合して言うなら、とても丁寧に作られた作品だと思います。全ての面で平均点以上の出来にあり、その上でシナリオが個人的に相当ツボだったのでかなり高得点になりましたが、シナリオ、というかテキストには若干癖がある上に、良く言えば丁寧ですが冗長と取られても不思議でない部分もあるので、万人向けかと言われるとちょっと考えてしまいますが、力作であることは間違いないのでやってみる価値は多分にあると思いますよ。
posted by クローバー at 08:17| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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