2009年06月16日

そらうた

 元々ちょっと欲しかったので、Vista版が出たときにゆきうた共々購入。

シナリオ(25/30)

 愛のために、人はどこまで出来るのか?

 主人公は幼い頃に交通事故で死に掛け、その影響でそれ以前の記憶を一切失い、何故か幽霊が見える体質になってしまい、そしてどこか心の機能が壊れてしまったのか、何事にも心が震えない性質が身についてしまいました。
 事故から10年近く経った今でもその体質は改善されておらず、主人公自身も自分が周りの人間とどこか違うと自覚しており、唯一その主人公の体質を知る、保護者であり姉でもある霊子に依存しながら日々を過ごしていました。
 そんな主人公に、霊子は言います。

 「もし、優しくしてあげたいと思う人が出来たら、とことん優しくしてあげなさい。」

 そんな言葉を貰って数日後、主人公たちの祖母が亡くなったとの連絡が入り、急遽お葬式に出席することに。そのお葬式の席でどこか落ち着かない様子を見せていた霊子は、その翌日、気になることがあるから調べたいという理由で主人公にも内緒で家を出てしまいます。
 霊子のいない生活はどこかぽっかりと穴が空いたようであり、寂しさを隠しきれない主人公ですが、そんな時霊子の言葉を思い出し、幼馴染の知夏と青い空に、これからは人に優しくする、と誓うのでした。きっとそうすることで、この寂しさを埋めることが出来ると信じて。

 そんな風に夏休みが終わり、登校初日、主人公は体育館での集会の最中に、一人の女の子の幽霊を見つけてしまいます。どこかで見た顔だと思ったその時、壇上の校長先生の口から、主人公の隣のクラスの永澄真奈が校舎の屋上から飛び降りて自殺した、という話が告げられます。
 そう、そこにいたのは死にたてほやほやの真奈の幽霊でした。
 その真奈とふと目が合ったことで、主人公が幽霊の見える体質だと真奈に気付かれ、真奈と交流を持つことになり、その流れで真奈の親友であった澪とも知り合うことになります。
 それ以外にも、いつも側にいる幼馴染の知夏や、記憶喪失になってクラス内で浮いている少女、葵などとの交流の中で、いつしか主人公は一人の少女のことが気になっていき・・・、という感じの話です。

 最初に書いておきますと、この作品は全体の構成が素晴らしくよくできています。基本的には、ひとつの大きな事件が裏で起きている中で、この問題と無関係ではいられないながらも、交流を深めた女の子との独立した物語を展開するというスタイルで、それを攻略した後に全てが明らかになるメインシナリオが展開されるという構成で、プロローグの時点からラストに至るまで、伏線の使い方が実に巧みで、よく考えられて作られているなあと感じさせます。
 かといって、メインのシナリオに対してヒロイン個別のシナリオが盛り上がらないかといわれれば決してそうでもなく、特に真奈&澪のシナリオに関してはストレートに友情の素晴らしさを切り取った感動的なシナリオに仕上がっていて一読の価値があります。
 葵シナリオもそれには及ばないものの、複雑な設定を上手く使いこなしての切ない物語になっていて、特に終盤の、真実が見えてきたあたりからの切なさはなかなかのものがあります。基本的にこの作品のヒロインはどこかしら不幸を背負っているし、最終的にご都合主義的なハッピーエンドを迎えることはしないので、すごく余韻が独特で後を引きますね。
 唯一例外なのが知夏シナリオですが、これも裏で蠢く事件とは無関係ではいられないので全く不幸でないとは言い切れないものの、最終的には一番無難に終わるシナリオかなと思います。ただ、他のヒロインの不幸っぷりに比べてしまうとどうしても知夏は幸せに暮らしてはいるので、印象度で劣ってしまうのは否めません。あと、中盤での主人公が余りに酷いのがネックですね〜。あれは正直、鈍感とか言うレベルじゃなく、人としておかしい。。。

 そして、ヒロイン達の不幸の原因となった事件の真相が明らかになるのがラストの霊子シナリオとなるわけですが、まあ個人的にはたまねえとラブラブされるのはイマイチ気に食わなかったりして、好き嫌いで言えばあまり好きなシナリオではないです。
 でも、事件の裏に潜んでいた悲しい真相と狂気、そして何故主人公が幽霊の見える体質なのか、そういう謎がいっぺんにすっきりと解決する上、愛という感情が持つ偏執さと純粋さを、決して綺麗ごとではなく素直に思うがままに表していて、色々考えさせられるシナリオではあります。
 エピローグの主人公の台詞はある意味世界の真理なのでしょうけど、そうだったら人が生まれてくる意味も、生きる意味もどこにあるのか、という話になってしまいますし、それを無駄と捉えるのか、無駄だからこそ愛しいと考えられるのか、受け取り方は人それぞれでしょう。ただ、そういうある意味幼い考えを陳腐だと笑えないほどには、この作品が紡ぎあげてきたシナリオには重みがありますね。
 ともかく全体的に隙のない見事な仕上がりだと思います。どうしてもハッピーエンド至上主義には受け入れ難い終わり方だと思いますから、人を選びそうなシナリオではありますけど、個人的には真奈&澪シナリオだけでもプレイした価値はあったなと思ってますし、製作者の意欲を十全に示している内容だったと感じました。

キャラ(20/20)

 キャラ造詣は素晴らしいの一言に尽きますね。
 シナリオの性質上、どうしたってある程度不幸を背負ったヒロイン達になってしまうのは仕方ないんですが、その影の部分をあまり誇張せずに、ヒロイン本来の魅力と上手くミックスさせることで、すごく深みのある人格を形成することに成功しているように思えます。
 正直、真奈と澪と葵の中から一人を選べというのはかなり至難。。。
 三人が三人とも素晴らしく魅力的なんですよね〜。そしてその魅力が主人公に対してのみ発揮されていないというのもこの作品のいいところです。
 まあ強いて選ぶなら真奈かな、とは思いますが。一番不幸な境遇にありながら、自分らしさを失わずに最期まで優しい心のままでいられるってそれだけですごいと思いましたし、パッと感じる性格以上に女の子らしさを兼ね備えていて、とても魅力的でした。
 澪はもう、序盤の全力で守ってあげたいと思わせる雰囲気と、逆に終盤に入ってからの芯の強さのギャップが素晴らしく上手く書けていますし、何よりあの良妻賢母っぷりは半端ないですよ。。。
 葵は実は瀬戸内さんのほうが好きだったりしなくもないんですが(笑)、あの儚い雰囲気で、どこか世界を拒絶しているようで、近寄ってみると内面はすごく普通の女の子という、この作品の切ない雰囲気を代弁しているようなキャラですね。何気に知夏ルートでの奮闘っぷりが好きだったりもします。

 知夏は悪いキャラではないと思うけど、考え方が根本的に何か違う。。。だから妙な勘違いもされるし、想いもなかなか本気で捉えてもらえない印象です。まあ主人公のほうが酷いとは思いますが、どっちもどっちと思われても仕方ない部分はある。
 たまねえは苦手・・・。私の苦手な属性全て兼備してらっしゃるんですもの。
 そしてトモカ可愛いよトモカ。。。

CG(19/20)

 まあとにかく、一枚絵の出来は素晴らしかったですね〜。
 立ち絵に関しては、まあ基本的には可愛らしく出来ているものの、時々微妙なのが混じっていなくもなかったりしますし、ややバリエーションも物足りない気はしますね。
 お気に入りは、真奈の腰に手を当てての不服ポーズ、真奈の照れ顔、澪の目をまん丸にしての驚き顔に正面向きの万遍の笑顔、葵の眉尻をあげての怒り顔に、瀬戸内さんの正面向きの真面目顔と笑顔あたりかな。

 一枚絵は質・量ともに万全。
 どこか陰のある少女達に相応しく、背景の配色もすごく切なさを助長するものを使っていて、ものすごく雰囲気が出ているなあと思いました。個人的に、単なる恋愛感情以外の要素をまぶしたHシーンはかなり好みなので、その意味でもすごく魅力を感じる構図です。
 特に出来がいいと思ったのは真奈ですね。その中でもお気に入りは、告白のときの後ろから抱きしめているシーンと、パジャマトークでの赤面した真奈ですね〜。前者は様々な感情が篭っていながら、どこかすっきりした印象の表情がいいですし、後者は単純にめっちゃ可愛い女の子だな〜と。
 あとは、帰ろうとする真奈の手を取って引き止めるシーン、屋上での三人での朗読シーン、1回目のHシーンの正常位、2回目のHシーンの騎乗位あたりですか。
 その他では、霊子はお風呂場でのバッタリ、知夏は学校でのお昼寝、夕日を背にして語るシーン、バスタオルがはだけたシーン、澪は最高に可愛いのがキスシーンで、あとプールの日のトイレシーン、1回目のHの正常位、エピローグの読み聞かせのシーン、葵は誕生日ケーキのシーン、校庭の花を見て涙ぐむシーン、4回目Hの後ろからの構図、そして、新月をバックに悲しみの表情を見せるトモカあたりが好きですね。

BGM(15/20)

 全体的にインパクトが薄いです。
 ボーカル曲は1曲、OPの『そらうた』はあまり印象に残らないですねえ・・・。爽やかな夏とどこまでも広がる空のイメージなんでしょうけど、合間のイントロがちょっと印象に残っているくらいで歌詞のついている部分の音があまり好みではなかったです。

 BGMは数は少ないものの質はそれなり。切ない系の曲の出来は良かったです。
 お気に入りは『Begin To Move』『風の鳴く声』『悲しみの想い』『別れ、永遠、愛すること』あたりですね。

システム(8/10)

 演出は物足りないですが、まあ発売時期を考えればこんなものですかね。
 ただまあ、CGのところでも書いたように、一枚絵の使い方がとても効果的だったので、見た目以上に生き生きとした印象は感じていたと思います。OPとEDはもう少し頑張ってください。。。

 システムもまあまあ、かな。
 ただ、設定が一々ひとつの画面におさまってないのは面倒ではありますし、微妙にわかりづらいのもありますね。スキップももう少し速いと快適なんですが・・・。あとオートの使いにくさもあげておきましょうか。

総合(86/100)

 総プレイ時間、17〜8時間でしょうか。
 まあいきなり知夏のウザさに耐えられるかという試練はありますが(笑)、基本的に日常会話も面白いですし、テンポもよくサクサク進みます。個別に入ってからも色々なキャラが絡んできますし、シナリオも概ね面白いと、特に欠点らしいところはない作品ですね。
 一応これでうたシリーズ全部感想書けたけど、シナリオでは断然これが一番ですね。世間の評判はゆきうたのほうがいいみたいだけど、個人的にはゆきうたは由紀シナリオが群を抜いていただけの印象なので、全体的な構成が抜群のこちらに軍配を上げたいです。
 そしてこのそらうたはキャラメイクが最高なので、ちょっと切ないエンドでも平気って人はぜひやってみて欲しいですね。
posted by クローバー at 08:44| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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