2009年07月24日

StarTRain

 購入動機は、体験版が面白かったから、だと思う。正確には覚えてないけど、後まだあの頃は音ちんぞっこんの時期だったからかな。

シナリオ(27/30)

 ビバ青春。ビバ人生。

 主人公にとって、夜空の星を見上げることは代償行為でした。
 早々に家庭環境が崩壊し、全面的に頼れる何かを持たずに育ってきた主人公は、表面的には他者を必要としない拗ねた雰囲気を醸しながら、いつも心の底では他人、というものに飢えていました。大きな夜空を眺めることで、空に抱かれている自分、というものを強く意識し、そこに寂しさや怖さを見出すことで心の澱を少しずつ取り払ってきました。
 そんな時、主人公は奈美に出会います。
 第一印象で、この人は自分の寂しさを共感してくれる、そう感じた主人公は、その後付き合いを経るにつけ、奈美の弱さも知り、それは確信に変わっていきました。
 自分にはこの人しかいない―――、そんな盲信を抱え成長した主人公は、ついに奈美に告白します。一度は受け入れてもらえ、有頂天になる主人公ですが、いつしか奈美の視線が自分を通り過ぎてどこか遠くを見ていることに気づいてしまいます。
 奈美の追いかけていたもの、それは彼女にとっての先輩でした。しかし彼女は、自分の弱さから自分が傷つくことを極端に恐れ、関係性を著しく変化させる告白という行為に踏み切れないまま時間が過ぎ、自分にとって安心できる場所だから、という理由で主人公の想いを受け入れていたのでした。
 体を重ねた日、決定的に二人の想いがすれ違っていることに気付いた主人公は、奈美に嘘をつかないで、本音と向き合って欲しいと言う言葉とともに別れを告げます。そして、それまでこの人しかいないと盲信してきた想いが霧散したことで、主人公は長い虚脱の時期に入るのでした。

 それから一年―――、主人公の心の傷は今だ癒えていませんでした。
 それでも、何くれと気を使ってくれる周りの友人たち、幼馴染の奏をはじめ、クラスメイトの飛鳥や蓬、麻衣子や大樹などの励ましもあって、少しずつ元気と気力を取り戻していく主人公。果たして彼は、初恋の手痛い失恋を糧に、新しい故意と自分の居場所を見つけることが出来るのか・・・。

 導入はこんな感じですね。プロローグが全部奈美編になっていて、そこで示唆された想いや経験が、後のシナリオに生きてくると言う構成になっています。
 全般的に目に付くのは、人の弱さ、ですね。
 物語の中でくらい格好良くあって欲しいと言う考え方のある意味真逆をいく、これでもかというくらいみっともなさや後ろ暗い打算を丁寧に書き連ねることで、徹底的に人の弱さを暴きだし、その中から一握りの美しさを抽出するという手法でシナリオが構成されており、テキストもそういう後ろ向きな思考というか、どこかシニカルな雰囲気を常に帯びているので、かなり人を選ぶ内容だとは言えます。
 しかし、実際のところ青春時代なんぞを思い返してみると、ここまで極端ではないにしろこんな雰囲気ではあるんですよね。自意識過剰で周りが良く見えず、焦ってくだらない自爆を繰り返しては落ち込んで、それでもたまに上手くいけばとても嬉しくなって、どこか後ろ暗いことを抱え込みつつも、それとは別にまだ世の中がきれいであって欲しいと願望を抱えてて。
 ある意味自己矛盾と自己嫌悪を常に抱え込みながら生きているのが青春だとしたら、そこから脱却されてくれるものは何なのか。この作品は、プレイヤーの青春をいい意味でも悪い意味でも想起させ、そしてその先にある得がたい何かを探し続けることで、擬似的にプレイヤーの想いを代償してくれる効用がありますね。正直、これだけでも名作ではあると思ってます。

 シナリオとしては、主人公がこんなんだしどうしてもグズグズしてたりヘタれたりしていることも多く、イライラさせられないと言えば嘘になりますが、それ以上に登場人物の、ある意味物語としては素直すぎる心情にいつの間にか惹き込まれていきますね。
 この作品の恋愛は、どうしてもどこか打算的なものを含んでしまうことが多く、それこそ純粋な意味での恋をしているのって奏くらいしかいないんですが、そういう風に嘘から始まった関係でも、いつしかそれが本当になると言うのは現実でも当然ありがちなことですし、その辺の感情のすれ違いを上手く埋めていく流れが秀逸なシナリオが多いです。好みで言うなら奏シナリオが一番好きですが、単純に出来の良さだと飛鳥シナリオになるかな。
 ともあれ、自己中な面々が織り成す恋愛模様なので、もうどこかしら惚れた方の負け、みたいな暗黙の了解が存在する印象で、世知辛いと思う部分もありますがまあ納得できる部分も多く、だからこそ逆に奏シナリオが光っているのかな、とも思いますね。

 んで制限かかってる七美&その後のストーリーについては、ここまでのテーマ性をよりショッキングな形で構成しなおした部分が一つ、あともう一つ挙げるなら、時間の流れの偉大さと言うあたりでしょうか。時間が全てを水に流してくれる、とは良く言いますけど、全ては誇張でも、どうしようもなく変化していく世界を目の当たりにして、何も影響を受けずにいられる人なんてまず滅多にいないし、どれだけ心が折れていてもそれは変わりないひとつの真理であることを見せてくれているような気がします。
 だから、最後の答えがどちらであれ変わりはないんですよね。変わってしまったものと、それでも変わらずにいるもの。その対比を主人公が受け入れている時点でこの作品は完結していると言うことでしょう。無論、ここまで見てきた立場からすると、奏の想いが報われて欲しいってのはありますけどね〜。

 全体的に風変わりな作品ではありますけど、個人的には間違いなく名作判定を出せる作品です。

キャラ(20/20)

 風変わりなキャラが多く、一般的な萌え、という意味合いではあまり目立つものがないですが、その代わりにやたらと愛着が湧くようなキャラ設定になっていますね。
 
 一番好きなのは、迷うけどまあ飛鳥かな〜。
 ここまで切なさを感じさせる貧乏キャラがかつていただろうか?当然貧乏ってのは辛いことだけど、これってホントに実感がないと共感できない類の経験のはずなのに、何故か飛鳥を見てるとだんだんその重さが伝わってくるような気がするから不思議。そういうバックボーンがある中で、いつも頑張って明るく振舞っている姿は思わず応援したくなりますね。
 
 ほぼ同率首位で奏。愛すべきヘタレツンデレ。
 確かに極端は臆病ではあるけど、主人公の気持ちが自分に向いていないことをしっかりわかるくらい、ずっと主人公だけを見続けてきた、その一途さには頭が下がりますし、一々不器用なアプローチがもう可愛くて仕方ないです。普段こういうグダグダした幼馴染シナリオって好きじゃないけど、ホントに奏だけは例外的に好きなんですよね〜。それだけこの展開が作品の雰囲気にマッチしているし、キャラメイクも素晴らしいってことだと思います。 

 蓬はある意味一番共感を得られにくいキャラだと思いますが、まあ確かにそういう感性があるのは事実だし、裏返してみれば自分に対する自信のなさでもあるから、そういう弱い部分を露呈してくると可愛く見えてくる部分もあります。
 でもやっぱり、他ヒロインのときのからかい役に徹しているほうが好きかも。。。

 七美はまあ可愛いは可愛いけど、色々と酷いですからねぇ・・・。
 あくまで最後まで自己中に振舞った上に、自分の達観を押し付けるだけ押し付けてアレですから・・・。確かに彼女の言葉は、いつしか主人公の中で糧になる日がくるんでしょうけど、それまでに何年かかるんだって話だし。少なくとも、奈美に振られてからの一年を見続けてきた友人たちには決して出来ない残酷な振る舞いだし、まあだからこそ隠しキャラなんでしょうけど、境遇に同情は出来ても好きにはなれないよなあ・・・。

CG(15/20)

 全体的にはまあ水準の出来だと思うけど、時折やたら絵が幼い印象があるんですよね。
 立ち絵はもう少しバリエーションあってもいいかも。でも概ね可愛いです。蓬の斜め向きでの思案顔、飛鳥のお説教顔と笑顔、奏の呆れ顔と眼をそらして気まずげな顔、七美の上目遣いあたりが好きですかね。

 一枚絵は時々表情が幼かったり、輪郭線が適当だったりしますが、概ね悪くはないかと。
 好きなのは、奈美の膝枕、奏の登校中、お化け屋敷、観覧車、飛鳥の親子の和解、蓬のプール、喫茶店、七美のお料理失敗、銀河鉄道、正常位あたりですかね。特段思い入れの強いのはないですが、量はそれなりなのでそれなりに満足です。
 ・・・ただ、朝色を見てると、年月は人を進化させると強く実感しますがね。。。

BGM(20/20)

 BGM最強。
 ボーカル曲は2曲、OPの『StarTRain』は超名曲ですね。普通のポップミュージックに近いノリでありながら、歌詞の切なさが半端じゃないし、サビの盛り上がり方が絶妙。ゲーム内でかかるタイミングもベストで、より印象を強くしていますね。
 EDの『PromiseLand』もいい曲です。EDにしては力強い曲で、ここまでシナリオ内で見せてきた弱さも、二人でならば強くあれるという想いをしっかりと込めた曲ですね。サビの後のイントロが個人的に好き。

 BGMは曲数はそんなにないのにもう抜群の出来。神曲クラスが『穏やかなとき』『悩むぼくら』『夢のあと』『星降る夜揺れる心』と四曲もあって、どれも曲を聴いただけでそれが流れた場面まで想起できる、すごく印象の強い名曲です。
 その他でも『放課後』『夏の夜空』『星降る夜』『それ行け、ダーリン!』などは好きですね。

システム(7/10)

 演出はまあそれなり。
 ドタバタした雰囲気はなかなか上手く表現されてるし、一枚絵でもカット割を多用していて平坦な印象はないです。まあもう少し頑張れるとは思うんだけど。OPムービーは素晴らしい出来、特に最初のイントロの部分で、シルエットと目線のカットインだけが入るところが何故か昔から大のお気に入り。

 システムはちょっと・・・。
 まず何より、全てにおいてクリック判定が小さい。恐ろしく使いづらいです。
 スキップはそれなりに速いけど、タイトルバックがないのはきつい。特に観賞にOP曲入ってないので、OPだけ聴くといったん終了しないとならなかったりして不便。ボイスカットもないし、もう少し頑張りましょうってところ。

総合(89/100)

 総プレイ時間、20時間くらいかな。
 手持ちで感想書いてない作品の中で、かなり上位クラスで書きにくいと思っていたこの作品ですが、かき始めると結構すんなりいったなぁと。ただ、それだけこの作品は感受性の間口が広いというか、人によっては全然違う印象を持つ作品でもあると思うので、これも参考程度、と思ったほうがよろしいかと。
 ただ、小難しいことばかり書いたけど、基本的に面白い作品ではあるので、今では手に入れるのも大変だろうけど気になるならぜひやるべき、としておきますかね。
posted by クローバー at 07:05| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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