2009年08月01日

きっと、澄み渡る朝色よりも、

 製作チームで水準以上が確実に期待出来たのと、アララギが尋常じゃなく可愛かったので購入。

シナリオ(22/30)

 痛みを伴うが故の、優しさの行き着く先は―――。

 『四君子』―――、それは主人公にとっての絶対。
 幼い頃から父親に虐待されて育ち、そのせいで極端に自分を卑下する癖が身についてしまっていた主人公、そんな主人公を、「友達になろう」と光の当たる場所に連れ出してくれた、大切な大切な仲間。
 
 『四君子』が『菊』、与神ひよ。
 『四君子』が『蘭』、夢乃蘭。
 『四君子』が『梅』、樫春告。

 彼女達と過ごした日々が会ったからこそ、主人公は人としての大切なものに気付くことが出来たと信じており、それ故に本来は笹である自分が『四君子』の『竹』として扱って貰える事に、喜びと恐れを同時に感じていました。やむをえない事情で彼女達と離れなくてはならなくなってからも、その名に相応しい人間になりたいと必死に努力を重ねてきました。

 霊峰、夢見鳥学園―――、それは芸術家の卵にとっての聖域。
 『四君子』が『四君子』と成った日の朝焼けに起因し、くしくも四人揃って芸術家の道を志し、念願叶って全員がその狭き門を潜り抜けた、主人公にとっては約束された再会の場所。家庭の事情で他の三人より入学が一年半遅れ、ある秋の日に学園にやってきた主人公が見たものは、秋だというのに枯れ木ばかりの学園と、離れている間に生じてしまった、『四君子』の距離感でした。
 ずっと求めていたものに裏切られたと感じ主人公は慟哭しますが、やがて気を取り直し、この学園での生活であらためて絆を取り戻して見せると決意します。こうして、主人公の学園生活がスタートするのでした。

 導入はこんなところですね。
 作品全体が『和』のテイストでまとめられている、すごく雰囲気のある作品です。文章も非常に雅飾が強く、かなり癖がありますが、日本語の美しさというものを上手く表現できている部分もあるのでまあ功罪相半ばといったところ。文章を読む、という行為そのものが好きな人にはさして苦になるとは思えませんが、普通のエロゲのような簡明かつ軽やかな文章をイメージしているとギャップに戸惑うでしょう。
 シナリオは基本的に一本道で、攻略ヒロインも厳密な意味で言えば一人だけです。ループもの、というのとは若干趣が異なりますが、結果的に同じ時系列を四周することになります。全体的な構成と、終盤での伏線の回収はかなり綺麗に収まっており、このライターさんが書いたにしてはびっくりするほどわかりやすくなっていますね。
 
 大きなテーマとして挙げられるのは“優しさ”ですね。
 かつて自分を闇の中から救ってくれた『四君子』のみんなが持つ優しさ、それを自分も身につけたいと願いながら努力し続ける主人公ですが、実は四人を繋ぎ合わせたきっかけが自分にあるとは露とも気づかず、また幼い頃のトラウマなのか、徹底的に自己評価が低く、また自己評価をすることが苦手で、故に自分が既にかつて求めた優しさを手に入れていることに全く気付きません。
 鈍感、の一言で作中では括られる主人公の性質ですが、それでもヒロイン達(あくまでここは達と書きますが)との交流を経ていくうちに、少しずつながら自分の気持ちや周りの人間の想いに気づくようになり、そしてそれがまた契機となって、この夢見鳥学園というクローズドサークルに潜んでいる強き想いを引き出していく、という流れになっています。そうした物語の罫線が非常に上手く絡まった二周目の出来は素晴らしいですね。三周目以降は若干説明過多になりすぎている部分があるので、物語を感性的に捉えた場合、一番美しいのはやはり二周目かなと。

 まあ絶対的アララギ派(笑)の私としては、理屈ではわかっても感情的に納得できない部分は多く、どうしてもその分評価に反映してしまっていますが、これだけ登場人物をきっちりと枠にはめておきながら、その枠を感じさせることなくのびのびと書ききっているのはすごい手腕だと思いますし、読み物として充分以上に面白かったと思います。ただ、エロゲという意味では相当物足りないですよね〜。かといってHシーンがなくても成り立つ作品かといえばそうでもないってところが、なんとも勿体無さを感じるところです。

キャラ(20/20)

 私の中ではアララギが全てです。
 いやもう、可愛いなんてもんじゃねーぞ。容姿、性格、仕草、秘めたる想いに至るまで、どこを切り取っても濁りがないというか、まさしく太陽のような輝きを見せてくれまして、もうアララギが出てくるだけで無条件に笑顔になれる自分がいましたよ。
 故にあの寸止めは泣いたなあ(笑)。というか、攻略できないからイチャラブできるシーンがほとんどなかったのに、その存在だけでSSつけてもいいんじゃね?と思ってしまうくらい好きなんで、もし攻略できてたらこの程度じゃすまなかっただろうなぁ。。。アララギルート補完パッチでも出してくれないかなあ・・・。
 いや、物語の完成度という意味では、ぶっちゃけアララギ攻略出来てしまっては台無し、ってのはよくわかるんですけどね。何故にみすみす、私の今年のトップクラスの贔屓キャラがここまで当て馬にされなきゃならんのかと、どうしてもその恨みからシナリオ評価を下げざるを得なかったという、ろくでもない話になってしまいました。本来シナリオとキャラは出来る限り切り離して考えているつもりなんですけど、その禁を破らせるくらいアララギが魅力的だったということで一つ。

 いや、ひよも結構好きなんですよ。ランクで言えばA+くらいには相当するだろうし、だけど対抗馬がアララギだった時点でどうしても贔屓目は向けられなくなってしまいました。。。
 ひよの献身というのも、どこかしら歪んだ過去から派生した部分が大きく、それ故に想いの複雑さがなかなか主人公のそれまた複雑な想いとなかなか重なることはないんですが、それでも一切めげずに献身し続けるその強さには素直に可愛いなと感じましたし、まあアララギが降りたくなる気持ちもわからんではないんですがね〜。
 普通この手の献身キャラというと、相手に尽くそうとするあまり自分というものを見失っている場合が多いですが、ひよの場合主人公に尽くす自分、という形を明確に意識して振舞っているので、その芯の部分の強さが最後まで折れない心に繋がっているんでしょうね。

 若も結構好きです。まともに登場するのが三周目以降なので、それまではなかなか魅力がつかみづらいところはありますが、その想いに触れるにつけすごく愛着がでてきます。
 まあ単純に考えれば、呪いの範囲があくまでこの学園に限定されている、という時点で、その想いの底にあるものは浚えるのではないかなと。立ち位置としてはヒロインではなく、親に愛して欲しい子供、というところでしょうし、おまけシナリオなんかでの可愛さは絶品でした。

 そして一つだけ言っておく、ロン毛坊主、貴様にアララギはやらん!!!

CG(19/20)

 いやホント、スタティと比べると格段の進化ですね〜。とっても可愛いです。あ、ちなみにこの項目もアララギ賛歌になることをお許しください。。。
 まず立ち絵に関しては、表情の差分がかなり多く、演出の細かさとも相俟ってすごく繊細な部分まできっちり表現できており、なかなかに素晴らしい出来だと思います。
 一番好きなのは、正面向きでやや首を傾いでいるアララギですね。特にその中でも、思案顔で横目になっている表情、照れてうつむきがちになっている表情、そして太陽のような曇りのない笑顔、この三点セットはもはや神光臨と言っても過言ではないです。。。あ、眼の下に隈みたいなの作ってのげんなり顔もいいですね〜。他にも、耳に手を当ててきょとん、としているポーズや、胸前に手を当てての力説ポーズとか、とにかく感情表現が豊かなのもあってか全てが可愛くて仕方がありませんね。あ、あとパジャマ姿が犯罪的に可愛いです。。。
 他キャラでは、ひよの照れ隠しの横目顔、若の呆れ顔とわんこ顔、春告の怒り顔あたりが印象に残ってますね。でも正直、立ち絵は大概アララギばかり眼で追っていたので、他キャラの印象が薄いのは仕方がない。。。

 一枚絵も、時折バランスが悪いかな〜ってのはあるけど、概ね可愛らしく美しく仕上がっていると思います。
 一番好きなのは、もうぶっちぎりで、水車小屋での消えゆくアララギ一枚目。これはすごい。このシーンのアララギの絵の出来は抜群ですね。自分の想いを、我慢するでも眼を逸らすのでもなく、現実をしっかり受け入れた上で全てを許しているような、愛情と輝きに満ちた表情、それに加えて背景の美しさ、シナリオの流れとしての場面の美しさがミックスされて、もうとんでもないほど心の琴線に触れてきますね。この作品、という枠を超えて、今年見た一枚絵の中でトップクラスの出来だと個人的には思っています。
 その他では、まずアララギ関連だと、消えゆくアララギの二枚目、指輪を貰って喜ぶシーン、雷に怯えるシーン、H未遂シーンの一枚目と四枚目、春告に抱かれて涙を流すシーン、身体検査のシーン、子供のときの、春告をつれて友達になろうと誘ってくるシーンあたりが好きです。
 ひよもいい出来の絵が多いですね。お気に入りは就寝時のシーン、子供の頃の泣きながら握手を求めるシーン、主人公の一度目の告白シーン、菊世と身写しになるシーン、廊下で倒れているシーン、お姫様抱っこのシーン、Hシーンの一、三、四枚目あたりですかね。
 あとは、若はみるくちーを抱きかかえて赤面するシーン、呪いに囚われつつ笑うシーン、子供の頃の折り紙を渡すシーン、春告は白組の男を問い詰めるシーン、青姉妹の子供の頃のシーン二つが好きですね。

 SD絵も、可愛いという方向性ではないですが、独特の雰囲気が合って作風にもあっており、いい意味で印象に残るのが多かったですね〜。

BGM(19/20)

 和のテイスト全開。
 ボーカル曲は三曲。
 OPの『紅葉』は神曲。これはいい。出だしのイントロからして雰囲気充分、恐ろしいまでに愁いを帯びたメロディラインと歌詞のマッチングは絶妙で、サビの部分も極端に目立つことなく、全体の調和を意識しながらもしっかり存在感はあるという、すごく耳に残る名曲だと思います。
 挿入歌の『藤の帳と夜の歌』もなかなかいい曲ですね。どこか子守唄のような、包み込むような雰囲気の強い歌ですが、その中に寓話のような切々とした想いも込められていて、総合して喪失感をイメージさせる曲になっています。
 EDの『明日を描く想いの色』も、淡々としたメロディラインの中に、ようやく手に入れた大切なものを守っていこうとするイメージがしっかり投影されていて、すごく綺麗な曲だと思います。

 BGMも相当いい出来ですね。まあ個人的に和の雰囲気が好きだという贔屓目はあるでしょうが。
 一番好きなのは『深呼吸の時間』。あの透明な雰囲気と、その中に含まれる優しさのようなイメージがすごく好きです。
 その他、『与神ひよ』『夢乃蘭』『憧憬への道程』『生ある彩の祭』『子供のように泣けばいい(右)』『児戯たる“鬼ごっこ”』あたりが好きです。

システム(8/10)

 演出は素晴らしいですね。
 背景演出、立ち絵を動かしての演出、カットインやSD絵を使っての演出、一枚絵の演出、どこの場面を取ってもすごく丁寧に演出が組み込まれていて、全体的にすごくバランスがいいです。特に個人的には、キャラの細かい動きが可愛くて仕方なかったですね。デートといわれてもじもじするひよとか、春告の後ろからぴょこんと現れるアララギとか。
 OPムービーもすごく雰囲気があって好きです。

 システムはイマイチ。
 設定メニューがまず使いづらいし、ボイスカットしないと声重なるから意味ないし、ワイド対応が効かないし、ジャンプ機能も選択肢までではなく未読までだから再プレイのときに使えないし、まあなんか全体的にやや不便、って印象ですかね。

総合(88/100)

 総プレイ時間、20時間前後。
 まあなんというか、好きになってもらうのにやたらハードルが高い作品ではありますね。。。評判も賛否両論真っ二つに分かれているみたいですし。まあ癖のあるテキスト、一本道のシナリオ、と普通のエロゲらしさってものはあんまり感じませんし、そのへんは仕方ないのかも。
 ただ、このライターさんの作る作品の方向性は大体似通っているし、そのへんはわかった上で買っているから、個人的にはほぼ期待通りの出来だったと言えます。何が期待通りじゃなかったかなんて、もう聞かないでもわかりますよね(笑)。
 そういうシナリオの方向性はともかく、全体的にはすごく水準の高い作品に仕上がっていますし、やってみるべき作品だとは思うんですけどね〜。
posted by クローバー at 05:57| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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