2009年08月29日

マブラヴ ALTERNATIVE

 いつかやろう過去の名作シリーズ最後にして最大の砦。これで一応、現状ではスペックの関係で無理、ってのを除けば、巷で超名作判定されている作品は打ち止めですので、そういう意味では残念でもあり、しかし何でもっと早くやらなかったかと昔の自分を怒りたい気分もあったりなかったり。。。

シナリオ(28/30)

 信念の果て。

 マブラヴ三部作、最後にして至高のシナリオですね。
 かつて、平和な世界から突如BETAと呼ばれる宇宙人との戦争を繰り広げている世界に放り出された主人公。その戦いはオルタネイティヴ5の発動により、ほぼ人類の敗北といっていい形で終わります。
 そしてある朝、主人公は目覚めてみると、かつての自分の部屋の中にいました。それは、かつてこの世界に飛ばされてきたときと全く同じ状況で、しかしながら主人公は所々曖昧ながらきちんと過去の記憶を持っています。半信半疑ながら街に出て調べたところ、どうやら主人公は初めてこの世界に来た日にまたしても舞い戻ってきたようなのです。
 その現実に辿り着いたとき、主人公の頭をよぎったのは、かつての世界の悲惨な終焉でした。もしこの世界でもう一度やり直しが出来るなら、今度は絶対にあんな悲惨な結末にはしない、オルタネイティヴ4を成功に導いて人類を破滅から救おう、そう決意した主人公は、前回と同じように基地に赴き、自分の知っている情報を餌にして夕呼先生に自分の存在の特異性を認めさせ、再び横浜基地B207小隊の訓練兵として戦いに赴くのでした。

 とまあ、出だしはこんなところですね。
 人類の滅亡を防ぐという壮大な理想論を掲げて再び戦いの場に身を投じた主人公は、前回の経験を糧に率先してチームを率い、そして前回の世界では出来なかったこと、わからなかったことを貪欲に進めていきます。最初のうちこそ、未来を知っているということと、曲がりなりにも数年実際に衛士として働いた経験をもって、順調に世界を改変していきますが、その改変によって徐々に主人公の知らない事態が頻発するようになるにつれ、現実と理想の狭間に立たされて苦悩することが増えていきます。
 また、アンリミテッドではわからなかった霞の秘密やオルタネイティヴ4の真実が明らかになるにつれ、徐々に主人公はこの世界で、自分の覚悟の強さを問われる機会が多くなり、それをどうにかして手に入れようともがき苦しむことになります。

 細かい話はネタバレになってしまうので避けますが、人類滅亡をかけた戦争をやっている世界であるからして、当然のように親しい人との別れや作戦の挫折など、これでもかというくらい多くの不幸が主人公達の身には降りかかってきます。特にB207小隊の面々は、元々出自に様々な事情を抱えているせいで、余計に悩み苦しむことが多く、ここまでそれを支えてきた主人公にも、自分が本来この世界の人間ではないという部分から、この世界の人間の精神の立脚点にあたる何かを自分が持ち得ないことが大元となって泥沼のような悩みに足を踏み込んでしまい、彼女達の支えになってあげることが充分にできなくなります。
 それでも、先任将校たちの励ましや支え、そして戦いで死んでいったものたちの想いを無にすまいとする責任感、そして大義に囚われない、等身大の自分にとっての戦う理由などを少しずつ身につけていき、不器用ながら本物の衛士へと全員が成長を果たしていきます。そういう意味で、この作品は主人公とヒロイン達の成長の物語であるとも言えますし、またそうした成長は、環境や境遇に左右される部分はあれ、どんな世界でも心次第で持ちえるものなのだと、無印マブラヴから続く各キャラの根本的な部分での精神性の一致から読み取ることが出来ますね。

 そんな中でも、やはり主人公に降りかかる災いの大きさは特別ですね。
 当初この世界に来たときはお題目のように理想論ばかり唱えていた主人公も、あまりに過酷な現実を見るにつけ少しずつ迷いを深め、時には逃げ出したりもしてしまいます。元々打たれ弱いというか、ちょっとしたことで落ち込み、挫折しやすい性格なのですが、その中で自分が進むべき道を見出すことが出来れば、後は一心にその道を貫き通せる強さも持ち合わせており、その強さと弱さが同居したところがこの主人公の最大の魅力でもありますね。
 そういった主人公たちの境遇を端的に示している台詞としてひとつ、「やりたい事を一つ成し遂げようとしたら、その前にやりたくないことの10や20は成さなければならない。それを苦労、と感じるようでは、やりたい事を成し遂げる資格はない。」というのを挙げておきましょう。遙の台詞なので言い回しはだいぶ違いますが、大意はこんな感じだったはず。
 理想を叶える為には、どうしても切り捨てなければならないものがある。特にこんな世界では、それが人の命そのものである場合も少なくない。そんな過酷な世界で、元々は平和な世界に暮らしていた主人公が、それを成しえるだけの強さを得るために様々な試練を乗り越えていく様は素直に感服しますし、またプレイヤーにそれを理解させるために必要以上に強調してきた構成も素晴らしいとしか言いようがないですね。
 無論、全ての考え方を許容できるわけではないけれど、少なくとも自分がその立場になってしまったらどんなことが出来るのか、それを意識させるくらいには吸引力のあるシナリオであると感じます。例えこういう考え方が全面的に嫌いでも決して無視できない、そんな印象ですね。

 そうした中で浮かんでくるのが、純夏という存在の大きさですね。
 マブラヴ無印のシナリオではかなりわかりにくかった純夏の想いですが、オルタネイティヴシナリオにおいての主人公の立場から浮き彫りにさせられるその想いの強さには感銘を通り越して怖いくらいです。人が覚悟を全うするために立脚点を必要とするならば、その世界観の中で最強にしてもっともシンプルな立脚点を持っているのが純夏だと言えるでしょう。まあどういう意味で最強なのかは原作をやってもらうしかないとして、愛こそがそれを成しえた最大の要因という考え方はどんな世界においても普遍であるわけで、だからこそ元の世界であれ向こうの世界であれこっちの世界であれ、純夏という存在が存在する最大の理由はただ一つ、だからこそ偉大であると思えるのでしょう。この作品が三部作であり、それぞれ世界観をガラッと変化させている最大の要因は、この要素を明確に浮き彫りにするためではないかとさえ思えます。
 オルタワールドでも終盤になって登場する純夏と、その思考を全てトレースした上で、主人公の想いも受け止め、ただそこに在り続ける霞の存在、そしてこの世界においても至高と呼ぶべき精神の純度の高さを持つ冥夜、最終的にはこの三人の存在が主人公を支える大きな柱となり、主人公にその理想を全うするだけの覚悟をもたらした、という形になりますかね。もちろんそれ以外の人からも多くの影響を受けており、このあたり陳腐ながら、人は一人では決して成長できないし、前に進むことも出来ないというメンタリティが嫌味なくらいに浮き彫りになります。

 ともあれ、そういった成長譚的な読み取り方がある一方で、純粋にエンターテイメントとしての面白さも隔絶しています。やや冗長に過ぎるきらいがないとはいえませんが、少なくとも無駄な出来事や場面といったものはほとんど存在しませんし、特に夕呼先生との会話は、後になってこういう意味だったのかと痛感させられる部分が多く、二周目をプレイしたときなんかその覚悟の重さに改めて打ちのめされました。そういう重みを台詞の中にぐっと詰め込んでいるので、いくら専門的で長々としていても、個人的には全く苦になることなく読み進められましたね。
 あと挙げておかねばならないのは戦闘シーンでしょうか。
 こちらはもう圧倒的な演出力に支えられての迫力あるシーンの連続で、特に全体のスピード感は素晴らしいものがありますが、逆に言うとテキスト面での直接的な戦闘描写を避けているとも言え、そのあたりは功罪相半ば、という感じです。いくら演出が優れているといっても、アニメーションのレベルにまでは達していないので、起動の特異性や迫力が若干削がれているのも事実ですし、あと後述しますがいくつかの場面ではそれゆえに緊迫感を欠いたことも否めないかなと。
 個人的に好きなのは佐渡島ハイヴ攻略戦ですね。月並みですが、人類の希望の一撃がハイヴのモニュメントを吹っ飛ばしたシーン、あれには感動しました。もちろんそれだけでなく、バトルのスピード感、刻々と変化する情勢とそれに必死に対応する衛士達の敢闘、そして海軍艦長たちの静かな覚悟、壮絶な最後に至るまで、このシーンは演出とテキストの全てがばっちり噛み合っている印象でした。
 逆に言うとこれ以降の戦闘、特にラストのオリジナルハイヴ攻略戦は、キャラの精神性の尊厳を強く打ち出してしまっているせいか、単純にバトルとしては臨場感が足りないんですよね。もっとも、如何にそれまでに比べて有利な要素があったとはいえ、あの作戦そのものが無茶苦茶にも程があるわけですが。。。まあシナリオ展開上、それをしなければならない必然は確かに理解できますけど、それを必然とするならばそれ以上欲張るべきではなかったのではないかな〜と愚考する次第。なんというか、本来のるかそるかの大博打のはずのラストバトルが、RPG的に言えばラスボスの後に来るイベント戦闘みたいな雰囲気になっちゃってるんですよね。
 最後にしたって、そりゃあそこで悩まなければ主人公じゃないけど、いくら何でも悠長に過ぎるだろとどうしても思ってしまった時点で、その精神性の尊さまでしらけた雰囲気に巻き込まれてしまったような気がして、ものすごく勿体無く感じたのは事実です。正直、最後に全部霞に語らせれば良かったんでは・・・、とまで思ってしまったのは霞に対しても他ヒロインに対しても失礼なのは承知しているんですがね。。。

 まあそんなこんなで、いくつか納得できない部分や物足りない部分で減点させてもらったものの、質・量ともに極上のエンターテイメントであることには異論の余地がありません。まあマブラヴから通してだと60時間はくだらないので、そう安々と手をつけられる印象ではないですが、睡眠時間削ってでもプレイする価値のある作品ではありましたね。

キャラ(20/20)

 まあこれは満点をつけないわけにはいかないでしょう。
 マブラヴ無印の世界で見られたヒロイン達の長所と短所、それを長所の部分だけ大きく拡大し、短所の部分も様々な出来事を経て克服していく過程がオルタの醍醐味でもあるわけですし、まさしく一回り以上大きくなったヒロイン達の姿は、あんな世界にあってもなお眩しさを保っていました。
 B207小隊の中では、やはり特に冥夜の存在は抜きん出ていましたね。そのとてつもなく不遇といえる境遇において、常に自分以外の誰かを案じていて、逆に自分のことは強く律しようと踏ん張り続けている姿は、正に不屈、という言葉がぴったりで、そうしたしがらみから突き抜けて、初めて自分のために生きることが出来るようになっても、その芯の部分が全くぶれない高潔さには尊敬の念しかありませんね。

 そして成長著しいという意味でも、キャラとしての魅力でも決して個人的に外せないのは霞ですね〜。霞もまた特殊かつ不遇な境遇から色々と抱えているものがありますが、その特殊な能力ゆえにか自身の想いを表に出すことそのものが少ないので、たまに出てくるシンプルな一言が痛いほど響きます。「よわむし」とか、他のどんな台詞より突き刺さってきましたもんね〜。
 そんな霞が、主人公や純夏との交流の中で少しずつ思い出を手にし、人らしさを手にしていく過程は見ていて嬉しかったですし、最後に全ての悲しみを背負ってなお主人公を支える姿は、本当に強くなったと思うと同時に、この世界のあるべき姿を体現しているんだと素直に信じられましたね。
 そして単純にキャラとしても可愛過ぎ〜。うさ耳がぴこぴこするところとかめっちゃ可愛いですし、言葉は少ないものの何気に表情の変化が細かいのがまたいいんですよね。キャラとしては純夏を抜いて、マブラヴワールドでは一番好きです。

 もちろん純夏も可愛いしいじらしいですけど、出番が後半に限られてしまっているのと、オルタワールドでの立ち位置が特殊すぎるせいもあって、本来の魅力を存分に発揮、とまではいかなかったかなあと。日記のシーンとか公園での抱擁のシーンとかは、間違いなくメインヒロインの風格ばっちりでしたけどね〜。

 そしてオルタワールドでの月詠さんのかっこ良さは異常。それでも無印ワールドと根本的なメンタリティは変化してないんだから、如何に冥夜がすごい人に養育されてきたのかってのがわかるし、だからこその冥夜の存在でもあると感じさせる凄みのある人物ですね。

 あともう一つだけ、遙可愛いよ遙。。。
 君望でも充分に好きだったけど、むしろこっちのほうがキャラの魅力は生かされているような気がしないでもない。殺伐な世界観の中での癒し系キャラは貴重だし、見せ場も存分に用意されているので個人的に大満足です。

CG(19/20)

 とりあえず鑑賞がないので細かい評論は出来ないんですが、とりあえず作品内で使われたであろうカット絵の枚数を想像すると鳥肌が立つくらい、ものすごく緻密に作られているなあと。特に戦闘シーンとか、どういう処理をしているのかってくらい細かく動いてますからね〜。あれには素直に脱帽せざるをえない。
 相変わらずキャラのデザインも可愛いですしね。一枚絵になると微妙に顔が変わるのはもう諦めたけど(笑)、出来そのものに問題があるわけじゃないからまあいいかなと。ちなみに霞の立ち絵の可愛さは異常。あと戦闘カットインでの茜の表情がものすごく好き。。。

BGM(19/20)

 こっちも鑑賞がないので細かい部分はフィーリングですが、無印からの使いまわしも多いものの、ここぞというシーンでは素晴らしい曲を使ってくるし、ボーカル曲のインストバージョンの使い方が実に上手いですね。
 とりあえず『未来への咆哮』は間違いなく神曲中の神曲。かつて男性ボーカルだからって理由だけで敬遠してた自分、死んで良し。とはいえ、これ好きになってたらもっと早く本編もプレイすることになってただろうから、逆に楽しみを今まで伸ばせたという意味ではOKなのかな。サビ後半からのヴァイオリン単奏の部分と、Bメロの前半部分が特に圧倒的に好きですが、曲としての完成度も抜群でただいま絶賛ド嵌り中です。全年齢版のNAMEもすごくいい曲だと思うんだけど、でもゲーム開始して流れてくるのがそっちだとつい再起動しちゃう(笑)。

システム(10/10)

 演出に関しては、無印レベルでもう神降臨だというのに、そのはるか上をいくんだからもう脱帽を通り越して呆れてしまいますね。。。もうよく動くとかそんなレベルじゃない、完全に動きが物語の進行とシンクロしてます。これを見たらもう誰もエロゲ=紙芝居なんて世迷言は言えなくなるだろうな〜ってくらいの出来。

 システムも当然AGESなので何にも問題なし。
 敢えて言うなら、これだけ長いシナリオであるから二周目のために選択肢ジャンプがあればベストでした。スキップは高速なんだけど、時々固定演出に引っかかるからなあ。。。

総合(96/100)

 総プレイ時間、32〜3時間。一本道のシナリオとしてはとんでもない長さですね。でも、それに見合うだけの密度と面白さは保障します。
 基本的に雑食の上八方美人なので(笑)、世評で面白いとされているものなら大概楽しめる自信がある私ですが、今回もご多聞に漏れず抜群に楽しませてもらいました。ただ、これでもどちらかと言えば合わなかったほう、に分類される気はします。シナリオの面白さだけなら、普通に満点付けてもいい出来のところを減点してるのも、そのあたりのフィーリングの違いにあると思えますし。逆に言えば、それでもSSランクを叩き出すんだから、嵌った人にはもはやバイブルレベルだろうなあと。
 もうこれで、超クラスの傑作のストックがなくなってしまったのは非常に残念。後は新作の中から傑作が生まれるのを待ち続けるしかないですからね〜。
posted by クローバー at 05:36| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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