2010年04月04日

WHITE ALBUM2 〜introductory chapter〜

 シナリオ丸戸さんですから買うに決まってます。


シナリオ(27/30)

 完膚なきまでの、どうしようもなさ。

 主人公は学園の三年生、安心、安全、誠実をモットーに、とにかく周りの人間のことを放っておけない極端なお節介で、その性格柄教師からは優等生のお墨付きを、学友からは面倒ごとを何でも解決してくれる便利で頼りになる委員長という評判を、入学以降ずっと保ってきました。しかし、主人公の隣の席に座る、一昔前のテンプレ的不良行為を地でいく少女、冬馬かずさには、そのお節介も空回り気味で、さてどうしてこのお隣の心を溶かしてくれようかと懲りずに意気に感じる日々。
 そんな主人公でも、せっかくの学園生活に一つくらいは華々しい思い出をと、親友の武也に誘われたこともあって軽音楽同好会に加入し、学園祭ステージの一端を彩ろうと考えていたのですが、本番一ヶ月前になってメンバー同士のいざこざでグループは空中分解、メンバーが主人公と武也の二人だけ、しかも二人とも担当楽器はギターというのっぴきならないことに。

 ちなみにこの学園には、普通科の他に音楽科があり、音楽を専攻する学生のために三つの音楽室が用意されていました。普通科の棟て隣接して用意されている第一、第二音楽室、そして音楽科の棟に第三音楽室があり、基本的に第二、第三音楽室は音楽科が独占的に使用しており、楽器の練習などで場所が欲しい音楽を愛する一般学生からはその処置に不満がアリアリ。結果として普通科と音楽科は伝統的に仲が悪く、互いに接点を持たない学生生活が営まれていました。

 しかし主人公は、夏休みの頃からか、隣の第二音楽室で自分の下手なギターに合わせて演奏をセッションしてくれる相手がいることに気付き、しかしその相手は部屋を閉め切って絶対に顔を見せてくれることがなく、まあ音楽科にも変わり者で気のいい人はいるんだなあと漠然と考えていたりしたわけですが、さてこの本番一月前になって突然メンバーが誰もいなくなった状況で、元々勢いだけの無茶を嫌う主人公としてはステージを諦めざるを得ず、そうするとわざわざそのためだけにはじめたギターを続ける理由もないわけで、自分なりの最後のけじめとして、顔も名前も知らない音楽科の誰かと、自分の最も好きな曲をセッションすることで、自分の最後の演奏にしようと考えていました。

 その曲は『WHITE ALBUM』。

 予想通り、主人公の演奏に合わせて隣から抜群に上手いピアノの伴奏が流れてきて、心の中で感謝を捧げた主人公ですが、突然そのセッションに、綺麗な歌声が混じってきました。その素晴らしいまでの調和に一瞬息を呑んだ主人公は、そこに、いったんは諦めかけた学園祭ステージへの希望があると信じて、声の元である屋上に向かって走り出します。

 果たして屋上では一人の少女がピアノだけになってしまった伴奏に合わせて気持ち良さそうに歌声を響かせていました。
 少女の名は、小木曽雪菜。
 この学園において、一年のときから二年連続でミスコンで優勝し、三連覇は堅いと目されている、誰もが知っている学園のアイドルでした。

 敷居が高いと思いつつも、その歌に魅せられてしまった主人公は雪菜を学園祭ステージを誘い、多少の紆余曲折あるも雪菜はそれを受け入れてくれますが
、しかし主人公と雪菜が望むステージを行うには、どうしても第二音楽室の謎の主の存在が不可欠というのは二人の認識で一致しており、正攻法で音楽科に当たってみたもののそこには第二音楽室の主はおらず、やむを得ず隣の部屋から窓越しに潜入するという非常手段に出ることに。
 その途中で手を滑らせ、教師にも見つかり、散々な状態で主人公が初めて目にした第二音楽室の主、なんとそれは隣の席の問題児、冬馬かずさだったのでした。
 『WHITE ALBUM』が繋いだ三人の出会い。その運命的な出会いの先に待ち構えているのは果たして・・・、というのが、基本的な内容になります。

 
 久しぶりの丸戸さんの作品ですが、相変わらず素晴らしい出来でした。
 まずもって、テキスト回しの秀逸さは過去の名作と比較しても更に一歩抜きん出る出来だったと思います。今回のシナリオの場合、きちんとした一本道のゴールが設定されている以上、それを基点として逆転的に台詞回しを構成しやすいという部分はあるにせよ、シナリオ全体の大枠に、あるいは直近の場面に対して、時には即妙性も見せて、とにかく無駄がないくせに一つの台詞でいくつもの場面にかかる意味を持たせたり、行間や無言が恐ろしいまでに効果的に言葉にされない想いを晒していたりと、その骨格はきちっとしているのに変幻自在の趣もあって、普通にキャラに目を向けずとも、言葉を追いかけているだけで楽しいという素晴らしさ。
 だから、というわけでもないですが、一周目より二周目のほうが更に面白かった気がしましたね。それぞれの台詞がしっかり暗示になっていたり皮肉になっていたり、あるいは切なる願いに摩り替わっていたりと、小説込みで全ての情報を網羅した上で読み返すと全く違う視点で物語が楽しめる構成で、そのあたりもしっかり考えられているなあと。

 物語としては王道的な三角関係からの袋小路、という流れで、まあ目新しさはないんですけれど、このシナリオの真骨頂は、そのありふれたプロットをぐうの音も出ないほど説得的に仕上げきった一点にあります。
 それは元々、この三人がそれぞれに望んでいる在り方に対する答えは存在しないという前提に依拠する部分もあるのですが、なぜそう望んでいるのか、なぜどこかで道を修正することが出来なかったのか、ここまで致命的な破綻を避ける手段はなかったのか、そういう本来説明しにくい心情的な部分を、ここまでの三年間のそれぞれの学生生活の在り方を通して、この決して長いとは言えないシナリオの中で明確に説明出来てしまっているんですよね。
 例えば一つ一つの場面を論って、ここでこういう言動や行動をすればこうはならなかったというifの話をすることは出来ますが、このシナリオはそういう蓋然性を、たった一つ、そんな行動をするのはそのキャラらしくない、というイメージだけで払拭できる力強さがあります。

 そういう説得力を持たせた上で、なのにその三人がそれぞれ自分らしくあろうと振舞ったならば決して破綻は避けられなかったという組み合わせになるのですから、それはもう残酷な運命としか言いようがないんですよね。
 主人公の三年間、雪菜の三年間、かずさの三年間、それぞれがそれぞれのスタンスで積み上げてきた三年の間に身についてしまった自分らしさ、誰もがいい加減そういう自分にどこかに寂しさを感じて、変えていきたいと思っているのに、それでも当座の問題に対しては慣れ親しんだスタンスで対処してしまう、それは人間の生理的反応としてどうしようもないと思える部分だし、その上で三人が三人とも少しずつ間違え、すれ違ってしまった結果だと受け止めざるを得ないわけです。
 そして、その三人を少しずつ間違わせた要素が恋心であるという現実がまた痛々しさを助長するんですよ。よく初恋は実らない、なんていいますが、論理的かつ現実的にその言葉を吟味するならば、それは単純に恋、そして恋愛に対する経験不足が一番大きな原因であることは疑いのないことで、厚意と好意、更にそれ以上の気持ちを自分の中で咀嚼して比較できる経験がないことが、果たしてこの三人の関係においても大きく影響を及ぼしたのは間違いのないところです。

 恋と友情を必要以上に両立させようとしたり。
 恋という気持ちを必要以上にロジックに押し込めて解釈しようとしたり。
 恋することに必要以上に臆病になってしまったり。

 それぞれが、それぞれの人生の経験にすり合わせて解釈した初恋の行き所は、それが目的ではなく手段となっていた学園祭ステージというくびきを失ったことで一気に膨れ上がり、暴走し、そしてそれはもう後戻りできないところまで来ていたという悲しい現実に直面し、悩み、苦しみ、後悔し、煩悶して、最後の最後に全ての虚飾を剥ぎ取って得られたその気持ちの答えはもう現実に置き場がなくなっていて、そこに至るまでの構成が憎たらしいほどに説得力があって、ホント素晴らしく面白かったですし、とんでもなく胸が締め付けられました。

 
 一応この作品は二部構成ということで、このシナリオを前提とした上で第二部が語られるわけですが、いくつか伏線的なエピソードは残っているものの、基本的に物語としてはきちんとこれで一つの完結を迎えていると感じられたので、特に迷うことなく素直に感想を書けましたね。次の舞台は奇しくも三年後ということで、おそらくはこの結末によって変わった生き方がまた違う道に行き当たるまでの時間、という意味合いでのインターバルなのでしょう。まあ確かに、これですぐに他のヒロインとどうこう、なんて流れには出来ないですしね。。。
 個人的には、三年後の雪菜は鬼のように楽しみです。恋する気持ちよりも何よりも一人にされることを嫌った雪菜なのに、きっとあの第二部OPでの糾弾はそれに対する約束を裏切った主人公に向けられているんだろうし(プロフィール的にも覗える部分ですしね)、確かにそれは、三人でいるという約束が壊れたからといって反古に出来る位置づけの約束ではなかったよなあと感じるだけに、それを踏まえての三年分の雪菜の鬱屈がどういう風に爆発するのか、そしてそれでも心の隅に育み続けた想いがどこまで膨れ上がっているのか、もう楽しみすぎますね。日記でも書きましたけど、とにかく今年の冬あたりにはきちんと発売されることを切に期待しています。


キャラ(20/20)

 登場人物少ないですけど、その分一人一人の位置づけとキャラ付けがすごく明確になっているし、それぞれが魅力あるキャラに仕上がっていて素晴らしいと思います。
 
 たぶん世間的にはかずさのほうが人気あるんだろうなあと思うんですけど、私は雪菜のほうが好きなんですよね。そりゃ相対的に見てしまえば雪菜の抱える悩みや問題は他の二人に比べてどうかってのもあるし、それを盾に、というつもりではなくても、潜在的にその部分をキーにして周りを振り回しているという現実派確かなんですけど、そういう絶対的な視点からの見方で判断させないだけの説得力はシナリオにあったし、何より全てをわかっていても自分の気持ちに正直に突き進めるあたりが一番の魅力ですよね。
 実際問題、三人が出会わなかった場合に果たして主人公とかずさが懇ろな関係になれたかと言えば、正直なところNOと言わざるを得ないですし、結果として暴走のキーを捻ったのは雪菜だとしても、少なくとも主人公とかずさはそれを恨むどころかむしろ感謝している部分すらあるんじゃないかと思えますしね。そういう、自分の気持ちに真っ直ぐ向き合えない二人の鎹としての魅力も大きかったと思います。

 もちろんかずさも好きなんですよ。そりゃ二周目やれば誰もが絆される部分はあるでしょうけど、むしろ個人的にはそういう可愛げの部分ではなく、自分の中に入れた相手に対する限りないまでの思いやりとお節介に惹かれますね。ただその範囲に入るのまでがものすごく難しいという難関はありますけど、確かにヒントはいっぱいあったのに、かずさのそういう部分に気付こうとしなかった主人公には落ち度があると素直に思ってしまいますねえ。

 主人公に関しても、そりゃ上っ面だけ見れば二股の最低野郎といわれても仕方ない部分はあるんですけど、当然それだけではなく魅力が沢山あるからこその流れであるのは認められます。一つ引っかかるとすれば、誠実さも嘘をつかないということも、どこまでも自分の主観としてしか捉えられていない部分ですよね。生き方としてすごく難しい在り方だと思うし、いったんこれが折れてしまってその後三年間、とのように変化していったのかは気になりますけれど、この時点で言えるのは、気持ちは押し付けるだけじゃどうにもならないってことですかね。


CG(16/20)

 なんか所々ムラがありますねぇ。基本的には可愛らしいしかっこいいんですけど。量的にももう少しあって欲しかったです。
 
 立ち絵に関しては、差分の少なさはともあれ、かずさに微妙なのがちょっとあったかなあ。雪菜に関しては特に文句ないんですけど。
 お気に入りは雪菜の振り返りでの怒り顔、泣き顔、正面やや斜め向きの笑顔、きょとんとした顔、拗ねた顔、かずさの呆然とした顔、すまし顔、振り返りでの微笑あたりですね。

 一枚絵は27枚しかないし、時々輪郭や線が別人っぽいのが気にはなりましたが、まあそれなりの出来ではと。
 お気に入りは音楽室でのかずさ、キーボード演奏中かずさ、三人で混浴、三人でドライブ、くらいですかね。


BGM(19/20)

 音楽を扱った作品ってのもあるのか、全体的にかなりの出来。
 ボーカル曲は、書き下ろしという意味では3曲でいいのかな?
 OPの『届かない恋』はいい曲ですね〜。特にAメロの歌詞と切ないメロディラインが最高です。つかこれ、歌詞をどう聞いてもかずさがモデルですよね。。。
 挿入歌の『After All 〜綴る想い〜』は超名曲、もしくは神曲かも。それくらい好きです、このあまりにも切なすぎるAメロ、喜びと哀愁が入り混じったサビ、合間のイントロも素晴らしいですし、個人的に超お気に入りです。
 EDの『Twinkle Snow』もそこそこいい曲ですね。まあぶっちゃけEDとしては、ラストで流れたOPのほうがイメージ的には相応しく感じてしまったりもするんですが、それを踏まえた上での一つの区切り、と捉えれば、これはこれでイメージに合うのかもですね。サビのメロディは好きです。

 あとはいくつか1からの曲が入ってますね。個人的には私も『WHITE ALBUM』のほうが好きです。ちなみにカラオケでしか流れなかった『深愛』は後々意味があるのかな?

 BGMも季節感と雰囲気にしっかりマッチしたいい出来の曲がそろってますね。
 特にお気に入りは『言葉に出来ない想い』。ホント切ない。
 その他お気に入りは、『穏やかに過ぎゆく時』『氷の刃』『本当の、嘘』あたりですね。


システム(8/10)

 演出は派手さこそないもののなかなかの出来。
 特に演奏シーンをカットしないできっちり見せてくれたのはいいことだと思いますが、日常の練習でまでそれやるのはちょっと重いし、出来れば二回目以降はカットできるようにしてくれると良かったかなって。

 システムもまあ普通。特筆するところもないですが、特に駄目なところもないですね。


総合(90/100)

 総プレイ時間は8時間ですかね。
 でもその密度は凄まじいものがありますし、小説を読んだ上で二周目をプレイしてもまたじっくり楽しめるだけのポテンシャルはありますので、総合的に楽しめる質量としてはかなり優秀だと思います。
 まあ悲恋がテーマということで尻込みしている人もいるかもですけど、方向性は切ないばかりで、痛々しかったりドロドロしたり、そういう展開はほとんどないので、素直にシナリオにのめりこめると思います。個人的には丸戸さんの作品の中でもピカイチの出来ではないかと思いましたが、まああくまで序章、という点を考慮しての点数だと思っていただければと。まあそれでこれなんだから、第二章が発売されて完結すればどれほどのものになるのか、今から楽しみで仕方ないですね。
posted by クローバー at 08:30| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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