2010年04月07日

恋色空模様

 緑茶の演出と非常に食い合わせの良さそうなシナリオ構成、そしてキャラが非常に魅力的だったので心待ちにしていました。


シナリオ(21/30)

 正真正銘、質より量。


 特に目立った産業も観光資源もない、否応なしに過疎化が進みつつある神那島。
 しかしその島に、新時代のエネルギー開発を研究する海洋資源研究所が設置されたことで、結果として本土との間に大橋が設けられ、その恩恵を受けて最近は多少ながら活気を取り戻してきました。

 そんな神那島に、主人公は半年ほど前に母親の仕事の都合で引っ越してきました。
 元々この島には、研究者である義理の父と義理の妹である美琴が住んでおり、母親が父親の研究を一緒に手伝うことになったのを契機に、久々に家族四人の生活が出来るようになりました。しかしながら研究の虫である両親はほとんど家に寄り付かず、数年ぶりの再会となった美琴とは些細なことからギクシャクした関係になってしまい、日々妹の冷たい視線を浴びてお兄ちゃんとしての自信を喪失し続ける日々。
 それでも、かつてこの島で知り合った幼馴染の彩とはすぐに仲のいい関係を取り戻せ、その関係で春樹や久志という得がたい男の親友も出来、最初は都会と比べて何もないと思っていた島の暮らしもだんだん楽しめるようになってきました。

 そんなある日、春樹と久志の不用品持込という悪さに巻き込まれて、学内きっての武倒派集団である風紀委員に追いかけられることになった主人公。
 山の中に逃げ込んだら、廃屋の側でミステリアスな刀少女の佳代子に出会って匿ってもらい、山を降りてやっと一息ついたら、金髪ツインテの破天荒な風紀委員聖良に証拠隠滅をかけての勝負を吹っかけられ、彩の機転によってなんとか虎口を脱した主人公は、学内に逃げ込もうとして間違えて生徒会室に乗り込んでしまい、天然気味の生徒会長静奈にも匿ってもらい、やっとのことで証拠品を回収したものの、逃げ場がなくなってやむなく中立地帯の保健室に世話になり、保健委員である美琴の蔑んだ視線をこれでもかと浴びるという散々な一日。
 しかしそのおかげで、今まで狭い範囲に留まっていた島内での友好関係が一気に大きく広がり、主人公はその卓越した家事スキルとDIYスキルと頭脳派の行動によって彼女たちに一目置かれるようになり、これからはこれまで以上に楽しい日々が続くと信じて疑いませんでした。

 ですが、そんな日々に冷水をかけるかのように、学園に突如として廃校問題が発生します。
 詳しい説明も説得的な理由もなく、ただ一方的に校長が告げた本年度いっぱいでの廃校は学内のみならず島内にも波及し、その一方的かつ理不尽な通告に反発する形で反対運動が巻き起こり、主人公の友人たちはそれぞれの立場からその運動に巻き込まれていきます。
 まだ島に来て半年足らずの主人公はまだ島にも学園にも思い入れは少なく、そういった運動との温度差を感じで一人身の置き所に迷っていましたが、そうこうしているうちに反対運動のリーダー格に祭り上げられていた春樹が、反対運動に対する暴力的な妨害活動にあい、意識不明の重体になってしまいます。その事態によっていったんは沈静化した反対運動ですが、春樹の無念を汲む友人たち、特に彩は活動を諦めようとせず、結果的に彼女もまた妨害活動の餌食になりかけてしまいます。
 聖良や佳代子の力を借りてなんとか最悪の結果だけは阻止出来たものの、ここまで大人気ないことをしてまで理のない廃校を推進する理由に不審なものを感じ、かつ、これ以上大切な友人が傷つけられているのは見ていられないという義憤から、主人公は反対運動のレジスタンス活動を行うことを決意します。
 レジスタンス活動なので大々的に人を集めるわけにも行かず、最初は彩、聖良、佳代子との四人ではじめた活動は、やがて静奈に美琴、事件以来ずっと塞ぎこんでいた久志、そして静奈のお目付け役である清美、聖良の親友で風紀委員でもある優喜、美琴の親友で生徒会役員でもある藍子を巻き込み、総勢十人で、今回の廃校騒動の裏に潜む思惑に立ち向かうのでした。
 チーム名は、神那島クルセイダーズ。果たして彼らは廃校問題を撤回しさせて、元の平穏な生活を手に入れることが出来るのでしょうか?

 基本的なあらすじはこんな感じです。
 この作品の最大の特徴は、もうとにかく共通ルートが異常に長いことに尽きます。シナリオは章仕立てになっていて、1〜8章までがヒロイン紹介を兼ねた和気藹々とした学園生活を書いていますが、ぶっちゃけここまでだけで6時間くらい、普通のゲームの共通を凌駕するボリュームだったりします。
 しかしてそこから、廃校問題に端を発するクルセイダーズ編がはじまるんですよね。これが9〜20章まで続き、単純にプレイ時間だけなら10時間くらいの大長編となっていて、ボリューム的にいえばその後にある各ヒロインシナリオ(3章ずつ)を全て足し合せてもまだ共通のほうが長い、ということに。無論バランスが悪い分、全体量でカバーしていますので、共通に力を注ぎすぎてヒロインシナリオがやたらとおざなり、ってわけではないんですけど、まあどうしてもメインとなるシナリオは廃校問題にまつわる部分であると思っていたほうがいいです。

 このメーカーの最大の特色である立ち絵芸を生かす、という意味合いで、多人数での活動を想定したシナリオはすごく相性がいいですし、実際に一周目にプレイしたときは、みんなで集まって喧々囂々と会議したり、次々に襲い掛かってくる問題に対してキビキビと動いて対処したりと、テキストと動きのシンクロニティの部分ですごく意識して作られているなあと感心しましたし、そのおかげでテンションが持続している印象があり、概ね楽しめました。
 また、大枠としてのプロットもそれなりに上手く構築できていると思います。あくまで学生であるという立場から、まず集団全体としても出来ることと出来ないことをはっきり明確にしている部分、そして個々人の能力が十全に発揮できない枷と、その中でその人物にしか出来ないなにかをきちんと設定していること、その上で、最終的に問題を解決に導くに至って、それを成し得るのが主人公しかいないという結論に導くまでの説得性、このあたりはホント綿密に練りこまれているなあと感じました。

 ですので、共通を一周した時点ではもう少し高い評価にしようかと思っていたのですが、二周目をプレイしてみて、一周目で面白いと思ったところ以外で感じた違和感が色々と見えてきたので少し考え直しました。
 結局この作品のもっとも勿体無いところは、人物が書けていない点に尽きると思います。
 上で書いたように、演出とセットになってのテキスト、大枠としてのプロットは悪くない出来なんですが、しかしそのシナリオはそのプロットに固執しすぎたきらいがあります。言ってみれば、プロットの上に人物造形を設定している感じで、まずもって意外性がなく、その上その設定そのものが薄っぺらく、蓋然性がないんですよね。
 
 まず作品の一つのテーマとして、大人と子供、あるいは都会と田舎、という対立項を用意して、後者の純然性を引き立てたいという意図があったのは見えてくるのですが、その方法論として、こういっちゃなんですけどあからさまに後者の人としての在り方を貶めているといっていいレベルで描写されていることが、下手すると読者に対して大きな反発を感じさせる要因になるのではと懸念するくらいの出来なんですよね。
 はっきり言えば、素直で正直であるということと、何も考えないということには何の因果関係もなく、むしろ無責任感を助長するだけで、しかしながらこの作品、きちんと物事を考えている人物があまりに少なすぎなんですよね。いくら主人公がみんなから一目置かれているといっても、全ての行動理念は主人公の頭の中にしかないなんて、それこそ周りの人間が思考停止(この場合、感情論でなく理屈の部分で、ってことです)して駒でしかない状態なら、わざわざ10人も集める必要性がないじゃないか、ってことになっちゃいます。それこそ風紀委員の在り方に疑問を覚えるならば、って話ですよ。
 
 キャラ設定的に自発的に駒の役割を買ってでる佳代子みたいなのはまだいいにしても、全員が全員烏合の衆である必要はなく、まして主人公の方針に一抹の不安を抱いているのだとしたら、せめて何を考えて行動しているのか、より上手く事態を動かす手立てはないのか、そういう情報を共有して知恵を出し合って進めていくのが当然の在り方だと思うし、そういう部分に人の成長を描く余地があるのだから、それを切り捨てているのはあまりに物語として片手落ちといえます。
 だから、そういう話がほとんど最後の最後になるまで出てこないってのは、正直信頼というより決め付けになってしまうと感じますね。これは当然主人公にも落ち度はある話だけど、それを非難する資格は他のメンバーにもないし、主人公がいなくなっただけでバラバラになってしまう理由も頷けるところではあるんですが、そういう風通しの悪さがシナリオの冗長感をいっそう助成しているのでしょう。

 これは当然味方側だけでなく敵側にも当てはまることで、特に校長の思考停止っぷりときたらいくらなんでも目にあまるものがあります。更にはモブキャラたちの全く節度のない放蕩っぷりをみるにつけては、いくらなんでもこんな短絡的でバカなことをやる奴がいるか、ってくさしたくなってしまうのは仕方のないところかなあと。
 故に、この作品特にクルセイダーズ編に入ってからの内容は、実は箇条書きにでもしてまとめてみるとスカスカ、なんですよね。ほとんどが事態に対しての対症的な措置ばかりで、本質的な問題そのものを撤回させる活動に関しては、主人公が片手間に進めていた情報収集の中からポロッと出てきただけで、こんなのそれこそ活動方針をしっかり定めて、きっちり各個人に仕事を振り分け、その中で各々が頭を使って進めていけばもっと早く辿り着けたじゃない、って話になります。

 結果として、このシナリオは二周目に面白味を見出す余地が少なく、それはつまりそれだけ人を書けていない、成長譚として機能していない(まあ主人公は流石に例外ですけど)と見えてしまうんですよね。特にヒロインの成長、という観点からすると、ほとんどが初期の記号的要素をラストまで敷衍するだけに終始している部分があり(ヒロインシナリオも含めて、その固執を最後の最後まで引っ張る形が多いし)、その初期設定そのものこそは中々に秀逸な出来なだけに破綻を免れていますが、アレコレ総合して、結局何が書きたかったのだろうかという部分に立ち返ると、活劇的要素にしかイメージが及ばないって結論になっちゃうんですよね。。。
 だから、これは最初のあたりで面白いと感じた人はまだしも、最初から面白くないって感じた人には、配置的に変化がないに等しいから苦痛なんじゃないかって邪推してしまいますね。個人的にはキャラが大好きなので、長い=その分キャラの愛らしさを堪能できるという視点ではすごく楽しめましたけど、色々な粗を見過ごせるほどでもなく、かといって全体的な構成そのものは賛美したいという色々矛盾した気分が混ざっている感じで、ここまで書いてもまだ微妙に配点に迷っていたりしますが、一番最初に書いたとおり、質より量で勝負と割り切れば充分な水準ではあるのかなと思っています。


キャラ(20/20)

 はいもう聖良最強。なんですかこの可愛すぎる生き物は。。。
 自分勝手ではあるのかもだけど進むべき道を迷わない強さ、仲間と認めた相手に対する情の厚さ、自分の気持ちに嘘をつかない真っ直ぐな性格、そういう部分を総合してまずとにかくかっこいいキャラですし、そういう性格が渾然としてバランスのいい人格に収まっているというのも話が出来すぎってくらい。結局シナリオ内では本質的に抱えているであろう弱さの部分には言及しなかったけど、聖良に関してだけはそれがいい方向に向いている気がしました。
 しかもそういう性格の土台の上に、きっちり女の子としての愛らしさ、恋人としての献身を乗せてくるんだからもう叫びだしたいくらいの破壊力で、思わず聖良だけ個別三回もやっちまったよ。。。

 そして他のヒロインを差し置いてでもゆっきーの可愛さは特筆しなければなりません。
 全体的に濃いキャラが多い中で、まず女の子らしさと清楚な雰囲気が目を引きますし、それでして性格も順良ながら思いの外負けず嫌いでノリもよく、普通に付き合う相手としては凄く理想的なイメージ。時折放つ冷徹なツッコミも、ボケキャラ&暴走キャラばかりの中ですごくいいアクセントになっているし、それに聖良とのコンビが最高に映えますしね〜。
 ただまあ、色んな意味で聖良に敵わない、って言うのは頷けるところ。順良だけど真っ直ぐすぎるから視野が狭くて色々なものを受け止められないタイプだし、本質的な意味で自分を見出せていない印象はありました。そういう意味で、サブキャラという位置づけは正解なんだろうなあ。FDでとかならともかく、ここでヒロインにしたらどうしたって聖良と比較されちゃうだろうし。
 まあでも、とりあえずFD待ってます(笑)。ついでに藍ちゃんとゆっこちゃんもよろしく。。。

 他のヒロインも当然好きは好きなんですけど、正直特筆するほどではないかもって感じです。そもそもOHPのキャラ紹介で受けるイメージそのままラストまでですからね〜。その辺はシナリオの過失となっちゃうんですけど、まあ逆に言えば突然変異を気にせず安心して楽しめるとも言えますね。

 ぶっちゃけ聖良とゆっきーがここまで突き抜けて好きでなければ、キャラの点数は少し減点したいってくらい、あまりにひどい人物造形が目に付いたんですけど(ちなみにああいう方向性をリアリティ、とは認めたくありません。人間の持つ一面であることは確かでも、あの不自然さはない)、まあそういう部分があったから聖良なんかは逆に引き立っているのかもと思って満点にしちゃいました。


CG(18/20)

 元々一番最初は絵に一目惚れしたんですよね。奔放な雰囲気と可愛らしさを併せ持つ絵柄で、全体的に線が細く健康的なイメージが強くて、生き生きとした作品の雰囲気ともぴったりだと思います。正面向きの出来の良さの割に横向きの絵がイマイチってところはありますけど、まあ大した欠点でもないかなって。

 立ち絵に関しては、服飾、ポーズ、表情とどれもかなりの差分が用意されていて満足できる水準。
 一番のお気に入りは聖良の今にも泣き出しそうな表情。告白シーンくらいにしか使われないレア表情なんですけど、あまりの愛らしさに死ぬかと思いました。。。
 後は、聖良は正面向きのからかい顔に照れ顔、やや横向きの呆れ顔、笑顔、佳代子は正面向きの赤面、半べそ、にっこり笑顔、振り返りでの驚き顔、彩は正面向きデフォルメ半泣き、笑顔、照れ顔、静奈は正面向き照れ顔に半身での笑顔、怒り顔、美琴は正面腕組みポーズでの不機嫌顔と呆れ顔、優喜は照れ顔、呆れ顔、><の泣き顔、藍子は口元に手を当てての驚き顔、不安顔、まあそのあたりが好きですね。

 一枚絵は、まずシナリオの質量に対してかなり少なめ、特に通常イベントが少ないのはちょっと不満。まあその分立ち絵で楽しませてもらっているから使いどころがなかったのかなとも言えますが。出来は立ち絵の傾向と同じく、ですが、贔屓目なしでも聖良の出来だけ抜群に思えるのは私だけでしょうか。

 一番のお気に入りは聖良のおんぶですかね〜。あのシーンの聖良のなんとも言えない表情がすごく好きなんですよ。
 あと聖良ではプールのシーン、初Hの正常位、体育倉庫での騎乗位、バック、自宅で制服Hの騎乗位、側背位、佳代子は着替え覗き、ロッカーで二人きり、初Hの一枚目、彩は気付いたら一緒に添い寝、雑木林で立ちバック、静奈は子供の頃の約束、黒下着で騎乗位、美琴は藍子と帰宅、体育祭で応援、裸エプロンで誘惑あたりが好きですね。
 SD絵も動きは実にコミカルで面白かったです。


BGM(17/20)

 質・量とも水準以上の出来ではあるかと。
 ボーカル曲は4曲。
 第一OPの『二人色』は明るくてかっこいい曲ですね。ちょっと出だしとイントロの繋ぎが不自然な気もしましたけど、それ以外は結構好きです。
 第二OPの『Revolution』はもうタイトル通り、クルセイダース編のテーマ曲で、歌詞も曲調も戦いをイメージさせる真っ直ぐな印象で、やや底は浅い気がするけれどいい曲です。
 クルセイダース編ED曲の『これからの未来に』はやっと取り戻した平穏を噛み締めるような静かなバラードで、きっちりサビで盛り上げてくるところで未来への希望を象徴した綺麗な曲ですね。
 EDの『グラフティー』は第一OPと対になるような、EDとしては疾走感のある曲で、特にBメロのスキップをするような軽やかさがかなり気に入りました。

 BGMもずは抜けて、ってのはないけれど高水準。
 お気に入りは『step on it!』『Final Take Out』『悲しみの雨』『幻影』『Emotion』『鈍色』『Count down』あたりです。あと、『Hello!Hero!』を最初に聞いたとき、宇多田ヒカルかと思ったのは私だけですかね?

システム(9/10)

 演出に関しては大満足。
 もう期待していた以上に、とにかくキャラが動く動く、移動するメッセージウィンドウも含め、この変幻自在の立ち絵芸はやはり素晴らしいですね〜。SDを動かしているのとかも実に斬新で、SSMとかやけに印象に残ってます。背景効果もしっかりしているし、申し分ないといっていいのではないでしょうかね。
 
 システムはもう一歩かなあ。
 それなりにきちんと揃ってはいますし、演出効果の割にはスキップも早いんですけど、例えばタイトルバックできなかったり、おまけモードから戻るとタイトルまで戻ってしまったり、そこはかとなく不便なところがあったかなと。


総合(85/100)

 総プレイ時間32時間くらい。共通が17時間くらいで、ヒロイン個別が各3時間ずつといったところ。
 とにかくボリュームは素晴らしいものがあるこの作品ですが、内容的には必ずしも誉められない部分が結構目に付きますし、個人的には未だに位置づけが曖昧な作品です。正直AクラスとBクラスの狭間で、シナリオをあと一点落とすか落とさないかすごく迷っていますし、まだ。。。
 ま、聖良と出会えただけでも個人的には満足ですけどね。
posted by クローバー at 08:33| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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