2010年07月30日

黄昏のシンセミア

 コンチェルトノート大好きだったので、同じスタッフの今作も大いに期待していました。


シナリオ(24/30)

 とても丁寧な伝奇物語、けど・・・。


 御奈神村―――。
 この山間にある小さな村には、かつて天女が舞い降りて、村人達に様々な恩恵を為し、村の若者と恋に落ちて子供を作り、そして不老不死の薬を残して天に還っていったという伝説が残っていました。今ではその話の真偽を確かめようもないほど昔のこと、ほとんどおとぎ話のように語られる伝説ですが、それでも村の神社では今でも天女の再臨を祈った祭りを執り行っているなど、この土地に大きな影響を与えている伝説です。

 主人公はこの村の伝統的な一家である皆神家において、代々女腹であるこの家としては非常に珍しい長男として生まれました。数年後には妹のさくやも生まれ、二人は小さな頃から仲睦まじく、土地の人々に大切に見守られながら育ってきました。
 しかしある日、河川の増水事故に巻き込まれた二人は、母親によって救われるものの代わりに母を失ってしまい、二人の心の傷を恐れた父親によってこの土地を離れて父の実家である東京で暮らすことになり、二人にとって当時の記憶は思い出そうにもあまり鮮明に思い出せない曖昧なものとなってしまっていました。

 そして十年近く時が流れ、主人公も大学生となって過去の生活も全く薄れてしまっていたとき、かつての主人公の実家に住んでいる母の妹である皐月から帰郷の誘いを受けます。薄れていく記憶がもどかしく、ちょうど過去ともきちんと向き合わなくてはならないと思っていた折なので、都合がいいとその誘いを受けた主人公は、妹のさくやとともに懐かしい故郷の村に戻ることにしました。
 学業の都合で一足速く村に帰ってきた主人公ですが、従姉妹の翔子はどうにもよそよそしく、幼馴染の神社の娘のいろはにも再会の場面で勘違いさせて怒らすなど、なかなか上手く村に溶け込めません。それでも、村で出会った不思議な女性である銀子の励ましや、翔子の学友である沙智子、その二人の先生の美里、神社の巫女である朱音など、周りの人間の仲立ちなどで少しずつ関係を改善させていき、一週間ほどしてようやく村に馴染んできた実感を得ることが出来たのでした。

 そんな時、事件が起きます。
 それは、山から得体の知れない獣が里に下りてきて家畜荒らしをしたという事件で、山間の村ではさほど珍しい事件ではないものの、それでも人に被害が出てからでは遅いと厳重警戒が引かれます。
 翔子はそんな話を聞いて、いてもたってもいられませんでした。というのも、彼女は神社の裏手の山の中で、野狐に餌を与えて懐いてもらおうと奮闘している最中であり、その野狐の心配をした翔子は夜も遅い時間に家を飛び出してしまいます。
 翔子を探して神社の裏手までやってきた主人公は、そこで翔子を見つけることが出来ましたが、しかし狐の姿はなく、それどころか村を荒らして回ったらしい獣とばったり遭遇してしまいます。
 いや、それは獣と呼ぶのもおこがましい、異形の存在でした。原型は熊のような雰囲気ですが、全身が腐っていて腐敗した汁を垂れ流し、常に体の形を変えながらも崩壊することなく、瞳だけが爛々と光っている嫌忌すべき生物で、そのあたりの異様さに真剣に命の危機を感じた主人公は、メールで妹のさくやに遺書めいたものを送り、なんとしても翔子だけは無事に村に帰すと心に誓ってその怪物と対峙します。
 結果として携帯電話を壊されたくらいで大きな怪我はなく、何とかその怪物を谷底に落として難を逃れた主人公、いつの間にかその手の中には、青く光る不思議な結晶が握られていました。そうして九死に一生を得ながらも、自分が見て感じた怪物の脅威と、実際に見ていない大多数の人間がその実在をほとんど鵜呑みにせず、いつものような熊の仕業だと決めてかかってしまっているのに納得がいかない主人公は、遺書を送ったまま音沙汰がない主人公を心配して駆けつけてきたさくやの手助けを得ながら、自分が遭遇した事件の謎を解明しようと決意するのでした。

 とまあ、あらすじはこんな感じです。ここまでが体験版でプレイできる部分、かつ話のプロローグになりますね。本編のエピソードに入るとすぐに、謎を解明する手がかりとして二つの方法が提示されて分岐、その先で更に各ヒロインシナリオに分岐していくという流れです。今作もフローチャートシステムを採用しているので、分岐の行き着く流れがとてもわかりやすく、セーブロードいらずでとても快適にプレイできました。
 シナリオの構成としては、各ヒロインシナリオで少しずつ、最終的にはこの村の伝説に関わる謎が解明されていき、それとともに過去の物語も開示され、メインヒロインのトゥルーエンドに全て辿り着いた段階で解明編であるシンセミアに入れるという形式になっています。このシンセミアはさくやエンドから派生する物語であること、そしてさくやシナリオを先にプレイしてしまうと他ヒロインのシナリオの、特にヒロインと結びつく過程が弱く感じてしまう気がするので、さくやはラストにプレイすることを推奨します。
 その他皐月以外の女性キャラにも一応ルートとHシーンとエンディングがありますが、こちらは作品の本筋とはほとんど関係がない軽いストーリーとなっているので、まあ箸休め程度の感覚でつまみ食いするとちょうどいいんじゃないかなと思います。

 このメーカーの前作、コンチェルトノートでもそうですが、主人公との関係性という点であからさまに贔屓されているヒロインがいて、その二人の関係を軸に物語が展開するという構成になっています。今作の場合だと、まず二人の関係性そのものが物語の主軸でありながら、そこから派生した様々な問題が各ヒロインにも割り振られており、それら全てを認識することでコアの部分に辿り着ける仕組みですね。
 ただ今回の場合、フラグメントの位置づけがやや曖昧と言うか、特に物語を転回させる過去のエピソードについては、それを認識できる意味づけが弱い気がしなくもないですね。コンチェルトのアイテムシステムもまあタマの特殊能力に依存している分怪しかったですが、それでもタイミング的にすんなりシナリオが先に展開出来るので飲み込めたんですけど、そこはちょっと惜しいところ。普通のフラグメントとは一線を画して、時空を越えて核が見せる夢みたいな扱いでも良かったのではないかと感じました。

 個別シナリオは、一言で言えば丁寧だけど物足りないって感じでしょうか。どうしても本筋の謎の解明に多くの時間が費やされるために、さくや以外のヒロインについては好き合う過程や、恋人になっての甘い雰囲気ってのが弱いです。しかもそのルートでの謎の解明がシナリオのエンドでもあるから、アフター的なイチャイチャもほとんどないですしね。その分、本筋の説明や伏線の引き方は丁寧ですし、そっち方面では存分に楽しめたと思います。
 さくやシナリオはさすがにメインだけあって、それなりにしっかり惹かれ合う過程や理由付けが先天的にも後天的にも上手くなされていたと思いますし、この二人だけは基本最初からどのシナリオでもいちゃついているようなものなので(笑)、そういう意味での不満はありませんでした。
 シンセミアシナリオの伏線の回収は見事ですが、そこに主眼を置き過ぎて、やや物語が駆け足になってしまっているのがちょっと勿体無いなと。特に終盤のカタルシスと言う意味合いではもう一頑張りが欲しかったですね。まあこれでも充分な水準ではあるのでしょうけど、期待が大きかった分ちょっと辛いかなとも思いますが、それが素直な心境ですね。
 
 上でも書いたように、基本的にこの作品は主人公とさくやが中心になっています。
 それだけに、主人公とさくやの仲は最初から睦まじいのですが、そのまま進めていてはどうしたって他のヒロインとくっつくことに説得力がなくなってしまうわけで、この作品においてそれを裏付けているのが主人公とさくやの兄妹という関係になります。
 この手の作品って、幼馴染とか妹とかの存在が普遍的ですけど、そういう本来恋愛関係を意識させるのに不都合な関係をどう進展させていくのかが醍醐味であり、しかしそれを上手く扱うのは中々難しいわけで、このメーカーはそういうイメージを逆手にとった構成をするんですね。
 コンチェルトの莉都との幼馴染という関係、シンセミアのさくやとの妹という関係、このどちらにおいても、明らかにそれだけのカテゴリ分けに留まらない、主人公にとって半身にも等しい大切な存在であると書かれているのに、幼馴染だから、妹だから、という理由付けだけで、その関係を進展させることに歯止めをかけ、他ヒロインとの関係に違和感を感じさせないようにしているわけですね。まあもっとも、この記号的方法はもうキャラ付け的に打ち止めだけに、次をどうしてくるのかは興味のあるところですが。
 昨日の日記でもチラッと触れましたけど、この記号的要素ではない部分でそういう関係性を構築しているからこそ、パルフェは偉大だと私は思っているわけです。

 ちょっと脱線が過ぎましたが、この作品においてはその贔屓されているヒロインとくっつかない流れを前提の時点でクリアしているので、そこに違和感はないけれど、当然驚きもないということになりますね。
 その上で、まあ確かに最初からくっついて当然だと見えている関係でも、やはりインセストタブーの壁はそれなりに厚いわけで、そこをどうやってクリアするのかという部分についてですが、これは吊り橋効果の部分と、過去からの関係性という二本立てで何とかしています。個人的印象を言うなら、斬新さがもう一つ欲しかったと言うのが正直なところですね。すごく丁寧な構成だから説得力はあるんだけど、最終的にファンタジーに依拠してしまっているのもやや減点で、実妹に対するアプローチとしてはこの前のリアル妹のそれには及ばないかなあと思っています。それでも充分楽しめましたけどね。

 後一つ不満があるとすれば、羽衣の設定があまりに設定的過ぎる部分ですかね。
 小出しにとはいえ序盤から機能そのものについては明確にされている部分はあるし、後出しで新機能が出てきたりはしないんですけど、あまりに物語の構成に添った都合のいいシステムであることと、それを物理的に類推できるだけの現実性の取っ掛かりがないっていうのが気になるといえばなります。
 勿論比喩的な意味合いでの、シンセミアとしての位置づけは明確に理解できるのですが、物語の展開的にもどちらかと言えば物理的反応のほうに振り回されているだけに、そこをもう少し突き詰めてあれば尚良かったのになあと感じています。

 全体的には、丁寧で満足いく内容だけど、突き抜けるものがなかったかなってところですね。
 あと、折角読ませるシナリオなのに、特に終盤において誤字脱字が目立っていたのは勿体無いところ。個人的には、期待通りだけど期待以上にならず残念、って感じでしょうかね〜。


キャラ(20/20)

 いやあ、実にさくやは素晴らしいキャラでした。
 まず何が素晴らしいって、関係性が実にナチュラルなんですよね。基本的に妹というカテゴリは関係性が一面的になりやすいんですが、さくやの場合まず骨格として主人公と対等の関係であるという位置づけが明確に意識されていて、妹としての愛らしさは勿論ながら、兄を支えるしっかり者としての側面、軽口を叩ける友人的な側面、そういう複雑な関係性が、最終的には妹という関係を軸にナチュラルに回転しているのがすごく見ていて楽しいキャラです。
 逆に言えば、突出したキャラ付けのようなものはないので、惹かれない人には惹かれないキャラなのかもしれませんが、こういういそうでいない妹像ってのは個人的には新鮮でしたし、まあエロくて可愛いんだから正義さ、みたいな感じですかね(笑)。

 次点は、と言われるとメインヒロインすっ飛ばして朱音だったりして。。。
 何でしょうね、本来的には私の好む記号ではないキャラなのに、まず見た目が気に入って、巫女という仕事柄とそれを裏切らない透明感のある性格がやたらと声にマッチしている気がして、そのへんから少しずつ好きになっていった気がします。
 その次が銀子ですかね〜。あのスタイルであの翔子にも勝る無邪気さはちょっとヤバイです。さくやに次いで主人公とのトークが楽しいキャラでもありましたしね。

 翔子と沙智子のロリっ娘コンビも当然好みではあるんですが、この作品の場合おとなと子供の位置づけ、区切りがかなり明確になってしまっているためか、ヒロインと言うよりは庇護するべき対象と見てしまう部分が大きかったかなあと。おかげで恋愛対象としてはイマイチに感じたし(シナリオ補正的にもね)、翔子はシナリオ面での後押しもあるとはいえ、Hシーンの唐突感は否めなかったです。つか、あの部屋で沙智子とヤルのはまずいでしょ。。。


CG(17/20)

 この絵師さんだいぶ上手になりましたね〜。まだ時々微妙なのはあると言えばあるんですが、それでも予想以上の進化に嬉しい限りです。まあややファッション的に野暮ったい気もするんですが、あれは敢えて田舎らしさを追及しているのでしょうか?

 立ち絵に関してはまずまずですかね。そこまでガヤガヤする物語でもないので、さくや以外はやや差分に乏しい印象もありますがまあ許容範囲でしょう。
 お気に入りは、まずさくやの正面向き全般ですね。あの立ち姿の清楚さはすごく印象に残ります。その中でも目を逸らせての思案顔とか、三白眼での赤面とか、真っ直ぐな笑顔とかはすごく好きです。
 その他、さくやの髪をかきあげての呆れ顔、銀子の指を立ててのしたり顔、正面向きでのからかい顔、翔子の怯え顔、拗ね顔、いろはのげんなり顔、朱音の笑顔とびっくり顔、沙智子の照れて拗ねる顔(特に一年後が可愛い)、美里の苦笑いあたりが好きですかね。

 一枚絵に関しては、まず全体的な構図の崩れってのがほぼなくなっているのが良かった点ですね。所々野暮ったさと言うか粗さは残っているのですが、時々これはって言うくらい可愛いのもあったし、丁寧な仕事をしているのではないかなと思っています。
 お気に入りは、殺意みなぎるさくや、さくやの胸を間違ってモミモミ、初H1枚目、特に全裸になったときの涙目で視線をそらす顔が可愛すぎ、抱き寄せてびっくり、添い寝で視線を合わせて、翔子との出会い、着替えを翔子に見られて、スク水H2枚目、三人でプリクラ、泣く翔子を抱きしめて、水浴びする銀子、銀子の初フェラ、銀子の騎乗位、涙を流す主人公、幸せな家庭風景、特に娘が可愛い〜、いろはと朱音お着替え中、怒りのほうき、ブラを手に力説する主人公、朱音ENDの朱音の笑顔、秘め事を囁くさくやあたりですね。


BGM(18/20)

 とても雰囲気があって、かつ重厚感のある曲が揃っていると思います。
 ボーカル曲は3曲。
 OP曲の『夏のファンタジア』は夏らしい颯爽としたテンポながら、どこか切なさと重々しさを感じさせる中々の名曲です。個人的にはBメロの徐々に盛り上がっていくところと、シナリオをストレートに表現している二番の歌詞がかなり好みですね。
 ED曲の『想いの果て』はすごく幻想的な、この不可思議な伝奇物語には実にしっくり来る切ないバラードです。サビの力強い歌い方が好みですね。
 挿入歌の『Long for…』は流れる場面が終盤の一回だけなので印象には残りづらいですが、初代の天女の切々たる想いを連綿と語りつくし、それを現在の二人の関係にきっちり投影している優しい名曲です。

 BGMは全体的にいい出来ですね〜。
 特にお気に入りは『悲しき抱擁』。この如何にも別れとか滅びとかを予感させる寂しげな旋律はすごく耳に残ります。ぶっちゃけクロノトリガーの古代っぽいんですけどね。。。
 あと『誰の為に』もかなり好きですね〜。この闇の中でもがいているところで一筋の光に向かって手を伸ばしたような、そんな切実さと必死さを感じさせる旋律がとても好みです。
 その他のお気に入りは、『羽織り』『夏の軌跡』『深い霧の先へ』『鳴動』『繋いだ両手』『物語の旋律』あたりですね。


システム(9/10)

 演出はまずまずですかね。
 ただ、派手な演出ではないし斬新さはないけれど、すごく場面に合わせてしっかり意識して、効果的に使っていた気はします。SEと動きのマッチとかもしっかりしていましたし、背景効果なんかもきちんとしていて、まあADVとして違和感なく楽しめる水準だったと思います。OPムービーの二種類の演出も中々で、特にパート2はかっこよかったですね。

 システムは優秀。
 通常のシステム部分はまあ普通ですけど、特に使いづらいことはないし、やはりフローチャートシステムが便利。操作性も良くなり、シーン再生を搭載したことで取っ掛かりがあるのですぐにここだと選択できるし、何よりセーブロードが要らないのは楽ですね。


総合(88/100)

 総プレイ時間20〜2時間くらい、かな。フローチャートで飛び飛びにプレイしていると時間間隔が狂うんですよね〜。プロローグが2時間、分岐後の共通がそれぞれ1時間くらい、サブヒロインが1時間ずつ、メインヒロインが3時間ずつ、シンセミアが2時間ってあたりだと思います。
 全体的にメーカーとしての底力がついた印象で、総合点としてはかなり高くなっていますけれど、逆に全体的にこじんまりとまとまりすぎてしまった印象も合って、個人的にはもう一息何か売りが欲しかったなあと思う次第。それでも充分楽しめましたし、内容自体に斬新さはあまりないものの、丁寧に組み合わせて作り上げられているのでプレイして絶対損はしないと思いますね。
posted by クローバー at 06:25| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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