2010年09月04日

Stains;Gate

ものっそい評判のいい作品なので、PC移植版を心待ちにしていました。

シナリオ(30/30)

 エンドレス、クライマックス。


 主人公の岡部倫太郎は厨二病。
 自らの真名を鳳凰院凶真と謳い、世界を裏で牛耳る“機関”の支配構造を打ち破って世界に混沌をもたらすことを命題に、大学生になると同時に秋葉に未来ガジェット研究所というサークルを設立します。しかし大言とは裏腹に、夏真っ盛りの時期になっても、ラボラトリーメンバー、通称ラボメンは自身を入れてたった三人。
 ラボメンナンバー002は、主人公の幼馴染の少女、椎名まゆり。
 ラボメンナンバー003は、主人公の級友でスーパーハカーでデブオタの橋田至、通称ダル。
 この三人で、いや実質戦力外のまゆりを除けば二人で、細々と未来ガジェットとは名ばかりの愚にもつかない発明品を作るのがこの夏までの日常でした。

 そんなある日、世間では色物発明家の烙印を押されているドクター中鉢(笑)のタイムマシン完成記念記者会見を、まゆりと一緒に冷やかしがてらに見に行った主人公は、そこで若干17歳にして科学雑誌の権威である“サイエンス”に論文が掲載された天才少女、牧瀬紅莉栖に話しかけられます。その時は彼女の言葉の意味がわからず逃げ出してしまった主人公は、記者会見も終わって帰ろうとする矢先に凄惨な、まるでこの世の終わりのような悲鳴を聞きつけます。
 好奇心が湧いて、その悲鳴が聞こえてきた現場にいち早く駆けつけた主人公が見たものは、なんと血だまりの中にうつぶせになって倒れている紅莉栖でした。あまりの衝撃的な光景にまたまた逃げ出した主人公は、今見た光景をダルにも伝えようとメールを発信します。

 その時、世界が揺れ動く―――。

 突如襲い掛かってきた眩暈のような衝動から立ち直った主人公が見たもの、それは忽然として数千人の人影が一瞬にして消え去った秋葉の町並みでした。
 あまりのことに、側にいたまゆりに今の出来事を見たかと食って掛かりますが、まゆりにはその光景は見えておらず、やがてやってきた警察の関係者によって、今この区域が封鎖されて立ち入り禁止になっていることを告げられ、強制退去させられます。何故突然そんなことになっているのか、主人公が後ろを振り返ってみたものは、ついさっきまで主人公たちがいたはずのラジ館の8階に、巨大な人工衛星が突き刺さっている光景でした。

 ラボに戻ってからも腑に落ちない主人公でしたが、当初の予定通り、ダルとともにATFでの講義に出席することにします。すると、なんとそこで先ほど目の前で血だまりに倒れていたはずの紅莉栖と再会します。あまりの驚きに今度は彼女に食って掛かる主人公ですが、先ほどとは逆に今度は紅莉栖のほうが主人公のことを知らない様子。
 そして先ほどの事件を二人に説明しようとした主人公を遮ってダルが見せてくれたメールは、不思議なことに発信日が今日なのに、受信日が一週間前になっており、そこには確かに主人公が送ったはずの紅莉栖に関するメールが、なぜか細切れになって届いているのでした。
 
 その不可思議な現象に興味を示した紅莉栖は、後日主人公たちのラボを訪れます。その時主人公たちは、その不思議なメールを発生させたと思われる未来ガジェット8号、電話レンジ(仮)を調査中でした。元々はレンジのタイマーを携帯によって遠隔操作出来るというあまり役に立たない機能しか搭載していなかったはずの機械ですが、タイマー設定を意図的に間違えることで加熱以外の不可思議な現象、例えばバナナがゲル化したり、からあげが冷凍状態に戻ったりするのでした。
 調査に行き詰っていた主人公は、紅莉栖をラボメンナンバー004として迎え入れ、調査を再開します。紅莉栖の提案で問題のメールが送られたときの発生条件を再現させてみたところ、電話レンジから突如放電が発生し、そしてなんと過去に向かってのメールがきちんと受信されたのでした。
 その結果を見て主人公は宣言します。これは、タイムマシンだと―――。

 その後、様々な観点からタイムマシンの実在の傍証を得た主人公は、紅莉栖の協力も得て水を得た魚のように電話レンジの改良、研究に打ち込みます。
 その過程で、雑誌記者の萌郁をラボメンナンバー005に、まゆりの同級生で神社の跡取り息子であるるかを006に、まゆりのバイト仲間のフェイリスを007に、主人公が居を構えているビルの一階の店舗でバイトをしている鈴羽を008にと、一気にメンバーを増やしながら実験を重ねた末に主人公が辿り着いた場所、それは運命に翻弄される愚かなる神の視点なのでした。


 と、大まかな流れとしてはこんなところでしょうか。
 基本的にネタバレ禁止度の高い作品ですし、あらすじといっても既に序盤からあらゆる伏線が複雑に絡み合って構成されているので、それを全て説明していったらキリがない、というか、そんな駄文読ませるくらいなら本編をプレイしてください、と一行で済ませたほうがよほどマシだよなあと思い、色々考慮した結果が上のような駄文なんですけど・・・、どうでしょうね〜。

 内容としては秀逸の一言。
 今回基本ネタバレなしで書くことにしたのは、単純に全ての内容に考察と意見を書いていたらいつまでたっても終わらないだろってくらい作品の濃度が高かったこともありますし、そこまでしても作品の良さの10%も伝わらないだろうってのは、実際にプレイした人なら肯いてくれると思ったからです。科学的論考、シナリオ構成、キャラ造形、それらが全て有機的に絡み合って、一本の縦糸(主人公の主観)を軸に紡ぎあげている作品世界の雰囲気は、ざっとした説明では絶対に掴みきれないでしょうからね〜。

 そういうわけで書ける範囲で触れていくと、初回プレイにおいては最序盤は主人公のあまりに痛い語りについていけないと感じる部分もありますが、1章の終盤、紅莉栖がラボに押しかけてくるあたりから劇的に面白くなります。無根拠なSF理論でなく、現代物理学の最先端を礎として、そこから導き出される仮説をベースとして構築されているので、タイムマシンの製造過程そのものがまず楽しいですし、発想は鋭いものの時に暴走する主人公と、それを冷静に嗜め、正しい方向性に導く紅莉栖のコンビがすごくいい味を出しているんですよね。
 ややネタバレですが、大まかにわけて、シナリオ前半がタイムマシン製作、後半がその製作によって引き寄せられた弊害の解決となり、折り返し点の5章終盤からの、息つく暇もない怒涛の展開には圧倒されます。それこそそこから物語のラストまで、多少の波は有るとはいえ、ほとんどがクライマックスレベルの緊張感と高揚感をキープしており、これでもかとばかりに運命の波に翻弄されていく様子は凄まじい破壊力があります。
 個人的には、鈴羽の手紙が一番やばかったですね〜。これで一先ず解決の目途が立つのかな、と多少読み手のほうも緊張感を緩めたところにアレはもう・・・。次いで9章のラスト、主人公があまりに残酷な真実に気付くところが、ああやっぱりという感情移入含めて印象に残っています。

 そのように内容の密度の高さも素晴らしいですが、構成と収束も抜群の出来です。6章からの展開なんか、スマガをプレイしたことがある人なら思わずニヤリとしてしまうこと請け合いですし、しかもそれが精神論でなく、きちんと作品内で制約をつけた上で立ち回っているので、解決に至ったときのカタルシスと、それに付随する罪悪感がものすごく高いレベルに昇華されるんですよね。
 そして罪悪感に耐えられなかった場合の世界の行きつく先もがきちんと用意されていて、それがこの作品が18禁でも、恋愛アドベンチャーでも有り得ない根源的な理由付けになっている(恋愛要素が上に置かれては、それがバッドエンド足りえない)と言うのが更に凄みを際立たせています。
 こういっちゃなんですけど、どうしてもADV作品というだけで、ヒロインとの関係性がシナリオ分岐の大きなポイントになるという視点は、この手のゲームを多くやっていればいるほど常識的に持ち合わせてしまうし、それを多くの場面で逆手に取っていながら、最終的な結末だけはそこに依拠するという離れ業には感嘆の声しか出ませんね。

 以下ネタバレ反転。これだけはどうしても書いておきたいので。

 まず個人的には、ずっと紅莉栖に感情移入してプレイしてきたので、グランドエンドのヒロインが紅莉栖だったのが嬉しい限りです。どんなに理性的に素晴らしい作品だとわかっていても、一番好きなヒロインが報われない結末では感情的な部分で納得できないだろうし、そうするとなんだかんだで一点引く羽目になりますからね(笑)。なんで、まゆりに感情移入して進めた人はそういう想いを抱える羽目になるのではと。。。
 因果の関係については、一周目では疑問に感じる部分もいくつかあったのですが(一番は、何故発端のDメールを消すタイミングがあの時点で問題ないのか、だったんですけど)、そのへんは二周目において、自分の中である程度納得できるだけの理解度に達せられたと思います。そこを詳しく書こうとするとまたきっとグダグダになるのでやめときますが。。。
 リーディング・シュタイナーについては、最後に誰しもが持っているのだろうと締められていますが、個人的には個の他者観測集合体理論と、人類の無意識化集合体理論をミックスして発展させた解釈を持ち込みたいですね。その場合主人公の能力は絶対個のものだと仮定されるのでやや暴論かもしれませんが、主人公に対する想いの強さが膨らむことで、主人公の能力がヒロイン達により波及しやすくなったと考えるほうが、思い出すタイミングまで含めればロマンチックですし説得力はあると思うんですがね〜。


 総評としては、文句なしの大傑作といっていいと思います。
 勿論粗探しをして出来ないことはないですが、そういった瑣末な問題を気にさせない、作品そのものの存在感が圧倒的で、それでいて最初から最後までほとんど無駄な部分のない、絶妙な水準で冗長にならずに纏め上げられたボリューム感ですし、ちょっとでも気になっている人ならば絶対にやってみるべきだと久しぶりに強く推奨できる作品だったと思いますね。


キャラ(20/20)

 いやもう、素晴らしいキャラメイクだったと言わざるを得ませんね。
 どこがどう、と説明に起こすのは難しいんですが、終わってみるとあの場面ではあのキャラしかいない、とか、ああでなければこうはならなかったとか、全ての線がきっちり繋がっているのを十全にサポートしている感じで、特にいいなと思ったのは、元々はまゆりのために作り上げた厨二病の性格付けが、紅莉栖との関係性を発展させ、支えあう関係にまで至るとっかかりに、そして最終的には本質的には臆病な自身を鼓舞する武器に立ち代っていったところですね。特に最終章で、その本質性がすごく生きていると思います。

 ヒロイン的に、というならば紅莉栖がダントツでお気に入りです。
 何が魅力的って、その強がりなところですよね。あらゆる紅莉栖を構成する要素の根源が、極論すればそこにあるといっても過言ではないくらいで、でもそういう生き方を背負っているからこそ、主人公の信頼と尊敬を勝ち得たとも言えるわけで、二重の意味で最後に救いがあるからこそ、はっきり魅力と言い切れる部分でもありますが。
 次点は鈴羽かな〜。


CG(18/20) 

 まあおよそ普通のギャルゲーでは見かけない絵柄と塗りですし、プレイする前は偏見的に好きになれないんじゃとか思っていましたが、予想以上に出来は良かったですし、最終的にはかなり好きになりました。
 特に吊り目キャラがすごく可愛いんですよね〜。紅莉栖とかフェイリスとか。逆に垂れ目のまゆりとかは若干落ちる印象ですが、まあ気にするほどではなかったかなと。
 立ち絵のお気に入りは、紅莉栖の照れ顔、呆れ顔、笑顔、フェイリスの驚き顔、おねだり顔、シリアス顔、まゆりの正面向き怒り顔、不思議顔、るかのきょとんとした横顔、鈴羽のシリアス顔、人懐っこさを感じる笑顔あたりですね。

 一枚絵は、枚数こそやや物足りないものの、質は高いです。
 お気に入りは、紅莉栖との出会い、再会、講演、暗闇の中で、不器用なキス、運命の再会、まゆりとうーぱ、うっかりお風呂覗き、ゲルまゆ、最期のスターダストシェイクハンド、紅莉栖との別れ、るかは女の子?、るかの告白、泣いている鈴羽、切ない独白、その手を握って、胸元で泣くフェイリス、画面の向こう側を覗くオカリン、狂気の綯、100%記念集合絵(特に綯。。。)あたりですね。


BGM(20/20)

 メインテーマが神。
 
 ボーカル曲は6曲、ですのでお気に入り以外は省略させてください。。。
 OPの『スカイクラッドの観測者』は超神曲。これはすごい好き。特に出だしのイントロ、音階が突然上がったり下がったりするあたりに法則から外れた雰囲気がすごく出ていて、それでいながら徐々に盛り上がっていく流れが、初めて聴いた時から心を捕らえて離しませんね。
 無論曲の部分も大好きです。やや歌詞がストレートすぎるきらいはあるけれど、プレイ後に聞くと一つ一つの言葉にしっかり意味があって、すごく結びつきの強いOPだなあとより強く感じましたね。
 あとはグランドEDの『Another Heaven』、これも素晴らしい曲だと思います。もうタイトルの時点で感涙を禁じえないんですが、曲としてはまあEDらしい切なくも力強いバラードなんですけど、ここまでの悠久の道のりを思い耽りながらだとやたらと感情移入度が高い曲だなあと。

 BGMに関しては、メインテーマの『GATE OF STEINER』が神降臨にも程がある超神曲。この、世界観の全てを内包したような、緊迫感、哀愁、切なさ、罪悪感の入り混じったメロディに、それでも1本、使命感という縦糸がしっかり通っている感じで、曲を聴いているだけで作品内の雰囲気が否応なく想起されて身震いが止まらない、そんな曲ですね。
 そして基本的にこれの派生曲は全て抜群の出来です。それ以外の曲も水準以上の出来ではありますが、個人的には全部これに持っていかれてしまっている印象はあります。それくらいインパクトがありますね。


システム(8/10)

 演出はまあ可もなく不可もなくでしょうか。
 移植作だけに、元々のハードでの演出に依存している部分が大きく、特にPCだからと加工されている印象はないんですが、それでもADVとして特に気にならない程度には演出効果は出ていると思います。

 システムについては微妙といえば微妙なんですけどね〜。
 もうプレイが終わってしまったので、今更パッチが出ても個人的な操作感という意味では減点対象にしても間違いではないんでしょうが・・・。ただ、使えるにせよ使えないにせよ全体的にスキップは遅いです。


総合(96/100)

 総プレイ時間、26〜7時間くらいですかね。あくまで平均値ですけど、1章が二時間くらい、プロローグに各エンド派生分を加えればこれくらいかなって推定値です。まあぶっちゃけ、時間なんか気にならないくらい密度が高いんで、そんな細かいことを気にする必要はないと思います。いつもプレイ時間を書いているのはコストパフォーマンスの印象値と実測値の差異を明確にするためなんですが、まあ名作、傑作には必要ないですよねそんなの。
 とにかく言える事は一つ、とにかく黙ってプレイしなさい、絶対損はさせないから。
posted by クローバー at 07:30| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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