2010年10月10日

るいは智を呼ぶ 〜明日の向こうに視える風〜

 名作るい智のFDなので、ふーりんボイス実装と合わせて鬼のように楽しみにしてました。本編からじっくりやり直したせいでやたら時間かかったけど・・・。

シナリオ(25/30)

 ハッピーエンドはなくとも・・・。


 この作品はるいが智を呼ぶのFDという位置付けですが、内容的に言うならばFDと言うより真相編とでも言うべき、シリアスな内容とFDとは思えないボリュームを誇っています。シナリオ進行は基本的には一本道で、本編のメインヒロインたちとの絡みを中心としたサイドエピソードをいくつか挟みつつ、本編でサブヒロインだった宮和、央輝、惠の順番でそれぞれのシナリオが展開されます。
 大まかな分岐点としては、本編ヒロインルートへの分岐地点と同じところが想定されています。パルクールレースが終わっても仲間内の特定の誰かとは仲を深めないという道筋を進んだ場合のifルートというイメージですが、それをただのifルートで終わらせなかったのがこの作品の構成の非凡なところですね。

 本編における最大のテーマ、というより主人公の目標は、自らに降りかかる呪いを解除することでした。シナリオ内において、呪いの発現にも様々なルールがあり、抜け道があることを学んだ主人公たちは、とりあえず呪いとは上手く折り合いをつけるという形で棚上げしたままカップル化するわけですが、唯一その問題を棚上げしたままではまともなカップルとなれない茜子を最終ヒロインに据えることで、呪いというシステムに秘められた残酷さを抉り出し、それでも尚呪いを解く道を選ぶという結末に至りました。
 と同時に、このシナリオにおいて主人公は、自らが持つ呪いの特異な性質とその恐るべき才能を知ることが出来ました。そしてそれを知ることによって、茜子ルートにおける悔い、つまり全ての仲間にとって最善ではない選択を強いられてしまった運命に尚立ち向かう力を得ることになり、そしてそれこそがこのFDにおけるシナリオのテーマと構成の骨子となっているわけですね。
 この作品のシナリオが一本道であるのは、その構成の根幹となる部分を徐々につまびらかにすることと、少しずつテーマの本質に近づいていくことで緊迫感と説得力を高める二重の効用があり、そしてその在り方を積極的に肯定している存在の影をちらつかせ、その存在の本音と主人公の生き様を対峙させる事で、一つ間違うと陳腐になりかねないシビアな結論、いわゆる物語的なハッピーエンドを持ち込まないという選択に強い意志を与えており、この徹底したリアリズムこそがこの作品の華だと思えます。

 とまあ、出来る限り本編含めてネタバレしないようにしつつ書いたらどうにも曖昧な文言になってしまっていますが、まあプレイした人にならわかると信じましょう。
 
 以下は個別ルートその他シナリオの感想になります。
 とりあえずこの作品もう序章から異様に面白かったわけですが、個人的印象としてはどうしたって主人公が男には見えないわけで、しかもふーりんボイス実装のせいでより愛らしさと破壊力を増してしまい、元々好きだったのに間違いなくダントツでこの作品群で最高に好きなキャラにのし上がってしまったため、主人公視点100%である以上全場面常に萌え狂えるという恐ろしいポテンシャルを宿してしまっているのです。。。
 とりあえず「やあああああのおおおお」で萌え死んだことだけ報告しておきますね(笑)。

 みんなで旅行編はオチがやや弱かったですが、茜子の普段見せない一面が全力で発揮されていてそれはそれで面白かったです。
 
 宮編、これはルートに踏み入るきっかけの部分がやや強引な気はしますが、みんなと一緒に一つの目標に向かって邁進するという、いわゆる普通のことが、普通人の宮を介することで意識の上に浮かび上がってくるという展開は素敵だったと思います。作中でも軽く言及されているように、呪い持ちだけで固まっていたら決して進めない道のりだと思えますからね。
 まああと強いて言えば、赤色さんはもっと姑息かつ戦略的にやっつけて欲しかったなあと。あれだとかなり偶発的な要素に助けられているし、本当はそれくらい出来る子ですからね、我らが智ちんは。ブラック智の本領発揮、見たかったなあ・・・。

 央輝編、シナリオとしてはこれが全体的にバランスが一番良かったですね。
 この主人公の最大の弱点は、強引に秘密に迫られたら回避する術がない点につきますが、央輝はそういう方法論が一番しっくり来るキャラなのであの展開にさほど違和感がなく、シナリオの序盤から主人公の秘密が開示された方向性で進むため、シナリオの肉付けが丁寧に出来ている感じがします。
 概ねヒロイン達の過去回想の伏線はここに繋がっている感じで、それは特別でもないそれなりにありがちな構成なんですけど、ぱっと見では有り得ないほどに住む世界の違うはずの人間にまで問題が波及することで、人が生きて自分の道を進む限り、他者を幸せにすることもある代わりに、どこかで不幸な人間を作ってしまうこともあるという典型例に説得力を持たせていると思います。
 そして餌付けされるゆんゆんの可愛さは異常。。。

 惠編、本編茜子編で開示されたように、彼女の問題は人間の倫理に軸足を置く限りは決して解決できないばかりか、問題を先送りにすることすら許されないシビアなものでした。一面的に見ればそれは、呪いを呪いであり続けさせるための制約なのですが、そのフィルターを外して一個の人間の問題としてクローズアップしたらどうなるのか、というのがこのシナリオの骨子になります。
 そして当然ながらこのシナリオがラストであるのには大きな意味があります。
 ここに至るまでのヒロインアフター的な幕間において、ここまでのヒロインシナリオのその後が決して単純なハッピーエンドではなく、主人公と結ばれなかったヒロインに不幸が訪れたり、あるいは結ばれたとしてもその未来が必ずバラ色ではないという人間世界の本質を突きつけた上で、そうした呪われた世界における理不尽の最たる惠の存在に挑戦することが、主人公を絶望に誘う為の手段であり、あるいは覚悟を決めさせるための最終試験でもあるからです。
 なのでこのシナリオはともかく全体的に重いです。つか三宅さんいい味出しすぎです。決して選ばれた手段が正当化できないものでも、読み手の感情面においては納得できるという匙加減が絶妙で、その点救いがあるといえばあるのですが、それでもあのラストは壮絶だと思います。
 この世界のルールにおいて、惠を介在する世界においては物語的なハッピーエンドは有り得ないと明確に突きつけることは、才能によってその真実を知ってしまった主人公にはいずれ向き合わなければならないテーマであるわけですね。

 かくして、主人公が能力によって覗き見た世界においては、その分岐の基点たる地点からでは絶対に救うことのできない相手がいるというのが絶対の真実であり、それは同盟から始まった、仲間全員の幸せに希求して奔走してきた主人公には辛い結論でもありましたが、それを突きつけることによって絶望に誘う手を振り払い、どんなに辛いことばかりの人生でも、それでも人としての幸せはそこにしかないと明言してまた見ぬ明日へと踏み出す主人公の強さと、それを支える世界の優しさを垣間見せることによって、この結論に対する説得性を高めています。
 いわゆる物語的なハッピーエンド、その後の物語を必要としない、その瞬間における自らの手が届く範囲の人間の幸せが約束されているエンドは、物語の構成の究極的な目標の一つだというのは真理であり、物語だからこそハッピーエンドが見たいという心理は現実世界に疲れた人間の弱さであるわけですが、その弱さの部分を物語の結論にしてしまうという選択はなかなか意欲的、というかなまじ薄っぺらい物語に付随させては反発を買うだけのテーマなのですが、このるい智という作品においてはその点が上手くクリアできているので、決して読後感は悪くないですね。とても面白かったです。

 
キャラ(20/20)

 いやもう、智ちんが可愛すぎて可愛すぎてどうにもなりません。本義的な意味でこんな可愛い娘が男の娘のはずがない状態なんですが。。。あまりの愛らしさに全ボイス聞き込んでしまったからもうゲームの進行が遅いこと遅いこと、でもその時間の全てが至福というね(笑)。
 主人公的立ち位置での良さとしては、今回は特に、自分の幸せを棚上げにしてでも仲間全員の幸せに向かってまっしぐらに希求している部分でしょうね〜。理性的なように見えて実はかなり情が厚くて、たまにその情の厚さが優柔不断っぽく見えるときもあるけれど、それは背負わされた問題が大きすぎる上に袋小路だからという点もあるから問題視するほどではないしね。
 にしても、どのヒロインよりも水着姿が可愛いとかまでいくともう狙っているとしか言えないよなあと。そして事前から期待は大きかったけれど、予想以上にふーりんボイスの馴染み方が素晴らしかったです。ふーりんキャラとしては歴代で五指、いやもしかしたら三指に入るかもってくらいの当たり役だったと個人的には思っています。

 予想以上に好きになったのは宮ですね。本編では考えていることが表に出ない謎キャラでしたけど、心の深い部分に触れるにつれて実に一途で可愛らしい面が目立ってきて、そうするとややエキセントリックな言動も可愛げに見えてくるから不思議です。
 ゆんゆんは期待通りの可愛さでした。宮ルート終盤からデレの伏線を引いておくとは実に用意周到です(笑)。一匹狼的に見えて、やはりどこかで寄り掛かれる何かを求めていたという本質は納得できるところですし、主人公との関係性を通じて徐々に柔らかくなっていく感じがすごく自然でよかったですね。


CG(18/20)

 コミュあたりからすごくこなれてきて綺麗な絵が増えてきたんで、本編から続けてやるとレベルアップの具合が顕著にわかりますね〜。量はそこそこですが、質は高いです。

 立ち絵に関しては基本的には本編準拠ですが、智と宮あたりは立ち絵が強化されている印象ですね。服装も全員に私服が追加されてバリエーションが出て良かったですし、これは演出の部分の功績ですが、台詞途中での表情切り替え機能が搭載されたことでより雰囲気が掴みやすく、表情も豊かに感じられるようになっていると感じました。
 とりあえず智の私服は鬼可愛い。異存は認めません(笑)。そして顎の下で手を三角に組んでるポーズ、あれも可愛すぎます。特に照れ顔と思案顔、あまりに素敵過ぎていちいち立ち絵鑑賞で眺めるのが日課に。。。そしてパレオ神降臨の水着が神過ぎて泣いたね。
 あとは宮の心配顔とかも良かったですね。こよりの大泣きとジト目も相変わらず破壊力が高いです。

 一枚絵はカットインまで含めて80枚と、まあFDとしては普通なんでしょうけど、シナリオのボリュームからするともう少しあってもいいかもと贅沢にも思えてしまいますね。まあ本編からの使い回しもシナリオでは採用していても、こっちの回想には入っていないだけ良心的ですし、そのあたり含めて実際的な意味合いで物足りなさはなかったかもしれないんですがね〜。
 そしてなんという俺得と言わんばかりの智占有率の高さにびっくりです。何せカットイン除く60枚のうち、全く智が入っていないCGってたった5枚しかないんですもん。。。しかもどれもこれもヒロインより智のほうが可愛いし(爆)。なんで、いつもお気に入りはヒロイン別に書いているんですけど、今回は敢えて智主体でいかせて貰います。
 ちなみに一番のお気に入りは、お姉ちゃんに襲われての1枚目。あの表情、あの半脱ぎ具合、あまりにも退廃的かつ妖艶で、凄みのある色気があって、なんじゃこりゃ〜状態ですホント。
 その他ページ順に、みんなでお風呂、るいとH1、3枚目、こよりとお風呂H1、3枚目、裸エプロン、茜子とコスプレH2枚目、宮との帰宅、宮と添い寝、ステージで愛嬌振りまく智、餌付けゆんゆん、ゆんゆんの能力発現H1、3枚目、惠と一緒に剣を抱えて、惠と初H、性別逆でしょバージョン1〜3枚目、惠のフェラ、ぼろぼろ智ちん、集合写真、カットイン智、ゾンビお姉ちゃん(笑)、智、るい、こよりの水着あたりですね。


BGM(19/20)

 本編の曲についてはそちらの感想に準拠、ただし前より『約束はできないけど』の切ない雰囲気が好きになっている気はします。
 新規ボーカル曲は3曲。
 OPの『Friends』は中々の名曲ですね。勢いのあるイントロから孤高感の漂うAメロ、そしてサビでの繋がる喜び、生の喜びが滲み出たメロディラインは見事に調和していると思います。強いて言えば繋ぎのBメロが淡白ですが、個人的にはそれを帳消しにするくらいAメロがお気に入りですね。あれはかっこいいです。
 宮編EDの『未来へのドア』、まあとりあえずふーりんが歌っているというレアイベントだけでも結構満足なんですが(笑)、歌唱力はともかくとして(爆)この曲は結構サビの部分の勢いが好きです。こう、遮二無二にでも前に進まないと望んだ未来は得られないというアウトローぶりが滲み出ている感じでいいですよね。
 挿入歌、という位置付けでいいのかな、グランドEDは『絆だったしね』、というわけで『見えない明日へ』、これもかなり好きな曲です。静かなバラードで、ぬくもりに支えられながら手探りで少しずつ前に進んでいくイメージが明確に浮かんでくる曲ですね。サビのメロディが特に柔らかくて好きです。

 新規BGMは10曲くらいでしょうか。相変わらず水準は高いです。
 『明日へ続く道』が特にお気に入りですね。OPのアレンジ曲ですけど、こちらのほうがみんなで歩を揃えて前に進む勇壮な雰囲気が強く出ていて、OPの雰囲気を内包した上で作品のイメージ的にすごくしっくり来る感じです。
 あとは『party』『彼方の鏡』『決意の光』あたりが好きですね。 


システム(9/10)

 ここは本編準拠じゃないですね、かなり進化してます。どちらかと言えばコミュ準拠ですが、演出面では更に小技が効いていて、相変わらず背景演出の部分においてはあまり力を入れていないように感じるものの、全体の動きと臨場感という点では充分高い水準だと思います。そしていつもながら総容量が少なくてPCに優しいことこの上なし。。。

 システムもシナリオセレクト搭載、立ち絵鑑賞モードに音楽鑑賞は本編のまでOKと実に痒いところに手が届く仕事ぶり、ゲーム進行の上でも不自由はないし特に文句のない出来ですね。


総合(91/100)

 総プレイ時間17〜8時間くらい。まあ最も私の場合、智ボイス全部カットしないで聞きながら進めるという牛歩プレイだったので、その辺考慮すれば2〜3時間は短くなるかもですけど、それでもFD、値段を考えれば充分なボリュームと質だと思います。
 FDというより完結編の趣が強いものの、当然ながら本編未プレイではちんぷんかんぷんなので、まだやってない人は全力でフルボイス版推奨します。。。本編合わせれば40時間以上の大作ですし、相変わらず言い回しにくどさはあっても読みにくいということはないので、是非お勧めしたい作品ですね。
 ・・・しかし、本編より全体的にレベルアップしていて、得点にもそれが反映しているというのはすごいよなあ。ホント期待以上の出来で大満足でした。
posted by クローバー at 05:57| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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