2010年11月10日

恋と選挙とチョコレート

 なんか情報出たときから妙に気になって、体験版もそこそこ面白かったんで購入。

シナリオ(22/30)

 大切なものを守るために。


 主人公が通う高藤学園は、総生徒数6000人超を誇るマンモス学園。
 それでも有数の名門として高い競争率を保っているこの学園の売りは、学生主導の自治運営と、裕福でない家庭の子供でも入学が可能な経済特待生、略してケートク制度であり、学費の代わりに労働を提供するケートクが稼いだ賃金の範囲内ならばほぼ完全に自治生徒会の運営に委ねられているという合理的なシステムが構築されていました。
 しかし物事にはいい面と悪い面があり、この学園の場合、自治生徒会の圧倒的な権力の肥大と、一般生徒のケートクに対する差別問題が根底に渦巻いており、また、自治生徒会長には絶大な権力が集中するため、毎年その座を争っての生徒会長選は白熱するものの、本質的には自治生徒会の行政三部、総務部、財務部、治安部の三部の代表しか生徒会長にはまずなれないという歪んだシステムも継承され続けているのでした。

 しかしながら、ごく一般の学生である主人公にとってはそのどれも対岸の火事であり、自治運営の賜物である自由な校風の元、食品研究部とは名ばかりの、日々お菓子を食べてだべるだけの部活、通称ショッケンで気心の知れた仲間たち、幼馴染の千里、その親友の美冬などとまったりと過ごす日々を満喫しているのでした。
 そんなある日、少し早く部室に訪れた主人公は、室内でこちらに背を向けてしゃがみこんでいる女の子を発見します。その無口な少女は未散と名乗り、ショッケンへの入部希望だということなので歓迎します。また一人仲間が増えて、より日々が楽しくなるかと思っているところ、生徒会長選挙を間近に控えてショッケンにとって不穏な噂が耳に入ってきます。
 それは、現時点での生徒会長最有力候補である東雲皐月のマニフェストに、部活動の仕分け、具体的には実績に応じた部費の再編成、部活の統廃合が掲げられるというものでした。事実、財務部の精査として皐月本人がショッケンに乗り込んできて実態調査を行っており、実績と呼べるものは何もない弱小部活のショッケンにとってはそれは明らかに不利な話で、実際にマニフェストが出るまでそこはかとない不安に苛まれながら生活することになります。

 そんな日々の中で、ケートク生で笑顔の可愛い少女衣更と出会ったり、またふとしたことから皐月と個人的に知遇を得たり、未散の歓迎会を催したりと色めかしいイベントもありましたが、そんなまったりとした日々も皐月のマニフェストが発表された瞬間に吹き飛んでしまいます。
 なんと、ショッケンは統廃合部活の筆頭で、廃部を宣告されてしまうのです。
 確かに外側から見れば、何も生産性がない部活であることは事実ですから、部費の大幅減額は止むを得ないと思っていた主人公も、予想の上を行く事態に呆然となります。とはいえ、何もしなければ、自分たちにとっては大切な場所であるショッケンが失われてしまうのも、皐月の現時点での支持率からしてほぼ確定的・・・。
 なんとかそんな事態を回避しようと頭を捻るショッケンメンバーですが、まず出た他の行政三部の立候補者を応援するというのは、今回は治安部が不祥事の影響で立候補見送り、そして総務部の立候補者には主要メンバー全員が不信感を持っていることでパスとなり、ならば最後の手段として、自分たちで候補を立てて選挙を戦おうということになります。
 そのアイデアを採用した千里に出馬しろと言われた主人公は、そんな無茶には乗れないと感情的に反発しますが、結局冷静になってみてもそれ以上のアイデアはなく、ならばせめて押し付けられるのではなく、部内公選の結果で決めようと妥協案を出しますが、その時の演説が巧み過ぎたせいで逆に求心力を高めてしまい、ショッケンメンバー全会一致で立候補者に押し上げられてしまうのでした。

 部活を守るためという旗印で、行政三部候補以外にはまず通れないと言われている選挙戦に挑むことになった主人公たち。全員が今まで選挙のせの字も知らない素人でも、座して死を待つわけには行かないという決意は、果たして如何なる方策をもって大きなうねりとなっていくのか?
 そして、選挙戦を通じてより強くなった仲間たちとの絆や、新たに知り合った人の意外な一面を目の当たりにしていく中で、主人公は何を思い、何を掴み取っていくのか?
 学園にはびこる大きな歪みは、果たして是正されていくのか?
 今、波乱の選挙戦が幕を開ける―――――。


 とまあ、あらすじはこんなところですね。手前味噌ですけど、今日のあらすじは上手くまとまっている気がする。。。一応ここまでが体験版の部分ですし、ここからちょっとでも進むと全力でネタバレの範囲ですからね〜。
 
 全体的な構成は、選挙戦を戦っていく中で、主人公にとって一人の女の子が特別に気になる相手になってきて、そのいわば恋と選挙を平行して進めていく過程で、ヒロイン独自の問題が選挙の方針にも影響を与えていくという形式です。選挙には一定数の獲得票で通過できる予備選挙と、ただ一人の生徒会長を決める本選挙の二段階があり、予備選挙通過のあたりまでは共通ルート多目ながらちらほらと個別イベントも混じってきて、そして本選挙の段階で個別ルート確定という流れですね。
 選挙という独特なイベントを主題の一つとしていますが、テキスト的にはややこなれていない感はあるものの、できるだけ簡潔に、かつ丁寧に専門的な部分も噛み砕いて説明しようと努力している感じですね。キャラ的にも特別エキセントリックなキャラはおらず、自然に会話の中で笑いや面白味を引き出せるような工夫を心がけているイメージがあり、それが成功しているかは人によるでしょうけど、個人的には好感が持てました。

 シナリオは、まず千里が一周目固定になります。
 これは、主人公と千里の関係の特殊性が大きく影響しており、どういう心性で、特に主人公が千里のことを見ているかという部分を最初にクリアしておくことで、他ヒロインと結ばれたときの展開に説得力を与えていると言えます。もっとぶっちゃければ、千里を嫌いにさせないための予防措置ですね(笑)。勿論それは目論見どおり機能はしているのですが、そのせいで衣更とか美冬とかのシナリオはプレイ前から内容が重いこと確定しちゃって、プレイ開始に何かしらの勢いが必要な感じでした。。。
 んで千里シナリオに話を戻すと、タイトルの三番目のキーであるチョコレートが二人の特殊な関係を紡ぐキーアイテムになっています。このシナリオに関しては、このチョコの使い方は実に上手いと思いました。ちゃんとチョコでなきゃならない必然性があるし、比喩的な意味で恋の甘さとほろ苦さという視点も介在してますからね。まあ他のシナリオでは、せいぜい美冬の最後で使われているくらいですけど、それでも主題に掲げて間違いない大切なポイントになっていたと思います。
 選挙戦に関しては、やや後出しのテーマが多かった部分でマイナスですけど、本質的に選挙に勝つことではなく仲間たちとの居場所を守ることが最大のテーマゆえに、その方向性に即したシナリオ展開という意味では、そういう選挙イベントが上手く作用していると思います。これは千里に限らず、他ヒロインにも言えることですが。
 本選挙の結果はシナリオによってまちまちですが、最終的に居場所が完全に失われるような結果にはならないのは、選挙を通じた頑張りがそうさせた、と素直に納得できるクオリティになっているので、結果的に取っ掛かりはまあ不問でもいいかと思わせる感じです。まあ完全に無からのファンタジーと違って、実際の社会構造の縮図の中でありえる事象を取り出しているからこそ、ってのもありますけど。

 それを踏まえて他四人もさらっとまとめてしまいましょう。
 プレイ順にまず皐月、これはショッケン顧問で皐月の姉である葉月が大きく物語に関わっていて、姉との橋渡しというところから主人公と皐月が大きく接近していく流れは特に違和感はなかったですね。皐月は選挙で見せる顔とプライベートの顔がぜんぜん印象が違って、正しい意味でギャップ萌えのあるキャラだと思います。
 選挙的には、結果的に行政三部候補の共倒れを誘発する形なのでダイナミズムはないですが、色んな意味で皐月の真っ直ぐさが光っているシナリオだと思いました。姉妹の和解は素直に感動的ですし、個人的にはかなり好きなシナリオです。

 次が未散ですね、これは予想以上に重いシナリオになりました。
 彼女に関しては登場の時点である意味伏線になっているわけですが、さすがにそれで全貌を掴めというのは無理な話で、それが明らかになるまで、全力で主人公に懐いていながらも大切なことは何一つ打ち明けない未散に違和感ばかり感じていたというのが正直なところ。
 選挙的にはもっともおざなりで、キーとなる政策もないまま、ただ勝たなきゃいけない使命感だけで押し切っているのはちょっと物足りないですね。ついでに未散の正体が明かされるところについては、いくら何でも学園自治でそこまで・・・とは思っちゃいましたけ。
 でも、未散の心の奥に隠された強い想い、そして会長の公的な顔の裏に隠された思慕など、意外性のあるところで話が盛り上がった印象で、トータルで見れば悪くないシナリオだったと思います。

 続いて衣更、ヒロインの立場上、選挙戦でタブー視されているケートク問題に切り込むことが確定的なので、さぞ重いだろうと思ってましたけど予想通り。しかも千里シナリオでどうも対になっている予感がしたから余計にやばそうだなあと、戦々恐々と進めてました(笑)。
 そんななのですごく重いのは確かですが、シナリオの出来という意味では一番良かったと思います。
 最初から主人公にとって心惹かれる相手として書かれていたので、惹かれあっていく過程に自然さがありましたし、その結果としての肩入れという方向性は、そりゃ確かに選挙人としてはやってはいけないことかもだけど納得は出来ます。その流れでの感情の上に正論を塗しての決別も、千里の側から見ればどうしようもないってのは確実ですし、このへん千里シナリオの展開が一番効いている部分だと思いました。
 選挙戦としても、絶望的な状況からの一発逆転、しかもそこまでのシナリオ内で答えに繋がる方向性は明示されていてすごくすっきりしていますし、それを段階的に進歩させて最終的に辿り着いた決着がすごくこの作品の本質にしっくりくるイメージなんですよね。
 勿体無かったのは、道中がやたら重いせいで、気分良く衣更とのイチャイチャを楽しめなかったことでしょうか。まあいくつか、禊を済ます前にそれはどうなの?って展開もありましたしね。このシナリオに限らず、微妙にHシーンの挿入地点がしっくりこないってのは、この作品に対する不満の一つではあります。もうこの際、ラブホから出てくるところで千里とみいちゃんに見つかって泥沼にならないかな〜とか不穏な妄想が頭を過ぎるくらいには不謹慎さを感じてしまったんですよね。

 最後が美冬シナリオ、あまりに三角関係が確定的過ぎて気重でしたが・・・。
 みいちゃんに関しては、共通でいくつかのわかりやすい伏線があったので、それがキーになるのは予想通りでしたが、それがきっかけ、というわけではなかったのは千里シナリオの立ち居振る舞いからすると意外ではありました。あの仮面はちょっと鉄壁過ぎると思う。千里の態度にも全くそれが仄めかされていないし、そこは敢えて千里を一番固定だった分、フォローが欲しかったところです。
 ぶっちゃけ内容的には、みいちゃん弱いな〜で全て説明ついちゃうんですけどね。。。
 過去の病気によるマイナス思考や人間不信、そしてそこから解放してくれた千里に対する恩というのがみいちゃんを語る上で外せないキーワードで、そこはきちんとみいちゃんの弱さに説得力を与えていると思うんですけど、正直好きなキャラのシナリオでなければきつい内容ではあると思います。
 最後は期待通り千里が何とかしてくれましたけどね〜。
 選挙戦的にもグズグズだし、せっかくみいちゃん超絶可愛いのにイチャラブには常に後ろめたさとか背徳感とかセットになってて純粋に楽しめないので、まあそこまで予想通りであったからまだ良かったけど、やっぱりちょっと残念だなあと。一番後日談が欲しいシナリオでした。

 総評としては、かなり重々しい展開も多かったものの、物語としての完成度は高く、読後感も悪くないのでいい作品だったと思います。正直千里以外は、どこかで見たような、ってイベントのつぎはぎだった気もするけど、上手く流れの中に組み込んで使いこなせていたのでまあ文句つけるところではないかなって。
 群を抜いて、ってほどではないけど、千里と衣更はいいシナリオだったので点数としてはこれでいきます。


キャラ(20/20)

 キャラ設定は全体的に上手く出来ていると思いますね。
 時には喧嘩やぶつかり合いをしながらも、基本的には和気藹々としている、等身大の学生像の一幕をうまく切り取った形のショッケンメンバー、その上に、それぞれが複雑で重い問題を抱えながらも明るく生きているヒロインを据えて、やるときはやる主人公がその魅力を上手く引き出せていると思いました。

 結局一番好きなヒロインは美冬ですね。
 みいちゃんはシナリオでの加点が少ないのですが、それでも最初からぶっちぎりで好きだったせいで、他の追随を凌ぎきった格好です。
 実は作品内で唯一の年上ヒロインなんですけど、清楚で愛らしくてお茶目で世話焼きでどこか抜けていて、そしてその内面に弱さや儚さ、切なさを一杯に抱え込んでいて、そうした部分も全部ひっくるめてすごく愛しいキャラだなあと私的には感じています。
 
 次点はこれも意外なチョイスながら皐月。
 まず自然体のギャップに惹かれ、そして普段はすごく凛々しいのにとても情熱的で一本気で、ずるいことが嫌いな故に損ばかりしていても自分の信念を曲げない真っ直ぐさが、逆に危なげに見えてそばで支えてあげたいと思わせるキャラに仕上がっていました。
 僅差で衣更と千里とのんちゃんですね。衣更は確かに可愛い笑顔の持ち主だけど、どことなくそれが完全に本物でなく、陰のあるものに見えて、それが最後では払拭されますが、そこに至るのが遅かったのが勿体無いなと。千里はデレの破壊力は半端ないですが、ツンのきつさで相殺している感じ。のんちゃんはもう少し見せ場が欲しかったなあ・・・。攻略させろとまでは言わないけど。。。


CG(18/20)

 全体的に淡い画風ながら、色彩だけはダイナミックで、印象に残りやすい絵柄だと思います。水準以上に可愛く描けているとは思いますが、個人的に一つ気になっているのは、黄緑を多用しすぎていないかって。。。

 立ち絵は、欲を言えばもう少し差分が欲しいけど、まあ必要なだけはあると思うし、全体的に可愛く仕上がっていると思います。
 珍しく場面指定でのお気に入りですが、主人公と千里がバカップル化した夜の帰り道での、みいちゃんのゲンナリ顔と衣更の引きつり顔、たぶんこの二つは他の場面で使われてなかったレア表情で、しかしながら滅多にしない表情だけにその場の空気を存分に伝えていて、それ含めて気に入ってます。
 あとは単体で、千里のニヤリ顔、笑顔、思案顔、美冬のきょとんとした顔、ダメねえ顔、怒り顔、笑顔、衣更の笑顔、照れ顔、びっくり顔、未散のほのかな笑顔、皐月の愛らしい笑顔、拗ね顔、のんちゃんの笑顔、半泣き顔、悪巧み顔、思案顔あたりが好きですね。

 一枚絵は、質・量ともそれなりですかね。千里だけやや優遇されてますが、全体絵も含まれているので意識するほどではないかと。
 お気に入りは、千里がコスプレ、一緒にお風呂、添い寝、ウエディング、初H正常位、制服H騎乗位、衣更がクローバープレゼント、指ちゅぱ、一緒に御飯、肝試し、初H正常位、ラブホのお風呂H、一緒に料理、皐月が大島ロールにメロメロ、地震に怯えて、初H後の朝、葉月との和解、美冬がお見舞い、転寝、カラオケ、初キス、初H正常位、雨の中打ちひしがれて、未散が出会い、お姫様抱っこ、騎乗位、後ろから抱きしめて、あたりですね。


BGM(18/20)

 青春、って雰囲気の曲が多くてなかなか出来がいいと思います。
 ボーカル曲はなんと8曲。
 ですが、全部回想には入っていないという不親切ぶりなので、まともに聴きこめたのはマキシになってた主題歌と挿入歌だけなんですけどね。。。
 OPの『INTIATIVE』は、ダイナミックに音が動いて、かっこいい中にも切なさが感じられる中々いい曲ですね。特にBメロからの歌詞が好みです。「戸惑った夢に〜」のところでいったん音が下がるのもツボ。
 挿入歌の『piece of my heart』は実にしっとりとしながらも力強い、なんとしても、どんな痛みを乗り越えてでもこの恋は成就させるんだという意志をイメージさせる曲ですね〜。この曲も結構好きです。

 その他はせいぜい1〜2回しか聞いていないんで雰囲気だけになりますが、結構好きだなってのは衣更EDと美冬ED、あとグランドEDはイントロが好きです。最初の画面で流れる曲ですけど、回想にはインストバージョンすらないという・・・。

 BGMは水準の出来。曲名がついてないのでここに列記するのは非常に楽。。。
 お気に入りは、1、2、5、8、11、15、18、23番ですね。


システム(7/10)

 演出はもう少しかな〜。シナリオのオート演出が多くてそれはいいとしても、それに付随する演出力が追いついていない感じで勿体無かったです。OPムービーはかっこいいと思うけど。

 システムももう一歩。
 ディスクレス不可は面倒に過ぎるし、ワイド対応がないのも残念。スキップももう少し速くして欲しいですね、共通が多いだけに特に。手書き文字という試みは中々面白かったです、雰囲気にも合ってましたしね。


総合(85/100)

 総プレイ時間、18時間くらいかな。共通3時間、個別3時間が大まかな計測ですが、どこまでが個別とかの組み分けが難しく、共通も少しずつテキストが違ったりするので、実質はもう少しかかるかもしれません。まあボリュームとしては水準、密度はかなり高いと思います。
 新ブランドという形の割に世間が盛り上がっているので、きっとそれなりに期待される要素の高いメンバーだったんでしょうが、個人的にそういう部分はあまりわからないので単純に印象の良さだけで手にしたんですけど、期待以上の出来でした。特にシナリオは良く練られていて目立った齟齬もなく、きちんと読後感のよさもあったので満足です。
 強いて言えばシステム周りに改善が欲しいですが、今後も期待したいブランドになりそうですね。
posted by クローバー at 06:39| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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