2010年12月02日

キッキングホース★ラプソディ

 シナリオのコンセプトとライターのマッチングが素敵だったので迷わず購入。


シナリオ(25/30)

 上らなきゃいけないのなら、私は上る。


 街には恋が溢れているけど、同じくらいこの恋路を邪魔するものも溢れていて、だから恋人達を邪魔しようとするあらゆる障害を蹴っ飛ばす馬として縦横無尽に活躍する、それがキッキングホース★ラプソディ。
 主人公がふとしたことから始めたバイトはそんな内容でした。
 バイト狂の友人や、恋に恋するお年頃としての好奇心などから応募してみた変り種のバイトは、出穂という妙齢で普段は延々とダラダラ、口を開けばまわりくどい嫌味が溢れ出る謎のお姉さんが主催する、恋人応援組織というべきもの。日々街を巡回して、恋人達が困っているシーンに出くわしたら手を差し伸べる、時間の制約やノルマというものとは無縁の、まずは気楽なバイトでした。

 しかしながら、そのバイト仲間が、クラスメイトで小柄で華やか、でも口を開くとぶっきらぼうで近寄りがたい雰囲気を醸し出すのばらと、その唯一といっていい親友である、長身スレンダーの能天気行動派の志乃の二人。
 ただでさえ集団の中で男一人では身の置き所がないのに、元から二人は親友とあって、なかなか二人の関係性に割り込む余地を見出せない主人公ですが、バイトでの協力などを通じて少しずつ仲良くなっていきます。
 また仕事のほうでは、対立組織とでもいうべき恋愛お邪魔団が出現し、その活動を阻害するためにお邪魔団のドン、身長体重体系、その他様々な要素が平均値のミス普通・聖を搦め手から篭絡しようとしたりと、まあ日々飽きないイベントが目白押し。
 とかく若い男女が、否応なく恋愛を意識させる仕事に共に従事していることで、その関係性が単なる職場仲間から友人へ、そして更にその上の関係へステップアップしていくのを意識しないわけにはいかず、しかしそうなったらなったで、今までの関係性がギクシャクし始めて・・・。
 不思議な仕事を通じて繋がった彼らの縁は、一体どんな方向に転がっていき、果たしてどんな決着を見せるのでしょうか?


 あらすじはこんなんですね。
 だいたい読んでわかる通り、基本的に思春期の男女が恋愛で取った取られたと、嫉妬と羨望をあらわにして、恋と友情の狭間でドタバタと立ち回るお話です。
 定価が普通のエロゲのほぼ2/3であるミドルプライス商品なので、ヒロイン数も三人で、シナリオのボリュームもまあ値段相応ですが、フルプライスだともう少し多様性を求められる内容とテーマ性をほぼ一点集中に出来るメリットを非常に上手く使いこなせている作品だと個人的には思っています。
 
 テキストに関しては、とにかく個々人の感じ方、という部分のタッチが非常に繊細で優しい書き方をするライターさんですね。心情の機微を無駄のないテキストでテンポ良く回していくので、面白いというよりはとにかく読んでいて居心地がいいとでもいうべきでしょうか、そういう全体の雰囲気の良さで勝負するイメージです。
 それを下支えする性格付けの部分に、家庭の在り方というものを実に上手く利用しています。
 主人公からして、母子家庭で苦労したが故に、出来るだけ自分の役割を集団の中で見出して、周りの人の力になりたいという性格で、まあこれはエロゲ的には各々のヒロインの性格に合わせる形で自分を上手く変化させられるという視点で便利な性格付けなんですが、そういう部分を露骨に前に出すわけでなく、要所で上手く使っているから違和感がないんですよね。
 ヒロインにしても同じくで、それぞれの生まれ育ちによる性格付けってのがしっかり共感できる設定になっています。また、その家庭的な問題に際しては深く踏み込んでいないのも絶妙で、類型的なイメージとして、ああそういうタイプか、となんとなく納得できてしまう雰囲気作りが見事なんですよね。
 アンナ・カレーニナでしたっけ、幸せの形はほとんど同じだけど不幸の形は多種多様だというニュアンスの例文を引いてくるまでもなく、細かく突っ込んでしまうとその類型的イメージとの親和性が崩れてしまうというお約束は、普通であれば物語のギャップとして利用されるわけですけど、この作品はテーマが恋愛そのものですから、敢えてその一歩手前でイメージを固着させているわけです。

 構成としてはヒロイン脱落型になりますね。
 一人のヒロインをメインとする問題が発生して、それを解決していく過程でそのヒロインとくっつくかどうかが判定され、そこでカップル成立すれば個別へ、しなければ次のヒロインの問題へ、って流れです。志乃⇒聖⇒のばらの順でシナリオは展開されるので、攻略順もその通りにしておくと、物語的に一番面白味がある印象ですね。特にのばらラストは絶対的に推奨します。
 各ヒロインのイベントを通過すると、恋人になるならないに関係なくそのヒロインは主人公ラブになりますので、後にいけばいくほど問題は錯綜するわけで、また個人的資質も加味すればやはりのばらラスボスに異存は出ないところだと思うんですけどね〜。

 基本的なシナリオのイメージとしては、女集団の中にただ一人入り込んでしまった男である主人公の存在が、少しずつ集団の関係性を崩してしまうのを繕おうと奔走し、そうやって世話焼きをしてくれる主人公にヒロインが好意を持ち始めることで、今度は友情と恋の板ばさみという別の関係性を持ち込んでしまってさあ大変、ってことになります。
 でまあ個人的には、どのシナリオにおいてものばらの立ち回りが好きで好きで仕方ないんですよね〜。
 他の二人が基本的に依存体質で、方向性は違えど甘えっ子であるのに対して、常に誰に対しても何に対しても対等の関係を目指し、真っ直ぐ正直に努力していく性質ののばらは、それでいて自分の大切なものを守ろうという想いは人一倍強いから、対象が友情であれ恋情であれ、それを守るための行動というのが実に清々しいんですよ。
 けど友情も恋情も自分一人のものではない以上、どうしても相手に依存しなければ引き出せない部分もあるわけで、そういうギリギリの部分でのみ見せるのばらの甘えが、他の二人との対象性で実に印象的に映るんですよね。
 
 そんな感じで他ヒロインのシナリオでも輝いているのばらですが、やはり自分のシナリオだと更に一味違います。そもそも恋愛感的に他の二人と真逆で実に現実的な発想を持っているのばらは、自分の今の生活の中に恋愛という要素を持ち込める余裕がないことを理由に恋愛を遠ざけていたわけですが、そうやって抑えていた気持ちを誤魔化せなくなったときの振る舞いがまた素敵で素敵で・・・。
 冒頭に書いた一文、珍しく作品からそのまま引っ張ってしまったんですけど、まさしくのばらの全てがあの台詞に込められていると言っても過言ではないってくらいいい場面で使われています。ぶっちゃけこのシーンだけで2〜3点は加点されていますね。

 のばらにばっかり言及してしまうのは私的な好みからして仕方ないんですが、全体的に見ても、それぞれのヒロインの性質にそぐわったイチャラブがきっちり展開されていますし、シナリオ的にも上手くキャラの心理を噛み合わせて、いざ言葉にしてみれば大した内容でないものを、実に印象的かつ感動的に仕上げていて、日常の中のほんのちょっとしたドラマ性というのが好きな人の琴線を優しくくすぐる出来になっていると思います。
 同じライターさんの作品であるましろ色の愛理とアンジェのシナリオ、あれが好きだった人なら作風には絶対に共感できると思いますし、特に愛理好きにはのばらはクリティカルヒットするのではと愚考します。個人的嗜好として、ゲーム内では依存体質のヒロインよりは、しっかりした自己の上に恋愛を構築して対等性を意識しているヒロインのほうが好きってのがありまして、普通の作品だとそういう部分はここまで明確に表現されないので、その点でも貴重ですし、期待はしていたけどここまで好みにアジャストされたキャラがまた出てきたのは嬉しい限り。
 
 テーマ性としては普遍性はあるにせよかなり閉じた世界での物語なのですが、その分全体のバランスも上手く制御できていて、個人的には大好きな作品になりました。欲を言えばもう少し、キッキン設立にまつわる部分を掘り下げても、とは思いますが、あれだけでも心情的にはすっと納得できるのでまあいいのかなと。
 ただ、体操の採点じゃないけど、このテーマ性だけに絞ってということになると、最初から満点には届かない構成であるのも事実ではあります。私の今回の採点イメージとしては、25点満点の25点、って感じで、このテーマ性に沿った形では私が求める最上級の内容であったと思ってもらえればいいかなと。
 もっと物語にダイナミズムや流動性を求める人には物足りないことこの上ないかもしれませんが、身近で素朴な恋愛模様を後味を悪くせずに楽しみたいって人にはお勧めできる作品ですね〜。


キャラ(20/20)

 もうのばらが絶大に素晴らしかったです。体験版の時点からひょっとしたら、という期待は持っていたんですが、基本的にトランジスタグラマータイプってまず好きになれないことが多かったので、事前の期待をはるかに凌駕する魅力溢れたヒロインで大満足。シナリオでも引き合いに出しましたけど、去年の愛理と同じパターンで、最初はそこまででもないのにシナリオを進めていくうちにどんどん好きになっていって青天井、って感じ。このライターさんとの相性の良さを感じます。

 正直私の稚拙な表現力で、この内面に渦巻くのばらの魅力は伝えきれない気がするくらい多面的に大好きなんですけど、やはり一番の魅力は、のばらがのばらとして確立してきた自己の更に一段上に恋愛を積み上げていくって言う思想性ですね。
 境遇を卑下せず、その中で磨き上げた自身の魅力を正確に理解していて、そこを好きになってくれた相手を前に堕落を絶対に許さない強さと、その自己の中に絶対に必要な部分については絶対に妥協せず求め続ける意志の強靭さ、その中に一握りだけ、ギリギリの部分で甘えを残していて、その全てが渾然一体となって魅力的なのばらを構築しているというイメージです。
 と、こう字面で見ると完璧に見えるけど、実際にプレイしているともっと自然体で愛らしいってのも反則気味の破壊力で、一見アンバランスな全ての要素がきちんと計算されつくされている、素晴らしいキャラでした。

 のばらに圧倒されちゃってはいるけど、聖も結構好きです。
 個人的には普通の何が悪いんだろうとは思っちゃいますけどね。すごく調和が取れていて女の子らしくて愛らしく、実に献身的で可愛いと思います。ただまあ、心理的に依存しすぎというか、絶対別れる別れないとかなったらヤンデレ化しそうで怖い面はあるけど。。。
 志乃も好きではあるけど、他二人に比べると直情的過ぎて面白味には欠けますね〜。他シナリオでのお邪魔虫度もかなり高いし。。。


CG(18/20)

 淡くて可愛らしい絵柄ですね〜。量もまあ値段相応で満足できる内容でした。
 立ち絵は差分はそれほどではないけど、イメージに残りやすい仕草が多くて楽しめました。
 お気に入りは、のばらの両手を挙げて怒るポーズ、正面向きの企み顔、思案顔、笑顔、やや横向きの憂い顔、呆れ顔、聖の正面向き笑顔、うっとり顔、横向き拗ね顔、志乃のからかい顔、半泣き顔、出穂のしてやったり顔あたりですかね。

 一枚絵はややのばら優遇で、出来もそれに準ずる感じ。まあ贔屓目がないとは言えないけど。。。
 お気に入りはページ順に、みんなでカラオケ、のばらとキス、一緒に近藤さんを買いに、寝起きの三つ編み、三人姉弟、アイス半分ずつ、主人公取り合い、待ち焦がれた祝福、添い寝、初H騎乗位、教室H背面座位、志乃と路地でトーク、三人の新しい形、初Hバック、部屋でH正常位、聖がお邪魔団解散、腕を組んで、初めてのキス、部屋H髪の毛フェラ、正常位、SDのばらの膝枕、三つ編みで恥じらいあたりですね。


BGM(15/20)

 まあ可もなく不可もなく。
 ボーカル曲は2曲。
 OPの『Summar days rhapeody』は出だしの勢いに乗ったイメージが中々に鮮烈な、アップテンポで気持ちのいい曲ですね。
 EDの『ビタミンラブ』は涼やかでさっぱりとした、シナリオの後味の良さを上手く引き立てている曲ですね〜。

 BGMのお気に入りは『Afternoon Bossa』『ちょっとな!』『Pledege』『silent sigh』あたりです。


システム(8/10)

 演出はまあ水準レベルではないかと。特別これはってのはないけど、そつなくきちんとシナリオをサポートできているし、物足りなさを感じるほどではなかったので。

 システムもまあ普通。少なくとも不自由はしないです。


総合(86/100)

 総プレイ時間11時間くらいかな。のばらに辿り着くまでで見ると結構共通長いですが、きちんとその事象があったからこそのシナリオに仕上がっているので、読み返すのにもそんなに苦はないし、それぞれヒロインシナリオもしっかりイチャコラしているので、とにかく気分良くプレイできますね。
 ちなみに三角関係的泥沼のイメージを期待してるとたぶん肩透かしです。ヒロインの性質によるところは大きいですが、軋轢そのものよりそれを乗り越えての新たな関係性の構築に比重が置かれているので、まあどうにも重々しさに欠けるという意味では私も否定しません。
 絶対に好き嫌いは出る作品ですが、個人的には絶賛に近いものがありました。クラクラはさすがにちょっと違うかなとパスしたんですけど(笑)、やはりこのライターさんは追いかけていきたいですね。資質的にこの規模がぴったりって気もしますが。。。
posted by クローバー at 06:28| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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