2010年12月29日

初恋サクラメント

 シナリオなかひろさんなのでまあ無条件に購入。

シナリオ(22/30)

 ヒカリの差す先に・・・。


 主人公はその日、途方に暮れていました。
 およそ一年前の両親の事故死と、それに伴っての姉の旭の負担ばかりが増えることを心苦しく思っていた主人公は、ミレニア学園への進学を機に旭に負担を掛けないように一人暮らしを始めようと決意し、それに見合う物件を捜し求めて歩いていました。
 しかしながら、学生の独り身が問題なく住まうに足る条件の住居など一日程度で簡単に見つかるはずもなく、独り立ちの一歩目から躓いた感じで、それでも諦めきれずに家に帰るのをブラブラと先延ばしにしていました。
 そんな時目に入ったのが、教会が隣接している古びたアパートのような建物でした。秘蹟荘と名前が着いたその建物の前には、どう見ても小さな女の子が箒を持って掃除をしており、しかし彼女は主人公の姿に気付くと大人びた口調で自分がこのアパートの管理人、ノアであると言い、たわいなくこのアパートの家賃を聞いた主人公に、ある条件さえクリアすればタダ住める物件であることを説明します。
 その条件とは、キリスト教に入信すること、でした。
 色々胡散臭さは感じつつも、タダという魅力的な条件に惹かれ、主人公はほぼ即決でここへの移住を決めます。
 
 その日の夜、一人の女の子がこの秘蹟荘に訪れ、そして門の前で空腹で行き倒れになります。
 ノアによって助けられた少女はヒカリと名乗り、明日から主人公が入居予定の102号室に入らせて欲しいと頼み、ノアに断られるとこっそり持っていた合鍵で忍び込み、そしてその後教会で祈りを捧げている途中に、またしても空腹で行き倒れになってしまいます。

 契約の翌日、早速荷物の一部を部屋に置きに来た主人公ですが、合鍵をうっかりなくしてしまっていて、ノアに新しいのを借りようにも留守で、とりあえず何故か開きっぱなしになっていた部屋の中に荷物を投げ込んで、ノアが帰ってくるまで教会でも除いてみようと足を踏み入れます。
 するとそこには、何故か裸の少女が倒れていました。
 あまりの事態に動揺しつつも少女を介抱していると、やがて目を覚ました少女は主人公のことをお兄ちゃんと呼び、泣きながら抱きついてきます。その少女は主人公にとってはじめて見る相手であるにも拘らず、何故かその姿に郷愁を抱き、抱き返そうとしたところで我に返った少女に突き飛ばされます。
 そして、彼女はヒカリという自分の名前以外、何も覚えていませんでした。

 ノアが仲立ちになってようやく落ち着いた二人ですが、ヒカリに記憶がないこと、しかし何故かこの教会と102号室にどことなく執着を感じていることを踏まえ、記憶が戻るまで隣人愛の精神で同居をしたらどうかと提案してきます。無論年頃の男女が同居するなど普通では・・・なのですが、主人公はヒカリが持つ凛とした雰囲気と、どことない懐かしさと儚さに惹かれて、その提案を呑み、かくして念願の一人暮らしは、奇妙な同居生活へと様変わりするのでした。

 その後もノアが色々と便宜を図ってくれたことで、最低限の利便性のある生活や、何故か主人公と同じ学園へのヒカリの入学まで許可され、ヒカリは自分が周りの人間にここまで助けてもらったのと同じように、自分も常に誰かの助けになる存在でありたいと願い、教会の懺悔室のような役割と、そして必要ならトラブルを直接解決する、そんな目的の部活、大空部を設立します。
 まず主人公を引き込み、そして主人公の昔馴染みであるいろはが仲間に加わり、設立目的とそれに関わる状況から何かと大空部を敵視してくる学生会の一員である岬の罠を掻い潜って逆に仲間に引き込み、そしてストーカー相談に来た星見の問題を解決することで彼女もまた活動に賛同して仲間になってくれて、一気に5人のメンバーになった大空部、しかしながらこの学園にはまだまだ多くの問題があり、困った人を決して見捨てられない、真のクリスチャンであるヒカリを先頭にした大空部は、否応なしにその問題にも巻き込まれていくのでした。
 様々な問題を解決し、そしてそれぞれのヒロインが抱える問題もまた露呈していく中で、大空部の進む未来にはどんな光景が待ち構えているのでしょうか?


 と、こんなあらすじですかね。
 この時点で、実は嘘は書いていないけど真実の全てを説明しているわけではないって状態なんですけど、そのあたりに序盤で感じる違和感や謎の答えが隠されているので、そこは全てをプレイしてのお楽しみにってところですね。
 作品の特色としては、やはり土台にキリスト教の精神を持ち込んでいることでしょう。ある程度作品内でも簡潔な説明はされていますが、やはり本質的にキリスト教の精神というのは日本人に馴染みがあるものではないので、多少行動原理に違和感や偽善めいた雰囲気を感じ取ってしまう部分もあり、そこを飲み込まないと理屈としても成立しなくなっているので、やや敷居が高く感じる部分もあるかなって印象です。またその在り方が、教義をシナリオの特性に合わせて狭義的に捉えている可能性も否めないため、正直難しく考えると突き当たる部分は結構あるなあと。

 そういう点はある程度サラッと流すとして、テキストのノリはいつものなかひろさんで、実に独特なキャラの会話の掛け合いが面白いですね。特に岬が絡んだ会話はテンポが良くて、時に脱線ばかりしつつも綺麗に本筋へ着陸するタイミングを弁えており、読んでいて楽しかったです。
 共通ルートが恐ろしいくらいに長い作品ですが、その中でサブキャラに至るまでそれぞれの思想や立ち位置がしっかりと言及されるために、全体像としての動きに違和感はなく、それぞれ魅力もしっかりと際立っているのではと感じます。まあいつもながら引っ張りすぎ、っていわれても仕方のない冗長さは感じるのですが、そのしつこさが逆に説得力の源泉であるとも言えるので、その辺は好みに委ねられるところですかね。

 シナリオに関しては、タイトルの通りに、初恋というイベントをヒロイン自身の問題と大きく絡めることによって、単純な恋愛要素ではなく、それを乗り越えることで新しい自分、何かに囚われない自由で強固な意志を持つ自分へと成長していく、そんな雰囲気の聖なる儀式(サクラメント)にまで昇華させる、そういう構成になっています。
 選択肢的には、どうも最後の一つ二つでヒロイン選択は決定している雰囲気なんですよね。いくつか出てくる、直面している問題に対する謎解きの形の選択肢、あれの正解率による洞察力の高低がある程度ヒロイン選択に関わってくるのかと思っていたのですが、どうもそこまで難しくないみたいです。きちんと検証はしてませんけど、全問正解でも不正解でも関係なく誰のルートにも入れましたしね・・・。もしかしたらグランドの発生条件かもですけど、そこも今となっては検証するのは非常に面倒ですし、単純にあれは謎解きに共有感を持たせるための遊びと思っておいていいのかもしれません。
 
 メインヒロインはヒカリなので後で大きく触れるとして、他の三人については、ヒカリが突如海外留学をしてしまった後の物語ということになります。一番主人公との距離が近かったヒカリが突如いなくなることで、と言ったら聞こえは悪いんですけど、まあヒカリを足踏みにして他のヒロインと、ってのも雰囲気的に微妙ではありますし、これはこれでってとこですかね。
 そして共通である程度露呈した各ヒロインの抱える問題に踏み込んでいく形なのも当然で、説明が既になされている分は簡素ながらも的確に、パズルを埋めていくような形で問題の本質に迫ったいく手法はいつもながら丁寧で、ヒロインの心情とも絡めて綺麗に編み上げられており、相変わらず堅実に面白かったですね。
 とはいえ、作品の大筋に関わる伏線は全てヒカリ絡みである為、スケール感は物足りない部分もあり、そのへんは仕方ないこととはいえちょっと残念ではありました。

 そしてメインのヒカリシナリオ、これはさすがでしたね。
 正直これはネタバレしてしまうと面白さは半減というタイプの内容なので、ぼんやりとした形でしか書けませんが、登場キャラには絶対にそこにいるべき必然性を組み込んでくるというライターの特性がピンポイントで逆手に取られているというか、ミスリードを非常に有効に活用しており、それが明らかになったときにヒカリの初恋の底にあるもの、そしてその大きさと一途さ、それに付随する痛みや悲しみまで全てがクローズアップされ、場面の衝撃と相俟ってすごくインパクトがあります。
 そして、そのヒカリの初恋と自責を巡る世界の中で、きっちりと奇跡の本質と、人のあるべき姿がスポットライトを浴びる形で前面に押し出され、それを体現した存在になろうと足掻くヒカリというキャラの色合いが素晴らしく底上げされるんですね。
 ただし、やはり根底に宗教的な素養が置かれている分、観念として飲み込みにくい部分、そしていくら神学と科学の繋がりを検証しようと擦り合せられない部分は見受けられ、その分説得力に陰りを見せてしまっているかもしれません。まあすごく読解力と感受性の強い人にならより効果的かもしれませんが、残念ながら凡人で信仰心の欠片もない私には無理な相談でした・・・。まあいずれもう一周したときにはっと気付く部分はあるでしょうし、宗教の本質も教えを甘受するだけではなく気付きにこそ大切なものがあるのは同じですけど。
 まあそういう意味では、きちんともう一周してから感想書くべきなんですけどね〜。年末で時間ないから妥協している部分はあって、それは遺憾であると同時に非常に勿体無いとわかってはいるんですが。。。

 とまあ、全体的にぼやけた感想になっている気はしますが、キリスト教をシナリオの根底に取り組むと言う意欲的な試みは否定しませんが、その分なかひろさんのシナリオ作りで私が一番好みだった構成の堅固さに若干の粗漏が見られたかなあと。私が理解し切れなかった部分もきっとあるので、もしかしたら総括前に書き換える可能性もありますが、ファーストインプレッションとしてはこんな感じになっちゃいますね。
 

キャラ(20/20)

 ヒカリは素晴らしいヒロインでしたね〜。
 ヒカリ本人が言及しているように、生き方の切所で迷わない真っ直ぐさというのは、キリスト教に帰依しているという設定でこそ説得力を持ちうるあり方でしょうし、その清々しさだけでも中々に斬新な色合いを出していますが、プラスして記憶の後ろ側に隠れた想いが引き出す、相手に尽くす優しさとか、恥じらいとかがすごく愛らしいです。
 また、最初から見受けられるお嬢様っぽい設定がこれ以上ない説得力で証明されるのも魅力の底上げになっていますし、胸のうちに抱える恋の複雑さ、大きさ、一途さまで合わせれば、他のヒロインには悪いですが、この主人公にはヒカリしかいないと思わせるくらいの破壊力はあったと思います。

 単純に可愛さという点では星見も負けてはいないんですけどね。
 とにかく無垢で純粋で、ひたすら相手の想いに対して誠実で、でも自分の気持ちには鈍感で、それでいて剣を奮えばその邪な思いのない純な力は群を抜いていて、とにかく清冽という言葉がぴったりのヒロインだと思います。
 一方で結構ドジっ子だったり、気が弱くて恥ずかしがりだったりと、すごく庇護欲をそそる部分もあり、強さと弱さが混じることなく内面で色づいている、とても不思議なヒロインでもありましたね。

 岬もなんだかんだで結構好きなんですよね。普段はふざけてばかりでも、心の奥底に秘めた想いや悲しみの強さは人一倍で、感性を表にして生きている分すごく傷つきやすそうで、そういう面を知ってしまうとあの我が儘さや奔放さがすごく可愛く見えてくるキャラだと思います。
 いろはの自己犠牲的精神そのものはあまり感心しないんですけど、あのおっとりした雰囲気と真のある優しさは好きですね。

 サブキャラだと文雪が一番好きかも。クールに見えて誰よりも熱情が渦巻いている、ああいう生き方はすごく辛いとと言う共感は一番身近に感じられたキャラだったりしますし。


CG(17/20) 

 原画家二人ですが、星見・岬サイドはすごく好きで、ヒカリ・いろはサイドはやや微妙ってイメージです。

 立ち絵は差分・服飾それなりで、エフェクト効果があまりない分溌剌とした雰囲気はやや薄いものの、可変ウィンドウのおかげで視点が定まりやすい分イメージには残りやすいってトコですね。
 お気に入りは、ヒカリの照れ顔、拗ね顔、半泣き顔、怒り顔、いろはの横向きで怪訝な顔、笑顔、困り顔、星見の笑顔、真面目顔、テンパリ顔、大赤面、岬の真面目顔、からかい顔、照れ顔、鏡花のゲンナリ顔、怒り顔、文雪の吃驚顔、後ろめたい顔、姫の嫉妬顔あたりですね。

 一枚絵は、ヒカリだけかなり優遇されていますが、それを含めて量は充分、質は・・・ピンキリかなあ。
 特にお気に入りは、バスタオルで馬乗りになる岬。この可愛さは凄まじいですね。特に主人公に逆襲されてうろたえたり恥じらい顔になっている差分の愛らしさと言ったらもう、あまりの破壊力に悶絶したくらいですから。。。
 あとお気に入りはページ順に、ヒカリの着替え、台所に立つヒカリ、正常位、いろはとゴムボート、初めてのキス、海辺で背面座位、星見のシャワー、一緒に料理、相合傘、夕暮れのキス、初H愛撫、お風呂H騎乗位、海辺で寝転がる岬、初H全部、教室でフェラ、不意打ちのキス、姫を救って、姫と初めて出会って、ヒカリと星見の銭湯談義、成長した星見、首吊り猫あたりですね。


BGM(17/20)

 宗教を意識した荘厳なイメージの曲が多く、印象には残りやすいラインナップですね。
 ボーカル曲は2曲。
 OPの『青空の約束』は爽やかな広がりを感じさせる、実にOPらしいOPですね。よくよく歌詞を聞くと結構意味深だったりして、作品のイメージにはしっくり来る曲です。でも曲そのものとしては普通かな〜。
 EDの『君のいない世界』、いやもうタイトルと出だしからしてホントにEDですか?って感じですけど、全部プレイした後でならば結構受け取り方が変わってくる曲ですね。そういう、物事は捉え方次第で変わるというシナリオともリンクした、まあ曲調としては歌詞ほど重々しくはない透明性のある曲です。

 BGMは中々にいい出来。
 特にお気に入りは『決意−運命の歯車−』ですかね。抗えない未来の中でも、自分の進むべき道を見失うことなく強く歩んでいく、そんなイメージが鋭く胸に突き刺さってくる、そんな雰囲気の名曲です。
 その他お気に入りは、『Sanctuary』『Original sin』『千年の贖罪』『奈落の領域』『一時の恩寵』『剣聖と拳煌』『悠久の光』あたりですね。


システム(9/10)

 演出は相変わらず質が高いですね。
 キャラ演出はそこまでではないんですけど、背景演出のレベルが凄まじく高いです。特に水の演出、河川や海の揺らめき、濁流、雨のはじき返しなど、すごく細かいところまで行き届いていて臨場感がありました。また、可変ウィンドウのおかげで視点の高低差や奥行きまできっちり表現できていて、すごく読みやすいイメージがありましたね。

 システムとしてはほぼいうことなし。
 自分でカスタム出来るメニューバーと言うのも実に斬新ながら、必要な機能は全部揃っていてかつ自分好みに選択できるのですごく使いやすいですし、ウィンドウを固定・可変させるのまで自由自在とか、その他にも色々使ってみたい機能が目白押しで、システム面では間違いなく最先端の一角にあると感じました。


総合(85/100)

 総プレイ時間25時間くらい。共通9時間、個別各3時間、ヒカリグランド4時間くらいのイメージですね。
 ボリュームはかなりありますが、息もつかせず事件の連続、というわけでもなく、むしろ少しずつ少しずつキャラの内面に近づいていくようなアプローチなので、ややもどかしく感じる部分はあるかもしれませんが、それが特色なので私としては文句のないところです。
 テーマのひとつが宗教であるため、結果的にクローズアップされた部分は宗教そのものに依存しない人の本質にあっても、どこか誤解を招きかねない繊細な作りこみと読み取りが要求される内容で、個人的にも腑に落ちる部分まではまだ辿り着けていないイメージなんですけど、そういうのを抜きにしてもヒカリの在り方と届いた未来の形を見るだけで、いい作品だったなあと素直に言える部分はありますね。
posted by クローバー at 06:47| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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