2011年04月19日

11eyes −Resona Forma−

 本編好きでしたし、栞が攻略できるとなれば食いつくしかないというか。。。


シナリオ(24/30)

 信念の行き着く先。


 この作品は、11eyes−罪と罰と贖いの少女−のFDになります。ぶっちゃけ、三年も経ってから出すとは思ってませんでしたが。。。
 内容としては当然のことながら本編ユーザー向けで、本編においては色々と重厚な世界観と、個々それぞれのキャラに対しての切実な設定が付与されていたものの、主眼が赤い夜の中での闘いに置かれていたために拾いきれていなかった部分、すなわち元々のヒロインの後日談や、過去の事件などをフィーチャーした物語などが描かれます。それを通じて、この11eyesの世界観におけるテーマ性をより如実に、かつ多重構造的に炙り出している、というイメージですね。

 シナリオは全部で8本、元々のヒロインであるゆか、美鈴、雪子、菊理の物語と、雪子と結ばれた流れでの賢久と、その妹の恵麻の物語、そして本編ではサブ扱いだった栞をヒロインとする物語、赤い夜の直接の原因となった、リーゼロッテとゲオルギウス率いる使徒たちとの闘い、そしてヴェラードが劫の眼の力で、リゼットがリーゼロッテになってしまった原因を取り除きに時空を超えるストーリーになりますね。あとユーザー投稿のSSが4本と、おまけSSが1本収録されています。

 テキスト的には相変わらず、必要以上に小難しく語ろうとするきらいはあるものの、全体的にはギャグとシリアスのバランスが良く、視点変更を多用することでヒロインの内面の深いところまで踏み込んでいて、時には痛みや苦しみにも真っ直ぐに向かい合う姿勢があり、読み応えのある出来だと思います。
 シナリオとしては、出来と長さにかなりばらつきがあり、優遇されているキャラと冷遇されているキャラがはっきりしている印象。ただしこれは、詳しくは後述しますがあくまで作品のテーマ性を浮き彫りにするための処置であると言えますし、冷遇とはいってもFDとして最低限の扱いではありますから、そういったマイナス点に目を向けるよりは、優遇されているシナリオの良さにスポットを当てるべきかなと。

 そんなわけで、印象に強く残ったシナリオだけピックアップしてサラッと感想を。
 
 まず賢久シナリオ、赤い夜を経て能力を失ったことで、どこか世を拗ねていた部分は薄まり、まずは妹の恵麻との再会と交流を通じて、今まで失ってきた何かを取り戻そうと足掻く中で、同様に何かを渇望し続けてきた恵麻との想いの擦れ違いで煩悶する流れがかなり精緻でよかったです。そして、やっぱり雪子は賢久と結ばれたほうがお似合いだと改めて思ったりも。
 そして恵麻が、この世界観においてはまれに見る常識人で可愛らしく、パーフィクトに近い妹像を見せてくれるのも注目ポイントですね。

 使徒シナリオ、これはとにかく熱いの一言。
 完全体リーゼロッテのえげつないまでの強さ、特にファンタズマゴリアの破壊力に戦慄し、しかしそれを、仲間の屍を超えて克服していく操とゲオ様の愛の絆とキレキレぷりに熱狂し、正に息つく間もなく読み切ってしまう、濃度の高いシナリオでした。
 無論結末は最初からわかっているのだけど、そこに至るまでの紆余曲折が本当に波乱に満ちていて、逆説的にこんな面々に一歩も引かず立ち向かっていた美鈴の凄みをも感じさせる内容でしたね。
 そして契約の虹めちゃくちゃかっこいい。。。

 栞シナリオ、本編の流れから栞と結ばれる世界へと移行するお話ですが、唯一本編とリンクする部分が多く、赤い夜のときの栞の視点や感情がつまびらかになり、そして赤い夜を終えての各キャラの物質面、心情面における総決算的な位置付けを為しており、まずそれだけで価値のある内容。この部分のためだけに、先に本編を読み返しておく価値はあります。
 そして後半は、信仰と信念の狭間で揺れる栞の進むべき道を描いた内容で、ある意味この作品の主テーマに最も近い部分で進行するシナリオですね。その過程で平行世界の本質的概念の説明なども入り、複雑な中に真っ直ぐな想いが芯を為している重厚な出来になっています。
 そして心の枷を解き放って、心の赴くままに振舞うようになった栞の可愛さといったらもうね・・・。

 リゼットシナリオ、劫の眼大活躍。。。
 これが歴史の中で成立してしまうと、そもそもの11eyesの世界観が成り立たない起きて破りの内容ではあるのですが、構成要素の組み換えという理論に基づけば、あのように平和の中で過去語りをするリゼットという未来は許容されうる観念なのでしょう。
 事象はオクシタニア十字軍をベースにしつつ、そこにヴェラードという要素が介入することで、リゼットにとって不可避であったはずの悲劇を摘み取った内容で、しかしそれを為すに至った源泉はただリゼットへの想いだけ、というのが如何にもヴェラードらしい極限的な在り方だと思います。
 その至純を見出したからこそ、この時代のリゼットもまた彼に惹かれ、その想いを知ることで純粋にカタリの教えに殉ずることを免れたとも言え、このあたりの関係性は非常に精密だなあと感心しますね。

 とまあ、ざっと見てきたところで、それらを統合するテーマについての言及を少しだけ。

 本編を含めて、この作品には信仰と信念という対立項が存在します。もっとも本質的には対立を為さずとも両立しうる概念ではあるのですが、まずもってこの作品のキャラ達がそう思い込んでいる部分もあり、この作品を読み解く上ではまずそう定義したほうが通りがいいと思いますのでしばしお付き合いください。
 この二つ、非常に単純化してしまえば、外の神と内の神という見方が出来ます。つまり、与えられる信仰と、心の内から沸き立つ信念という視点で、これはカトリックと近代プロテスタンティズムという大雑把な位置付けに肥大化することが可能な精神性だと言えますね。
 
 本編の赤い夜においても、信仰をもって正しいことを為す黒騎士と、信念を持って生きる可能性を貫いた主人公たちという構図に埋め込めますが、構造的にはその上にもう一つ、リーゼロッテが目的とする人類滅亡という思想がありました。
 この、結果論的にみて人類全てがこの世界からいなくなるという思想、これは実はカタリの思想に通じるものがあります。この世を穢れとして清貧を貫き、妻帯と生殖すら認めないカタリの教えでは、死こそが最大の救いであり、神の国へと生まれ変わる唯一の手段とされました。リーゼロッテがヴェラードの思想に共感したのも、根底的に似通った信仰を抱えていたから、というのがあり、つまりこの世界観は信仰における極限の傘の中で進行していたという見方が出来ます。

 そうした、いわばキリスト教内における宗教論争を戯画化したとも捉えられるこの作品において、信仰に対立できる信念の在り方として選択されたのが、というより歴史の必然としてそこにあったのが愛という概念であり、愛を知ることで信仰に固執する観念を打ち破るという構図こそが、このFDの最大のテーマだと私は思ったんですね。
 この場合の信仰というのは、あくまで本編のスケールで見るならば、過去の重荷による心理的制約という形なのですが、それを栞やゲオルギウス、そして極限の進行たるカタリを信ずるリゼットに至るまで並列化していくことで、本質的には同じテーマを見せているのだと、そして如何なる信仰であってもその固陋を打破し、最終的には信念、愛と両立を為し得るのだと繰り返し説諭しているわけです。

 ここで最初のほうの、キャラによる尺の違いの意味合いがはっきりしてくるのですが、まあ要するに、赤い夜の物質的危機を乗り越えても、未だ彼らには観念的な問題が残されていたわけで、しかし一部のキャラにおいてはそれはある程度以上解決されていたからこそ、そのテーマの枠を外れてまで物語を大きくすることはしなかったから短くなったのだ、という考え方が出来るのですね。
 
 とまあ、そういう視点も含めて、実に良くできたFDであったと思います。
 普通FDに本編より高い点をつけることはまずないんですが、この作品に関しては本編の世界観を補強し、かつ視点を広げ、それでいてきちんと完成度の高い構成を為しているので、FDというよりは完結編という位置付けのほうがしっくり来るなあと思いますし、このくらいの点数でも全く問題ないと思うわけですね。最近だとるい智FDと同じような印象。
 それに何より、愛の元にきちんと全員が幸福を得られる世界観に仕上げていながら、読後にほとんどご都合主義だと思わせない説得力があったので、私としてはかなり満足度の高い作品だったと言えますね。


キャラ(20/20)

 本編ではそれぞれのキャラの内面的要素が解決に至らなかったり、戦闘特化でそれ以外の側面が薄くなってしまったことでやや割り引いたんですが(というかそれ以上にヒロインにそこまで惹かれなかったのもあるけれど)、この作品においてはそのへんはかなりきちんとフォローされている感じですね。プラス私好みのキャラがかなり増えたことで、文句なく満点がつけられます。

 やはり一番好きなのは栞ですね〜。
 見た目の可愛さ、心性の純粋さも勿論なのですが、やはり心の枷を取り払っての甘えっ子モードや、恋する乙女モードの破壊力がやばすぎるとしか言いようがない。。。ある意味普通を得るための制約が一番多いキャラでもあるのに、躊躇することなく真っ直ぐに思いに向き合う強さも非常に魅力的です。

 そして一番のダークホースは恵麻。いや〜予想以上に超可愛かったですね。
 あくまで非攻略キャラではありますが、線引きがきちんと出来ているというか、色めいた雰囲気はほとんど出さず、それでいて完璧なまでの妹像、可愛い後輩像に当てはまるという中々に稀有なキャラ。比較するのは失礼だけど、なんかうゆの可愛さって媚びた印象があるのに対して、含むところのない純正な愛らしさに感じられるところが一番好きですね。

 リゼットもやはりすんごく可愛かったです。清純ロリキャラ素晴らしい。。。

 他では、相変わらず美鈴はとても存在感があって魅力的だったし、操とゲオ様は非常にかっこ良かったし、ヴェラードは濃密過ぎる。。。ついでに爺様無駄にかっこいいよね(笑)。


CG(18/20)

 いくらか本編と違う人が書いてません?的な絵も見受けられたのですが、まあそれはそれとして、本編よりも出来不出来の差が少なくなり、全体的に水準が上がった印象がありますね。

 立ち絵に関しては、本編キャラは特に新規はないですよね。相変わらず栞の横顔が可愛すぎる。ぶっちゃけ横顔ってどんなに上手い人でも崩れやすい構図なのに、むしろ斜め下向きはやや崩れてるのに何故横向きだけこんな奇跡的に可愛いのかが謎です。。。
 新規だと恵麻は本当に可愛いですね。正面向きの笑顔とか、やや横向きの照れ顔とか鬼のように可愛くて見入ってしまいました。本編ではほとんど出番のなかったリーゼロッテとリゼットの笑顔とかも素敵ですし、何気にヴェラードの表情が豊かかつ感情的で中々に好みでした。あとキアラもかわええ。

 一枚絵は、総数135枚ともうFDの水準じゃないですね。まあ実際フルプライスですからそれと同等には、ってのはありますが、質・量ともに期待以上のものがありました。
 特にお気に入りは、水辺で襲われるリゼット、消えゆくヴェラードとの別れ、兄妹でタンデムの三つですね。
 最初のシーンは、リゼットの清浄感と愛らしさを存分に見せつつ、恐怖を交えたリゼットの表情がすごく繊細で好きです。
 次のはとにかくやることはやりえたという満足感の安らぎに浸るヴェラードの存在感と、それを支えるリゼットの真っ直ぐな想いが、夕焼けの光で切なく彩られていて素晴らしいですね。
 最後のシーンは、まだ距離感の掴めない二人が、顔を見られず声も良く届かない状況でのみ素直な気持ちで触れ合える、そんなイメージが恵麻の表情からすごく伝わってきて、なんとも切ないながらも幸せな気分に浸れる一枚ですね。

 その他お気に入りはページ順に、うたた寝ゆか、正常位、膝枕、ブルマ騎乗位、墓参り、話し合いに臨む美鈴、フェラ、ケーキを食べてにっこり、69、ウェディング、ウェイトレス菊理、ウィンドゥに映る二人、天使の羽、賢久と雪子、恵麻と雪子、フェラ、栞とツーショット、キス、たくし上げ、正常位、恵麻とお弁当、着替え中、帰り道、リゼットの語り、水浴び中、花を手向けるリゼット、ゲオ様契約の虹発動、操とスコラスティカ、イレーネの涙、スコラスティカと再会、燃えるワステュルジ、剣を掴むリーゼロッテ、契約の虹を受けるリーゼロッテ、騎馬突撃するヴェラード、リゼット&リーゼロッテH全部あたりですね。


BGM(19/20)

 本編のそれも素晴らしい出来でしたが、それに加えて本編に倍するほどの新曲が投入されて非常に豪華かついい出来です。
 ボーカル曲は3曲。
 OPの『十字架に捧ぐ七重奏』は全体的に重厚感と神聖さが感じられる中々の名曲ですね。特にサビの後半部分が気に入ってます。
 通常EDの『INNOCENT』も中々に名曲。切なく鋭い印象の中に、力強く掴んだ未来の形をしっかりと感じさせるような、やはりどこか救済という雰囲気がある曲ですね。これもサビのメロディがかなり好きです。
 リゼットEDの『Judgement』は世界に歯向かう裁きの剣に相応しい先鋭さと孤独感を力強く増幅させる、非常にかっこいい曲ですね。時代の残酷さというものを上手く切り取れている曲だと思います。
 まあ総じて本編のボーカルには若干劣りますが、それでもかなりの高水準の三曲だと思います。

 BGMは本編曲のアレンジも多いですが、それ以上に新曲があり、中々に聞き応えがあります。ただ、曲が増えすぎてこういう場面にはこの曲、みたいなインパクトが若干薄れてしまった印象はありますけれどね。
 特にお気に入りは『アレンジ・劫の眼』と『厄災の魔女』、あと『吟遊詩人の詩』ですね。
 元々『劫の眼』は超お気に入りの曲ですが、アレンジバージョンはそこから更にテンポをあげて刻む音の数を増やしたことで、より緊迫感と魔術的印象が強くなった感じで、これはこれですごく好きですね。
 『厄災の魔女』は素晴らしくかっこいい曲ですね〜。その圧倒的な存在感と威圧感にぴったりな、すごく迫力と重厚感がある曲だと思います。
 『吟遊詩人の詩』はあまりにも、あまりにも純粋な想いを歌い上げるリゼットの凛とした姿がはっきりと眼に浮かんでしまう、物凄く心に染み入るいい曲だと思いますね。

 その他お気に入りは、『アレンジ・千刃乱舞』『穢れ亡き少女』『金色の魔王』『聖者の嘆き』『Cristal hollow』『Draconian Times』『Terrible Empire Come』あたりですね。


システム(8/10)

 演出は中々ですね。
 本編と比べてどこが際立って進化した、って印象でもないんですけど、相変わらず立ち絵は変幻自在に動くし、表情も口パク含めて変化にメリハリがあるし、戦闘シーンも立ち絵とエフェクトを上手く組み合わせて躍動感を上手く演出できているので、まずは合格点だと思います。ムービーは本編の方が好きだったけど。

 システムはまあ悪くはないんでしょうけどね〜。
 ただまだワイド対応にならないってのは物足りない部分ですし、設定も細かい部分までは行き届いていると言えないですよね〜。ウィンドゥも少しは小さくなったけど相変わらず見にくいし、スキップ・・・は使ってないからわからないけど多分同じだと思うし。
 ちなみに、ついさっき、本編含めて探しにくいところにボイスカット機能があったことに気付いたり。。。ずっとそれが不満だったのに、見落としていただけとは情けない・・・。

 全体として三年前とさほど変化がない分、本編よりは一点減点が妥当なところかなと思います。


総合(89/100)

 総プレイ時間20時間。
 プレイ順に、プロローグ45分、ゆか45分、SS5本で1時間、賢久3時間、雪子2,5時間、菊理30分、美鈴1,5時間、使途編3時間、栞4時間、リゼット3時間ぐらいですね。まあシナリオによって読み込みの濃度が違うので、実質の分量とかかる時間は多少違うでしょうがね。。。ちなみに選択肢は一切ありません。
 まあ一応プルプライスという基準で見れば水準なんでしょうが、FDというカテゴリとしては破格の質量だと言えますし、内容もそれに見合った重厚さがありました。加えてキャラの魅力も上手く生かしており、本編と比べても非常にバランスの取れた内容になっていると思います。本編が好きだった人ならば間違いなく楽しめますし、本編未プレイならこの機会にあわせてどうぞ、と言えるくらいには私好みかつ大衆的にも受けの良さげな作品でした。
posted by クローバー at 05:59| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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