2011年05月06日

穢翼のユースティア

安心・安定の8月が一歩踏み出した意欲作、雰囲気・キャラ・世界観全てが気に入っていたためメチャ楽しみにしていたので、4/28延期は本当に待ち遠しかった上に、じっくりプレイできないという点で非常に勿体無かった・・・。


シナリオ(27/30)

 強き信念の辿り着く聖地。


 時は数百年前、正に滅亡の刻を迎えようとしていた人類は、一人の聖女の天使に向かっての真摯な祈りの力で、世界の一部を空に浮かべることでかろうじて生き延びてきました。
 その名はノーヴァス・アイテル、天使の力と、代々受け継がれる聖女の祈りに庇護されて空に漂い続けてきた都市は、人の営みの必然として階級や腐敗を孕みつつも安寧のまどろみの中で数百年を過ごしてきました。

 その均衡が破れたのは15年前、グラン・フォルテと後に名称される大崩落が発生し、文字通り都市の一部が地上へと落下していったのです。多くの人が無為のままに地に飲まれ、そしてそれに伴い起きた地盤沈下により、それまで上層・下層の二つに分かれていた都市機能に、更にそれより下の牢獄と呼ばれる地域が生まれたのです。
 険峻な絶壁に囲まれた牢獄は文字通り、およそ人の住む世界としては最悪の環境であり、上層部はそんな地域に対する支援を最低限しか行わず、むしろ積極的に隔離することで、残りの地域の安寧を守ろうとしたため、牢獄は不蝕金鎖というグループの統制下となり、人としての最低限の尊厳すら危うい綱渡りのような日々を余儀なくされているのでした。

 主人公は大崩落によって家族を失って牢獄に滑落し、不蝕金鎖の頭に拾われて凄腕の殺し屋として幼い頃からの日々を過ごしてきました。不蝕金鎖が代替わりして、幼い頃から兄弟のように育ってきたジークが頭になってからは殺しからは手を引き、客分のような立ち位置で牢獄の何でも屋として日々の生計を立てています。
 ある日仕事の一環として、不蝕金鎖が身請けしてきた娼婦候補の馬車が行方知れずになった事件を調査することになります。現場に辿り着いた主人公は、そこで行われたあまりに凄惨な殺戮に眉を顰めつつ慎重に調査していると、突如闇の中から強い光が発生するのを目撃します。
 その光は、かつて大崩落の直前に発生したトラジェディアと呼ばれる発光現象と酷似しており、それによって古い傷跡を意識させられつつも発光源を探すと、その場には一人の少女が倒れていました。

 事件の真相を解明するために、とりあえずその場で唯一の生存者であるその少女を家に連れて帰った主人公は、事件の記憶を失ってしまったと言うユースティアと名乗る少女との仮の同居生活をはじめます。
 ティアはこの世界で伝染病として忌み嫌われている羽化病の軽度の発症者でもあり、最初は事件のことを思い出してもらうまでの措置でしたが、ティアの屈託のない明るさの中に荒んだ気持ちを癒す何かを見出し、そして例の発光の謎を解明したいという思いも後押して、紆余曲折ありながらも彼女を匿いつつ生活していく中で謎を究明していこうという決意に辿り着くのでした。

 牢獄という世界の底辺で、自分の生きる意味などとうに失ってただ流されるように過ごしてきた主人公は、その決意によって世界と、そして自分と対峙する事を余儀なくされます。
 牢獄を騒がす、殺人を繰り返す化物の調査の過程でフィオネを知り、牢獄内の抗争の中でかつて身請けをしたエリスの真実を知り、ティアとともに訪れた聖域で聖女イレーヌの信念と苦悩と挫折を知り、王城の中でリシアの孤独と諦観を知り、そしてこのノーヴァス・アイテルにくまなく存在する歪みと不条理と絶望を知ったとき、ティアという少女の真実を知ります。
 彼女たちが抱える問題や信念と真っ直ぐに関わっていくことで、主人公は牢獄の日々で失われてしまっていた強い信念と生きる意味を少しずつ取り戻していく、これはそんな、絶望の最中での救済の物語です。


 あらすじはこんなんですね。シナリオの構成上やたらと書きづらかったですが。。。
 今までの8月作品とは違い、やはり世界観はかなり暗く、普通に犯罪や暴力が横行する世界ですが、本質的な部分、キャラの魅力の発現や丁寧なテキストの肉付けなどはいつも以上にしっかりと出来ているため、8月らしさというのは随所に感じられる内容で、従来のファンを納得させつつ更に一歩上書きしたような印象の作品になっています。

 構成としては、基本的にシナリオは一本道です。わかりやすくするなら、序章+各ヒロインに1章ずつ物語が用意されており、一つ一つがきちんと全体の大きな流れにそぐう形で作られており、その中でヒロインとの関係を恋愛方面に向けるとその時点で大筋から脱落するという、骨太な脱落型の構成になっているわけですね。一応最初から一番最後のティアまでいけるみたいですけど、これはきちんと脱落順にプレイしたほうが面白いと思います。
 厳密に言うと、脱落した場合の他のヒロインの立ち回りや世界の在り方にどこか無理がある場面もありましたが、世界の真実から目を瞑る代わりに、ただ一人の大切な相手を守っていくという信念を主人公が見出しているため、思想的な部分ではきちんと折り合いがついていると感じます。

 シナリオとしてはまず、世界の底辺から一番上まで登っていく流れが綺麗に構築されているのが良かったですね。まあマイナス点としては、上層のヒロインに関しては序盤ほぼ一切出番なし、っていうのはあるのですが、それはともかくとして、視点が替われば世界が違って見えるという現実を綺麗にトレースできていること、そしてどんな場所でも、その場所なりの不条理があり、苦悩があるという部分を凄く丁寧に描き出している点は評価が高いです。
 そして何より、きちんと人と向き合う地点から始まり、たった一人の大切な誰かを愛するということと、世界の人々全てをあまねく愛するということに、本質的な差異はないという部分をシナリオの中で説得的に組み込めているのがもっとも評価したいところですね。

 個々のシナリオとしてはどれも骨太で外れは全くなく、また牢獄編と上層編ではガラッと空気感が変わるので、非常にバランスが取れた構成になっていると思います。そして一つずつ階層を登るたびに、世界の謎と人の在り方を規定する信念の彩りが少しずつあらわになっていくので、全く読み手を飽きさせない、迫力のある内容に仕上がっていますね。
 一番のお気に入りはリシア編で、最後の戴冠式のシーンが特に大好きです。たった一人の大切な相手をきちんと愛せない人が、全ての人々に愛を与えられるわけがないという人間世界の真理を、ここまで綺麗にたった一つのシーンで証明して見せたシナリオは中々なく、そこに至るまでのリシアが見せた強さと弱さがオーバーラップしてすごく破壊力のあるシーンになっています。

 良くも悪くも集大成であるティア編に関しても少し。
 ここまでの登場人物全員が、それぞれの信念を持って問題に立ち向かっていく形になるだろうとは予想していましたが、主人公の立ち位置があそこまで浮き上がってしまうのは予想外でしたね。言われてみればそうだ、って部分はあるのですが、それまでの主人公のかっこよさ、果断さの印象に引きずられて、そこはやや違和感がありました。きっと囚われのティアを救いに行く集団のほうに立つのだと思っていたので・・・。
 まあでもそこを除けば安定した出来でしたね。当然このシナリオだけはファンタジックな内容が色濃く出てしまうことを避けられないのですが、ここまで積み上げてきたものが非常に堅固であることと、最終的な解決がティアと主人公の信念に裏打ちされているため、ほとんど色眼鏡で見る必要がない出来になっていたと思います。
 ここまで主人公とともに全てを見てきて、そして自身の愛憎をも知ったティアという少女の観念的な土台の上にあの結末があるというのがすごく納得できてしまうので、まあこれを純粋なハッピーエンドとは呼べないにしても、読後感としてはとても良いものがあったと私には思えました。

 元々グラントルートの設定には重めの展開を好むメーカーではありましたが、これまでは全体の世界観から浮いてしまったり、あるいは重さに踏み込みきれずに終わってしまった部分が弱味だったと感じていましたけれど、今回はその欠点がほぼ払拭され、非常に丁寧な、職人的シナリオ構成と肉付けが出来ていたと思います。ここのライター陣は決して天才型ではないけれど、しっかり努力して実力を積み上げているなあととても感心しました。
 心配された画風との不一致も大して感じることはない、というか個人的にはむしろ雰囲気が殺伐としているからこそこの絵で救われていると思えましたし、演出・音楽まで含めてとても調和の取れた、非常に完成度の高い作品です。


キャラ(20/20) 

 少し行き過ぎの感があるくらい、それぞれのキャラクターに自身の想いに忠実な信念が備わった行動と言動を意識させている作品ですので、誰しもがすごく印象に残りますね。無論その上でヒロインの魅力という部分でも過去作に遜色ないものを打ち出していますから文句なしです。

 もっともお気に入りのヒロインはコレット(聖女イレーヌ)。
 聖女という枠組みからはやや逸脱した、とてもシニカルな部分の強いヒロインですが、彼女の立たされている世界と、そしてそれを相反する形で発現した彼女の信仰がそうさせている部分は多分にあり、本質的なところでは愛らしくて甘えん坊でやきもち焼きという非常に女の子らしい女の子だったりして、そのギャップがすごくすごく愛おしいですね。

 その次がラヴィとリシアかなあ。
 ラヴィはまさかのヒロイン昇格で歓喜すべきなのか、コレットの回想枠が減ったと残念に思うべきなのか(笑)。とにかくひたむきで真っ直ぐで、優しさを信念の域にまで昇華させたとても愛すべき少女ですね。まあどうしてもコレットとセットで語られてしまうというか、彼女あっての魅力という部分は否定できないですけど、それも含めて大好きです。
 リシアも可愛かったですね〜。シナリオ序盤は煮え切らないところも多かったですが、基本的に素直だししっかりしているので問題なし、彼女の背負う孤独の重さと立ち向かう決意をしたときの凛々しさといったらもう素敵の一言でした。その反動での甘えモードも破壊力高いです。

 んで更に次がフィオネとティア、でもぶっちゃけこの辺まで年末リストに載せる可能性はあるんじゃないかなあ。とにかく全体の質が高いので。
 フィオネはとにかくあの清冽とした雰囲気が素晴らしいですね。堅物だけど話せばわからないわけではないし、結構お茶目だったり可愛げもふんだんにあったりで、シナリオに負けない輝きがありました。一番最初のヒロインだけに、後半になっても出番が多いのもプラス材料。
 ティアはシナリオの上では押しも押されぬメインヒロインですし、思想上でもあらゆる想いの昇華した部分に辿り着いているのでその点は評価しますが、ヒロインとしての幅はもう一息かなあと。無論可愛いは可愛いですし、誰に対しても、どこにいても同じように明るく振舞える資質は素晴らしいですけど、問題に対して実質的にあまり活躍しないのもあり、最初から思慕も特に隠そうとしてないので、元の素材が好きになれないとそれきりの懸念がありますね。

 男キャラではジークとヴァリアスのかっこよさ、生き様の確かさ、言動に秘められた覚悟の重みがすごく気に入ってますね。


CG(18/20)

 絵としてはまあ相変わらず可愛らしく高水準、その中でも世界観に雰囲気を合わせようとした努力は見受けられますが、若干簡素な構図や場面に逃げてしまっているきらいもあり、その辺と量を踏まえてこの点数かなと。

 立ち絵に関しては水準クラス、差分はそれぞれキャラの魅力にぴったりの形で用意されているし、服飾のセンスがとてもいいですね。特にリシアとコレットの私服、ラヴィの教会服が気に入ってます。
 特にお気に入りはコレットの祈りのポーズ全般、その中でも不機嫌そうな表情が異様に可愛いです。あのちょっと上から向けられる冷たい視線の絶妙感が最高ですね。。。あと軽く驚いた顔もすごく好き。
 その他では、コレットは正面向き笑顔、横向き意地悪顔、しゅんとした顔、ティアの正面向き笑顔、照れ顔、困り顔、やや横向きの拗ね顔、視線逸らし、エリスの正面向き真面目顔、呆れ顔、横向き怒り顔、ラヴィの正面向き困り顔、笑い顔、リシアの正面向き笑顔、困惑顔、真横向き哀愁顔、アイリスの蔑み顔、システィナの照れ怒り顔、鉄面皮、ヴァリアスの驚き顔、ジークの怒り顔あたりが好きですね。

 CGは色つきが96枚にモノクロの回想が13枚、水準かそれ以上の内容ではありますが、シナリオの重さの割にはあまり重いシーンにCGが振り当てられていない印象があり、Hシーンとの比率もそれなり(1:1くらいかな)なので、絵から盛り上がるという部分があまりなかったのは残念なところです。出来はいつも通り、たまにHシーンで表情が微妙ではあるものの可愛くきれいだと思います。
 特にお気に入りは、ティアの旅立ちとリシアの剣を握るシーン。
 前者は流石にラストシーンを彩るだけあって、非常に幻想的かつ迫力と慈愛に満ち溢れており、何よりこの選択に全く後悔はないとばかりに澄み切ったティアの表情がすごく印象的です。
 後者はリシアの決意が端的に滲み出ている一枚ですね。画面の迫力以上に、リシアの強さと想いの強さが覗える一枚です。
 
 その他お気に入りはページ順に、ティアの復活、添い寝、着替え、欠片を手に、吸収での苦しみ、初H騎乗位、if娼館H愛撫、エリスの手当て、料理、懇願、初H正常位、ウェディング愛撫、裸エプロンバック、ハープを鳴らすコレット、禊ぎ、一緒にチェス、ラヴィと墜ちて、あーん、初Hフェラ、正常位、部屋H69、騎乗位、三人で、戦いの旗頭、メイドリシア、戴冠式、夜更けのキス、初H愛撫、バック、部屋H愛撫、私服野外H騎乗位、戦うフィオネ、ヴィノレタで食事、なでなで、夕日を背に、初H愛撫、お風呂H背面座位、クローディア騎乗位、アイリス脚コキ、抱きかかえHあたりですね。


BGM(19/20)

 いつもの壮大な雰囲気に、ちょっぴり重さを塗した感じで、バランス良く仕上がっていると思います。
 OPの『アスフォデルス』はすごく高さを感じさせる曲ですね。Aメロの落ち着いた旋律が一番好きですが、そこから高みに上っていくイメージはすごく作風に合っていると思います。
 挿入歌の『ティアズ・オブ・ホープ』は流れる場面が非常に特徴的というか、あまりにもこの先の切なさを意識させてしまうので、すごく印象に残ります。特にサビの切々とした雰囲気は素晴らしいですね。
 挿入歌、というか脇道に逸れたときのEDの『クローズ・マイ・アイズ』は個人的に神曲。真実から瞳を閉じて、という隠喩もさりとて、悲しく不条理な世界の中で見出した一筋の光をしっかりと抱いて眠るような、とても情感の満ち溢れた曲で、サビの旋律が震えるほどに好きです。
 EDの『親愛なる世界へ』は、世界そのものへの想いが汲み上げられた、静かな静かな鎮魂歌。透明感溢れるボーカルと、漂うような旋律が非常に印象的です。

 BGMも突出したものはなくとも非常に安定した出来。
 お気に入りは『ウナ・アタデューラ』『イノセンス』『アッシュ』『イナーシア』『クロッサンドラ』『シュランツ・ショット』『ステアーズ』『プルーム』『ルーツ』『ラ・ローザ』あたりですね。


システム(9/10)

 演出はいい出来ですね。立ち絵を遠近法やトーンがけなどを使って色んな場面に流用しつつ、合間合間で演出効果を上手く使っている印象です。バトルのシーンなどもメーカーとしての慣れがない割にはきちんと上手く見せられていたと思うし、全体的にがっしりした雰囲気は維持しつつ魅せる部分は魅せるというメリハリがしっかり出来ていたかと。
 ムービーもすごく雰囲気があって好きです。

 システムも問題なし。
 マウスジェスチャーは確かに便利ですね。カーソル移動の手間を省いてくれるので重宝しました。あと曲名表示時間の変更は、私みたいに感想を書く人にはありがたいシステム。耳にしたときにタイトルがすぐに把握できると後々楽なので。
 画面もワイド対応になり解像度も高く、その他システムも今までの蓄積をきちんと生かしたものになっているので、特に使いにくいところもなく良かったと思います。強いて言えば物語が長いので、選択肢ジャンプはあってもよかったかなあと。


総合(93/100)

 総プレイ時間25時間くらいですかね。序章が3時間、あとは章ごとに3〜4時間の範疇で、おまけも全部合わせれば1,5時間くらいあるかも。まあ大半がHシーンなので、ちゃんと見れば、の話ですけれど。
 ついに8月覚醒したな〜というのが素直なところ。めっちゃ面白かったです。今後どういう路線でいくのかはわかりませんが、メーカーとしての総合力をここまで従前に生かせる設定と言うのも中々ないでしょうし、時間をかけてもいいから次も抜群の物を作っていただきたいと切に願いますね。
posted by クローバー at 05:44| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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