前々からエウのゲームはやってみたかったんだけど、これは情報が出た瞬間から好みだと確信、予習として姫狩りもやり、万全の受け入れ態勢、激戦区の4月の中でも大いなる期待作でした。
シナリオ(26/30)
あらゆる意味で、正道。
大国の狭間に林立するミケルティ地方の小国の一つ、ユイドラ。そこは工匠が自治を獲得し、思うままに技術の発達のために邁進する、またその特性ゆえに東西の産業の架け橋ともなる特殊な都市でした。
そんな都市で生まれ育った主人公は、当然のように工匠になることを目指して生きてきました。一年前の坑道における事故で両親をなくしたことで一時は塞ぎこんでいましたが、今は立ち直って、一刻も早く一人前の工匠になって、両親のように立派な人助けが出来る存在になりたいと願っています。
何とか工匠になる試験をパスした主人公ですが、工匠とはもの作りの技術のみならず、自身でいい素材を発掘してくる技術も大いに要求され、その過程で予想されるモンスターとの戦闘に覚束なさがある主人公は、自らを守ってくれる護衛を雇おうと考えていました。
そんな折、主人公の元に現れた異国風の女剣士は、力を失ってしまった自分の魔法剣を鍛え直してくれる工匠を探していました。しかしそれに見合うお金は持たず、また素性の関係からあまり有名なところに出入りしたくなさそうな様子を見て、主人公は今はまだ自分には直せないけれど、いつかその技術を手にするから、それまで護衛をしてくれないかと持ちかけます。
かくして、ユエラと名乗った剣士を護衛に雇い、更には自ら雇って欲しいと押し売りしてきたエミリッタ、そしてとある事件で助けられた流れからセラヴァルヴィと名乗るエルフをも仲間にすることになります。彼女を仲間にしたことで、精霊などとの関係をも紡げるようになった主人公は、やがてこの世界に住む全ての存在にとって助けを添えられる存在になりたいと奮い立ちます。
真っ直ぐで純真な思想を持った主人公と、それを支える仲間達。彼らが進む先には如何なる苦難が待ち受け、そして如何なる輝かしい未来が存在するのでしょうか?
まあこんな感じの物語ですね。
エウのゲームというとどうも今まで暗いイメージを持っていたので、その点で二の足を踏んでいた部分もあるのですが、これはもう公式のあらすじを見るだけで明るく至誠感の溢れる雰囲気があり、実際も全く暗い部分がないとは言いませんが、主人公のどこまでも正道を突き進む在り方によって全体が力強く彩られており、まあ期待通りの内容でした。
もっとも、正道とはいえ世の中それが全てまかり通るとは限らず、ある程度ご都合的な部分もないとは言えませんが、そこを工匠という技術によって解決できる立場が上手くカバーし、それにプラスして他の工匠が行えないような多種間の交流を広げることによるメリットを最大限に利用した内容になっているので、基本的にはすんなり飲み込める部分が多いです。
展開的にもそれぞれきちんと明確なボスと目標が設けられていて、サブキャラとの関係性などとも上手く関連した内容に仕上がっているかなと思いますね。加えて言えば、これが普通のADVだったら胡散臭さが浮き立ってしまうのでしょうけど、あくまで本線がSLGであるが故に、プレイヤー自身が苦労して勝ち取った結果として共感できる部分も大きいと思います。
違和感がある部分としては、一部サブキャライベントの進行の都合によって、その時点の現状との齟齬が見受けられることと、あと時系列の問題ですかね。一番の下っ端から一番上まで苦労して登りつめたのに、未だに両親の事故が一年前ですとか言われても。。。少なくとも普通に移動日数だけで2〜3年経ってて不思議ないんですけどね。
あと、これはまあそういうゲームだからある程度は仕方ないのだろうけど、基本的にすごく実直で倫理的な雰囲気のある主人公が、もっぱら性方面に限っては奔放、というのは気にはなります。
元々このゲームに限らず、エウのゲームは基本世界観を共有しているっぽいので、そういうこの一作に限らない大枠的な部分で、英雄色を好む的な価値観が許されているのかもですが。人間と他種族との性交は価値観が違うという視点なのかもと思ったけれど、それだとセラウィがメインヒロインである理由が見出せないですしね。そういう関係性の中で、ほとんど嫉妬的な感情が、特にメインヒロインから噴出しないのは違和感といえば違和感なのです。むしろそこに普通の反応をするメロディアーナとか無性に可愛いとか思っちゃうのですが。。。
とはいえ、そういう瑣末な点を除けば、気概と意志と努力で登りつめていく主人公の在り方は素晴らしいと感じますし、その流れの中で大きな問題に直面しても、みんなの力を借りて解決に導くという姿勢が一貫しているので、全体的に読後感がとってもいいですね。
特にセラウィルートは、敵の存在が曖昧模糊としているのが瑕疵ではあるにせよ、工房都市ユイドラの未来と、その周辺の自然界との調和を目指したという部分に、もっともこの世界観と主人公らしさが嵌り込んでいてすごく好みでした。ラスダンの部分のCGがあれだとわかったときはちょっと感動。遥かなる高みまで登りつめてもまだ真っ直ぐ前を向いている在り方に、すごく色々と納得させられるものがありましたね。
ちなみにシナリオ部分で12/15点になります。
次いでシステム部分。これはもう入魂のシステムと言わざるをえないですね。
まず工房運営の面では、いかに能率よく資金を稼ぐかが中心となります。雇っている(養っている?)人数や設備のLVによって日々経費がかかるので、特に序盤は油断しているとあっさりマイナスになりかねない恐怖がありますね。合成こそ資金も時間も必要としないものの、合成をするためには採取をしなければならず、採取をすると必然的に日数が経過するので、取ってきたものを元にアイテムを作り出して、店舗で経費以上に売り上げを出さないとなりません。
味方のユニットには接客が得意なキャラとそうでないキャラがいますが、特にメインのヒロインだと参加必須のイベントが多いので、あまり店番にばかり張り付かせていると戦闘面で覚束なく、かといって接客の低いキャラでは店番させても売れず・・・、と、そのあたりのバランスをどうとるかが頭の使いどころです。
また合成面でも、一マップから取れる素材で大量に作れるアイテムなどはほとんどなく、かなり序盤のマップでしか取れない素材なんかも沢山あるので、今何が必要かをしっかり吟味しつつ採取していかないとなりません。しかも採取そのものは個数固定でも内容は何種かの中からのランダムだったりするので難解です。直前S&Lも効かないので(ターンをずらせば変数するっぽいけど)、特に1周目は色々と苦労すると思います。
衣装強化も、特にメインヒロインは最初あまり強くないので出来る限り進めていきたいのですが、序盤はかなりの資金不足なので厳しいです。とにかく、やりたいことは多すぎるのに何から手をつけていいのかわからない、みたいな雰囲気がありますね。まあ堅実にこなせばマイナス計上に振れることは早々ないはずなので、ある程度独自の儲けパターンを構築してしまうのが手っ取り早いですが、同じ商品ばかり店にあっても売れないのがまた悩みどころだったりも。。。
とにかく全体的に、まず今何が必要か、という直近的な視点と、大きく見て最低限これはいずれこなさなければ、という部分への遠視的視点を上手くかみ合わせてのプレイが要求されるので、とっても遣り甲斐があるシステムだと思いますね。
戦闘面では、姫狩りからのわかりやすいマップ制圧システムとオートバトルを継承し、更に進化させています。特に今回は属性効果の影響度が大きくなっており、武器のみならず地形効果や衣装に至るまで影響が広がっているので、様々な局面でいかに最適な条件を選択していくか、その視野の広さと思考の柔軟性が大いに試されます。
攻撃の数値自体は攻撃以前に期待値をきちんとはじき出せるので、基本的には計算上いかに味方のダメージを小さくして敵を倒すか、というのが重要なんですが、多彩なスキルの存在によって確率的に発生する要素が絡んでくるため、中々計算どおりにいかずに歯噛みすることも。これも当然直前S&Lは効かないので、この一点を通さないと勝てない、ってとこでダメだともう無理というせつなさ。常に多重の戦略を持ち込んでおき、柔軟に展開するのがベストですね。
私は結局まだ難しいではプレイしていないのですけど、そのへんになるともう動かす順番や配置は当然として、囮や伏兵的な戦略まで持ち込まないと厳しそうな雰囲気はありますね。周回プレイ前提のゲームですから、1周目の厳しさは普通で繰り返す限り2周目以降には感じないんですが、それでもEXイベントなどから、敵のレベルがちょっと高くなるだけでどれだけ面倒かってのはヒシヒシ伝わってきますし。。。
とまあ、システム面全体としては14/15点というところ。
何がマイナス一点かって、まず単純に難し過ぎるところ。。。これは中々に一見さんにはきついです。一つ采配間違えるだけであっさりコロコロと負けてしまいますし、それを解消するために必要な要素が何かってのを理解するまでにすごく時間がかかります。
あとは強いて言うなら、周回前提という設定が、必要以上に1周目の可能性を狭めてしまっている部分ですかね。ただでさえ鬼のように時間を食う作品ですのに、1周目の積み重ねでは完遂できない部分が多すぎるのは多少不親切かもなあとは思いました。
んで全てを総合してですが、間違いなく名作であり素晴らしい力作ではあると思います。
しかしながら、敷居が高いという部分においては、シナリオ・システムの両面にネックとなるものがあったようにも思えましたし、あまりに正道過ぎてアクの強さを感じさせなかったのも味気ないといえばそうなので、その辺も鑑みてこの点数でどうかな?と思います。
キャラ(20/20)
主人公を筆頭として、それぞれの立場、在り方、考え方がきっちりしている作品で、しかもそれをきちんとシナリオ内で反映できているので、しっかりキャラは描けていると感じましたし、それぞれの魅力もきちんと引き出せていたと思います。まあ上で書いたように、好きだけどみんなの中の一人でいいわ、的な考え方だけは馴染まないんですけどね。絶対互いに気付いてないわけじゃないもんねアレ(笑)。
一番好きなキャラはクレアンヌ。めっちゃ可愛いです。
基本的に理知的だけど、すごく弟想いで、けれどユイチリとしての在り方を否定しきれずに煩悶するあたりは非常に好きですし、それを主人公の手助けを経て乗り越えてからの一皮向けたような明るい雰囲気も好みですね。バトル的にも二回行動と応援のおかげで何気に最後まで一軍半くらいだったし。。。
次いで水那かな〜。まあああいうタイプですから私が嫌いなわけないですもんね。
とにかく想いが真っ直ぐで、強い信念を持っているけれど、普段はやたらと怖がりでへっぽこな感じが可愛いです。まあ基本店番だったけど。。。
メインヒロインではセラウィ。種族の壁に悩みつつも、時に主人公を導き、時には主人公の発想に生き方を変えるほどの衝撃を受け、まさしく二人三脚的なイメージがぴったりで、この物語のメインヒロインとしてもイメージがしっくりくるキャラですね。私的に惜しむらくは巨乳(笑)。長距離一閃射撃は便利でした。
ユエラの融通が効かないけれど、心許した相手には素直な部分も好きです。そしてバトル面では大活躍、決死と隠密のおかげで大体の場面で先陣を切って道を切り開いてもらいました。最終的にはミレーヌに一歩ゆずったけれど、あれはミレーヌのパラメータがちょっとおかしいレベルで強すぎるだけですよねえ。たぶん衣装完璧にすれば並びたてるのでしょうけど。
あ、あと何気に好きなのがメロディアーナですか。彼女くらいしか随所に嫉妬めいた感情を見せないのもあって、そういうぶぶんがやたらと可愛らしく見えたんですよね。エリザスレインとお風呂で張り合ったりとか。。。バトル的には・・・雑魚には強いけど強敵には弱いよね、みたいな?
CG(18/20)
質・量ともに水準以上で満足度の高い仕上がりです。とはいっても、まだ回収率95%くらいなんですけど・・・。まあサービスイベントとかEXキャラのとかのだけなんで(要するに回収が面倒くさいところね)、ゲーム本編としての評価を揺るがすほどではないかなって。
立ち絵に関しては、ADVパートがそう多くない割にはそれなりに数はあるのではないかと。特にメインヒロインは衣装が多彩なのもあって中々に華やかですね。まあ特別にこれは可愛いってのはあまり印象に残ってないんですけどね。。。
一枚絵は、絵そのものは抜群とまでは思わないですけど、質感や細かい部分の表現がとっても繊細で、見た目の印象がパッと華やかなのが多い気がしました。量的にも充分以上ですし、ここは流石の出来。
お気に入りはページ順に、ユエラの採寸、キス、初H座位、三回目H正常位、地衣装バック、火衣装愛撫、背面座位、ED、お勉強エミリッタ、サエラブと、賢者衣装フェラ、挿入、蛙衣装バック、結婚式、セラウィとの邂逅、一緒にお出かけ、初H見詰め合って、正常位、三回目ドレスH立ちバック、闇衣装正常位、火衣装騎乗位、くつろぐ水那、騎乗位、添い寝、フェラ、メロディアーナ正常位、クレール必殺、クレアンヌ必殺、蔦に絡まって、初H騎乗位、お尻を向けて挑発、エリザスレイン必殺、口淫、ラグスムエナ正常位、ミレーヌ騎乗位、黒エウ娘必殺、主人公必殺、みんなで買い物、エリザス&メロディと混浴、クレール&クレアンヌお風呂、将軍の本気、防戦、遥かな高みであたりですね。
BGM(18/20)
情感が強い楽曲と、壮大&爽快感のある楽曲がバランスよく配置されていて、すごくイメージの膨らむ布陣ですね。
ボーカル曲は2曲。
OPの『Ars Magna』は明るいテンポの中にもすごく雰囲気のある曲ですね。タイトルで聴き慣れたのもあってか、ぶっちゃけ今でもイントロの部分が一番好きだったりするのですが(笑)、サビの疾走感のある重々しさという背反的な雰囲気がかなり好きです。
EDの『虹の彼方』は文句なく名曲。ひとまずの終わりと、そこから始まる違った形での闘いをイメージさせる、どこか執拗な雰囲気がプレイヤーの情感を刺激しますね。サビのメロディラインがすごく気に入ってます。ボーカルの雰囲気も素晴らしくマッチしていると思いますし。
BGMは、突出してすごくいいのはなかったけれども、全体的に耳に残るいい音楽が多かったなあと。
お気に入りは、『大いなる探究』『窮境』『荘厳なる輝き』『凱旋』『南方の風』『探索は工匠の始まり』『駆け抜ける風』『忘れられた陽光』『轟く咆哮』『天翔る竜虎』あたりですね。
システム(9/10)
演出は作品に対しては最適なのではないかと。
意外と立ち絵芸も細かいんだけど、あまり活躍の場はないのが残念なところ。戦闘は基本の攻撃効果とカットインのみなのでさほど目新しさはないけれど、スムーズに動くしまあ問題はないかなと。ムービーはちょっとだけアニメーション、イメージとしては壮大な感じで悪くないです。
システムはまあ普通。
ワイド対応になり、姫狩りよりも負荷が軽かったのは個人的にかなり好印象。ボイスカットがないのは相変わらず残念、あと既読スキップと未読スキップが並んで配置されているのわかりにくい、というか間違えてつい未読押してしまって・・・ってのが結構あったり。SLGの設定はかなり細かく出来るのでそっちは文句ないんですけどね。ターン自動送りOFFは何気に生命線。。。
総合(91/100)
総プレイ時間・・・?ぶっちゃけ考えたくもないんですが。。。
ちなみに1周目が51時間でしたかね。これでも2人ほどサブキャライベントパスしてるので、それ含めればもうちょっと、まあ私の効率が悪い部分も踏まえても50時間はかかるんじゃないでしょうか。
メインヒロインのシナリオ回収の2、3周目は、まあ全部引き継いで必要なイベントだけ拾っていけばそれぞれ10時間くらいで済むんでしょうが、ついついEXイベントとかに手を出すとまたとんでもなく時間を食う羽目に。結果的に現時点でトータル120時間ちょっとになってますし、現時点でもまだユイドラ坑道はアスモデウスのところまでしかやってないので、完璧にコンプリートするにははてさて・・・って感じです。
正直熱中度が高いというよりは、もうなんか半狂乱になりつつでもついつい進めてしまうといったほうが正しい気がしますね(笑)。特に1周目は、やたらと自由度が高い割に、下手な行動ばかりしてるとすぐに詰むというシビアさもあって、中々に混乱させてくれます。SLGとしてもそれなりにレベルは高そうですし、とにかく時間はかかるので、気軽に手を出すにはちょっと重たい作品ではありますが、時間に見合う面白さと満足とはあるので、その辺踏まえてならばお勧めしますね。
追記、2012/01/08、システム+1点。
2011年05月26日
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