2011年08月10日

天使の羽根を踏まないでっ

 まあ基本ライター買いですけど、体験版の雰囲気もかなり良くて、とても楽しみにしてました。


シナリオ(25/30)

 正義の在り方。


 お嬢様に恩返しがしたい―――、主人公は幼い頃からずっとその想いを抱えていました。
 物心ついたころから養護施設で外界と隔離された生活をしており、ずっと人恋しさに苛まれていた主人公は、ひょんなことから出会い、友達になった少女、羽音の手によって救われます。
 いっぱしの資産家の娘であった羽音は、主人公の境遇を知って友達を助けたいという一心で親に頼み込み、彼女が住む屋敷に主人公を引き取って育てることを了承させ、そしてそれを押し付けることなく常にただ友人として振舞ってきました。
 羽音の屋敷に拾われ、その父親に“塾”と呼ばれた集まりなどを通じ親身に様々な教えを受けたこと、更には生き別れの弟である空と再会することで、ようやく人間らしい生活と感情を手にした主人公は、しかし自身の環境があまりに恵まれすぎていることに恐れを抱き、いつからか自らを使用人として、心のうちに抱えた想いはそのままに、しかし一歩引いた態度で羽音に接するようになっていきます。

 そんな暮らしが続いていくうち、主人公は自身の体に変調を覚えます。
 火照り、としか表現できない曖昧な症状ながら、それが頻繁かつ程度が悪化していくにつれて不安になった主人公は医者にかかることにしますが、そこで告げられたのは、現代医学では解明不能な状態で、しかし唯一わかるのは、もう先が長くない、ということでした。
 突然の宣告に呆然とするばかりの主人公でしたが、そんな折、羽音が遠くの全寮制の学校に入学するという話を聞きつけ、もしも今別れてしまったら、今後羽音に恩返しをする機会がなくなってしまうと考え、屋敷の執事に無理を言って自分もその学校に行けるように取り計らってもらいます。

 かくして、羽音と同じ学校に通えることになった主人公ですが、そこには一つ大きな問題がありました。それは、羽音の通う学校が女学園であったことです。

 聖ソルイルナ学園―――。
 それは、17年前の大崩壊の折に、神の身元に赴き願いの力を持って世界の変革を成し遂げた、後にμと呼ばれる存在が生まれた聖地に建てられた、μを輩出するための学園でした。
 最初のμの出現以来、神は年に一人ずつμを召し上げ、そしてその願いを聞き届けてきました。それは如何なる常識にも影響されない、正しく奇跡と呼ぶべき神の御業のため、μの生誕以来、世界は大きな変革に晒されているのです。

 そんな学園に、どうやら明確な目的があって入学を志願した羽音と、そして羽音と一緒にいたい一心で、女装を施してまで同じ学園に通うことになった主人公、そして聖地巡礼の名目でついてきた見習い修道士の空という一行、しかし聖ソルイルナ学園には実は二つの顔があり、それぞれ“太陽の学園”“月の学園”と呼ばれ、入学の時点で新入生は神の意志によって選別される仕組みになっており、なんと主人公はいきなり羽音と離れ離れになってしまいそうになります。
 その上、二つの学園に別れた後は、基本卒業まで互いに逢うことは出来ないと知らされた主人公は密航を企てますが、それは途中で露見し、しかし主人公は自分の意志でどちらの学園にいくかを選択できる状況に陥るのでした。

 太陽の学園―――。
 奇跡の力を司り、神の代弁者としてのμの存在を是認する学園であり、そして“塾”での学友であるひかるや照が通う学園。

 月の学園―――。
 魔術の力を司り、神殺しとしてのμの存在を是認する学園であり、そして羽音は当然として、“塾"の学友の憩やトロッケンハイトが通う学園。

 いずれにせよ主人公は、その学園で生活するうちにやがてμという存在の在り方に突き当たり、そしていつしか大きな流れの中で、μという存在を追い求めていくことになります。
 μとは何か?世界の真実とは何か?学友達が抱える想いとは何か?自らが信じる正義を貫き、真っ直ぐに世界と向き合っていく中で、果たして主人公が選び取っていく未来はどのような形になるのでしょうか?

 これは、きっと神様を××す物語。


 と、長くなりましたがあらすじはこんな感じですね。
 大枠としてはいわゆる女装主人公ものとなりますが、一般的(というほどサンプルがあるかは微妙ですが。。。)なこの手の作品とはかなり趣が違い、あくまで女装そのものは便宜上+主人公の考え方に影響を及ぼすくらいで、メインとなるのはやはりμにまつわる物語になります。不自然なくらいに知り合いが集められた学園において、その交流を経て様々な角度から真実に迫っていく、という感じですね。
 テキストに関してはいつもながら流麗かつ優雅で、それでいながら今作は言葉足らずな部分やわざと難しい言い回しをしているような部分が(比較的)少なく、ギャグセンスも相変わらずどこか斜め上をいくようなシュールさと切れ味があり、大分とっつきやすい印象です。その分、一つ一つのお話はコンパクトにまとまっている感じで、でも不足感は薄く、しっかり読ませる内容になっていると思います。

 まず全体に影響する部分として、主人公の設定付けが秀逸であると言えます。
 特に羽音に対して、という部分はありますが、あくまで自分が使用人としての一歩引いた存在であること、そして身内以外に女装がばれていないと思っていること、そこを上手く使って、普通ならかなりの朴念仁&天然の女たらし扱いされる発言を許容できる土壌を形成しており、それが単純な恋愛要素に流れることなく、物語の本筋をしっかり意識した形式を際立たせています。
 その上、やたらと魅力的なんですよねこの主人公。とにかく真っ直ぐで、情に脆くて、そして建前の正義でなく自分の信念から来る正義を基準に動いているので、すごく共感と愛着が持てます。

 シナリオとしては、真ルートに辿り着くのに全てのシナリオを見ないとならない、いわゆるルートロック型ですね。一人一人のシナリオではそれぞれ隠された業を組み込みつつ、メインのテーマを少しずつなぞりながら世界の謎の一面を垣間見ていき、真ルートではその全てを違った形で解決しつつ、その全ての想いを糾合して前に進んでいく、という形が取られます。
 このライターの作品としてはヒロイン数も多く、回想シーンもやたらと多いんですが、ヒロインとただイチャイチャ、ってパターンはあまりなく、あくまでもシナリオの流れの中で必要だから、というスタンスは崩れていません。全体的にルート分岐の繋ぎ方が唐突で軽い、という印象はあったものの、どのヒロインに想いを馳せていくか、という設問が、神に対する考え方のそれとシンクロしていく、という作りは面白いですし、良く出来ていると思います。

 基本設定からして、大要の学園側は言論闘争的な、そして月の学園では武力闘争的な側面が強く出ており、どちらにおいても主人公は独特の存在感を発揮しますが、シナリオとしての面白味が強いのはやはり月の学園側ですね。
 特に羽音シナリオは、月の学園内における様々な伏線が全てしっかり生きてくる上に、キャラの存在感がとても際立っており、またシナリオ進行にもずっと緊迫感が漂っていて、とても印象深いです。

 その上での真シナリオですが、それは幾分世界観を広げすぎというか、ラスボス的存在の立ち位置が、そこまでの雰囲気作りや言葉回しである程度の説得性を確保しているとはいえやはり荒唐無稽な部分があり、まずそこを飲み込めるか、というのはあります。
 しかしそれさえクリアすれば、そこに至るまでの全ての伏線の見事さに唸りつつ、そしてあまりの事態に根源的な信念すら崩れそうになる中で、互いに想いを支えあって、真っ直ぐに信念に基づいた正義を敢行するという流れに、読み進める手を止められなくなること請け合いの面白さと迫力があります。
 何より、それが善悪二元論に帰着するのではなく、既に事は為し終えてしまったあとで、たとえどう足掻こうと元の姿に戻すことは不可能であると理解していながら、その中で新たに信念として据えるべき部分を組み直し、およそ人の手には及ばないような大きな相手に対しても立ち向かっていく、その在り方が作品の本質的テーマにすっぽり嵌っていて、すごく感心しました。

 欠点としては、やはりヒロイン数は多くとも本質的な恋愛要素はかなり弱いこと、繋ぎがやや大雑把で真っ直ぐにそのルートにおける問題を追いかけてしまうため、キャラの意外性のある魅力を引き出す部分などはないがしろにされてしまっていることなどが挙げられますが、でも本筋の面白さ、そしてキャラの高潔さをもってして相殺できる部分ではあるかな、とも考えます。
 ともあれ、全体的に見て、相変わらず癖は強いものの以前ほどではなく、比較的万人に受け入れられやすい内容に仕上がっているのではないかと感じました。その分尖り具合が中途半端というか、ここ一点、ってレベルで感動や感銘を振りまく部分が個人的になかったのが残念ではあるのですが、それがゆえに逆に総合点では劣っていたことを考えれば、いい意味で捉えるべき変化かなとは思います。
 

キャラ(20/20)

 いつもながら特異な性格付けが秀逸で、台詞回しや立ち振る舞いだけでも充分に存在感を振りまきつつ、その上に確固とした信念めいたものを抱えているキャラ群なので、非常に魅力は高いですし、その誇り高い在り方に羨望すら覚える部分はあります。

 ただ今作の場合、特に真ルートにおいては大団円的なエピローグを採用していて、それが決して悪いとは言わないのですが、その分キャラ的な印象度は広く浅く薄まってしまった感じはありました。
 それこそいつ空のふたみと此芽、きっすみのひよと蘭のように、対立項の中で一方に天秤が傾いたときに、もう片方のキャラ性を容赦なく残酷なまでに使い潰すような先鋭さがなかった分、私的な思い入れという意味では若干劣るものがあったのは事実で、そこは残念といえば残念です。まあ贅沢な話だとはわかっていますけど。。。

 だからこそ、というのはなんですけど、ヒロイン差し置いてこの作品で一番好きになったのはつみれだったりするわけです。
 本質的に予定されたシナリオの枠外にある存在ではありますが、羽音に与えた影響、自身の愛らしく高潔で真っ直ぐな性格、そして要所要所での、枠外であるからこそ的確に大枠を見据えての的確な助言と、活躍の場は枚挙にいとまなく、どの場面でもメインのキャラに負けない確固たる信念を持っていて、ものすごく素敵でした。
 まああと、ギッャプ萌えが作風的に物足りない中での、あのお弁当のシーンが意外性に満ちていて一発でやられた、ってのはありますがね。。。

 ヒロインだとひかると羽音が双璧ですかね。
 ひかるに関しては元来の性格と普段の仮面の差異が際立っていて魅力的なのと、わかっていてああいう振る舞いをしているという奔放っぷりがなんかツボに入りました。
 羽音はやはり、その一途で真っ直ぐで頑固な想いの在り方が全てでしょうね〜。あれだけ想われる、というのは、特に羽音のような孤高感のある存在に対しては、普段そういうのが滲み出ないだけにインパクトがあるのではと思います。

 あと何気にアーリャが好きです。出番少ないし、活躍も薄いけど、結構大切な位置を占めていておいしいなあと。そして何より可愛さという意味では作中トップクラス。

 そして当然外せないのは主人公ですね。
 色々と生きてきた環境のせいで粗忽な部分も多いですが、全体的にすごくスペックが高く、それでいて心根が非常に真っ直ぐなので、確かに接していて安らぎを感じるキャラであるなあと。おそらく主人公部門では今期トップクラスでしょうね〜。


CG(17/20)

 概ね、可愛いというよりは美しいという方向性の絵柄で、作品の雰囲気には素晴らしくマッチしていますが、好みかどうかと言われると微妙なところ。出来も結構ばらつきがありますしね。

 立ち絵に関しても今一息。
 ポーズはおおよそが二つずつですかねえ。どちらかというと動きのあるシーンはカットインや一枚絵に頼っているのもあり、また腕差分などもなくポーズそのものにも意外性は薄いため、さほど躍動感を感じなかったのは事実です。まあ作風的に必要充分ではあるかもですが。
 服飾も、基本制服に幾人か私服やパジャマなどですが、決して豊富とは言えないかなと。月の学園の制服のデザインはかなり好みですが、多少物足りないのは仕方ないかなと。
 表情差分はまあそれなり。きちんと押さえるべき部分は押さえていますし、展開的に突飛なことにはならない以上これも必要充分なのかなと。
 お気に入りは、あやめの笑顔、シリアス顔、空のびっくり顔、照れ顔、怒り顔、羽音のどや顔、焦り顔、照れ顔、つみれの驚き顔、笑顔、思案顔、憩のしたり顔、困り顔、トロの困惑顔、微笑、ひかるの拗ね顔、いたずら顔、呆れ顔、照の驚き顔、感心顔、明るい笑顔、アーリャの驚き顔、冷たい視線、あたりですかね。

 一枚絵は、量は通常絵がカットイン含めて106枚、SD、みたいなのが(笑)14枚と充実した内容です。質の方は、所々表情が横長に過ぎるんじゃないかなと思う部分があったのと、やや出来にバラつきを感じたのはありますが、概ね優美な出来だと思います。
 お気に入りはページ順に、あやめの女装、朝露の惑い、照をお姫様抱っこ、着替え、アーリャ口淫、責められる陽華、ひかるのお祝い、奇跡の救済、ひかるH正常位、姉妹H愛撫、嬲られる羽音、羽音フェラ、憩の魔力放出、トロを背負っての闘い、羽音と手を繋いで約束、羽音H愛撫、つみれ自慰、トロを救って、空との出会い、空の女装、空H制服騎乗位、姉妹の奇跡、ハーレム、ホルバインバトル、まいっちんぐあやめ、玉座を下ろされた女帝、監禁されたつみれ、あたりですね。


BGM(18/20)

 全体的に優雅で繊細で幻想的で、実にらしさが出た楽曲だと思います。
 ボーカル曲は2曲。
 OPの『やさしい世界を君に』は、淡々としたリズムの中で優しさと透明感が際立つ中々の名曲。シンプルながら優美なイントロ、Bメロの柔らかさが特に気に入ってます。
 EDの『君の見る夢』も、EDらしい穏やかな雰囲気の中で、Bメロ以降に入り込んでくる信念のような強さを感じる旋律が好きですね。

 BGMは、突出してこれは、ってのはなかったんですが、平均的に質が高いと思います。
 お気に入りは『学び舎で交わす挨拶』『夕暮れのけんてき』『不器用なふれ合い』『さあ、剣を取れ!』『かつ目せよ、我が決意』『聖化の抱擁』『誉れあれ、大いなる奇跡』『人が人である証明』などですね。


システム(8/10)

 演出はそれなりに力入ってますね。
 キャラもそれなりに動きますが、やはり白眉は背景演出でしょう。水を上手く使っての優美な雰囲気作りや、場面場面での光の演出、羽の演出など、とにかく雰囲気を荘厳に見せる仕掛けは随所に施されていて楽しめました。
 ムービーもかなり綺麗に仕上がっていますね。

 システムはいまいちかなあ。
 プロペラの、しかも旧式のシステムなのでやはりちょっと時代遅れ感はあります。ワイドにも対応できないし、色々と足りないものも多いかなと。スキップはそれなりに速いですし、選択肢ジャンプもあるからリプレイには苦労しなそうですが。


総合(88/100)

 総プレイ時間20時間ちょいでしょうか。最初の共通に1時間、太陽側が全部で6時間くらい、月側が共通4時間、個別3本で2時間ずつ、真ルートで3時間くらいの感覚です。
 全体としてみると比較的コンパクトですが、更に作品の密度がかなり高いことで、プレイの体感時間はかなり速く感じると思います。とはいえ、それで物足りなさがあるわけではなく、これで一つの作品として完成しているという格調高さがありますね。

 上でも書いたように、このライターの携わった作品にしては万人受けする内容だったと思います。最後の展開はすごく爽快感を持って受け入れられますし、それなりに重い内容ながらも最初から最後まで軽快な印象だったのはやはり主人公の魅力かなあと。
 確かにヒロインとイチャラブとかそういう方向性をイメージすると外されますが、これ買う人がそういうのを求めている、というかそりゃあればいいなくらいには思ってるかもだけどそれをメインに据えているということはあまりないだろうし、概ね期待に添った上で安定感のある内容だったかなと思います。自信持ってお勧めできますね。
posted by クローバー at 06:38| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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