2011年10月18日

神咒神威神楽

 最近燃えゲーにはご無沙汰だったし、雰囲気があからさまに面白そうだったのと、咲耶がすごく可愛いなあと思ったので、何故か事前情報は仕入れなかったんだけどいつの間にか購入の方向へ。。。


シナリオ(26/30)

 理に挑む物語。


 神州は今、空前の内憂外患に襲われていました。
 国産みの伝承の頃より、神州は西と東の地に別たれ、海峡を隔てた東の地は化外と称される人ではないものの棲家となっていました。いつからか穢土と呼ばれるようになった東の地は、海峡に立ち込める濃霧と、決して渡る事の出来ない荒れた海の影響から、いつしかその存在そのものが架空のものではないかとまで言われていたのですが、およそ三百年前に東の地を征すべく行われた遠征によってその存在は実証されました。
 しかしその東征で神州軍は壊滅的な打撃を受け、そのせいで国力そのものを損耗する結果となりました。そのためにその後三百年の間、東の地はおろか諸外国との交流も断ち切って、国力の回復と充実のために鎖国政策を実施してきたのです。

 が、三百年を経た今、かつての東征により繋がりが出来た東の地より流れ込む化外の気に当てられ、西側の神州でも化外のもの同様の歪みの力を持った人間が多く生まれるようになっており、当初は数も少なかったものの、今では普通の人間よりも大きな力を持った彼らを御するのが難しくなっており、根底からの問題の解決を迫られていました。
 同時に、三百年沈黙を保ってきた諸外国が、黒船による威圧外交で神州に開国を迫っており、しかし穢土という弱みを抱えたまま国を開くことなど出来ないという、大きな内憂と外患を抱えているのです。
 そしてそれを一挙に解決する方策として打ち出されたのが、第二次東征でした。

 神州の五大武門家筆頭、久雅家の跡取りとして生まれた竜胆は、幼い頃から常々この世界そのものに疑問を持っていました。
 今のこの世界に生きるものたちは、誰しもが己、己、と利己のみを叫び、他者との繋がりなどあってなきがように振舞うのが常識となっていたのですが、しかし竜胆だけはその在り方にどうしても馴染めませんでした。人とは助け合いと思いやりの精神を持ち、死して後も誰かの心に残るような大切に何かを抱えて生きていくものだという信念を持っており、その想いを貫いて生きてきたため、周りからは奇人・変人と見られていました。
 そして今、第二次東征が決定し、若き女の身でありながらも武門筆頭としてその戦の統率者となる運命を背負った竜胆は、しかし心も通わない他者を引き連れての東征に全くと言っていいほど成功の余地を見出すことが出来ませんでした。

 そんな折、東征の前の戦意高揚の企画として、帝の御前による武の神楽が実施される運びになりました。
 全国から名うての腕利きが揃ったこの神楽において、きちんとした試合の体にもならずに乱闘となってしまったことに、限りなく突き詰められた利己の精神を嗅ぎ取った竜胆はたまらず割り込み、東征を率いる将として毅然とその場において自らの信念を説き、それに賛同する輩こそを率いたいと熱弁します。
 そして、それに応える一人の益荒男がいました。
 男の名は覇吐、古くは久雅の一門に連なる血統ながら、歪みつきとなって忘れ去られた一族の出であり、今回の神楽に呼ばれていた一人でした。この神楽の主催者である政の担い手の御門龍明によって意を含められ、このときまでその身を潜めていた覇吐は、竜胆の語る理想と熱意に通り一遍ではない大きな何かを感じ、彼女の意に賛同することを表明するためにこの場に現れたのです。

 さしての仕事として、残っていた一騎当千たち、剣客の宗次郎、拳法使いの紫織、曰くつきの歪み持ちである刑士郎の闘いを収め、その理想に共感こそしないまでも、当面その指揮下に入ることを認めさせます。更に、刑士郎の妹である咲耶や、御門一門きっての陰陽師である夜行なども竜胆と同行することを表明し、加えて龍明の娘である龍水、総じて七名が、この東征における竜胆の直下の臣となり、戦場においては先陣を切る役割を担うことになるのでした。
 かくして、水火を伴う、かどうかはまだわからずとも、少なくとも竜胆が考える理想の益荒男たちに近しい彼らを中心とした、長く激しい東征がはじまるのです。東の地で待つは化外、その中でも天魔と呼ばれる存在はあまりにも強大ながら、東征の成功なくして神州の未来なしと、悲壮たる決意で竜胆は軍を率いていくのでした。


 と、あらすじはこんな感じですね。
 大枠としては、東征による穢土の制圧が主題となる物語ですが、後半に進むにつれてそれは少しずつ変質していき、東征軍の中心たる四組の男女がそれぞれ歴史的に担うべき役割を炙り出され、最終的にはその道を全うすることによる世界機構そのものの変革にまで及ぶ、とても壮大な物語となっています。
 
 文章は濃密にして典雅で流麗、とにかく言葉回しが巧みで重厚感があり、一つ一つの事象に対して丁寧な解説と観念が付きまとうため、お世辞にも読みやすい文章だとはいえませんが、噛み締めていくとその迫力に圧倒されるようで、それでいて品格がしっかりと保たれているために、読んでいて苦になるようなことは少なくとも私には一切なく、最後までだれることなく読み進められました。
 人物描写的にも、それぞれの誇りは絶対の一として確立されつつも、周囲の想い、特に竜胆によって受ける影響から少しずつその在り方を変容させていく部分など実に上手く切り取られているし、それを踏まえた中でそれぞれの人物の面白味もきっちりと書き出されているので、まず文句の出ないところですね。

 内容的には圧巻の一言。
 基本的にはほぼ一本道で、大半は東征による天魔との死闘が書かれるわけですが、その密度とくるや素晴らしいものがあり、序盤から終盤まで緊迫感は最高潮、幕間のような一時もすぐに闘いの坩堝に巻き込まれていき、読み手の頁を繰る手を止めることのない面白さを維持し続けています。
 こうした歴史的な状況下での闘いを書いた物語は世に多く、この作品とてそうした系統において特段特殊性を担っているわけではないのですが、まずこの作品においては武の頂にあるものを宇宙観そのものまで引き上げており、その堅固たる外殻は実際のところ作者の前作から引き継がれた舞台設定なので、力と序列に対する説明がわかりやすく、また説得力をしっかり持っていて、東征側が勝利を収めるための鍵が、決して偶発的な力によるものでなく、必然として引き上げられたものだとしっかり納得させてくれるため、その下克上的な在り方がすごく爽快感を誘います。

 そして、その東征において起こる不可思議な出来事や、最初から竜胆が抱えていた疑問などが伏線として生きつつ、そして闘いを続けていくことで穢土の存在理由とそこに控える天魔たちの信念を垣間見ることで、主人公たちが本来担うべき役割が徐々に明確になっていき、そして東征後に四組それぞれがその在り方の極致に至ることで、全ての問題の根源である部分に辿り着く、という流れに導かれていくわけですね。
 ここでも前作の因縁が絡んでくる部分は多いものの、それぞれの信念や想いを追いかける物語だけでも上々の出来ではあるし、ましてやそれが糾合されて、それこそ詰め将棋の如く全ての要素を兼ね備えることで破格の存在に対する術を見出す部分など、非常に設定含めて素晴らしく緻密に出来ており、特に覇吐の存在の不思議さの解明については、この宇宙観を実に巧みに利用した、それでいて目新しさをも含んだもので、思わず膝を打つ解釈でした。
 強いて言えば、そのそれぞれの極致に至るまでが主題で、その分最終戦が文字通り詰め将棋になってしまったことはもう一つ食い足りないかと思わなくもなかったですが、むしろそうでない限り勝てないという背景が厳然としているので、そこにけちをつけるのは贅沢というものでしょう。

 ・・・正直なところ、この作品は作者の前作の、特に完全版をしっかり理解した上でこそ本領を発揮する物語ではないかという部分から、決して敷居の低い物語ではないのですが、少なくとも前作を全く知らずとも楽しめることは事実ですし、知っていればより一層面白い、くらいの水準の高さを誇っているので、不完全版しかやったことのない私としても引っかかる部分はあるものの、それを理由に遠ざけるには勿体無いと敢えて付言しておきます。
 個人的には、座の交代によって引き起こされる宇宙観の変革において、それが時系列の改竄まで引き起こすものなのか、まあぶっちゃけて言えば前作からここまで、時代感としてはむしろ巻き戻っているのに連続性があるという事実がどういう解釈なのかがわからないのだけ気になってます。なまじ対応する人物とかはわかるだけに余計に。咲耶の手紙も最後はああやっぱり、とは思ったのですが、感情的に納得するのと理論的に納得するのはまた別物ですしね。。。
 あとどうでもいいかもだけど、この舞台背景での繋ぎだと、実際年代はこっちでは現されていないから違うんだろうけど、黒船の時代から彼女が生まれる時代まで生きてるって、咲耶おばあちゃんどんだけ長生きなんですか、とかっ突っ込みたくなってしまったり(笑)。

 ともかく、質量ともに申し分なく、完成度という意味ではこの作品は傑出していると思うし、その方法論も実に私好みなので、本来あと一点か二点加算してもいいんですけど、やはりこの作品単体において理解しきれない部分があるというもやもやは拭い去れないし、まして前作の不完全版発売日に買って見切った身としては釈然としないので、それを敷居の高さと見做しての減点、という形でここに落ち着けました。
 尚、作品内で極力横文字・片仮名、外来語を使わずに物語を紡ぎあげた筆力に敬意を表して、今回の脚本部分の感想はそれに倣う形で和文のみで仕上げてみたことを付言しておきます。まあこれこそ究極に自己満足なんですけど。。。


キャラ(20/20)
 
 最終的にはそれぞれ行き着く役割を宛がわれた設定ながら、それだけには決して留まらない奔放さとそれぞれの信念の強さが上手く導き出せており、キャラ設定としては申し分ない出来だと思います。
 それぞれが一騎当千の兵で、敢えて言うなら普遍から外れた存在であることは、この利己の世界観において違和感を生じさせない予防措置にもなっており、仮にこの情感を市井の物語で打ち出そうとしたらかなり厳しいと思うだけに、そのバランス感覚が見事だなあと。

 一番のお気に入りはやっぱり咲耶。
 ぶっちゃけ最初の航海以外、あまり東征そのもので活躍する場はなかった気もしますが(笑)、少なくとも仲間内での緩衝材的な役割、それを自然に出来る挙措の良さと性質の良さ、そしてここ一番の芯の強さが非常に魅力的でした。まあその芯の強さが最後のほうでは少し裏目に出ている部分はあるものの、総じて素晴らしく可愛い妹ヒロインだったと思います。

 そして実はその次は常世だったりするんですよね。。。
 いや、決して不完全版で攻略出来なかった憾みを引きずっているわけではないと思うんですが、しかしやっぱりああなってまでもその芯の部分の儚い雰囲気と悲壮感は変わりなく、それでいてたった一言に全てを救われたような喜びを見せるいじらしさに心が打たれましたね。

 んで龍水と竜胆、って順番かな。
 龍水は作中で一番成長を見せたし、その中でも自分にとって一番大切なものは決して見失わないという信念、そしてそれを奢ることなく高め続ける弛まない挙措が非常に好感をもてました。
 竜胆は可愛いというよりは凛々しい、という場面のほうが圧倒的に多いんですが、やはりその存在感と想いの強さはこの作品において格別のものがあるし、その高貴なるものの義務、を地で行くような高潔で真摯な性格は非常に魅力的でした。

 男キャラだと刑士郎ですかね。
 強さとは何のためにあるのか、という視点で見て、ある意味一番弱くなったのに一番強い、という印象がすごく色濃くて、特に個別ラストの立ち居振る舞いは素晴らしい格好の良さだったと言えます。
 他の三人もそれぞれ癖は強いながら芯の部分での益荒男ぶりには感じるものがありましたし、むしろ個別で語るよりはペアで語ったほうが正確なんでは、というくらいにヒロインとの噛み合わせが良かったなあと思いますね。


CG(18/20)

いわゆる萌え系統の絵とは一線を画した、独特の迫力のある絵柄で、こういう作風において実に映えるなあと思います。個人的に前作よりこっちの和装のほうが画風に見合っている気がしますね。

 立ち絵に関しては一長一短でしょうか。
 ポーズはおよそ一人当たり三種類でしょうかね。まあ日常がメインになる作品ではないのでそこまで必要性はないし、その中で三種類揃えているのは立派でしょう。それぞれキャラのイメージに合ったポーズが多いですし。お気に入りは咲耶の横向きと龍水の癇癪、竜胆の狼狽あたりですかね。

 服飾は、これは世界観からどうしようもない部分はありますが、ほとんどのキャラが一種類だけとちょっと寂しいことに。戦闘服と普段着くらいの差異はあっても良かった気もしないでもないですが、それをすると常在戦場の雰囲気が崩れるかなあ?

 表情差分はそれなり。まあ特別遊びはないものの、喜怒哀楽のメリハリがついた、キャラ特性をしっかり意識した表情群だと思います。
 お気に入りは咲耶の笑顔、膨れ顔、憂い顔、はしゃぎ顔、龍水の膨れ顔、焦り顔、照れ顔、竜胆の仏頂面、呆れ顔、照れ怒り顔、驚き顔、紫織のからかい顔、刑士郎のそっぽ向き、呆れ顔、宗次郎の諦め顔くらいですかね。


 一枚絵は全部で103枚、まあ水準の数でしょう。ここに入れるべきかは微妙なんですが、動画も20本くらい用意されているために、特に戦闘を彩る描写においては物足りないということは全くなく、塗りの質もあって非常に迫力のあるいい絵だったと思います。
 特にお気に入りは刑士郎と咲耶のキス。あの咲耶可愛すぎ。。。
 あとお気に入りはページ順に、覇吐構え、宗次郎構え、覇吐と竜胆の邂逅、咲耶の膝枕、船を操って、みんなで酒宴、母禮太極、街娘号外、常世と竜胆、常世の想い、宿那登場、穢土の女達、夜刀降臨、夜刀と覇吐の闘い、人としての刑士郎の闘い、兄を抱いて、龍水の慟哭、最後の闘いを前に、紫織太極、宗次郎太極、夜行太極、覇吐と波旬、竜胆半脱ぎ、正常位、咲耶口淫、後背位、龍水騎乗位あたりですね。


BGM(19/20)

 和の雰囲気を基盤にしつつ、時に奔放に、時に穏やかに、耳に残る素晴らしい楽曲に仕上がっています。
 
 ボーカル曲は2曲。
 OPの『我魂為君』は疾走感と力強さがあり、個人的にはもう少し和楽よりに仕上げてもよかったかなあとは思いますが、中々にいい曲だと思います。
 EDの『神代桜』はかなり名曲。こちらのほうがより世界観を忠実に引き出している気がするし、名もなき英雄たちの物語を締めくくる挽歌として実にしっくりくる旋律ですごく好きです。特にAメロの流麗な儚さが物凄く気に入ってますね。

 BGMは、闘いの曲が特に素晴らしく、さりとて日常を彩る曲が劣るわけでもなく、平均して質の高い出来だと思います。
 特にお気に入りは2曲。
 1つ目は『禍津血染花』、この殺気が前面に押し出されたような力強さと切迫感、スピード感のバランスが素晴らしく、使用頻度が高いこともありすごく耳に残っていますね。
 2つ目は『吐喜加身依美多女』、ぶっちゃけ読み下せないんですが(笑)、この曲の柔らかくも切ない運命を彩ったような旋律がすごく好きです。笛の音がまたその哀愁を一層引き立てていて、地味だけど雰囲気に見合ったいい場面で流れるので印象深いです。
 その他お気に入りは『唯我変生魔羅之理』『神州愛國烈士之神楽』『神心清明』『神威曼荼羅』『波旬・大欲界天狗道』あたりですね。ちなみにたぶん前作にもあった曲なので点数には入れてないですが、修羅残影と刹那の曲もやっぱりすごく好きです。


システム(10/10)

 演出は圧巻の一言。
 とにかく戦闘演出が群を抜いて素晴らしかったですね。多彩な動画とモーションエフェクト、一枚絵を駆使しての臨場感は圧倒的でした。きちんと技の水準に合わせて動きが変化していくあたりもきちんと表現できていたし、バトルものとしては最上級に近いのではないでしょうか。
 通常演出も、特に背景演出はかなりしっかりしており、キャラもそれなりに動くので特に文句つけるものではないですし、ここに関しては文句なく満点でいいと思います。ムービーも華やかでかっこいいですしね〜。

 システムは水準よりは上かな、ってくらい。
 必要なものは揃っていて、シーンスキップもパッチで搭載されてスキップの速さはかなりのものだし、難を言えば全部無理矢理和文説明にしてるからどれがどれやら最初イマイチわかりにくいってくらいでしょうか。。。個人的に縦文字かつ可変ウィンドゥというのは斬新ながら実にこの演出に合っていると思いましたし、等級などの鑑賞部分もそつなく組み上げているなあと。音楽リピートがないのだけは困るけれど。

 トータルすると満点は甘い気もするんですが、やはり圧倒的だった戦闘演出と動画のクオリティの高さを踏まえて、あとこれに満点つけないと他のに絶対つけられないと思ったので(笑)、思い切ることにしました。


総合(93/100)

 総プレイ時間33時間くらいですかね〜。東征終了までが24時間くらい、個別回収が2時間ずつ、最終戦が1時間というイメージです。とにかく序盤から内容が濃密で隙がなく、プレイしているとあっという間に時間が過ぎ去るイメージでした。
 前作との絡みや、読みやすいとは言えない文章など、それなりに敷居は高いものの、面白さと完成度は凡百と隔絶しており、期待通り、いや期待以上の出来と言っていいでしょう。プレイするのに時間と気力は必要ですが、それに見合うものはあると思います。

 個人的評価として、大体の点数を暫定で査定した段階で、シナリオでの引っ掛かりがある部分でSSには出来ないけれど、でも今年最高クラスなのは間違いないからそれに見合わせたい、という意識があり、ちょっと作為的な点数になってしまった部分はあります。何しろ、これでシステムを9点にしちゃうと奇しくもユースティアと全く同じ点数配分なんで(笑)、それだと年末に困るからどこかに差異をつけたい、でもシナリオにはもう加点できない、じゃあどこに?という悩み方をしてました。。。
 ともあれ、前作完全版プレイしていたならばきっとSSだったろうという含みを込めてのこの点数です。

 追記、2012/01/08、シナリオ−1点。
posted by クローバー at 06:58| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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