2012年03月06日

グリザイアの迷宮

 グリザイアは果実が素晴らしい名作だったし、まだ次がある連作とわかっていても手を出さざるを得ないわけで。。。


シナリオ(22/30)

 切り捨てられないもの。

 
 この作品は、2011年2月にリリースされた『グリザイアの果実』のFD兼続編になります。
 コンテンツとしては、まず果実のヒロイン5人のその後を書いたアフターと、果実のサブヒロイン達との、設定は無視した形でのおまけHが6本、あとはショートショートが30本ちょっとあって、ここまでがFDとしての部分。
 続編としての部分は、果実では明確には書かれなかった主人公の過去を暴く、既にリリースが発表されている『グリザイアの楽園』に繋がるシナリオになります。
 当然ですが、果実未プレイだと設定からキャラの性格付けからテキストの癖から、どこを切り取ってもついてこられない要素満載なので、プレイする場合は果実事前プレイ必須です。

 
 大枠や構成に関しては特筆する点はありませんね。
 今回の内容に限っては話が前に進むという部分はほとんどないので、あくまで次に繋がる思想的な部分を拾っていくのがメインになります。果実でのヒロインの過去もそりゃ散々でしたが、それに輪をかけてヤバイ主人公の過去をたっぷりご堪能くださいというところです。

 テキスト関連。
 というか、私本編プレイしたときはラスト2人を蒔菜、天音にしたのでそこまで違和感感じなかったんですが、順番交えてやってしまうとメインライターの人とそれ以外でかなりテイストと迫力が違うなあと感じてしまいますね。
 といっても、他の人の技量が劣っているわけでなく、業界水準はしっかりクリアしているとは思うんですが、やはりこの特異な主人公、舞台背景を完璧に飲み込めているわけではないのかなと思わせる部分はチラホラとあります。

 つか、メインライターの人ってこの文章がそのまま思考言語なんじゃない?って思わせるくらい、ナチュラルかつ的確に専門用語や省略用語をポンポン投入してきて、しかもそこに結構深めのニュアンス込めてくるからえぐいんですよね。その上読み手の感情の揺さぶり方がやたらと上手くて、読んでいるとテンションがグラグラ揺れていつの間にかのめりこまされてしまう魔力があります。
 これが努力で身につくものだというならば本当に尊敬するし、才能だとしても崇敬します。まあ条件を選ぶ部分はあるのかもしれませんが、グリザイア関連でのテキスト回しは間違いなく業界トップクラスの面白さと迫力でしょう。

 といって、他がつまらないわけではないので、その辺は割り切って読むべきでしょうね。ただ、どうしてもミリネタの突っ込み方とかに狙った感や唐突感がにじんでしまうこと、これに付随して、多少ながらヒロインにルートごとの性格の違いを感じてしまう部分はありますが、それもご愛嬌ということで。。。

 まずアフター周りのシナリオについて。
 おまけHは特に言及する必要はないですね。現状シナリオの流れの上に置けない部分なのは確かですし、あくまでサービスコンテンツだと割り切って楽しむべきでしょう。
 ショートショートも相変わらずアクの強いヒロインたちが織り成すシュールな笑いが満載で、ああ、そういえばこいつらこんなキャラだったなあと思い出すには最適かと思います。

 アフター個別も、今回は特に無闇に不幸や事件に巻き込まれることは原則としてなく(1ルートだけはっちゃけてやっちゃった感はあるけれど。。。)、あくまで乗り越えた過去の先にある新たな生活に一歩一歩馴染んでいく、その過程を堅実に紡いだものになっています。シリアス成分が薄いのに、余計にテキスト力の差が出てしまっているのも皮肉ではありますが。。。
 一番面白かったのは蒔菜、心に響くのは天音、由美子はまあ普通で、みちるは序盤さえ乗り切れば、幸は本編に続いてコレジャナイ感が・・・ってのが短評ですね。

 そして、続編部と重なる形で提示されるテーマがいくつか。
 果実においては、この特殊な主人公でなければ一緒に乗り越えられないような重い過去の超克が主題になっていましたが、今回見えてくるのは、過去は乗り越えることは出来ても、決して切り離すことは出来ない、という部分です。
 それこそ四知ではないけれど、世界に、時間に、他者に、そして何より自分の心に、人一人が生きてきた足跡というものは拭い去ること能わずに色濃く存在し続け、その過去は時に人を縛る枷になるわけで、アフター編においても、過去を乗り越えたつもりでもふと立ち止まってしまったり、過去に追いつかれそうになって苦悩するヒロインの姿は印象的に触れられていました。

 そして、追いつかれてしまえば破滅が避けられないほどの凄惨な過去もある、と知らしめるのが主人公の過去、という位置付けになるのだと思います。
 果実においてのそれは、ヒロインの心と、その周囲に位置する人間関係に限定される相克で、主人公が手を出すことで何とか出来るものでしたが、主人公のそれは個人の力のみでは立ち向かえない色合いを帯びています。

 そこでクローズアップされるのが、仲間・人脈の重要性になっています。
 自分だけではどうしようもない問題に直面したとき、自分を助けようと本心から思ってくれる相手が何人いるのかでその人生の価値は決まる、というのは極論ではあるけど真実を深く抉っていると感じます。
 誰しも大切な誰か、何かを守りたいという気持ちは本質として持っていて、例えば1人が誰か1人を助けようと考えているのであれば、計算の上では全ての人間にその慈愛の精神は行き渡るはずですが、現実は不公平で不条理なので、そもそもの母数が足りてはいないし、その恩恵からあぶれる人は数多いるわけです。
 
 そういった世の中であるという透徹した認識の上に置かれた一姫の、天才が一人で世界を回そうとすると痛い目を見る、という台詞は、色々な意味でエスプリになっているのではと深読みもしたくなりますが、過去編において、国防というスローガンの上に現実的に提示された目標がわかりやすく設定とリンクしていること、そして仲間の重要性とともに、いざというときの不撓不屈の精神が色付けされたことは、楽園における重要な位置を占めると予想されますね。

 以上、全体として読み物としての面白さは相当の水準にあるものの、果実と違ってここでテーマ性が完結しているわけではないので、点数としてはこのくらいが妥当かなという気はします。まあその分楽園は最初からフルスロットルで面白そうではあるので、大いに期待して待つことにしましょう。

 以下、超ネタバレを交えた妄想話なので白抜きにして置きます。
 まあ現時点での予想がどのように外されるのかを明確にするという意味では恥晒しでもあるしね。。。

 ヒース・オスロという希代のテロリストが敵方という観点からして、絶対的に主人公一人の力では解決できない、それこそ国を大きく揺るがすような事件が用意されているのは間違いないところですね。
 そしてそこに、ヒロイン5人も何らかの形で巻き込まれるということでしょう。なのであるいは、脱落型的に各ヒロインにもう一回EDがある可能性も。まあその場合後ろぐらい終わり方ではあるでしょうが、その辺の匙加減も含めて楽しみです。
 テロ的活動は絶対に出てくるだろうし、文脈からして原子力施設襲撃とかプラ核持込とか、ある意味このご時勢でよくやるよ的な内容が予期されます。まあとはいえ、国内を舞台にしたテロ・国防小説においては、落合信彦さん、高村薫さん、麻生幾さん、福井春敏さんあたりの著名所の名を連ねるまでもなく、この二つはまず外せない王道ですし、今形は違えど現実が虚構に追いついた感があるからこそ、不謹慎ではありますがより感情にストレートに訴える形で書けるかもなあと期待しています。

 そして何より気になるのは一姫の立ち位置。
 “彼女”があまりにもあからさまというか、ミスリード臭がプンプンするってのは現時点の感触では間違いないと思うし、そう感じさせておいてあるいは、ってことも当然視野に入ってきますが、1つだけ信じたいのは、今でも主人公のためならば世界の全てを敵に回してでも、という情熱を抱き続けているというところですね。
 まあそこを覆してこそのグリザイア、という見方もありますけど、予告最後の一姫の台詞を信じたいし、今回ボーカル曲のタイトルからして、世界の終わり⇒死神の創世ですからね、追いつかれれば破滅が避けられない過去ならば、全ての力を駆使してでも過去ごと打ち消してみせる、という意志を感じますし。
 
 で、ヒース・オスロについても謎多数。
 そもそも推定年齢40歳なのに1970年代から跋扈という時点で、影武者とか世襲とか別個のブレーンとかそういうイメージがちらつきますし、その在り方を支える一環としてのリクルートという視点をかざすと、あるいは一姫のバス事故そのものから仕組まれたものだったのではという考え方さえ出来ます。あの状況そのものが一姫に対するテストで、その後主人公を囲ったのは一姫に対する撒き餌、っていうね。
 まあ現状状況証拠としては人形モードの主人公の格好に、並々ならぬ執着を感じたくらいしかないんですが。細かく読めばまだ読み取れる部分もあるかもですけど、そこまで突き詰める気は今のところないです。楽園発売直前になったら果実からリプレイしなおして考えるかも。
 どの道、一姫の立ち位置が薄氷の上にありそうってのは確実性が高いし、その位置で魔術のように状況を操って主人公を救おうと奮闘するところを、最後は立ち直った主人公が助けにいく、みたいな雰囲気が個人的には最高ですね〜。
 

 

キャラ(20/20)

 ヒロインについては単純に、きつい過去を乗り越えての人並みの幸せを怖々と感受する姿により愛着を感じましょう、ってところで話は済んじゃいますね。
 今回キャラにおいてメインとなるのは過去編、主人公の凄絶な過去に少なからず影響を与え、かつ今後の助けとなりそうな存在をクローズアップする部分にあったと思うし、その意味で本当にみんなキャラが濃く、次への期待を否応なく膨らませてくれます。

 とはいえ、それだけでは満点には至らないところで。
 今回の1つ目のポイントとしては、一姫の幼少期の心情がかなり明確に語られたのが挙げられます。まあぶっちゃけとんでもないお姉ちゃんだったりするんですが(笑)、その世界を冷静に透徹する視線と、愛するものに対する激情といって差し支えない情熱の発露が、それでもきちんとバランスで成り立っているところに真骨頂があったなあと。
 そういう一姫だからこそ、どれだけ遠回りを強いられようと、最終的に主人公を救える道を冷酷に選び、実行してきたのではと類推するに、本当に楽園が楽しみなヒロインです。
 ・・・いや、ヒロインだよね?信じていいよね?ここまで散々引っ張っておいてお姉ちゃん攻略できなかったら私泣くよ(笑)。10年越しのはじめてとか超楽しみにしてるからね〜〜〜。

 2つ目はJB可愛えぇぇぇぇ。
 基本属性的には私の趣味に引っかかるところほとんどないのに、なんでこの人こんなに可愛いのさ。。。千鶴とともに可愛い系年上の立ち位置ですけど、関わってきた関係性の重みと深み、思い入れと関係性の構築の仕方をいちいち見せられると、JBの苦労と、でもそれを本当は苦労と思わず、心のどこかで喜んでいたんだろうなあと思うに、彼女にも心休まるような結末が用意されていることを願って止みませんね。


CG(18/20)

 FDとはいえ値段はフルプライスなのですが、質量ともにフルプライス相当以上のものはあり、満足度は高いです。点数が果実と一緒なのは、立ち絵素材の新規投入量に対してのもので、一枚絵に関しては果実より好きですね。

 立ち絵は基本新規キャラの投入のみです。しかも大半が男キャラとか軍人キャラとか、キャッチーな部分は皆無に近い人選なので、そこに過大な期待は避けましょう。ヒロインの新規服飾とか立ち絵とかはほとんどないと思います。
 なので私的に唯一の見所は、一姫の私服くらいかなあ。

 一枚絵は通常のものが94枚、SDが35枚と中々の大ボリューム。
 SDの量がかなり多いのは、立ち絵での不足分を補っているのかなとも思います。実際カットインの出現頻度かなり高かったですしね。絵そのものも果実のときより良くなっている気はしますし文句はありません。
 お気に入りはページ順に、由美子メイド、あーん、お風呂H立ちバック、天音とお風呂、腕組みデート、背面座位、みちるとプリクラ、スノーフレークを抱いて、おやつ、ホテルH愛撫、蒔菜射撃、久しぶりの天音飯、シャンプー、バック、乳首コキ、幸滑り台、初夜前H愛撫、正常位、結婚式、思い出の写真、カプリス愕然とする一姫、フェラ一姫、素股一姫、麻子とお風呂、座位、JB正常位、バック、添い寝、帰ってきたオスロ、天音と一姫愛撫、貝合わせ、保険医JBパイズリ、正常位、清夏縛りバック、あたりですね。


BGM(19/20)

 新規投入量も多く、出来も個人的にはボーカル曲を中心に果実以上だと感じました。
 
 ボーカル曲は5曲。まあシャークは割愛。。。
 OPの『ワールドエンド』は神曲ですね。軽やかに感じさせる出だしの割に、そのまま登りゆくこと能わず、過去に引きずりこまれるようなアップダウンの雰囲気がすごく好きです。特にAメロ後半とBメロ出だしの繋ぎ方とメロディ、そしてサビ全般、細かく言うと、わざわざ地下深く〜の地下の部分だけ音程下げているのが実に憎い作りです。
 アフターEDの『Angel』も名曲ですね〜。最初こそまったりした優しい雰囲気ですが、その優しさは保ちつつもだんだんと強さが表に出てきて、錆のメロディはすごく好きです。
 みちるEDの『Crystal Clear』はまあ普通にいい曲。
 カプリスEDの『創世のタナトス』がまた名曲。焦燥を感じさせるくらいに疾走感があり、追いかけてくる過去にしっかりと根をはって対峙する覚悟を感じさせる、非常に力強い曲ですね。

 BGMは新規が24曲、果実の曲も使われているので全体としてかなりボリューミーに感じます。
 お気に入りは『約束の朝』『ならび歩くふたり』『未来へ届く手紙』『旅路の果て』『ラビットファイア』『パレットソウル』あたりですね。


システム(9/10)

 演出は上々。
 果実のときよりも感情表現系のエフェクトが多彩になり、かつ使用頻度もかなり上がった気がします。蒔菜を筆頭にした個性を色濃く出した細かい動きなんかも当然健在で、それらの組み合わせでより有機的・活動的に感じられました。背景効果も安定した出来ですし、カットイン多用の目先の変化もあって、とにかく飽きさせない魅力がありましたね。
 ムービーは圧巻の出来。
 特にOPは、実に幾何学的かつ陰影の使い方が物凄く上手く、テクニカルでスタイリッシュな雰囲気をこれでもかと前に押し出していてすごく印象に残ります。キャラEDムービーもテーマを盛り込んだ形で個々のイメージに合わせていて、素材は使い回しとはいえ中々。まあその分カットできないけど。。。

 システムも水準かそれ以上ではありますね。
 必要な項目はほぼありますから普通にプレイする分には問題ないですが、ひとつだけスキップの遅さは感じたかも。ただこれは私の環境の問題かもなので一概には言えないんですが、しかしシーン鑑賞も細かく区割りされていないので、いざあのシーンが見たいと思ったときにサラッと見られる、ユーザビリティに優れた設計とは言えない部分はありました。


総合(88/100)

 総プレイ時間18〜9時間。各アフターが2時間前後、カプリスが6時間くらい、おまけHとショートショートなどなどで2時間よりは多いかなってくらいです。FDとしては長いですが、フルプライスと考えるともう一息、でも密度は高く満足度も高いですが、次への飢餓感も否応なく煽られるのが痛し痒しなところです。
 勿論グリザイアのファンであればプレイ必須の内容、面白さではありますが、これは果実以上に次を待ってプレイしたほうがより面白い類ではないかと。そうなると覚悟していてもこの寸止め感は半端ないですからね〜。
 たぶん楽園が出るときに3本パックとかも出ると思うし、果実も今買おうとすると中古高いから、興味はあるけど出遅れたって人はそこまで待った方が賢明かもしれませんね。

 追記:シナリオ点からマイナス1点、2013/01/08。
posted by クローバー at 05:30| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: