2012年09月20日

東京バベル

 今回は一般レートになったけど、ここのラインはいつも楽しませてもらっているので、特に気にせずに購入。


シナリオ(21/30)

 生きる意味が引き出す未来。


 神災―――。
 それは、我らが創造主である神が引き起こした、天地遍く、場所に関係なく、種にも関係ない、それこそ無作為に、無差別に降り注いだ災害でした。天使のほとんどは、狂った天国を追放され、地獄は水没し、そして人間が暮らす数多の平行世界は不条理に破壊されました。
 
 生き残った天使と悪魔は一時的に協力し、かつての煉獄を材料として、過去とも未来とも切り離された場所、東京バベルを生み出します。そこは、現在の自己の存在理由を高らかに謳い上げる場所であり、生きる意味の強さが個としての強さにも大きく影響を与える独自の世界でした。
 故に、本来は永遠種である天使や悪魔も、この世界では等しく死が与えられる、とても苛酷な、ある意味ではここはもう終わってしまった世界なのでした。

 あるとき、そんな東京バベルに託宣が示されます。
 人の子をもって巡礼せしめよ、さすれば救いがもたらされん、と。東京バベルの最上層にあるヤコブの梯子に巡礼者が辿り着き、天国の門が再び開かれれば救われる、それはこの停滞したときに生きる天使と悪魔にとって唯一の希望となり、様々な平行世界からこれぞと思われる人間がこの東京バベルに召喚され、天使と悪魔の助力をもって巡礼に挑んでいきます。

 しかし、居住区から天国への間にある七階層の亜空間、そこを踏破するのは至難の道のりでした。謎の襲撃者、精神汚染を促すコーラスによる、巡礼者の変転、階層の支配者への変貌などにより、未だに第四階層より上は未知の世界となっており、今では巡礼そのものに慎重になってしまって、第二階層より上は支配者の世界と成り果てているのでした。

 主人公はそんな東京バベルに、滅ぶ寸前の世界から、リリスという悪魔と、ラジエルという天使の2人によって召喚されます。
 元の世界で、神となるべく人造的に作り上げられた主人公は、肉体の強度や特殊能力など、戦闘面において通常の人間を遥かに凌駕する能力を持ち、かつ特大の呪いを背負っているが故に精神面でいい意味でも悪い意味でも落ち着いたものがあり、巡礼にはもってこいだと見出されたのです。

 手はじめに、第一階層に侵略してきた支配者であるゲテルを打ち破り、その支配領域にたまたま生きたまま捕えられていた少女、空見を救い出します。ゲテルはその最後に、嫌がらせに空見に、自身の特殊能力であるゲテルの瞳、世の中の真実の全てを見通すとされる瞳を押し付けていき、その有用性を買われて、今後2人は一緒に巡礼をしていくことになります。

 しかし、主人公がここで生きていく為には、1つ大きな問題をクリアする必要がありました。
 それは、自身の存在理由が見出せていない、ということで、それがない限り今後は苦戦必至、同じくそれを見出せない空見とともにそれを探しつつ、修練に努めます。その過程で、悪魔の長であるアスタロトや重鎮のベリアル、天使の長であるカマエル、そして天使の側が用意した最強の巡礼者であるアダムとイヴなどとも知己になり、それぞれの思惑や生きる理由が錯綜する中で、2人は自分の立つべき場所を求めるようになっていきます。

 果たして彼らは、無事巡礼を終えることが出来るのか?
 巡礼の先に、本当に救いは待っているのか?
 神災が引き起こされた真実とは何なのか?

 様々な謎を孕む、現在を生きる為の東京バベル。その全てが明らかになったとき、果たして主人公たちの進むべき道はいずこへ?これは、己の存在意義の全てをかけて生きる被造物への挽歌、そしてその先に見える希望を謳った物語です。


 あらすじはこんなところですね。
 大枠としては、巡礼をこなしていき、支配者を打ち倒したりする経緯において主人公が少しずつ自分の存在理由に開眼していき、そうした中で舞台に秘められた真実と直面し、その真実すらも凌駕して進むべき道を見出す、という感じのないようです。
 登場キャラがかなり多く、それでいてそれぞれが明確な存在理由と、それを突き詰める意思を持っている為、展開的にはかなり錯綜した部分もありますが、いつものようにルートごとにラスボスも仕分け、それでいてスケール感はどんどん重厚になっていき、その中できちんとキャラが生かしきれているのは流石と言えます。

 テキストは相変らず肉厚でともすれば暑苦しいくらいにメッセージ性が強く、またそういうシリアスと日常のコミカルの切り替えが非常に巧みで、とてもバランスが取れていてすごく楽しく読み進められますね。
 今回は特に、存在理由がテーマであることもあり、内在論理の部分により比重を置いたライティングになっている気がします。そして一般レートの分、その精神性においての共感、連帯感などが恋愛要素の多くを占めていて、まあ空見だけは偏在的に主人公に好意を持つ必然性を見出す為にやや普通のラブコメっぽいところもありますけど、その辺も上手く処理しているなあと。
 元々そんなに18禁要素を必要としていないライティングスタイルだったのもあり、その分今回は話の密度が高まっていた印象でした。・・・まあ無論、そういうのがないならないで物足りないという気持ちが全くないわけではないんですが。。。

 ルート構成は最初はラジエルか空見、2人クリアするとリリスルート解放、という流れです。個人的なイメージでは、空見のほうが最終ルートの根幹にも関わってくるし、ラジエルシナリオのネタバレもいくつか散見されたので、ラジエルからプレイするのが一番いいかなと思います。

 シナリオに関しては、綿密に神話をベースにした、各々の登場人物の存在理由がすごく重厚で、そこから引き出される内在論理をしっかりとシナリオに反映していますね。キャラの関係性とかも、ルートが進むごとに意外性を垣間見せたりもして、その中できちんとそれぞれの生き様が格好良く展開されています。
 敢えて言うと、それぞれのラスボスの他のルートでの処遇の適当さは気にはなりますかね。特にラジエルルートのボスは、存在そのものからしてなんかアウトローに位置づけられているし、すごく不当な扱いかも。まあ主人公のお題目の正当化、という側面もあるのかもですけど。

 個別はどれも面白かったけど、順番をつけるならリリス>>ラジエル>空見くらいですかね。
 やはりリリスルートは、ロックかかっているだけあり、前の2つの内容をしっかり踏み台にして、かつスケールをアップさせていて面白かったです。ただ、リリスに限らず全体的にですが、どうしても意志の力さえあればどうにでも出来る、という部分で、力技に思える展開が散見してしまうのは致し方ないところで、だからこそ主人公の存在理由が終盤までロックされているわけですが、それを差し引いても、って感じです。

 また、恋愛模様に関しても決して手は抜いておらず、三者三様の色合いで良かったですね。ラジエルがプラトニック、空見はラブコメ、リリスはその中間のイメージですが、しかしリリスルートなんかは半分サマエルがヒロインだったなと。微妙にリリスルートはロリコニア御用達になっていた気がします(笑)。

 そして、物語を骨太に貫く、死にたくないという強い意思と、しかし生かされているのではなく、自分で生きる道を掴み取るために、戦いの中で死に往くことに関しての満足感という、はっきりと区分された精神性を、天使と悪魔という本来永遠種にも重ね合わせることで、よりその崇高さが際立った内容だったと思いますね。

 全体として、とても面白かったけど、でも突き抜けて感動する、打ち震えるというにはかなり力技が過ぎる部分もあり、まあ結果としていつも通りの良作・力作ラインの点数に落ち着いてしまうのですが、少なくとも一般レートにしたことによるマイナス点は埋め合わせられていたと思うし、よりスタイリッシュな物語に仕上がっていたのではないかと私は思いますね。


キャラ(20/20)

 いつもながら、1人1人のキャラが素晴らしく濃く、かつきちんとシナリオの中で生き生きと自己を打ち出しているのでとても魅力的ですね〜。今回は特に男キャラの格好良さがいつも以上だったなとと思います。

 とりあえずヒロインで1番好きなのは空見かな。
 常に本質を透徹し、そしてそれを臆することなくそのまま見据えられる強さも魅力ですし、刹那的な愛情ゆえの一途さ、先鋭さが、その背景の透明さを打ち消すほど強靭に出てきているところも素敵だったし、それでいてとても明るく楽しく可愛いんだから大したものだと思います。

 ラジエルも茫洋とした雰囲気の中でもすごく仲間想いだったり、内面はすごく乙女チックで面白かったり、なんというか天使っぽい浮世離れ感が魅力的でしたし、リリスも自己を見出すと決意してからの、より明確なリリスとしての在り方の模索は格好がよく、そこまでの飄々とした雰囲気と相俟ってすごく素敵なヒロインでしたね。

 男キャラでは、まず主人公を挙げておくと、どちらかというとその元々の存在理由が歪んでいる分だけ、彼が抱くそれも真っ直ぐではなく、でもだからこそそういう一途な意志が作り上げた世界を打破する力が持ちえた、という文脈において、すごく立ち位置のはっきりした色濃い主人公だったと思います。先天的な鈍感体質とかも、ある意味シナリオ設計にすごく反映してたしね。。。

 んで他の男キャラで好きだったのは、アダムとカマエルが双璧ですかね。
 どちらも天使的素養というか、一途に真っ直ぐに生きる道を見出していて、それを圧倒的な力で捻じ伏せるという男性性的な迫力と信念があり、すごくいいキャラでした。特にアダムはイヴとの絡みでみせる、淡白に見えてその実すごく深い愛情の形がすごく鮮烈で良かったです。

 無論ベリアルやアスタロトも、悪魔らしい妖艶さを孕みつつも、世界の在り方に殉じた形がすごく魅力的でしたし、リヴァイアサンなんかも飄々としていながら全部のルートで卒なく手助けしてくれたりと格好良かったです。
 そしてケルちゃん超可愛い。。。かつてこんな可愛いケルベロスがいただろうか、いや、いない(笑)。


CG(18/20)

 絵師さんが代わっても、やっぱりヒロインの可愛さより男キャラのかっこよさ優先なのは変わらないのねって感じですが、それでも全体的な質は高いと思いますし、量もかなりのものだったので、迷ったけど甘めにこの点数。

 立ち絵に関してはまずまずでしょうか。
 ポーズはヒロイン3人は3種類プラス腕差分多々、他はおよそ2種類が基本ですかね。目立って質がよくもないですが、それぞれにらしさはくっきりでていてその辺はわかりやすくてよかったです。
 お気に入りは空見屈み、正面、ラジエル正面、リリスやや横向き、カマエル正面、アダムやや横向き、サマエル正面、くらいかな。

 服飾は設定上仕方ないとはいえ少なめですね。ヒロインたちは一応3?4?種あったかな・・・。ホステスは覚えてるけどメイドって立ち絵あったっけ?まあ基本いつもの服とジャージだけですね。他キャラはそれこそ着替えなんてないし。。。あ、サマエルだけ水着があったね。
 なんでお気に入りは特にない・・・かも。

 表情差分はそれなりだと思います。そんなに多くはないけれど、印象的な表情はいくつかあって、出来としてもまあまあではないかと。
 お気に入りは空見笑顔、照れ、憂い、半泣き、ラジエルびっくり、照れ、嘆息、リリスからかい、驚き、照れ目逸らし、アダム怒り、冷徹、カマエル叱り、笑顔、ベリアル苦笑い、サマエル憂いあたりですね。


 1枚絵は人物135枚、SD15枚、モンスター20枚の大ボリューム。飛びぬけてすごく好きってのはなかったですが、全体的にすごく迫力があって、戦闘モーションとかでもかなりのバリエーションがあって良かったと思います。

 お気に入りはページ順に、刹那構え、突進、能力発現、後ろ姿、歯を食いしばり、アダム剣陣、突進、対峙、殴り合い、リリス構え、カマエル構え、ベリアル構え、酒盛り、アスタロトの弓、ベリアルの拳、ケルベロスに乗って、開眼、召喚、空見召喚、拒絶、空飛ぶ3人、ラジエル登場、うたた寝、メイド、ルキフグスの覚悟、ラジエルキス、イヴの最期、死に逝くまで、剣戟、空見膝枕、目覚め、キス、ダブルデート、イヴの懺悔、抱擁、再会、死へのまどろみ、サマエル着替え、雪の中踊るリリス、誓い、胸の中で、ロリリス、死の眠り、ウリエルとカマエル、アスタロトの最期、相撃ち、もう離さない、階段、別離、時空を超えて、4人仲良く、ケルベロス、リヴァイアサン、怠惰の黄金あたりですね。


BGM(17/20)

 いつもながら戦闘曲のかっこ良さには痺れますが、全体的には質も量ももう一つだったかも。
 ボーカル曲は4曲。
 OPの『angelsong』は・・・、まあ迫力はあるけど曲としてもう少しはっきりわかりやすさが欲しいなと思うのはいつものことか。。。
 EDの『積乱雲エレジー』は逆に明るいのはいいんだけどちょっと声質が作風とあっていない印象で、曲としてももう一息かなって。
 『For the Lord』の荘厳さがその作品のボーカル群では1番気に入ってますね。

 BGMは26曲と多くはないってところ。ただ、やはり戦闘中心に質は高いです。
 特にお気に入りは『毒には毒を』。変転してからのかっこよさは出色ですね〜。概ね逆転的な場面でかかるのもあり、すごく印象深いです。
 その他お気に入りは、『オールド・ダーク』『人魔咆哮』『ルベウス』『Stairway to―――』『爽朝』『開幕のうた』『心に触れて』『淡い雪のように』『データベース・キリング』あたりですね。


システム(9/10)

 演出はかなり進化して見応えがありましたね。
 日常シーンにおいては、立ち絵の使い方、遠近感、切り取り方などで相当に質感の再を感じさせる仕様になっていて、中々に印象深かったですし、それを更に進化させた形での戦闘演出もかなりの迫力でした。1枚絵も惜しみなく投入していることで場面によるマンネリ感も薄く、きちんと武器ごとのエフェクトも用意されているのでそのあたりの満足度はかなり高いですね。
 無論背景演出などもレベルは高く、ムービーも迫力があってすばらしい出来でしたし、ここは方向性を踏まえれば文句なしと言ってもいいかと思います。

 システムはしかしいつもながら微妙に不便な印象。
 とはいえ、ようやく画面サイズに合わせたフルスクリーン設定とか搭載されたし、適用押さないと反映されないとかそのあたりの面倒さはまあ許容範囲と思うことにしましょう。必要なものは揃ってますし、ジャンプは超高速なのでクリアするのに不便はなかったです。


総合(85/100)

 総プレイ時間22時間くらい。分岐選択まで3時間、ラジエルと空見が全部のエンド込みで6時間ずつ、リリス関連が7時間くらいのイメージですね。ルートすうが少ない分、1つのボリュームはかなりのものですが、しかし全く中だるみすることなく、日常、探索、戦闘、心理への切り替えがすごく的確かつコンパクトでした。

 まあ一般レートにして従来以上に面白いか、と言われるとそこまででもなかったですが、少なくともいつも通りの面白さではあるので、このラインが好きな人になら問題なく楽しめると思います。
 あと、これのウリのひとつはたぶんCVなんでしょうけど、その是非はともかく、基本アニメとかは見ない私としては逆に新鮮味があって楽しめましたね。

 追記:シナリオ点からマイナス1点、2013/01/08。
posted by クローバー at 06:04| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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