2012年12月06日

ウィッチズガーデン

 明らかにメーカーの本気が感じられるスタッフ構成でしたし、ライター的にもまず外すわけにはいかない作品でした。体験版の時点である程度以上の水準であることは確信できる内容でしたし、とにもかくにもあやりが大好きになりすぎ、涼乃や莉々子も、普通の期待値は遥かに超える魅力を持っていたりと、楽しみにする要素があまりに多すぎて発売を心待ちにしていました。


シナリオ(25/30)

 「憧れ」を誘引し、裏切らない世界へ。


 “城壁”をくぐれば迎えるは別世界、そこは“魔女”の住む庭―――。
 風城という、観光業によって隆盛を誇っている街のコンセプトはこれでした。街をぐるりと取り囲む、まるで中世の城塞都市のような佇まい、そして1歩踏み込めば、その印象を裏切らない統一感のある外観が出迎え、そして街にはアバターと呼ばれる、その世界観を体現した技能者が溢れていて、まぎれもなく日本の一角に位置しながら、街ぐるみで完璧な異世界観を演出しています。
 その中でも、街を護る騎士と、そして街の象徴である魔女は二大花形アバターと呼ばれ、彼らが最新鋭の特殊技術を駆使して繰り広げる、魔物が跋扈する夜、ナイトパレードに象徴される、非現実感と臨場感を兼ね備えたイベントは、まさに誰もが子供の頃に一度は憧れた、中世の西洋的な物語をそのまま現実に持ち込んだかのような趣きなのでした。

 主人公はそんな街の学園に越境入学するべくやってきました。
 きっかけは、幼い頃に様々な薫陶を受け、その後の生き方に大きな影響を与えた、幼馴染で姉的な存在である莉々子が同じ学園に通っていること、そして自分の叔母が風城で店を経営しており、下宿先として受け入れてくれたことで、日常からかけ離れた世界である風城において、一体どんなワクワクするような日々が待ち構えているのか、主人公は胸を期待に膨らませ、城壁の前でお辞儀をし、そしてふと城壁の上を見上げます。

 ―――そこにいたのは、“魔女”。

 それこそ物語の中から抜け出してきたかのような、明らかに魔女らしい服装に身を包んだ少女と、遠目ながらも目が合い、その瞬間、主人公は自分がここに受け入れられたような感覚を覚えます。
 とにかく、幸先がいいと心を弾ませながら下宿先の雑貨屋、Oasisに辿り着いた主人公は、はじめて会う叔母の悠子の若さとミステリアスな雰囲気に圧倒され、そして部屋に案内される段になって、実はこの家にはもう1人、主人公と同い年で、同じく風城学園に通うことになっている少女がいるのだと知らされます。
 そのフリと同時に家に戻ってきた少女、その姿は間違いなく、城壁の上で主人公を迎え入れてくれた、近くで見るととても見目麗しく愛らしい少女でした。同じ年の、しかもこんなに可愛い女の子といきなり同居生活とは、とやや気後れする主人公に対し、紹介された少女・あやりは、これから一緒に過ごすことを何の屈託もなくただ純粋に喜んでくれ、その振る舞いに主人公も心温まるものを覚えます。

 それにしても、と、いくつもの驚きを提供してくれた悠子に苦笑を向けると、それに済ました返事が返ってきます。ようこそ、これが風城だよ、と。そう、ここは憧れを体現し、夢と希望が叶う、楽しさを凝縮した街、ならばその流儀に乗っていかなくては損だ、とつくづく主人公は思い知らされるのでした。
 そして、すぐに主人公に心を開いてくれたあやりとともに街を散策したりする中で、更なるこの街の流儀というものを見知っていきます。城壁の上で別の魔女、涼乃と出会い、そしてその流れであやりが見せてくれた魔法の効果に圧倒されたりするものの、それはタネがあり、しかしそれを追及する野暮はしてはいけないこと、その楽しみに徹底した在り方は、更に主人公をこの街に傾倒させていきます。

 街に来た翌日、あやりを連れて、この街の流儀に倣ってサプライズで莉々子に会いに、彼女が住む女子寮に向かった主人公は、そこで2人の少女に出会います。水澄とえくれあという、まるで正反対の個性を持ちながら2人で1つのような不思議さと優しさを感じさせる2人に、莉々子のいる騎士団の詰め所まで送ってもらい、そこで改めて莉々子と再会します。
 幼い頃からその生き方が主人公の目標だった莉々子は、年月を経てもその精神性に全く濁ったところはなく、昔憧れた素敵なお姉さんのままで、そんな莉々子がこの街で、騎士のアバターとして立派に活躍していることを知り、自分もそうなりたい、と心に強く誓います。

 そしてはじまった学園、あやりと一緒のクラスになった主人公は、新入生代表として台上に上がった涼乃が、その挨拶の終わりに披露して見せた魔法を見やり、これからの新生活が、このように常に前を上を見ながら、憧れと楽しみを追いかけていく日々になると、いやそうしていくんだと強く心に刻みます。
 その想いは、クラスにおいて悟朗やこはるといった、それぞれが風城らしさを体現している友人を持ち、そして新入生たち自身の手による新歓パレードでアバターとして精一杯頑張り、工夫と努力の甲斐あって多くの観衆の声援を受けたことでより強固なものとなり、自分も本当のアバターになってみたい、と考えるようになっていきます。
 色々な人の話を聞き、様々な体験をし、その日々は間違いなく風城の流儀にそぐうもので、その想いはやはりというべきか、莉々子と同じ騎士に、大切な何かを護るものになりたいというところに結実していきます。心通う同居人と、素敵な友人たち・先達達に囲まれての日々は、それは密度の濃い充実した日々でした。

 しかし、そんな楽しい日々の中で、アバターとしてのめりこんでいくうちに、主人公はやがてこの街の裏の顔を、そして真実を垣間見ていくようになります。
 果たしてその真実とは?そしてそれがもたらす様々なものに対して、主人公は何が出来るのか?更に、それを知っていくことでヒロインとの関係性も大きく変化していき、それぞれが抱える真実を垣間見たとき、主人公は主人公らしく立ち向かっていきます。
 この憧れを体現し、夢や希望を叶えるとされる街において、本当にそうであるべく、主人公は、ヒロイン達は、それぞれの思惑と決意、正義を胸に、あるべき姿に辿り着けるように奮闘していく、これはそんな、憧れが、人と繋がる想いが、街の在り方を少しずつでも変えていく、そんな変革と成長の物語です。


 あらすじは以上ですね。
 大枠としては、あやりの存在が中心となる大きな街の秘密と、それに付随するこの街の在り方が底流としてあり、それがどこまで表面化するかはルートによって大きく異なりますが、間違いなくその根底の部分がもたらす様々な問題に対して、あるべき、願うべき姿に変えていくため、愛と友情と勇気を持って立ち向かっていく、どういう経緯を辿ろうとそれが基本的なスタンスですね。

 テキストは相変らず実に私好みだし、元々好んでいた特色の部分が、今回は更に色濃く出ているような気がして、文章を追いかけているだけであれこれ感じ入るものがあって非常に楽しかったですね。
 世界観そのものからしてもう徹底的に善性と純粋さが満ち溢れていて、その澄んだキャラ性を存分に生かす形での、些細な機微や関係性の主体をきちんと強調して表現する、理知と理路が奮った文体は本当に快く、そこがしっかりしているからこそ、ちょっと普段使わないような擬音表現や、名詞・形容詞の動詞的表現が、その場において意味ある表現としてすんなり飲み込めるつくりになっています。

 それは日常シーンは言うに及ばす、Hなシーンにおいても、言葉による心の愛撫的な印象が色濃く出ていて、文字通り恋人の愛の語らいというイメージをすごく想起させるものであり、そういう交流の中で築き上げた強固な関係性が、シリアスなシーンでのちょっとした台詞にイメージを上乗せしてくれたりして、そのあたりの作りこみはとても繊細かつ丁寧で素晴らしいなと感じますね。
 強いて苦言を上げるとするなら、やっぱり戦闘シーンになるのかなと。まあ基本的にほとんどがアトラクションというかイベント的というか、文字通り生死を分けて、という雰囲気よりは乗り越えるべき壁、というスタンスでの場面が多い分、必要以上の緊迫感はいらないのかも、ですが、どれも大概理屈で逆算した展開を辿る形なので、意外性とか迫力の点では今一歩なのは確かですね。

 構成はやや特殊で、1周目は莉々子と水澄のみ攻略可能、えくれあは水澄クリア後に、あやりと涼乃は多分誰か1人クリアした後に攻略可能になるのだと思います。そして5人全員クリアすると、あやりトゥルーが開放されるという形式ですね。
 最初にクリアできる2人は、街が抱える秘密の部分までは開示されますが、しかしそれにあやりがどう関わっているかは語られない話で、方向性もそれぞれの立場の上での問題がメインになります。えくれあは単純に水澄シナリオの補完的立ち位置なので、本質的な問題に踏み込むのは魔女の2人、涼乃とあやりのシナリオと言うことになるので、やはり最初に上3人を、最後にこの2人のどちらかを攻略するのがいいでしょう。
 涼乃とあやりのシナリオは、どうしても相互間にある程度のネタバレ的要素は絡んでしまうので、どの道トゥルーがあるわけですし、ここは好きなほうからやればいいんじゃないかなという印象ですね。

 シナリオの全体像としては、そもそもの根幹的世界観である、作中で語られるところの風城らしさを、ヒロインの立ち位置、境遇、そして今の自分に対する誇りを護り、あるいは更に発展、成長させていく形で語られることになります。
 主人公の本質的な性格付けは、かつての莉々子との交流で得た、前向きさ、誠実さ、懐の広さが色濃く出ていて、その上で風城の流儀、何事も楽しく、そしてみんなが楽しく、を体現していこうというものであり、ヒロインの問題に対しても、まずわかりたい、分かち合いたい、その後に立ち向かい、克服していきたい、という流れが担保されています。

 そういう主人公だけに、莉々子というヒロインとの関係性は切っても切れないところなんですが、その作品の上手いところは、2人の幼馴染として、あるいは姉と弟という擬似的な関係性を、その人格面にのみ切り分け、かつ未だにその互いに対する誠実な関係性を維持している点で、姉として弟に、前に進む背中を見せ続けている限り、振り返って向かい合い、今の2人を知らない限りは、その人格的尊重のみが波及するところです。

 更に、この作品の長所として挙げられるのは、世界観設定の巧みさになります。
 木を隠すには森、とは良く言う格言ですが、それをここまで丁寧に、機能的に、社会性と齟齬をきたさないように落とし込んだ設定というのは中々見受けられず、そのためにこの作品では、魔法という一種胡乱な要素を内包しつつも、それが社会的にもたらす軋轢や疎外性などに触れずに話を進められ、その分より一層、キャラの交流と些細な変化の機微をここまで丁寧に組み上げられる余地があるとも言えますね。
 
 とにかく、主人公もヒロインも、それぞれのキャラ設定とそれに基づく心性が明確に定義されていて、世界観設定の優秀さの補佐もありきでその根幹が揺るがないからこその、このどこまでも善性に溢れ、それでいてリアリティもきちんと感じさせる内容に仕上げられていると思います。 
 ただ、この作品においては、あくまで魔法はそこに「在る」ものであり、その不条理性そのものに対する説明や、その部分の解決という方向性は作中にはほぼ出てきません。なので、どうしても魔法に対する胡乱さ、現実性のなさとその分の説得力の欠損という要素はあり、その欠点を極力丁寧に補う為に、キャラの行動と想いの強さの面に説得力の比重を置いている、という見かたもできますね。

 その上で個別をまず軽く、となりますが、個人的なイメージとしては莉々子シナリオは憧れの体現、水澄とえくれあシナリオが願いの体現、という印象です。この2人のシナリオはあやりの問題には触れず、故にその実態を踏まえると後々・・・、という視点では後味がいいとは言えないのですが、逆に言うとそれだけでは足りない、というのを形にしたのかなとも。
 質的には莉々子シナリオは実に丁寧かつ、関係性の一体感が素晴らしい内容でしたし、水澄&えくれあは2人で完成形という印象ではあるものの、互いを大事に想う心栄えと、水澄の溢れんばかりの愛の重さが、過去と結びついて明確に波及している内容で、どちらも水準以上ではあったと思います。

 あやりと涼乃シナリオに関しては、まず根底となる心的要素はきちんと押さえつつ、その上で魔法というものに対するアプローチを、あやりは想いの力で、涼乃は積み上げてきた誇りが紡ぐ法理の力で為し、ある程度ながらあやりの問題に対する答えを出している内容になりますね。
 あやりシナリオに関しては、5月の独り善がりな在り方からの再復による、より純度の高い、そして幅広いのにより深い想いを如何に残せるか、という流れが秀逸で、まあその分確かに5月はやきもき感が強いんですが、6月の関係性と、その結果として自分の在り方に前向きに立ち向かえるようになったあやりの姿が本当に美しいシナリオでした。

 ただ、個人的趣味としてはもう圧倒的に涼乃シナリオが好きでしたね。
 まず、本来一番遠い位置にいた主人公と涼乃を結びつける鍵としてあやりの問題を据えるという点が上手く、その結果としての共感の増幅、互いの心性に対する尊重と憧れ、焦がれが深化していく過程が素晴らしく心をくすぐるものがありました。
 その上で、涼乃と明乃の、妹⇒姉のベクトルでの憧れの視点や、自己の在り方を護りつつあやりの今も変えていきたいという涼乃⇒あやりのベクトルでの願いの視点、その狭間での、主人公の叫びや明乃の号泣、あやりの慟哭などがものすごく効果的に散らばっていて、更には本質的にあやりが求めているものすら代替的にではあっても用意されているところで、実にバランスのいいシナリオだと思います。
 しかもその解決が、涼乃が背負う家が技術として積み上げてきた、いわば誇りの源泉に直結する、魔法ではあるけれどきちんと法理に基づいた部分でもたらされているところが、涼乃という個性を体現したような印象で、その涼乃らしさはテキスト面でも存分に発揮されていて、とにかく私好みの部分が多すぎましたね。正直このシナリオの存在でこの点数をつけている、といっていいです。

 トゥルーに関しては、あやりがあくまでありのままのあやりでいられる、というのことが絶対的な意味を持つシナリオになっています。ここまでのシナリオが、街の在り方そのものは大きく変えずに、その中で出来る限りより良くなる方向を模索していたとするならば、このシナリオはあやりの存在に合わせて街そのものの在り方を変えてしまおう、という位置付けになりますね。すなわち、魔女の箱庭から、本当の意味での魔女の庭へ、という視点です。

 と、ここからは完璧にネタバレこみになるので白抜きしますね。
 まず前提的に語る点としては、ここまでの風城らしさ、というのは、長年ウィッチの犠牲というか献身というか、ともあれウィッチの側にもそうされなくてはならない理由はあるとはいえ、結果的にウィッチがその輪の外側に置かれた存在であることは確かなわけです。
 そしてウィッチの魔力とは、望郷の念、翻って言えばよすが、寄る辺となるものを切実に渇望するが故に発するものであり、更にウィッチの資質とは転生するもの、という設定を踏まえれば、あやりというキャラが絶大な魔力を抱えて生まれた、ということは、風城150年の歴史の影に隠れたその渇望の発露、と取れるのかなと思っています。

 つまり、憧れを誘引し、夢と希望を叶える街という建前の裏側で、そこには例外があったわけです。それを是正し、ウィッチの存在すら内包する在り方へ変えることが必要となってくるわけで、あやりと言う存在を語るとき、29日サイクルで記憶が消えてしまう以上、主人公とあやりが出会いから紡いできた全てを護る為には、あの主人公がなにも知らない時点で行動しなくてはならず、その結果として世界の変質をもたらしてしまうわけですね。
 そして、その変質を前提とすることがトゥルーシナリオにおける筋道なのですが、けれどやり方次第では他の道もありえた、という含みは残されています。それは一にえくれあの存在であり、二にウィッチを断つ魔剣の存在であり、魔法的都合の良さを駆使すれば、あやりのウィッチとしての部分だけを切り離し、えくれあの魔力炉によって今までどおりに街を動かしていく、という方向性ですね。

 無論そうならなかったのは、前提であるあやりの全てを受け入れる、護るという点があるからですが、しかしその結果としてこのシナリオは、いくつかひずみを残してしまっている印象があります。
 それは突き詰めれば、風城の異世界性とイベント好き、だけでは許容しきれない、現実的な問題に向き合っていないと感じる部分にあります。最初の変質のときに発生したであろう人的被害、恐怖、それがあるが故の、本来あってしかるべき避難生活に対する不満や鬱屈など、ああなってしまったにも拘らず負の要素がほとんど表に出てこない点は、リアリティという意味で物足りないです。
 
 おそらく、それをつまびらかに目の当たりにしてしまった時に、主人公とあやりがあそこまで真っ直ぐに前を向いていられるか、と考えるとそれは・・・なので、それを貫く為の措置であり、そして風城らしさの代弁者として内側と外側から、こはるとマーシャというキャラを置くことで緩和に努めているものの、それでもなあ、とは思ってしまいます。
 更に、最後の、大人の壁のシーン、あれはこのシナリオに限らず色々な場面で散見しましたけれど、理想が現実を超えていく、その観念そのものはいいとしても、他ではあくまで上乗せ、だったのに対し、ここでは完全に換骨奪胎になるため、それを安易に許してしまうのは違和感なんですよね。
 しかも、これまでの在り方が、外の世界に対する折り合い、社会性の中での調和という視点ではほぼ完璧に仕上がっていたのに、これだとどうしたってウィッチの存在が拡散していく可能性は高くて、風城という異世界の中ではあやりの在り方は護られても、長期的に見て外圧的な要素でのその在り方の揺らぎをもたらさないのかと感じてしまいます。

 あと、普通に魔物に殴られれば大怪我、下手すると死に至るような状況を、それが風城だと受け入れるのはさすがに軽挙じゃない?とは思ってしまうんですよね。そういった諸々の社会的責任に対して、それは当然みんなが無頓着なのではなく、少なくとも関係者は覚悟の上で、なのかもしれないですけど、少なくとも街を運営する、という視点では破綻してないかと思ってしまうんですよ。要は、絶対ここには住みたくないなって(笑)。

 結局のところ、魔法が及ぼす不条理は現実的対処では解決しきれないのは自明で、それを含めて受け入れるかどうか、という話なのは確かですが、どうしてもここまでいくと野暮なことを口にせざるを得ないんじゃないかなと感じてしまった分だけ、私のトゥルーシナリオに対する評価は目減りしている感じですね。



 以上、総合的に見て、実にボリュームがあり、それでも全く中だるみすることなく、細かな心の動きや機微を丁寧に追いかけることで、人が紡ぎあげる物語、という印象は実に強く、それがおおよその場面では魔法という本質的な不条理を覆い隠すに足る説得力を有していたとは思うのですが、最後の最後、トゥルーシナリオの結末の部分でそれが飲み込めなかった分、この点数が限界、という評価に落ち着きました。
 元々合う合わないが出やすいライターさんではあると思っていますが、今回は私が一番好きな部分はより強調されていてそこはすごく嬉しく、けれどやはり世界観に魔法という、現実にはない観念を組み込んだ弊害は、無論この設定だから書けた、という、特にあやりのキャラ性に結実するプラス要素を踏まえても、全く気にならない、という水準には出来なかったのかなと言う印象ですね。それでも、間違いなく力作ですし名作ではあったと思います。
 

キャラ(20/20)

 もうこの項目に関しては満点じゃ足りないという感じですね。とにかくそれぞれのキャラが善性に満ち溢れた明確な個性と前に進む強い意思を持っていて、その個性・変化がシナリオの展開にも密接に関わってくるので、圧倒的なキャラの存在感と魅力でした。ヒロインも当然ながら、脇を固めるキャラ、特に大人の存在感がとても大きく、きちんとそれぞれがあるべき自分の中で最高の表現をしていて素晴らしかったです。

 さてそしてですよ、この期に及んでもあやりと涼乃、どっちが一番好きか決められない(笑)。いやもう本当に2人とも大好きすぎて、どちらも殿堂入りヒロインなことだけは確定的なんですけどね。。。1作品から2人ってのはかにしの以来ですし、本当に滅多にあることではないんですが。ライターさん括りで言うとこれで3、4人目だし、本当に私の好みにドンピシャなヒロインを書いてくれる人だなあと思います。

 まあ一応、圧倒的なメインヒロイン力に敬意を表してあやりから触れていきましょう。
 この子はその設定ゆえに、精神的なバランスというか、色々な場面での距離感の取り方がものすごく上手くない子ですけど、でも本質的な性格がとにかく善良で人を疑うことを知らない無垢性と純粋さに満ちていて、それ故に様々な機微を乗り越えた、本質的な在り方を透察するときがあって、そのあたりが本当に魅力的です。
 そして、常に自分の居場所を渇望している心性を、懐の広い主人公の存在によって受け入れられて、それを基点に心のありようを決定していくあたりは、悲しくもあり、でもそれこそがあやりらしさでもあり、いじらしさと愛らしさ、護ってあげたいという想いが一入強くなる部分です。
 性格的には明るく無邪気で人懐っこくて恥ずかしがり屋で、子供っぽい部分が目立つとはいえ女の子としての魅力も存分に兼ね備えており、一緒にいるだけで陽だまりにいるような、心を明るく灯してくれる存在で、本当に素晴らしく可愛いですね。こういう子に、たった一つのと見込まれて、一心に心を寄せられるというのは本当に男冥利に尽きるのだろうなと感じさせる、メインヒロインとして燦然と存在感を放っているキャラだったと思います。

 涼乃はあやりとはある意味真逆というか、基本的に自分の枠の中からはみ出ないように生きてきた女の子ですが、その内側での繰り返される克己と努力と研鑽は、誇りに裏打ちされた研ぎ澄まされたような輝きがあり、それが少しずつ外側に、共感という要素を介して波及していく中で、その本質を一切揺らがせないままに人としての、女の子としての成長を鮮やかに見せてくれるヒロインですね。 理知的で清楚で冷静でありながら、心根はすごく優しさと慈愛に満ちていて、けれどそれを真っ直ぐに表現する術を知らずに隠れていた魅力が引き出されていく流れは本当に素敵で、またそれを知って女の子らしい感情が垣間見えるのが、レアリティ込みで凄まじい破壊力でした。

 それまでの生き方から、覚悟を決めればとことんまで、という融通の利かなさも、その理想に向けて努力を、研鑽を欠かさない、という明確な意志の元に美点に転化され、本当にその元々の美しさ、清楚さを、男女の関係になってさえも全く失わないところが本当に大好きですね。

 そしてこの2人、主人公との関係もともかく、2人で絡んでいるときの雰囲気が良過ぎます。絶妙なコンビというべきか、互いを補いつつそれぞれが放つ雰囲気をより美しいものへ昇華するかのような印象があり、主人公を含めて3人の関係になったときにそれが破綻しないところにあやりの特殊性がきちんと生きていたりもして、本当に素晴らしいバランスで紡ぎあげられているなあと、ただ見ているだけで心から嬉しくなってしまうような引力がありましたね。

 と、この2人が本当に好きすぎるのはありますが、莉々子にしても大好きなのは確かなんですよ。
 とにかく凛として、真っ直ぐで、誠実で、大らかで優しさに満ちていて、騎士という言葉のイメージを体現するかのような個性に加えて、姉という立ち位置が責任感的に引き出す世話焼きな部分が付加され、本当に体は小さいのに心は大きく、頼れる姉、という印象がここまでしっくり嵌っているヒロインも珍しいのではないかと思うくらい。
 そして彼女の場合、他ヒロインのルートだとあくまで主人公の模範としてのスタンスを崩さず、けれど自分のルートでは、それを男女関係と自然に同一化させて、ただ可愛い、ただ凛々しい、かっこいい、でなく、可愛くかっこいい、かっこよく可愛い、という二面性を同時に発揮しているのが最高に魅力的だったと思います。

 水澄の比類ない優しさと愛情の深さもとても魅力的だったし、えくれあの奔放で不器用な好意の示し方なんかもかなりツボだったし、本当にヒロイン陣は全く隙のない、バラエティがありながらも本質的には抱えている人間としての魅力は揺るがない、素晴らしい作りこみだったと思います。

 そしてサブキャラもまたいいんだよなあこれが。
 そのなかでも一番好きなのは団長ですね〜。豪放磊落、という言葉がそっくりそのまま当てはまる快活で力強い個性、それでいながらきちんと裏側では大人の政治的な駆け引きも多彩にこなし、けれど若者を手助けしていく中でそういう素振りは見せないなんて心憎すぎるし、頼れる大人、理想的な父親像としてこれ以上ないほどの魅力があったなあと思います。惜しむらくはその魅力が莉々子シナリオ以外では存分に発揮されきらなかったくらいですね。

 んでマーシャの可愛さは異常です。。。
 子供らしい子供、という作中の台詞を引くまでもなく、朗らかに真っ直ぐに、善良に、それでいて子供らしく素直に想いを表に出せて、こういう子供を育む世界観、というイメージを強く打ち出すのにとてもインパクトのあったキャラでした。とにかく何かしてもらって嬉しそうに身を捩らせる素振りの可愛さは凄まじかったですね〜。

 当然悟朗の存在感も、こはるのちょっとあからさまなくらいの、理屈ではなく楽しみに心寄せる在り方も好きですし、明乃の屈折していない対抗心と誇りも素敵でしたし、腹黒く見える大人たちの丁々発止のやり取りと、けれど最終的にはきちんと未来を見据えている大人としての責任感も、どれもこの作品を支える大きな力になっていて、本当に素敵だったなあと思いますね。 


CG(19/20)

 この洋風な世界観には実に親和性の高い絵柄というか、そもそもそれを見越して作っているのはあるだろうから当然かもだけど、全体的な雰囲気の統一感、デザインのセンスなども含め、とても質が高く魅力的な仕上がりになっていると思いますね。

 立ち絵に関しては、まずどうしてもE−moteに触れないわけにはいきませんね。
 そもそもこれは、コマ送り的処理の全カットを絵として描いているのか、それとも部分的に描いたのを画面上で処理しているのか、そのあたりの方法論は全くの門外漢なのでわからないのですが、従来のポーズ、という観点から、仕草、という表現に幅を広げている部分は素直に賞賛に値しますし、それを生かすに足るだけの元素材は用意されている印象なので、CG配点においてもそれは付加しています。
 ただ、惜しむらくはエモート処理分の立ち絵差分がキャラモードで閲覧できないので、そのあたりは印象で触れるしか出来ないです。

 で、それも踏まえて水準は軽く超えている感じですね。
 ポーズは基本ヒロインで2種類、サブで1種類ですが、腕差分はかなり大量にあり、それにエモート要素を加えると、かなり多彩な動きの表現を可能にしている感じです。それぞれらしさも出ているしいい感じですね。
 お気に入りはあやりやや横の指差し、前あわせ、頬に指、正面両手頬、涼乃正面髪押さえ、前あわせ、腰当、横向き頬当て、髪触れ、莉々子やや横頭抱え、正面腕上、水澄やや横指あわせ、えくれあ両手上げ、マーシャ胸前、団長剣支えあたりですかね。

 服飾はあやりだけ4種類、他ヒロインが3種類、その他は多くて2種類ですかね。ただ小物差分はかなり多く、またあやりに関しては髪、瞳差分もきちんと用意されているので、そのあたりは必要充分な印象だし、デザインも好みです。
 お気に入りはあやり制服、私服、寝巻き、魔女服、涼乃制服、私服、魔女服、莉々子私服、騎士服、水澄私服、魔女服、えくれあ魔女服、こはる私服、マーシャ私服あたりですね。

 表情差分は、キャラ項目で見られるだけでも水準以上ではありますし、それぞれ個性を生かしつつ遊びもふんだんに備えていて十全ではありますが、更にエモートでの仕草的表現の流れで見られる表情も含まれるので、本当に生き生きとした印象がありますね。
 なので、仕草も込みで触れていくと、特にお気に入りはあやりの小首傾げと涼乃の俯きから見上げて上目遣い、そして屈託のないにっこり笑顔ですかね。この3つは2人の個性が一番色濃く出ているような気がするし、とにかく見た目の印象が凄まじく可愛く可憐過ぎましてもうね・・・。
 その他お気に入りは、あやり笑顔、破顔、不満気、驚き、ほにゃっ、ギャグ驚き、悲しみ、照れ、照れしんみり、にっこり、自慢げ、膨れ、涼乃澄まし、きょとん、目逸らし、思案、不安、照れ目逸らし、照れ焦り、しとやか、微笑、困惑、驚き、照れ驚き、莉々子笑顔、任せろ、きょとん、困り笑顔、照れ笑顔、真剣、怒り、照れ焦り、困り笑顔、げんなり、水澄にっこり、澄まし、照れ笑顔、困惑、困り思案、照れ目逸らし、えくれあジト目、からかい、照れ焦り、照れ笑、不満気、こはるにっこり、わくわく、マーシャ笑顔、気遣い、上目、照れ、明乃自慢げ、驚き、真剣、団長にかっ、あたりですかね。


 1枚絵は通常のが全部で90枚、SDが21枚かな?いくつか重複があったので多分合ってるとは思うんですが、まあここは値段含みで考えれば水準クラスかなと。出来もキャラによって微妙に安定感が・・・と思う部分はありますが、背景的な部分も含めて、構図の取り方や雰囲気の出し方は素晴らしく、見栄えのする出来だったと思います。

 特にお気に入りは4枚ですね。
 1枚目はお風呂でばったり、あやりもすごくすごく可愛いけれど、実はマーシャが物凄く可愛いんですこれ。。。
 2枚目は涼乃の髪梳かし。とにかくこの1枚の雰囲気、空気感の柔らかさ、暖かさが本当に好きですね。
 3枚目は涼乃魔女服H背面屈曲位、この服とライン、そして露出具合、涼乃の表情と全てが好みでした。
 4枚目は涼乃制服Hパイズリ。この肩から鎖骨、胸のラインの滑らかさ、柔らかさが物凄くツボでしたね。

 その他お気に入りはページ順に、あやり出会い、パレード、うたた寝、対峙、抽出、相撮り、初H愛撫、バック、フォークダンス、制服H騎乗位、再会、もう一つの再会、抱きとめ、誕生日のキス、望んでいた語らいの風景、初H愛撫、正常位、添い寝、店H背面座位、部屋H69、バック、2人で勝ち取る未来、涼乃出会い、馬車から、射る、初H胸愛撫、対面座位、決別の涙、ラブラブジュース、ラブホHフェラ、正常位、魔女服H愛撫、制服Hバック、4人で歩く未来、莉々子カフェで、怪我、キス、初H胸愛撫、背面座位、お弁当、魔剣、誓いのキス、水澄出会い、抱き寄せ、初H正常位、腕組みデート、ラブホH69、バック、研究中、かりそめの自由、えくれあ添い寝、初H騎乗位、正常位、旅、SDあやり覗き、化粧、号外、あやり怯えあたりですね。


BGM(19/20)

 明るく開放的な雰囲気に、神秘性もきちんと兼ね備え、迫力もある楽曲で、全体的に素晴らしく好みでしたね。
 ボーカル曲は6曲。
 OPの『Witch’s Garden』は名曲ですね〜。まあこのラインのお約束とも言うべきツインボーカルの、どこまでも広がっていくような雰囲気の中で迫力と疾走感を醸しだしていて、まあ意外性はなかったんですがやっぱりかなり好きになりました。特にサビの部分の前半の折り返しと、Aメロの颯爽とした印象がすごく気に入ってます。あと歌詞もベタだけど好き。
 EDはキャラごとに、なのでお気に入り以外は割愛しますね。その中で特に好きなのは涼乃EDの『Milky ice』。この張り詰めた中に優しさと愛しさを溶け出すように配置したメロディライン、編曲が実に素敵です。特にBメロの入りの部分、サビの出だしと要所ですごく締まりのある曲だなって思います。
 グランドEDの『Prologue』は大団円の雰囲気に相応しい、陽だまりのような暖かさと柔らかさを内包した優しい曲ですが、曲としてのインパクトはもう1歩足りないかなと思いますね。

 BGMは全部で30曲と量は水準ですが、質は全体的に高い上にいくつかクリティカルにヒットしたのでかなり高評価です。
 特にお気に入りは3曲。
 『哀情のゆりかご』は、痛みから目を逸らして立ち止まっても、決して逃げられない悲しみにぴったりイメージが合う、悲しくも美しい、キャラ性を引き立てる曲だなあと。ピアノの透明感が単色になったときにそれを一層引き立てますね。
 『勇壮なる出陣』はとにかく最初の喇叭のあとのメロディラインが好みすぎます。颯爽としていて力強く、適度の緊迫感とワクワク感が程よくマッチしていて、風城という舞台での戦い、という視点ではこれ以上ないほどしっくり来る曲ですね。
 『二人、身を委ねて』はHシーンの曲ですけど、二人の世界の中で溶け合うような雰囲気のメロディが、テキストの雰囲気と物凄くマッチしていて、適度にある曲のアクセントが、そのまま心の愛撫のイメージとリンクしてすごく好きですね。

 その他お気に入りは、『涼やかな調べ』『風城DAYS』『微睡みの風景』『移ろいゆく輝き』『テクノロジー』『秘匿された思い』『華ひらく通り道』『風を追い越して』『騎士道に挑む心』『緊迫せし対峙』『明日を望む細道』『湧き出ずる思い』あたりですね。


システム(10/10)

 演出は素晴らしい出来でしたね。
 まあここでも当然主役になるのはE−moteですが、とにかく立ち入りのみならず、普通の動きの仕草、連動性がやはり普通の立ち絵のアクションとは一線を画していて、ぶっちゃけこれに慣れてしまうと本当に他の作品が動きのないように思えてしまいそうで恐いですね。
 基本的に表情や腕との連動もばっちりで、仕草もキャラ独自の色が出ていて、おおよそ文句はないんですが、まだ良く出来る、という視点で見ると、やや横を向いたときの平面的な印象と、あとボイスアクションの連動性の薄さが是正されれば、より臨場感、一体感が増すのではないかと思います。

 そして、その立ち絵演出に負けないくらいには背景演出、特に魔法に関わる演出は美麗に、多彩に、効果的に配置されていて、色々な相乗効果もあってすごく気印象が強く残る感じでしたね。このあたりは見事な出来だったなあと思います。
 ムービーも華やかかつスピード感があって、これだけでヒロインのらしさが伝わってくるようなイメージがあって、出来として突出はしてないだろうけど、私の好みではありましたね。

 システムも一応は問題なしではあります。いつものどみるシステムですから確かに不備はないんですが、ただ今回E−moteの導入によって、1クリックでの情報量がかなり増大したことで、折角の演出を見逃してしまう可能性が高くなっていて、その視点でだとクイックジャンプ、欲しかったなと思ってしまいます。
 あと上でも書いたけど、鑑賞のキャラモードでエモートモーションが見られないのは片手落ちに感じますね。


総合(93/100)

 総プレイ時間34時間くらい。共通6時間、莉々子5,5時間、水澄&えくれあで4,5時間、涼乃6,5時間、あやり5,5時間、あやりトゥルー6時間くらいでしょうか。まあ全ボイスをきちんと聞いた、という点を踏まえても、ボリュームとしては充分以上ですし、といって中身が薄いこともなく、本当に総合力の高い作品だと思います。
 まあどうしても私の場合このライターさんに対する好みの度合いが振り切れている部分があるので、それなりに苦言は呈しつつもこの点数をつけてしまうんですけど、しかしこういうコツコツ心情を積み上げていく、ダイナミズムとは対極に近い構造のライティングは、特に今回はボリューミーなこともあり、余計に受けない人には受けないんじゃ、とも思ってしまいますね。本当に私にとっては至福の日々でしたが。

 個人的には、やっとどみるが名作作ってくれたなあと感慨深いですね。一作ごとの浮き沈みが激しいムラッ気も特色と思いつつ、なんだかんだではぴねす以来全部買ってるし今後もご贔屓にはすると思うので、これほどとは言わずとも今後も楽しい作品を期待したいところです。

 追記:シナリオ点からマイナス1点、2013/01/08。
posted by クローバー at 06:39| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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