2013年01月31日

大図書館の羊飼い

 これを買わないなんてエロゲーマーじゃないよね?くらいの吸引力のあるタイトルですよね〜。体験版も圧倒的な全体質と面白さを提供してくれましたし、キャラの可愛さと、そしてそのキャラをより可愛く魅力的に見せてくれることでは定評もありますし、私としてもやはりとても期待して購入させていただきました。


シナリオ(21/30)

 ただ寄り添い、歩くことの大切さ。


 主人公は幼い頃の家庭環境によってやや人間不信気味でした。その、他人がわからないという不安を紛らす為に読書に傾倒していた主人公は、ある日、他人のことが何でもわかる魔法の図書館の存在をある男に示唆され、そのチケット代わりに栞を貰います。そしてその男が語っていった、魔法の図書館に至るもう一つの条件、それが、誰もに優しく接すること、でした。

 その出会いがあって以来、主人公の身に不思議な力が顕在化します。それは、他者と目を合わせたとき、自分の意志では制御できないものの、ごくたまに未来を垣間見えるようになったことです。幼い頃はその力を無邪気に行使して人助けをすれば周りからも受け入れてもらえると考えましたが、かえって気味悪がられたり、悪い未来を予言してしまって嫌忌されたりし、そんな経験が、やがてその力そのものを主人公自身が忌避するようにさせてしまっていました。

 かくして、成長しても読み物の世界に篭りがちで、世界と半ば断絶して過ごしていた主人公は、しかしある日、一通のメールが予感をもたらした運命的な出会いをします。
 5万人の、全国から選りすぐられた何がしかの才能の目を抱えた優秀な生徒だけを集めたマンモス校、汐見学園。通学時は通勤ラッシュに見紛う混雑が発生する人間の坩堝において、ふと目に付いた、「学園を楽しくしませんか?」という抽象的な謳い文句を掲げながらビラを配る少女。
 その子と目が合った瞬間、彼女が数瞬後に事故に遭う未来が見えてしまい、考えるより先に体が反応した主人公は、ややフライング気味にその女の子をその場から引き剥がし、その過程で起きたハプニングは校内のウェブニュースに流され、痴漢のレッテルを張られそうになります。

 しかし放課後、その少女、つぐみと、その親友である玉藻と再会し、そして周囲の誤解を、結果として半ば強引に感情論で捻じ伏せてくれたつぐみの不思議な人間性に、主人公は今まで見たこともないタイプだと興味を惹かれます。
 故に、これまでほぼ主人公個人の根城だった大図書館内の図書部の部室に案内し、そしてそこでの説明で主人公の行動の意味をあっさりと信じてくれたつぐみは、自分がこれからはじめようとしている、学園を楽しくする活動に参加してくれないかと打診してきます。
 
 元々学業が優秀の為、再三生徒会長の真帆から生徒会に誘われていつつ、読書以外のことに拘束されたくないからとやんわり断り続けてきた主人公は、噂を聞きつけて押しかけてきた真帆との話の流れで、生徒会とつぐみ、どちらの活動に協力するかの選択を迫られ、自身の興味に従ってつぐみの活動に、まずはお試しで手を貸すことになり、主人公の悪友を自認する一景も協力を申し出ます。
 そのタイミングでその場にいる4人の携帯がいっせいに鳴り響き、そこには全く同じ文面で、図書部の門出を祝うメッセージが寄せられていました。その差出人は、羊飼い。
 
 この学園において、羊飼いというのはやたら信憑性の高い、飛び切り有名な都市伝説のようなものでした。必死に努力し頑張っている人に対して、それでもその人がふと道を違えそうになったときに、そっと手を差し伸べて正しい道に導いてくれる、けれどもその存在そのものは誰も確認していないという、実に摩訶不思議な存在なのです。
 そんな羊飼いを名乗るメールに一同は不信と興味を同等に抱き、そしてその謎を解明してみようという更なる動機を得て、新生図書部はスタートします。

 かくして図書とはまるで関係のない活動に乗り出した4人、まずは地道に知名度を稼ごうとはじめた美化活動や、その流れでの人助けの活動の中で、学食のウェイトレスとして知己だった佳奈やその上司の紗弓実、声優のホープである美結、そして彼女の依頼で近づくことになった、世界的に有名な声楽のホープ、千莉などとも知り合い、しかもその中で、佳奈と千莉は同じように羊飼いから最近メールを貰った経験があり、その共有感が1つのきっかけとなって、2人も図書部に入部してきます。
 人数が増えて騒がしくなった図書部を窘めにくる図書委員の凪も、実は主人公のお隣さんだったという関係から関わりが多くなり、マンパワーを得て活動の幅が広がった図書部は、少しずつ知名度を獲得し、学園を楽しくする、という軸はぶれないままに、日々を奔走するようになります。

 その活動の日々の中で、少しずつ変化していく人間関係と心の機微。
 主人公の、誰にでも優しく、でも誰にも一定以上踏み込まない生き方は変わっていくのか?
 ヒロイン達が、この活動を通して得るものにより、心に期している想いは変わっていくのか?
 羊飼いとは如何なる存在なのか?そしてその目的は何なのか?その在り方は正しいのか?

 これは、絆の大切さ、寄り添うことの大切さ、そして何より、人と対等に向き合うことの大切さを綴った、優しく前向きな情愛の物語です。


 あらすじはこんな感じだと思います。
 大枠としては実にシンプルに、図書部として学園を楽しくする活動、というものを、その時々の自分たちに出来る限りの精一杯で向き合っていく中で、主人公の、そしてヒロイン達の過去に潜んだ、大小様々ながらそれぞれにとっては大きな痛みを伴う棘、それを仲間の絆と存在によって解きほぐし、過去の自分を清算して前向きな未来に走り出す、その過程を綴った物語、となります。

 テキストはかなり考え抜かれた感があり、それだけに全体的に質が高く、また統一感のある出来になっていると思います。
 この作品のトップクラスのウリであるキャラ同士の掛け合いの面白さは、そのテキストの洗練度合いがもたらしている部分が大ですね。
 感情表現や状況描写に特にエッジが効いているというか、あまり日常的には汎用されない、けれどもきちんと意味の通る新鮮な慣用表現を多用しており、そのワンセンテンスでスパッと読み手に伝えたいことを飲み込ませることで、掛け合いのテンポの良さと、内容の充実を上手く両立させているなと。そのあたりは演出による情感のアピールの上手さともリンクして、って部分も大きいですがね。

 あと個人的に感心したところは、キャラの会話の内容の選択に全く無理がないことですね。例えば、図書部という母体から、本の内容を引用ネタとして多用していますが、それも元々の立ち位置、設定を反映したもので、しかも主人公と佳奈は多用するけれど他はそうではないと、きちんと意識して区分けがされています。
 まあ要するに、このキャラは絶対こんなこと言わないだろ、的な違和感を感じさせる部分が全くと言っていいほどなく、逆にこの場面ならこのキャラが発言をするのでは、というイメージをほとんど裏切らない、そんな風に役割分担がくっきりしていて、それが1つの組織としてすごく調和している、そのバランス感は素晴らしいと思いました。

 ルート構成は中々斬新かつ独特ですね。
 最初に攻略できるのは図書部ヒロイン4人だけで、それぞれの個別からサブヒロイン派生ルートもありますが、ともかく、共通ルートを1周して1人クリアすると、ロックされていた選択肢が選べるようになります。
 ただその選択肢が直接凪なのかというとそうではなく、むしろそれは今までの主人公のスタンス、誰にも深入りしない選択肢であり、それを選ぶことで主人公自身が羊飼いという存在と近しくなっていく流れに入ります。

 つまり、最初の共通で誰かのルートに入らないと、羊飼い関連の設定が付与された上で、改めて第二共通ルートが展開される、というイメージですね。そしてその流れの中で、今度は5人のヒロインの誰かに進むという形式であり、図書部ヒロイン4人に関してはエンドが2つずつある、ということになります。
 こうして書き出すと、最初の共通が羊飼いの力の影響を受けないルート、後半の共通が受けるルート、と見えてしまいますが、実際のところはそうではなく、そしてそれがシナリオ面での一つの大きなテーマとも繋がってきます。

 次いでシナリオですが、この作品に関しては、個別の細々した展開をあれこれ忖度することにはあまり意味がないと私としては思います。というのも、全体構造としてどちらかと言えば共通ルートでの話のほうがメインであり、個別ルートに関しては従の位置付けではないかと感じるからですね。

 とりあえず最初に提示しておきたいのは、この作品を通してのテーマですね。一言でまとめるならば、私はそれを、ただ寄り添うことの大切さ、と捉えました。
 もう少し細かく分析していくと、人間は誰しも、寄りよく生きたいという願望と熱情を持っており、それは言葉を変えれば、今より素敵な自分になりたい、という意志を持っている、ということになります。つまり、自己を改善する力は、外側から与えられるのではなく、あくまで自分の中に眠っている、という認識ですね。

 しかし人間はまた、自分の価値観から簡単に脱却できない生き物でもあり、自分を変えたいという意欲はあっても、それを為す為の気付き、取っ掛かりを中々手に出来ない、その、自分ではどうにも出来ない部分を、他の誰かと繋がり、関係を深めることで獲得していくことが必要だとなります。
 その文脈で重要なのは、あくまで必要なのは気付きを与えることであり、それさえあれば、悩みの質、重さは関係なく、人には自己修復能力があり、その気付きを与えた方は、その決意を尊重し、ただ証人的に、側に寄り添い続けていればいいのだねという考え方ですね。

 それは羊飼い、という言葉の内在性にも繋がる部分で、方向性だけ与えて、後は側で見守る、その在り方をトレースした形になります。
 ただし、この作品における羊飼いという存在は、そうやって寄り添う存在でありながら、寄り添っていることを本人に感じさせないという特殊性を帯びており、その在り方が是か非か、というのが、もう一段奥に潜んだテーマになっています。
 その視座で浮かんでくるのが対等性、という部分で、互いに寄り添って歩んでいく、その認識が、特に利害関係の影響がない、ただ側にいたいと思わせる関係、つまり家族、恋人、仲間といった関係の中では一番大切なのではないか、とそれを如実に示す為に、羊飼いという存在は設定されている、私の中ではそういうイメージですね。

 上のテーマを踏まえた上で、この作品の美点と思える部分は4つ。

 1つ目は、羊飼いという超常的な存在を、あくまで思想的対立項と、選択肢の1つ以上の意味合いで使っておらず、つまりご都合的に現実を捻じ曲げていない点ですね。
 無論最初のきっかけにはそれが影響していますが、あくまでそれもきっかけに過ぎないし、そして凪シナリオで唯一、一種のズルに近い手段を用いているのも、どちらかと言えば凪が現実世界に回帰する決意の為の手段と言えなくもないので、飲み込める範疇だと思います。

 2つ目はシナリオのほぼ全てにおいて、学園外の要因を排除していて、その結果としてあくまで個別ルートなどにおいても、恣意的な選択の結果として道行きが決定されていること。
 図書部のヒロインにはそれぞれ得意分野というか独特の立ち位置が確立されていて、彼女たちだけであればそれは上手く円として成り立っているのですが、そこに、ある意味なんでも出来る主人公が介在することで多少なりとも形を変えていくわけですね。

 つまり、図書部としての輪郭と個性は、主人公が誰により肩入れするかでパラメータを変化させていくものであり、そして実質図書部を舵取りしている玉藻というヒロインは、そういう人的資源の最も有効な活用をきちんと見極められるだけの“出来る”人間であると思わせるだけの積み重ねを共通で見せています。
 ミナフェスの成功を経て、より大小様々な依頼が到来する中で、特に規模の大きいものに関しては、今のメンバーならば出来る、という玉藻のフィルタリングが働いており、その結果としてより特定のヒロインと主人公を近づける可能性の高い依頼が選ばれる、そういう蓋然性が、本来は外的要因になりかねない部分をきちんと打ち消せているのですね。

 それは第二共通への流れでもそうで、主人公の羊飼いとの関係性が浮き上がったことで連鎖的に発生した流れであり、潜在的にその可能性は埋まっていても、その一押しがなければ顕在化はしなかった、その精密なバランス感によって、テキスト面でも触れた、どうしてそういう流れになるの?という部分に対する違和感をきちんと解消させているわけです。
 こういう、心情面が大きく影響を及ぼしているのに、きちんと理屈で読み解ける構成というのは私好みですね。

 3つめは上の点とも重複しますが、選択肢の使い方ですね。
 この作品においては、選択肢によって直後の展開が大きく変わったりすることはなく、あくまで主人公の心情とヒロインの心情に些細な想いを積み重ねていく、その形を最後まで守っています。
 この主人公は、そうさせている内在性の部分はともかく、基本優しくお節介ではあるので、選択肢の介在しない部分においても常に少しずつヒロインの好感を稼いではいますが、それはある程度平等にもたらされるものなので、+α、という意味合いでの選択肢がきちんと生きており、そしてある程度以上思い入れが重なることによって、平たく言えば恋を自覚することで、ヒロインの自分を変えていこうという意志もまた堅固になる、そういう構成になっています。

 面白いのは第二共通に入った場合で、この時期になると、どのヒロインも第一共通でなら個別に入れるだけの思い入れを蓄積していて、その結果として恋愛関係に至らずとも、自身の内に抱える問題を解決した上で、何の屈託も、衒いもない状況で真っ直ぐ主人公にぶつかってくるようになるところです。
 つまり、第一で+αを積み重ねなかった主人公と、ヒロインの間に微妙に温度差があり、その想いの差が最後の場面での救いに繋がっていく、第一でなら主人公がヒロインに寄り添うことでその内面の問題の解決に繋げるのに対し、その逆の在り方が示されるわけです。この2つのエンドの在り方がそのまま、寄り添いあうことの認識、対等性の大切さを示していると私には感じられました。

 4つ目は純粋に、共通ルートでの、仲間と団結してゼロから何かを作り上げていく、その面白さに尽きると思います。全員のモチベーションの高さと明るさ、前向きさ、チームワークのよさなどが、展開においても非常に有用な緩急になっており、圧倒的なカタルシス、とは言えないものの、安定してずっとワクワク感を提供してくれる、そんな感じでしたね。

 逆にマイナス点として挙げたいのは2つ。
 
 1つ目はやはり、共通と個別のバランスですね。共通は相当に面白いものの、個別はどうしてももう一山欲しいというか、ある程度共通で目途のついた問題に対しての解決で終わり、という形なのは、イチャラブの尺を組み込めないという部分も含めてやや物足りないです。
 エンドが2つなのも、テーマ的には有用でも、ヒロイン個別としてはマイナスですし、しかも第二エンドはヒロイン固有の問題を既に解決済みの状況になってしまうので、贅沢とわかってはいても、その辺もう一押し欲しかったです。

 2つ目は、作品全体として、直接的で鮮烈な痛みの描写を徹底的に避けていること。特にそれぞれの過去に深入りしないことで、それぞれのシナリオにおける共感度、説得性が一段薄くなってしまっているのは致し方ないかなと思います。物語としての感情的なメリハリに欠ける、とも言えますね。
 
 ただこの点に関しては、もう意図的にそうした、という感じもするんですよね。
 作品のテーマは上に書いた通りですが、更に一段穿ってみると、そのテーマを、この作品をプレイすることで読み手にも敷衍しよう、そんな意図はあちこちに感じられるんです。つまりこれを読んで、読み手の気付きと、そして先行きにそっと寄り添う優しさを示したい、それゆえに、読み手を打ちのめすような描写や展開は極力避けて、心地よい読み口の中にイデオロギーだけを浮き上がらせた、そんなイメージ。
 冊子とかで、ユースティアの経験を生かして改めて、という書き方がちらほら見受けられましたが、確かにあれがある以上、出来るけど敢えてやらない、というイメージをもたらすことは成功していると思うし、実際そう感じる部分は結構ありましたね。まあだからといって、その配慮そのものが点数に反映するかと言われるとそうではないんですが。。。

 
 全体を通してみると、総合力に下支えされた、安定して素晴らしい楽しさではありましたが、シナリオそのものとしての鮮烈さは薄いですし、やはり個別の軽さが多少なりともネックですね。その分図書部ヒロインに対する思い入れもどうしてもコンビ的イメージ、或いは図書部のトータル的イメージにぼやけてしまっている部分もあるし、評点としては色々考えたけれどこれ以上には出来ないかなと思いました。


キャラ(20/20)

 いつもながら、キャラの魅力をしっかり引き出すことに関しては見事な仕事をしていると思います。リアルではないんだけどリアリティがあるというか、表層的にはすごくキャラクター的でありながら、内面的な部分ではすごく読み手にも共有感がある、シビアな考え方が埋まっていたりで、色々面倒さや欠点はあっても、けどトータルバランスでマイナスを美点に落とし込んでしまうような奥行きがあるところが素晴らしいなと。
 
 但し今回に関して言えば、図書部という立ち位置の中での役割がある程度確立していることによる個性の埋没も多少はあるし、個別の短さからくる新鮮な魅力の掘り下げにまで届いていないこと、また個人的にどうしても1つ2つ引っかかる部分があって、結果として突き抜けて好き、と言えるヒロインが出てこなかったことはとても残念なところです。

 まあ実際、単純に好き度合いだけで書くと美結が一番上に来てしまうという。。。
 まあ他のヒロインの屈折した部分を見続けたことによる、このサラリとした熱情の清々しさにやられたという部分も大きいと思うんですが、それにしても、ここまで立場的自覚や意識が強いくせに、屈託や衒いがなく人との距離をスッと詰めてこれる人格はすごく素敵だなあと思います。

 ヒロインだとやっぱり一番はつぐみかなあ。
 ただこの子の場合、元々の人格が高潔だからというべきか、そもそも本人が悩んでいる問題が周りから見ても大したものに思えない、そこから影響して、克服の過程を経ての人格の陶冶という部分があんまり色濃くないんですよね。要は、最初からすごく可愛かったけど最後までそれ以上ではなかったというか。。。
 でもまあ、支えられて輝くヒロイン、という立ち位置で、共通全体の流れにおいてもやはり一番いいところを持っていってましたし、メインヒロインとしての存在感、面目は充分に果たしていたと思いますね。

 千莉はこのメンバーの中では感性が独特ではあるし、距離感の詰め方とか、意地っ張りの方向性とかもすごく可愛らしさと平行して見せられるので、図書部ヒロインの中では一番伸び幅が大きかったかも。からかいながらも甘えてくる感じなんかすごく年下っぽい可愛らしさで、でもいざというときには、才能の世界で生きてきた厳しさと前向きな覚悟を見せてくれて、実に魅力的でしたね。

 佳奈に関しては、彼女がガイドラインとして引いていた人との接し方とか、趣味に対する在り方とかがあまりに共感的過ぎて身につまされたという部分で、折角すんごい可愛いのに乗り切れない感があって勿体無かったなあと。まあぶっちゃけ、表層的にでもあれだけ出来るんだから色々杞憂じゃね?と思わなくもない悩みではあるんですが。
 まあいい意味でも悪い意味でもムードーメーカーとしての存在感はありましたし、間違いなく愛らしく可愛いんですけどね〜。

 玉藻は色々堅い面が目立っていながらも、結構隙間にあれこれ柔軟さや面白味が隠れていて、そのあたりのバランスが素晴らしかったと思います。性格的な面ではある意味一番共感を覚えるところも多く、特に共通の流れの中での振舞いで個人的にはじわじわ好きになっていった感じですね。
 個人的に、ですが、あまり情動に身を任せて、というキャラではないだけに、第二ルートでの分岐シーンは彼女が一番心に響くものがありましたね。

 そして高峰はいい男ですね〜。普段は1歩引いて見守っていても、いざというときはきちんと前に出てさりげなく助けてくれる、潜在的な精神的支柱というイメージがしっくり来る立ち位置でしたね〜。
 ギザ様は色々やりたい放題でしたね。。。あとさより攻略したい(笑)。


CG(19/20) 

 全体的に見て素晴らしいクオリティではあります。背景なんかは抜群に綺麗だけど、近未来的、というのとは一線を画した、きちんと現代流行最先端、という風情を、実用性的なイメージからきちんと引き出しているし、立ち絵の素材投入量も申し分ないし、でもなんでしょう、いつもながら1枚絵の安定感にやや難を感じるというか、どうしてもここの作品で満点ってつける気になれないんですよね。。。

 立ち絵に関しては申し分なしです。絵そのもののクオリティも、明らかに1枚絵より安定していてすごく可愛いですしね。
 ポーズはヒロインが3種、サブで2種でしょうか。腕差分もかなり多く、それぞれのイメージがしっかり反映されているので文句はないですね。同じ正面向きでも、少しずつ個性の色合いが違って印象的です。
 お気に入りはつぐみ正面、見返り、玉藻正面、やや横、佳奈正面、前かがみ、千莉正面、前かがみ、見返り、凪正面、美結胸張り、やや横、紗弓実正面、やや横、真帆正面あたりですかね。

 服飾はヒロインが7〜8種類、サブで3〜4種類くらいですね。その他にも小物差分などもあるので、非常にバリエーション豊かだと思います。出番が1回しかないような服飾もあり、そのあたりの拘りはさすがだと思います。
 特にお気に入りは千莉の夏私服。色合い含めてすごく涼しげで清楚で柔らかさがあって、すごく千莉というヒロインのイメージとマッチしていると感じました。
 その他お気に入りは、つぐみ春制服、春私服、巫女服、体操部、水着、玉藻春私服、夏制服、夏私服、千莉春制服、春私服、夏制服、水着、猫メイド、佳奈春私服、夏私服、ウェイトレス、水着、寝巻き、凪夏私服、美結夏制服、私服、紗弓実ウェイトレス、私服あたりですかね。

 表情差分は質・量ともにばっちりですね〜。遊びの表情もかなり多く、また微細な表情の変化なのに伝わる感情がかなり違ってくる、その些事加減の上手さもいつも通りで見事だったと思います。
 お気に入りはつぐみ笑顔、含み笑顔、上目遣い、猫口、ジト目、テレドヤ顔、しゅん、拗ね、怒り、ギャグ照れ、玉藻笑顔、冷笑、呆れ、思案、憂い、半泣き、照れ目逸らし、千莉笑顔、からかい、猫口、ジト目、嘆息、照れ目逸らし、憮然、佳奈苦笑い、照れ笑い、意気込み、げんなり、驚き、焦り、照れ焦り、自嘲、半泣き、凪含み笑い、呆れ、上目遣い、テレ拗ね、嘆息、美結笑顔、含み笑顔、猫口、ウインク、真剣、照れ慌て、紗弓実笑顔、不満気、ギャグ怒りあたりですかね。


 1枚絵はモノクロ含めて103枚ですかね。その他ちらほらSDは見かけた気はするんですがね鑑賞には入ってないのでとりあえずスルー。まあ量としては水準以上ではありますし、質も高い、特に光加減とかも含めてのトータルデザインとしては見事なのですが、やっぱり1枚絵だと時折バランスが、特に目の描き方1つでだいぶ印象が違う場合があって、立ち絵ほど好きになりきれないのが本音ですね〜。

 特にお気に入りは3枚。
 1枚目はつぐみとベランダで初キス。シチュもさることながら、照れと喜びの絶妙に入り混じったつぐみの表情が最高ですね。
 2枚目は玉藻添い寝。初H未遂のシーンでもありますが、普段では見られない弱々しさと愛らしさが際立っていて大好きです。
 3枚目は玉藻とベットで迎える夕方。髪を下ろしてのしっとりした雰囲気と、光の当たり方による輝き、何より幸せに満ちた玉藻の表情が大のお気に入りです。

 その他お気に入りはページ順に、つぐみ押し倒し事件、甘えられて、図書部の平常、縫い物、見舞い、姉妹、手をとって走る、初H正常位、裸エプロンH愛撫、巫女Hパイズリ、玉藻ビラ配り、うたた寝、絵、告白とキス、朝ごはん、水着Hバック、背面座位、千莉抱き止めて、袖を掴んで、楽しく歌う、取り戻した友情、肉まん、猫メイドH騎乗位、佳奈夜の電話、キス、甘々学食、あーん、初H背面座位、ウェイトレスHバック、水着H騎乗位、凪探し物、ベランダで、図書館Hフェラ、真帆キス、美結手を引いて、フェラ、紗弓実膝枕、机でペタリあたりですね。


BGM(18/20)

 全体的に爽やかで優美で、またどことなく寂寥感も含んだ、質量ともにしっかりしたつくりの楽曲だと思います、が、個人的にこのメーカーにしては特にお気に入り、的なものが出てこなかったなあと。

 ボーカル曲は9曲と超豪華ですね。まあ半分以上はキャラソングではあるのですけど。この数だと全部触れるの面倒なので気に入ったのだけ。
 PV曲の『ストレイトシープ』は疾走感に溢れた清々しくも楽しさ、ウキウキ感を喚起してくれるノリのいい曲ですね〜。特にどこがねというほどでもないんですが、最初から最後まで走りきっている感じがすごく好きです。
 『夜空のステアーズ』は透明感と荘厳さがいい意味で交じり合い、それでいながらどこか若々しさも感じさせるメロディラインがお気に入りですね。特にBメロからサビにかけてのふっとした感じの柔らかさがかなり気に入ってます。
 『Dear Smile』はPV曲ともメロディがリンクする部分があるみたいですけど、爽やかさと走り感はそのままに、憂いなく明るい未来への道行きを感じさせるリズム感溢れるメロディがすごく好き。この作品で一番好きな曲です。
 ED曲の『明日への栞』が正しいんですよね?もかなり好きですね。透明感と叙情感、そして噛み締めるように地を歩く、寄り添いのイメージにすごくしっくりくるメロディで、途中からは壮大さも感じさせて隙のない出来になっているなあと。

 BGMは全部で36曲と水準以上、質も突出して目立つところはないけれども
印象的な曲はそれなりに多かったです。
 お気に入りは『昼星さがし』『Friendly Fire』『漂流草子』『やわらかなスキマ』『オレンジの足音』『Starlit Words』『青麦の道』『平行線の先』『Two in All』『「好き」を飛び越えたら』『彩日−さいじつ−』あたりですね。


システム(10/10)

 演出はお見事の一言ですね。
 とにかく今作品は、立ち絵演出における表現の幅が素晴らしく広いです。しかもそれが、特に新技術とかそういう方面ではなく、発想の転換、他媒体での引き立ての演出を上手く取り込んで自家薬籠中のものにしている部分が素晴らしい。
 
 具体的には、漫画のコマ割り的なカットインの使い方、演劇・歌劇的なスポットライトの運用、映画的な視覚の限定による逆説的な心情の引き上げなどなど、既存の在り方と併用してこれらを意識的に盛り込んで、例えばテキストで説明すると冗長になりかねないところを上手く補佐したり、時にはテキストと相反する心情を浮き彫りにしたりと、すごく効果的な使い方が出来ていたと思います。
 それらの質もそうだし、既存の技術においても十二分の質があって、気付きを多方面に求めた在り方が作品のテーマとも上手くリンクしていて申し分なしだと思いますね。
 
 ムービーに関しては特筆するほどではないかな〜。パートアニメーションは出来が良ければ、だけど、さほど似通った雰囲気がないとやや微妙に感じます。

 システムもほぼ文句なし。項目的にも細かく、使いやすいし、デザインも邪魔にならないけれど洗練されているというラインをしっかり保っていて流石ですね。
 選択肢ジャンプがあればプレイ時間はもっと短縮できるんだけど、これとフォントに関しては、絶対やれば出来るけど敢えてやらない、という形なんだろうなあと。まあ確かに選択肢ジャンプって流れがぶつ切りになるから、本当は使わないほうがプレイ感としてはいいんでしょうけどね。まあスキップ超速だから不便というほどではないしね。


総合(88/100)

 総プレイ時間28時間くらい。最初の共通が7時間、個別が4人で2,5時間ずつくらい、第二共通が6時間に個別が1人30分ちょい、凪だけは1時間くらい、あとおまけやらなにやら、って感じですね。
 想定通り中々にボリューミーな作品ではありますが、展開が波乱性はほぼないものの基本矢継ぎ早で、またその合間のキャラの掛け合いやら触れ合いやらもすごく読み口が楽しいので、全くだれることはなく最後まで走りきれましたね。選んだテーマ性の平凡さというか地道さというか、しかもそれを見せる上での制約を自分たちで化している中での出来としてはかなり精密だと思います。

 端的に言えば、ユースティアがメーカーとして限界まで尖った作品だとすれば、極力丸く収めた作品だと言えます。対立項があることで、平凡を非凡に見せる、その試みは充分に伝わってきましたし、らしさはきちんと出しつつ、でも癖の部分は出さずに作り上げました、という印象ですね。
 その狙い通りなのかはさておき、だからこそどの項目においても突出して印象に残る何か、というのはあまりなかったのですが、トータルの印象、読後感という意味では色々後を引くものはあり、どうしてもダイナミズムの薄さをそれだけで補いうるほどの説得力ではなかったにせよ、いい作品であったことは間違いないと思います。

 2013/12/25追記、シナリオ−1点。
posted by クローバー at 05:17| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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