2013年02月05日

この大空に、翼を広げて FLIGHT DIARY

 本編が去年発売のゲーム中では屈指の、特にシナリオ面では1、2を争う作品ですし、何よりそもそもFDを作らない方針だったPULLTOPが、メンバーを刷新して方向転換してはじめて作ってくれたFDですからね。その上ほたるまで攻略できるということで、もう買わない理由が1つもありませんでした。


シナリオ(25/30)

 広がる世界、そして巡り、繋がる想い。


 この作品は、2012年5月に発売された、この大空に、翼を広げて、のFDになります。
 コンテンツとしては、まず本編小鳥シナリオと天音シナリオ、特にソアリング部の在り方と関係の深いシナリオのその後を書いたソアリング部ビフォー&アフターがメインで、その他、本編で攻略できずに惜しまれたほたると佳奈子のifストーリー、他の本編ヒロイン達のショートアフター、そして本編のおさらいめいた、小鳥視点で小鳥シナリオを掻い摘んだノベルが1本収録されています。
 
 こうして抜き出してみると、全体量としてやや少なくも感じますが、本編発売から半年、ということを踏まえると、むしろよくここまでしっかり作りこんであるなあというか、ぶっちゃけ最初から作る気満々だったんじゃ?と疑いたくなる質でしたね。勿論これは、いい意味で、です。
 
 テキストに関しては、まあルートごとの雰囲気の違いが出てしまうのは仕方ないですが、本編はそれが色々価値観の違いレベルで出来不出来に影響を与えていたのに対し、今回は本丸のビフォー&アフター以外はあまり深い部分に踏み込まずに、サラリとした手触りのままにあれこれ流してしまっている印象なので、その点では本編より違和感は少なかったかと。

 ただその分、アナザーヒロインシナリオの質そのものもかなりあっさりしてしまっていて、その点は、特にそっちを目当てで買った人には肩透かしの感はあるかもしれません。
 佳奈子にしろほたるにしろ、主人公に深く介在するきっかけ、そしてそれに必要な、自分自身の中の問題の克服、という部分がかなり軽く扱われているので、ぶっちゃけ本編ヒロインを押しのけてまでそうなる必然性があまり感じられないのは確かですね。
 
 特にほたるシナリオの時系列って少なくとももうモーニンググローリーが出現した後のはずなんだけど、他ヒロインと何の物語も発生せずに淡々とあれを飛びました、というのはどうも腑に落ちないものがあるし、例えば飛べなかったからこそのほたる、的なオンリーワン的位置付けと、その前提となる説明があるだけでも、かなり思い入れが違うシナリオになったんじゃないかなあと勿体無く感じています。

 本編他ヒロインアフターに関してはホントおまけに過ぎない印象ですね。双子シナリオなんかはもう少し掘り下げてくれても面白かったのになあと個人的には思うんですが、まあそのあたりは、好き嫌いの観点を抜いた客観的な本編の出来に依存しての振り分けだろうから仕方ないかなと。
 小鳥のノベルに関しては、私は今回本編もリプレイしてからプレイしてますけど、そうでない人にはちょうどいい意味でおさらいになると同時に、小鳥というヒロインの独特の内在性、あの陶酔して一途に夢を語る表向きの強さに対する、内面の臆病さといじらしさ、けれどやはり感じる芯の強さ、などを改めて咀嚼してアフターに望むには最適のコンテンツだったと思います。

 そして本丸のビフォー&アフター。
 ちなみにビフォーと書いてありつつも、決して過去の話ではありません。回想シーンそのものはさほど多くなく、あくまで時系列は本編天音シナリオの続きになります。そして、小鳥シナリオの二年後を書いたアフターシナリオをより一層面白くする精神性と夢追いの在り方が散りばめられているので、個人的にはビフォー⇒アフターの順番でクリアすることを推奨します。

 純粋な内容面から触れると、どちらも素晴らしい出来でした。
 本編ほどのアップダウンはないというか、あちらは物質的・精神的両面で追い詰められてからの再逆転的なカタルシス、その克服の上にもたらされた奇跡の美しさ、という部分で名作性を強く感じさせるのに対して、今回は回帰性を強く打ち出すことで、安易に奇跡にも妥協にも流されない、人の本当の意味での真の強さを、そしてそれをもたらすものの在り処を照らし出していたと思います。

 特に個人的に感心したのは、まずビフォーシナリオではハットの使い方ですね。言葉でつらつら説明すると野暮ったくなるようなことを、ハットという存在のたった一つの仕草で完璧に表現しきっているあたりに素晴らしいセンスと、そして確かな筆力を感じさせます。
 アフターに関しては、やはりそうなるとわかっていてもの最後の30分の、主人公たちの想いが乗り移ったかのようなワクワク感は素晴らしいの一言でしょう。場面的には回帰であっても、精神的にはしっかり前に進んでいる、その差異がまた色々な含みを感じさせて心に響いてきます。
 
 まあ全般的に本編ありきというか、どうしても本編での、モーニンググローリーの飛翔という偉業に対する様々な吸引力・影響力が前提になる部分は多いですが、本編の出来が素晴らしいからこそ、ここまで過去語りが多くてもだれない、むしろ共感度が増していくというプラスの影響を引き出せていていると感じましたね。
 特に自身部活動の経験があって、OB会なんかも盛んに開かれているようなコミュニティに所属している人ならば、後輩にノスタルジー感たっぷりに過去を語って聞かせることの楽しさというか喜びというか、そういう感情に寄り添えて一層面白いんじゃないかなと思います。

 そして思想性の部分で触れていくと、今回は大小さまざまな形での回帰性・循環性がメインになっているのかなと。
 本編においては、夢を追うのは若者の仕事、責任を背負うのは大人の仕事、というような線引きと、それに伴う挫折の重さについてあれこれ忖度した記憶がありますが、今回はその仕切りを取っ払っての、夢を追うのに制限はない、というより広がった観点を、その循環性の中で上手く表現できているのではないかと思います。

 まず小さい視点で見ると、人間関係の在り方を改めて据えなおすことで見えてくるもの、というのがありました。あくまで小鳥シナリオ視点で、という前提ですが、主人公と小鳥、そしてあげはの関係って、達也とイスカ、そして天音の関係とすごく一致する部分が多いですよね。
 それは三角関係というわけでは決してなく、純然たる友人関係、特に女の子同士は親友といえる間柄で、夢追い人の小鳥やイスカを後ろで支えるあげはと天音、という構造なんですが、しかし今回、ビフォーにおいては過去の挫折から、アフターにおいては未来への不安から、その親友関係における対等性、というものが浮かび上がってきます。

 アフターに関してはそれは主人公と小鳥の間にも影響を及ぼしていますが、基本夢追い人である小鳥やイスカは、周りの人間に支えられて生きていることを自覚しており、そして自身の思想がその周りの人間に与える影響力を過小に見積もっている為に、立場が変転する場面において、寄りかかるだけじゃなく、寄り添える自分になれるのか、或いはその資格があるのかと苦慮するわけです。

 まず女の子同士、純粋な親友関係の在り方からほどいていくと、与える影響の形は違えど、その純度に価値の高低はない、互いに寄り添い、支えあう関係であり続けることを、言葉の循環性において上手く表現しています。
 かつて親友に語った言葉が、そのまま今の自分に返ってくる、それは、かつての自分が相手の血肉となる影響を与えていたというこれ以上ない示唆であり、そしてその思想をずっと尊重し、尊敬して、その高さに追随しようと努力し続ける、そういう切磋琢磨を生み出す関係こそが親友関係なのだろう、と納得させる強さがあります。
 まあそれは物語として成功した状況があるゆえの演繹的な見方ではありますが、物語なんだからそれでいいに決まってますよね。
 
 そしてそこに見出されるのは、寄り添う、という在り方の、物質面と精神面の重要性の違いかなと。無論それはどちらも大切ですが、人が人として生きるとき、常に前を向ける目標を持っていないと停滞してしまうというのは自明で、物質的距離を大切にするあまりにどちらかが夢を置き去りにしてしまう在り方は、2人揃って足を止めてしまう危険性も孕んでいるわけですね。
 親友関係ならば、現実的な距離はまだそれほどの重みにはなりませんが、しかし恋人関係となるとそちらも天秤の一方の選択肢に上るくらいには重くなるので、非常に難しい問題になります。
 
 特に、常に空に想いを仮託し、精一杯に手を伸ばしてひたむきに、がむしゃらに、自分の生き方を、夢を、目標を見上げてきた小鳥のような人間は、おそらく1度でもその脚を完全に止めてしまったらそこに安住してしまいそうな危うさがあると感じる為、余計に悩むのだろうなあと。
 だからこそ、勿論遠距離恋愛によるすれ違いも恋愛面においては大きな障害ですが、それ以上に夢を追い続ける対等な2人でいたいから、という意志で将来を選択した主人公の思いは素晴らしいと思いましたし、その決意の証としての最後のシーンが光るわけです。
 夢を追う小鳥に惹かれて手を伸ばしたかつての告白から、ともに手を取り合い、時には互いを引っ張りあげて夢を追い続けていく、更にはそんな生き方を楽しんで築き上げていく、そんな関係を確立するための告白へ、場面的に回帰していることでより一層、その内面の違いがくっきり見えているんですね。

 ―――どう飛ぶか、ではない。如何にして飛び立つかまでが大切であり、そしてそれを楽しむことを君たちは知っている。
 
 この天音の台詞はそういう内在性を凝縮して、かつ過不足なく説明しきっていて、こんな風に、構造そのものはきちんと理で読み解けるのに、更にダメ押し的に感情面においても容赦なく捻じ伏せてくれる台詞を組み込める、ハットのシーンと並んで、そういうものを書けるというのが本当に素晴らしいなあと、ひたすら駄文しか書けない私は羨望を覚えるわけです。。。

 そして大きな視座においては、そういう純度の高い想いは世代を超えて波及していく、無論大人になって、背負う責任は重くなるけれども、だからと言って夢を追いかけることを諦める必要はない、という言霊を、モーニンググローリーという深遠で神聖な自然現象を基軸として確立している、それが最終的に、タイトルである、この大空に、翼を広げて、という言葉にスッと入り込んでくるんですね。
 
 無粋を承知で書いてしまえば、元々はかつての大人世代が為し得たモーニンググローリーの飛翔がイスカに夢を与え、それは1度挫折するものの小鳥に受け継がれ、その成功がイスカに再度の夢への挑戦をもたらし、その想いが理事長を象徴とした大人世代も巻き込んでいく、つまり大人⇒準大人⇒子供⇒準大人⇒大人という循環性を築いているんです。
 けれども、空は空でしかなく、ちっぽけな人間が、自然の力を借りて空を飛ぶこと、それは人の柵を越えた平等性を象徴していて、空に翼を広げる、夢を追い羽ばたいていくことに関してもそうなのだ、と、だからこそ、その社会的価値を一切希求しない行動がこんなにも尊く輝くのだと、如実に伝えているタイトルなんだなあと私は思うのです。


 総合的に見て、本編の小鳥シナリオや天音シナリオほどのダイナミズムはない、どこかしっとりした印象もある内容ですが、それでも随所にひたむきさ、熱さの迸る内容ですし、また内在性の面でも本編以上の深みを感じられて、かつそれを端的に説明しきる素晴らしい文章にも出会えたので、私個人としては本編に遜色ない評価をしたいところです。
 ただまあ、ビフォー&アフター以外の出来はお世辞にも素晴らしいとは言えないし、本編に依拠してこその面白さ、という割合もかなり大きいので、点数としてはギリギリ名作、というところで落ち着けるのが妥当かなと思いました。


キャラ(20/20)

 特に新規キャラは多くありませんが、しかし基本的に彼らが織り成す世界の雰囲気が本当に前向きでひたむきで熱意に溢れていて楽しいですし、今回は更にそこに、人生の岐路を前にしての色々な価値観の変転や積み増しも見えていたので、十二分にそれぞれの魅力を表現できていたと思います。

 しかしやはり小鳥の可愛さ、素敵さは別格ですね〜。
 色んな意味でウザ可愛いというか、本当に性格面では癖があるし、欠点も多いし、ハンデも背負っているわけですけど、だからこそ、という魅力の見せ方が半端なく上手いんですよね。
 別作品から比較するのはあんまりよくはないんだけど、これの前にやった大図書館のつぐみとか、あれもタイプとしては思想性が突出していて純粋でひたむきなタイプだけど、あまりに傷がなくてその良さも逆に生かし切れていない印象があったのとは対照的だなあと感じるわけです。
 まあ本編ほど小鳥にとって越えるべき山が高いわけではなかったし、流石にまた今年、去年より+αで評価、という事になるほどではなかったものの、安定して殿堂クラスの素晴らしいヒロインでした。

 んで今回はイスカが光っていたなあと。
 まあタイプ的に小鳥と似通っている部分は多いし、そのフィードバック感で余計に好きに感じる部分はあるかもだけど、いい年してああきらきらした表情と想いを真っ直ぐ曝け出せる、あれはあれで素敵な大人ではあるんじゃないかと思わせる人間的魅力がきちんと出せていたと思います。
 しかもイメージ以上に乙女というか女の子というか、特に恋愛面における精神性の幼さ、可憐さは惹かれるものがありましたね〜。

 そして遂にほたるを攻略できて感慨しきりです。。。
 まあシナリオの取っ掛かりに少し弱さを感じましたけど、意識しあうようになってからの初々しさとか、そこからのほたるの成長ぶりと愛らしさとかはたまらないものがありましたし、この、可愛いし清楚だけど飾らない気質というか、微妙に下町気質な雰囲気もまたアクセントになっていて、改めて大好きなヒロインだなあと強く実感しましたね〜。

 新しい後輩たちもいい味出していたし、亜沙の成長やあげはの内在性の補完なども含めて、本編の他のシナリオでのそれぞれのキャラのいいとこ取りをした感があり、その意味でもすごく楽しかったし感慨深いものがありました。


CG(17/20)

 変わらず2人体制で、かなり絵柄の方向性に差があるのも本編同様ですね。本質的にはほたるサイドの丸っこい絵柄のほうが好みなのは確かなんですが、しかし今回はどちらかと言うと小鳥サイドのほうが出来は良かった気がします。

 立ち絵に関してはまあほぼ使いまわしなのでそのあたりは本編準拠。
 新規分としては、まず小鳥の本当の意味での立ち絵、そして青のサマーワンピースあたりはすごく可愛かったですし、あと遥の私服がかなりお気に入りです。ほたると佳奈子の新規ポーズはそこまで惹かれなかったなあ。

 1枚絵は通常が50枚のSDが15枚、まあ値段考えれば充分な量だと思います。
 特にお気に入りは2枚。
 1枚目は小鳥と歩いてデート。噛み締めるように繋いだ手と、眩しくきらめきながら見上げる視線、勿論場面に対する思い入れ補正も強く、至高の1枚だったと思います。
 2枚目は星空の下H愛撫、この小鳥の華奢で柔らかそうなラインと、切なさ溢れる表情がたまらなく好きですね。

 その他お気に入りはページ順に、小鳥膝枕、談判、空に手を伸ばして、プロポーズ、誓いの指輪、青空を見上げて、部屋Hクンニ、バック、星空H騎乗位、イスカの退屈、お化け屋敷、告白とキス、コックピットで、ほたる風に吹かれて、なでなで、肩に寄せて、夕焼けの空、私のしたいこと、初Hキス&愛撫、正常位、秘密基地H騎乗位、対面座位、佳奈子エプロン、告白、喫茶店デート、教室H愛撫、双子パイズリ、ほたるを足蹴愛撫、小鳥のウインチ操作、お風呂で、あたりですね。


BGM(16/20)

 新規はほとんどありませんが、元々の雰囲気の確立具合はすごくしっかりしてますし、それに加えて広がりを感じさせる楽曲を組み込んだ印象ですね。

 新規ボーカル曲は1曲。
 OPの『Bland−New World』は、メロディだけ拾うと清々しい感じなんですけど、ボーカルの力で哀愁とかノスタルジーとか、そういう雰囲気も多分に押し出していて、そのバランス感がすごくいい雰囲気を出していますね。特にBメロあたりは気に入ってます。

 ちなみに本編OP、リプレイの頃から思っていたのは、最初は真っ直ぐさとかひたむきさに目が行くけれども、特にAメロのあたり、空に手を伸ばす小鳥の姿とオーバーラップして聴き込むと、すごく焦燥感とか飢餓感とか、そういう色合いもじわっと滲んでくる感じで、今回これをプレイして更に深みを感じるようになりましたね。

 新規BGMは4曲、『a reminiscence』と『INNOSENT AIR』はいい曲だと思います。
 勿体無かったのは、本編での幻想的なシーンに用いられた壮大な曲が、このFDではあんまり出番がなかったことですね〜。


システム(9/10)

 本編から特別に進化は感じないですね。あるのかもだけど私にはわからない(笑)。なので点数も本編準拠です。

 ムービーに関しては中々印象的かなと。クレジットの出し入れと、あと結構派手めの配色が目に付きますが、それが違和感というわけでなく、爽やかさとスタイリッシュな雰囲気がギリギリ調和している感じで結構好きですね。


総合(87/100)

 総プレイ時間12時間くらい。ビフォー3,5時間、アフター4時間、佳奈子とほたるが1,5時間、その他が30分ずつくらいです。FDですし、値段も踏まえればそれなりにボリュームはあるし、購入層が期待している部分に関しては、濃度の差はあれくまなく取り込んだという印象なので、贅沢を言えば切りがないですが、上等な出来だと思います。

 まあほたると佳奈子目当てのみだと物足りないでしょうが、本編の小鳥&天音シナリオが大好き、って人には垂涎の出来でしょう。少なくとも本編プレイしたなら、これもやらなきゃ勿体無い、とはっきり言える出来ですね。いやむしろ、同梱版買って新たにやれと言いたい。。。
 個人的には、本編共通⇒小鳥シナリオ⇒アフターという流れで一気呵成にプレイしたい。その方がより色々と感じ入る部分が大きいと思うんですよね。1年くらい漬け込んでから是非そうしようと、備忘録がわりにここで触れておきます(笑)。
posted by クローバー at 05:49| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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