2013年03月14日

ハピメア

 世界観がすごく独特で惹き込まれましたし、キャラも可愛かったし、ライター的にも押さえておきたかったのでいそいそと購入。


シナリオ(22/30)

 狭間で掴む、想いの欠片。


 明晰夢―――。
 それは、夢を夢として認識し、ある程度自分の意志で改変させることも出来、そして目が覚めてからもその内容を忘れないという特殊な夢。

 主人公は、幼い頃に起こしてしまった事件のトラウマから、1度夢の世界に浸って現実から乖離しそうになり、幼馴染の咲の手助けもあってなんとか戻ってこられたものの、それ以来、夢に囚われないように、という防衛機構からか、毎晩のように明晰夢を見る体質になってしまいました。
 そのせいで、日常的に精神が休まらず、周囲からも心を病んだ人間として距離を置かれがちになり、苦しみながらここまで生きてきたのです。それでも、明晰夢体質になってからは、かつて夢に囚われる原因になった事件の主因―――、ともにはぐれ、置き去りにしてきてしまった最愛の妹、舞亜を夢に見ることだけはなくなっていました。

 しかしある日、夢の中で気付くと欧風のお茶会を気取ったような豪奢な、でも色彩感覚だけは破綻している部屋に立っていた主人公は、そこで舞亜と再会し、彼女が放つ甘美な香りに誘われそうになったところで、有栖と名乗る謎の少女に助けられます。
 そして、この日を境に、主人公は日々繰り返し同じ部屋の夢を見るようになり、更にそこに、幼馴染で妹代わりの咲、部活の先輩の弥生、街中で出会った孤独なストリートシンガーの景子などが現れ、舞亜の手引きによって、彼女たちの深層心理に宿る幸せな夢を見せられます。

 かつての経験から、夢の幸せは自分1人の幸せであり、しかもそれはいつか行き止まりのくる儚いものだと知っている主人公は、夢に囚われそうになる面々を、明晰夢体質を利用した改変能力を使い、何故か夢の中でしか出会えない、そして同じように夢を操作出来る有栖と協力して、痛みと後悔を覚えつつ、けれどその過程で心の絆を少しずつ紡ぎながら解き放っていきます。
 そうして夢と現実を行き来しているうちに、徐々にその境界線が曖昧になっていき、そして一同は更に深い夢の中に誘われていきます。果たしてこれは誰の夢なのか、それとも現実と夢が混ざり合ってしまっているのか、あやふやになっていく足場の中、彼らは自身が抱え持つ根源的な葛藤と向き合い、前向きに現実に立ち返るために奮闘するのです。

 これは、夢と現実の狭間で、記憶にも記録にもほとんど残らない、けれども生きる上で大切な想いを紡ぐ為に見る、幸せな夢の物語です。


 あらすじはこんな感じでしょうか。全体的にネタバレ要素満載の作品なのですが、まあこれくらいは序盤で示唆される部分ですから触れてもいいかなと。そうしないと説明がつかないってのもありますし。
 大枠としてはあらすじの通り、夢の中で各人のトラウマ、葛藤などが提示され、そういう辛く悲しい柵が満ち溢れている現実に立ち戻らずに、甘美な夢の中で、自由に自分の見たい幸せな世界を構築すればいい、という誘惑を、1度その罠に嵌りかけた主人公が、自身のトラウマ(舞亜)をも克服しつつ打ち破っていく中でヒロイン達と結ばれていく流れですね。

 テキストは基本的にプレーンではありますが、主人公が徹底した弄られ体質というか、ヒロインが全員S気味というべきか(笑)、会話パターンが多少偏っている印象はありました。
 そういうやり取りの中での細やかな心情の機微の表現、皮肉や罵倒の影に潜んだ真意などのチラつかせ方などは相変わらず上手く、ヒロインに嫌気をささない程度に釣り合いが取れていると思います。
 その中で、有栖というキャラの率直で純良な性格と言動は浮き立つほどに特異なのですが、その特異性にもきちんと理由付けがされていて、そのあたりの構成も含めて、読み口のバランス、テンポはいいんじゃないでしょうか。
 但し、誤字と誤変換がかなり多いのでそこはマイナスですね〜。

 ルート構成はやや特殊、ですかね。
 最初に攻略可能なのは咲、弥生、景子の3人で、全員クリアが条件なのか、1周クリアでいいのかはわかりませんが、その後に追加選択肢が出て有栖と舞亜が攻略可能になります。選択肢自体は難しくなく、狙ったヒロインを追いかければ問題なしです。
 謎の本質の部分については、主人公との関わりの深さによって差が出る印象で、基本周縁のキャラからクリアしていった方が楽しいのではないかなと。あと、舞亜は厳密にキャラエンドというには・・・なので、全ての謎が開陳されるという意味でも、他ヒロインそれぞれの心の成長と意志が反映されているという意味でも、有栖シナリオをラストに持ってくるのが王道かなと思います。

 シナリオに関しては、あまり書きすぎるとネタバレ激しいので簡潔に。
 基本的にこの作品の登場人物は、自分を取り巻く現実に対して、嫌忌、絶望、諦観、贖罪、嫉妬に近い羨望のような負の感情を抱えていて、いわば現実逃避的な想いがあるが故に、夢の効能的に、前もっての関係性が必須ではあるものの、およそは自主的に、自身の思い通りに改変できる夢の舞台に囚われてしまう、という前提があります。
 その中で、主人公だけは明晰夢体質であり、夢の世界のことを全て覚えていられる為に、夢の中で垣間見てしまったヒロイン達の痛みに対して、何とかしなくてはならないという使命感を覚えていくわけです。
 
 このあたりの主人公の内在性は、かつて自分が夢から助けられたという認識、いつかそれに恩返しをしなくてはならないという意志から発現しています。
 主人公に限らずこの作品のキャラは、表面的には偽悪的だったり擦れていたりするけれども、本質的には恩には恩を返し、でも受けた痛みを痛みでは返せないような善人体質であり、特に主人公はそれが体験知からより深く浸透している為、明晰夢という、やりようによっては何でも好き勝手出来る環境においても、決して放埓にならないという特異性を有しているんですね。
 故に、それこそ現実以上に簡単に心と体を結びつけ、安易な快楽と幸せに溺れることは簡単で、ヒロイン側からのそういう刹那的なアプローチがあっても、それをグッと堪えて心の深い部分に巣食った病理を解きほぐし、そして夢の中で得た幸せを少しでも現実に前向きに反映出来るように努力する、そこがこの作品の肝になります。

 また、ヒロインとは別個に、主人公にも舞亜という決着を付けなくてはいけないトラウマが存在し、彼女が色々とかき回す、もっとも彼女自身の行為とそこに籠められた意志は、表向きにはそうは見えないながらきちんと一貫しているのですが、そのせいで物語の展開が夢らしいかなり突飛なものになっていて、故に解決の過程にも複層性と連関性が生まれていますね。

 ヒロインが夢に傾倒していく度合いは、どれくらい現実を忌避しているかの度合いと比例していて、景子が一番軽く単層でもあり、弥生は自身の中で複層しており、咲は自身と主人公のそれが連結して深化している、というイメージです。そして有栖はより根源的な部分で、となりますね。
 その度合いが、夢に対するスタンスにも現れていて、ヒロインによっては結構グズグズしたことにもなります。そこをひっくり返すのが物語としての醍醐味ではありますが、個人的には景子の夢と現実をはっきり区別するスタンス、筋の通った強がりが、自身においても、他ヒロインへの介入においても、すごくいい味を出しているなと思いました。

 好きなシナリオはその景子と咲、そして有栖ですね。出来がいいのは一に咲、次いで有栖かなという印象。
 咲シナリオは特に、咲というヒロインが抱えていたトラウマが、見方によっては主人公のそれを移管したものであり、鏡映しであるが故に、解決に至るに必要な要素は、という前提がしっかりしていて、けれど2人が2人とも互いを思い遣りすぎて、本当の心底まで踏み込んでこなかったすれ違いが最後までそれをなさしめない、という構造が素晴らしかったです。

 有栖は全ての謎が解明されるという部分に加え、想いの行き着く場所が袋小路であるという切なさ、それでも残せる想いはあると前を向いて進む意志の色濃さが印象的です。まあ正直、オッドアイはやりすぎじゃない?とは思うんですけどね(笑)。
 ただそのシーンに限らず、基本この作品見た目の印象でのインパクトはかなり意識して作りこんでいると思います。夢と現実、という曖昧さを孕む舞台の中、結局現実においても人は見たいものしか見ない、という側面はありますし、見えたものがその人の現実、というのであれば、その誇張した表現もあながち間違いではないのかなと。

 マイナス点としては、やはり全体構造における、引き込まれる過程の都合の良さ、主人公のトラウマの根源部分の不確定さ、行動原理が突出しているが故の不自然さ、そして夢のルールの解釈の幅の広さによる都合の良さあたりでしょうか。
 理屈として読み解けるけど、感情が置き去りに感じる部分も多少なりともあり、そのあたり世界観の不気味さとか曖昧さで押し切っている印象がない、とは言えないですね。

 あとこれは余談なんだけど、咲だけ最後のHシーンおまけという形だったのがどっちに解釈すべきなのかなと。
 一応あのルートは主人公がそうと意識しないところで有栖の問題にも介入しているわけですし、そうであるなら・・・とも言えるのだけど、でも目覚めのシーンの状況からは連続性を感じるし、本質的な問題の解明に至っていれば、そもそも関係性から、という話だし。
 まあ単純に、尺と流れの関係と見ておくほうが整合性はあるんですけどね、けれど咲くらいはきちんと現実的に報われてしかるべきと思えるうくらいには不憫ですから、そう見たい人はそう見ればいい、という曖昧さなのかなあと。


 テーマに関しては、すごく大雑把に捉えれば、現実見て生きろよ、って話なんですけど(笑)、もう少し繊細に捉えると、夢をおろそかにせず、けれどのめりこみ過ぎない、そのバランス感覚の中で残せるものの大切さを見せたかったのかなと。

 夢は記憶の整理、と言われるように、本質的には自分の中に存在するものの組み合わせであり、そこに進展性、というのはあまりないのが事実ですし、それにほとんどの夢は、目覚めると同時に霧散してしまうものです。
 でも、少なくともいい夢を見た、或いは嫌な夢を見た、という印象はしっかり心に残るし、その感情は結構大きな割合でその日の体調や心情に影響を及ぼしたりもします。そういう、記憶にも記録にも残らないけれど、心の奥に刻み込まれる想いもというのがある限り、夢は夢だ、と一概に割り切って振り捨てるのは良くない、と私は思っています。

 都合のいい考え方をしてしまえば、いい夢はそのまま前向きな活力に転換し、悪い夢は夢で良かったと前向きに切り捨てる、という心の持ちよう、意志が大切だってことです。
 また、たまたま明晰夢を見ることがあったときに、夢の中ででも、現実では中々出来ない前向きさや強さを発揮できたなら、それは現実でも何某かの力になる、そういう要素を、この作品は肥大化し、具体的な関係性まで付随して表現したかったのではないかなと。

 加えて言えば、現実という概念の絶対性の曖昧さと、それに対する向き合い方ですね。
 あくまで自分1人で完結するならば、現実は絶対的なものですが、他者と価値観をすり合わせて生きていくならばそれは相対的なものになります。
 そこで現実を疑ったり、自分が見たい現実という夢に逃げるのではなく、より良い現実を共有すべく努力し続けることが人として大切なのだと、1度失敗したが故の後悔を伴わせることで、それを説得的かつ実証的に主人公に体現させているのかなって思います。


 以上、全体としては中々尖った作品だったと思えます。
 実際問題として、ある意味では誰もヒロインを攻略していないのに終わってしまった作品でもあり(笑)、その構造性を抜きにしても、ヒロインとのイチャラブという色合いは薄く、あくまで恋愛関係はトラウマを克服する強さを得る為の一要素、という印象です。
 なので、どちらかと言えばメッセージ的な色合いが強いのですが、それもまた構造の曖昧に感じさせる雰囲気のせいで掴みにくいし、それこそ夢のように、心の奥底に形にし切れない、けれど暖かい何かを残していくことを意図した作品、と言ったら深読みしすぎでしょうかね?

 比較的好きなタイプの作品ではありますが、やや荒唐無稽さが目立って見えてしまうし、キャラの個性も特異性が強いので、人を選ぶ作品ではあるかなって思います。その好みの程度を無視して読み手を感動に引き込むほどの力強さはなかったので、点数としてはこれが妥当かなと。


キャラ(20/20)

 シナリオでも書いたように、元々の負の設定もあってか結構特異なキャラで構成されていますし、実情的にはヒロインの成長などのプラス要素が現実に反映されずに、ほぼ夢の中での関係性のみで完結してしまう作品なので、その辺ちょっと勿体無いなとは思うんですが、それでも個々の魅力の高さは中々のものがあったと思います。

 一番好きなのは景子ですね〜。体験版では出番少なかったので、この子をこんなに好きになるとは思ってなかったってくらいには大好きになりました。流石に殿堂ラインには届いてないと思うけど。
 皮肉な見方をすれば、比較的恵まれた環境にあるわりに、家族との関係が気に入らない事に対して世を拗ねている甘えた構ってちゃん、ではあるのですが、本質的に素直だからか、拗ねつつ構って欲しいという感情を真っ直ぐ見せてきて、その非調和的な振る舞いが一々いじらしく、世話を焼きたくなると思わせるんですよね。。。
 
 基本的にはこの子は主人公と恋愛関係にまで至らずとも、ある程度ちゃんと自己の問題と向き合うだけの強さを得るので、他ルートでの夢に対する割り切り、芯の通った強がり方が物凄く可愛い上に、その明快さがモヤモヤした雰囲気をも喝破してくれるようで、すごくそのスタンスが作品の中で生きているなあと。
 勿論恋人になったときの素直な甘え、自分の深い本心と向き合っての希求なんかもとても愛しいし、ぶっちゃけすごくエロ可愛いし、色々私のツボを刺激してくれるヒロインでした。

 次いで有栖ですね。
 人として正直で明朗で活発であり、女の子として初心で純真ででもお年頃らしい好奇心に溢れていて、そしてあらゆる感情を後ろ向きに捉えない芯の強さがあって、そりゃ理想的な人格だよなあと思ってしまうのですが、なのにどこか抜けていたり愛嬌があったりするあたりがこの子を完璧な存在にしていない、そこまで含めて見事な造詣だなと。
 最後がああなので切ないのは仕方ないんですが、それを受け止めるだけの強さと想いがしっかり根付いていると思えるだけの真っ直ぐで真摯な慕情を見せてくれるので、すこぶる清々しいヒロインだなあと思うのでした。

 その次が咲でしょう。
 正直普段の言動とか振る舞いそのものはそんなに好きになれないってのはあるのですが、何故そういう在り方になったのか、そうしなくてはならないのか、その影に隠れた本質的な優しさがこれまでどれだけ傷ついてきたのか、そういう不憫さが表に出ることで一気に魅力を増すヒロインだったと思います。

 舞亜もかなり好きですね。
 咲に輪をかけて偽悪的、悪戯めいた振る舞いが目に付くのですが、この子のほうが愛情そのものは素直な形で表に出ているし、一見そうとはわからなくとも、きちんと流れを追っていけば、本当に主人公の事が大好きで、大好きだからこそきちんと立ち直って欲しいという想いが深くこもった行動原理が浮き彫りになるんですよね。
 そういういじらしさ、一途さも可愛いですし、それでも主人公が自分のところに戻ってきてしまったときの、仕方ないなあといいながらも一握の喜びを隠せない、そんな繊細な真情もまた魅力的だったと思います。

 そして朝日攻略したい。。。むしろお姉ちゃんとチェンジしてくれないかな(笑)。弥生も嫌いではないけどさ。


CG(17/20)

 2人体制で、それなりに差異のある絵柄だとは思うんだけど、基本全員釣り目のせいかそこまで違和感はなかったですね。質も悪くはなかったんですけど、やたらフェチズムに走りすぎている印象があった(パンチラ多すぎじゃない?)のはどうかなって。あとやっぱり別に私ロケットには特段の思い入れはないなと。。。

 立ち絵に関しては水準クラスではないかなと。
 ポーズはヒロイン1人3種類ですね。舞亜以外は特に個性際立つ、というほどではなく、出来も所々ばらつきはあったけれども、概ね可愛くデザインされていたかなと。
 お気に入りは景子正面、前のめり、有栖正面、やや横向き、咲やや右向き、舞亜正面、左向き、右向き、朝日正面あたりですね。

 服飾は3〜5種類ですかね。夢衣装の夢らしいほのエロさが素晴らしかったなあと。その他も悪くはなかったと思います。
 お気に入りは、景子制服、私服、夢服、ドレス、裸Y、有栖制服、私服、夢服、パジャマ(子)、咲私服、舞亜制服、私服、夢ドレス、朝日制服あたりですかね。

 表情差分はそこそこ、特に遊びはなかったけれども、特に鬱屈した感情の表現のバリエーションは多くてわかりやすく心情が掬えた印象ですね。
 お気に入りは、景子憮然、怒り、眉顰め、溜息、ジト目、泣き笑い、微笑、苦悶、照れ目逸らし、有栖笑顔、驚き、おびえ、ギャグ泣き、照れ焦り、真剣、きょとん、咲にやり、怒り、困惑、照れ、舞亜澄んだ笑顔、ニヤニヤ、からかい、悲壮、まじめ、怒り、弥生澄まし、からかい、朝日笑顔、ジト目、心配あたりですね。


 1枚絵は通常が84枚、SDが8枚の計92枚ですね。まあギリギリ水準級かなと思います。
 質も比較的安定しているのですが、スタイル的好みだと景子サイドの原画さんに全部寄っていて、でもやはり上手さという意味では有栖サイドのほうだったりするので(フェチすぎるきらいはあるけれど)、噛み合わせ的にアレかなと。でも有栖の人って、品乳サイズ描くのあまり上手くなさそうな気もするからこれでいいのかも(笑)。

 お気に入りはページ順に、有栖椅子座り、胸愛撫、素股、フェラ、バック、パイズリ、夜空の下、部屋H愛撫、正常位、病室、別れ、再会、咲御飯、誘い、ドレスH愛撫、お風呂H騎乗位、舞亜と添い寝、弥生雑誌、お風呂H騎乗位、正常位、来訪、景子演奏1、お茶会に登場、演奏2、添い寝、雨で濡れ透け、初H正常位、朝フェラ、対面座位、騎乗位、背面騎乗位、これからも歌う、舞亜膝抱き、ともに立ち向かう、3人の別れ、墜ちていく、愛撫、正常位、膝に抱いて、夜のお出掛け、弾劾裁判、再び集まる仲間、お茶会の日常あたりですね。


BGM(18/20)

 全体的にすごく不気味というか、情念溢れるというか、色彩と合わさってそれこそ御伽噺の恐いシーンをイメージさせるような楽曲が主になって、それに上手く感情系の曲がまぶさっている印象ですね。

 ボーカル曲は2曲。
 OPの『夢の無限回廊』は名曲ですね。この神秘的で、そこに背徳感と切実な嘆きが入り混じったような、淡々としたリズムが逆にそれを冗長している雰囲気が素晴らしいです。やや曲としてはバランスを欠いているかもだけど、その不安定さがまたイメージとしっくりきている感じですね。Aメロとサビが好きです。
 EDの『愛奴の小径』もまた、すんなりとしたEDというイメージからは程遠い、粘りつくような夢の悦楽、甘美な雰囲気を、後ろ髪引かれつつも振り切って歩くという印象。サビの足場の崩れそうなたどたどしさも演出としては、なのですが、しかしOPにまして曲としてのまとまりを欠いているのでこっちはそこまでは好みじゃないかな。

 BGMは全部で30曲と量は水準、質は全体的に高く、独特な雰囲気を醸しだしていて耳に残るものが多かったです。あと曲タイトルのつけ方もセンスいいなと。
 特にお気に入りは『幸福の残滓』。この清冽ながらも、それだからこそ純粋にまとわりつく情念、切望、未練、そういう色合いがすごく弦の調べにリンクしていて、特に後半部の走りがすごく気に入ってます。
 その他お気に入りは、『Of cat psychology』『invisible desire』『冷えゆく空』『灰色の群像』『終わりなき円舞曲』『錯綜する記憶』『心の輪郭』『last in past time』あたりですね。
 あとお気に入りではないんだけど、ありとあらゆる場面で使い倒されているせいか、『feel so nice』がやたら耳に残ってる。。。


システム(9/10)

 演出は基本的には良く出来ているんですけどね。
 可変ウィンドゥによる視覚的動きの多彩性を確保した上での、今回は立ち絵同期もそれなりにきちんと実装して、より躍動的になったとは思うんですが、でもぶっちゃけ、序盤に比べると後半の立ち絵同期の使用頻度ガクッと減ってない?どうにも力尽きた感が滲んでいて勿体無いです。
 背景効果や光源などは汎用的ながらもきちんと組み込まれているけれど、本来ここならもう少し出来そうだよなあとは思ったり。
 Hシーンの、テキストに合わせた部分部分の愛撫カットインなどは中々エロくてよろしかったと思います。
 
 ムービーは出色の出来。
 真紅の薔薇の花びらと、胡蝶の夢のイメージの翠の蝶を基調に、おどろおどろしさと、それでも誘われるように飛び込んでしまいたくなるような雰囲気を全面に醸しだし、その中に浮き絵のようにヒロインを投影するイメージが鮮烈。またそこに、夢と現実の朧さを示すようなぼかしが効果的にまぶされていて、トータルの完成度が素晴らしいです。間違いなく今期では一番好きなムービー。

 システムは基本的な部分での十全性に加えて、カスタマイズの自由度と使用感も微調整されていて、自分好みに万全に合わせるまでの手間隙はあるけれど、実に便利だし阻害感がなくて素晴らしかったと思います。元々こっちは定評のある部分だし、文句はないですね。


総合(86/100)

 総プレイ時間22時間弱ですかね。共通が9時間くらい、共通途中での分岐も含めての個別が、咲と有栖が3時間、弥生と景子が2,5時間、舞亜が1,5時間くらいだったと思います。
 共通が長いので1周目がそれなりに大変ですが、2周目以降はそれなりにサクサク進むかなと。ジャンプなども万全に搭載されているけれど、ただ話の連続性が微妙にわかりにくくなるのはある。逆に言えば、そう繋がるならこれは完全に夢だ、とか、構造的な割り出しはしやすいんですけどね。

 全体的に昨今の作品とは一線を画した雰囲気があり、統一感という意味でも悪くないんですが、正直演出とデバッグで力尽きている気がしますね。。。もう少しそのあたり洗練かつ練りこみがされていれば、もう一段魅力ある作品になっていたかと思いますが、充分プレイする価値のある作品です。
posted by クローバー at 05:55| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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