2013年05月30日

グリザイアの楽園

 三部作ラストということで、果実の時代から熱烈な一姫ファンとして、非常に楽しみに待ち続けた作品であります。


シナリオ(22/30)

 生きる場所と意味を求めて。

 この作品は、グリザイアの果実グリザイアの迷宮の続編にして最終作です。
 果実において、一時の安らぎを提供するかりそめの箱庭の中にしか居場所がなかった5人の少女の心を救う物語を展開し、結果として主人公の存在そのものに生きる意味を見出したヒロインズですが、しかし主人公もまた帰るべき場所、生きる意味を未だ見出せずに彷徨っており、かつそれぞれの少女の問題を取り除いたことで、結果としてかりそめの居場所だった美浜学園も失うことになります。

 そんな中で追いついてきた主人公の過去、それと決着をつけるために、自らの身を賭す事を一切躊躇わない主人公に対し、それでも主人公が生きて戻って期待と思える場所になるべく、5人の少女達は立ち上がります。
 それぞれのちっぽけな体にはちきれんばかりの覚悟と決意を背負い、慕情を募らせて、元々この世界に居場所などなかったのだからという居直りとともに、国家的規模の抗争に巻き込まれた主人公を救おうと息巻くところに差し伸べられた手。それはタナトスと名乗る、国防を司るネットワークシステムの端末であり、しかしてその正体は・・・。

 人は、生きる場所と生きるべき人に依拠して生きる意味を見出す。
 この物語は、主人公にとっての場所と人を築き上げる物語です。


 あらすじはざっとこんな感じですね。
 大枠としては、主人公の巻き込まれた過酷な運命に対し、何とか一石を投じようとするヒロインズを、それぞれの能力を最大限に生かす形でタナトスの計画の一端に組み込むことで、主人公を巡って睨みあいをしている2つの組織の間隙を縫う第三勢力として確立していくという流れです。
 そして、そこまでの意思をヒロインズにぶつけられた主人公は、人を殺しすぎた自分が生きる意味を見出して本当にいいものか尚煩悶しつつ、最後の戦い、自分の過去の全てを清算する戦いに乗り出していくわけですね。

 テキストは今回もいい意味でかっとんでいるというか、前2作にも増してイデオロギー色と趣味人的な語りが濃密になっていて、ともすればその濃度に眩暈がするくらいに、きちんと読もうとすると中々に疲れるテキストメイクとなっていますが、この冷酷と熱情が程よく入り混じった文体に飼い慣らされたシリーズファンとしては、それがより先鋭化していても頷けるところではあるでしょう。
 元々軍事ネタの豊富な引き出しを披露してきたライターさんですが、今回は特に二次大戦ネタが妙に目に付いて、そのあたりは後に触れるテーマとの関連性が面白いところだと思います。

 ルート構成は特に何もなく一本道、最後のほうで分岐選択肢があるくらいですね。
 結局のところ国のために殉ずるか、自身を愛してくれる人のために生きるか、という選択に過ぎないといえばそれまでなんですが、それを選ぶことに価値があるといえばそうなのでしょうね、きっと。

 シナリオに関しては、基本的にブランエールのみの話になりますが・・・。
 最初にまとめてしまうと、この作品はあくまでヒロインサイドの、主人公の生きる場所と意味を築く為の奮闘がメインだ、ということです。
 もっとも、ヒロイン達にしても、そもそも自分の居場所というものは持っていない根無し草となってしまっていて、いくら帰るべき場所になろうと奮闘すれどもただそれだけでは・・・、というところに差し伸べられたのが、居場所が、楽園がなければ作ってしまえばいい、という途方もないアイデアを持ち、しかもそれを実行に移せる能力を持ったタナトスの手で、大きく見れば迷宮以降の流れは、徹頭徹尾その掌中にあると見ても過言ではないです。

 タナトスの存在においては、仮想SFの領域にまで踏み込んでの設定が付与されていて、ぶっちゃけてしまえばかなり都合の良すぎる設定ではあるのですが、しかしこの作品は、過去2作で積み上げたそれぞれのキャライメージ、能力設定が明確に存在し、それを説得力の源泉として、その都合のいい設定を更に最大限使い倒すという荒業を見せてくれます。
 それをもう、ああ、タナトスさんだからなあ、と納得できるかは読み手次第でしょうが、少なくとも私の立ち位置ではそういうやりたい放題といっていい振る舞いは、実にらしさを強く感じるところで満足度は高かったですね。 
 
 そしてそのタナトスさんの要望に最大限応えてみせるヒロインズもまたそれぞれの魅力を発揮していて素晴らしいのですが、でもねぇ、あれだけ文中でみちるは必要な子なんだよ、と強調されると、いや、やっぱりいらなくね?と天邪鬼精神が発露してしまうのは仕方ないでしょう(笑)。
 確かに精神性の面においての存在意義は見出せるのかもだけど、やはり無理にとってつけた感は否めず、そしてそれを含めて、作中でイデオロギーを強調し、シリアスな展開にまで盛り込むことは、グリザイアシリーズで、主に主人公視点で展開されてきた冷酷さ、緊迫感、スピード感を、それらが挿入される分だけ弛ませてしまっている気はして、如何にその猶予が許される状況をタナトスさんが構築していたとはいえ、やはり迫力に欠けると思えてしまいますね。

 それでも、作戦全体の発想の大きさ、それでいて細部にまで手を打っておく緻密な計算、人心をもコントロールしての状況への即時対応、そしてそれに疑いをかけずにまっしぐらに挑んでいくヒロインズの在り方は力強く、それだけの想いを胸に動いているというところが、ちゃんと主人公に対しての錨として機能している、とは思わせてくれます。

 しかし、それを受けての主人公の過去を清算する為の戦いそのものは、上で書いたようにこの物語の余談的な扱いでしかなく、どうにも雑に感じてしまいました。
 何せ、あれだけの周到で狡猾な策を次々に繰り出して、社会に対する不安そのものとして跋扈する偉大なる悪というべき存在が、ああも驕慢に、かつ油断を晒しているという状況そのものが異常に思えます。
 主人公を手に入れたかった本当の理由が最後の部分にあるにせよ、それが軽挙なのは否めないところだし、テーマに対する取ってつけた感もあって、その問答に至る経緯が、あくまで作品のテーマの積み重ねであり、このミクロな闘いの場においての理由付け、説得性に繋がっていないのがマイナス点かなあと。

 何よりこのシリーズは、主人公の背負った不幸に押し潰されない強靭さを主軸に紡がれてきたものだから、その精神性に、根源の責任感以外でほとんど依拠しない無作為な殺戮状況で完結させてしまうのはあまりに肩透かしではないか?と思ってしまうのです。
 まあそれは贅沢な話なんですが、でも全体の尺なども踏まえると、ヒロイン達が頑張った分だけ、主人公の精神の変革を明示しつつの道の打開、という盛り上がりはあってしかるべきとも思えるわけで・・・。実際ここで折り返しだろうと感じたところが8割だったので、そういう思い込みも含めて物足りなさを覚えましたね。

 あと少しだけアフターに触れておくと、あの状況でハーレム許容されるのはいわば必然的ともいえる中で、それでもあくまで主人公に1人を選ぶことを迫るところに、明確な社会復帰の可能性の模索、引いていえば、この楽園を終の棲家として安楽に耽るという思考停止を許さない強さがあって、それでも最後は主人公の選択を受け入れる、と明言するところにものすごくらしさが出ているなあって。
 現状が如何に幸せであっても、それが輪の中で完結してしまうことは何れ遠からずの破綻と行き詰まりを見せてしまうことをわかっていて、繋いでいける可能性は尊いけれどもか細くて、でもだからといって、元々社会からつまはじきにされたが故にこうなった面々をそこに戻すことが本当の幸せなのかと考えれば難しいものもあって、あの終わり方は一見の穏やかな雰囲気とは違ってのシビアなメッセージが籠められていると感じましたね。


 テーマとして私が語りたいのは、人は人の中でしか生きられない、という部分に集約されるでしょうか。
 エリクシルの感想でも触れたけど、人が幸せになるのに、隣人を、社会を、共に幸せにしようという意志が大切だと言う在り方はこの作品にも敷衍できると思います。
 
 戦争の中でとはいえ、殺人という引き返せない業を背負っている主人公にとって、国に殉ずることはその業の償却的な観念でもあり、その延長線上にヒロインズの心を救った行動も置かれるわけですが、それで尚自分の幸せには向き合えないという歪みに対しての答えがヒロイン達の今回の行動であるわけで。
 そして結果的に、主人公が培ってきた人の繋がりが、タナトスという媒介を経て主人公を救う力になったわけですが、その流れで手にした楽園の在り方、あれは本当に人としての幸せなのか?と考えると難しいものがあります。何故なら、あの世界ではこれ以上繋がりを広げることが出来ないからであり、その閉鎖した世界においての破綻は、即世界の破滅でしかないからです。

 おそらくその危険性に当初から明確に気付いているのは1人だけで、それを知りつつ尚流れに身を委ねるあたりは実に豪胆で好きだなあと思ってしまうのですが、結局のところ、アダムとイヴの時代から、楽園とは本質的に業を宿す人間が住まうべき場所ではない、というシニカルな見方がそこから浮上してくるわけで。一縷の希望、とか正にその一端ですよね。。。

 けれど、そんなかりそめであろうと、人が人がましく生きるのに明確に意識できる居場所があるかないかは大きなファクターであり、元の美浜学園では主人公にとってのかりそめにすらなれなかったのだから、さらに大きな鳥篭を作ってしまえ、という部分に意味を見出すべきなのでしょう。
 その、居場所を、自分が属する世界を明確に意識する、というところに、テキストに散りばめられた軍国時代的な意識とのリンクがあり、それは居場所を手にする、或いは守り抜く、という覚悟を持つゆえの精神性であって、頗る現代的に磨耗してしまった精神でもあります。

 見方を変えればグリザイアシリーズは危機小説的な側面もあり、社会に対する警鐘を含んでいると見るべきで、特に昨今、近隣各国との情勢が不穏な中で、けれど日本人はどこまでも安穏とした日々を過ごしています。
 けれども、憲法改正や外交問題の進展など、様々な社会の折り目がすぐそこに迫っている中で、本当に必要なのは歴史に対する明確な認定と認識、そしてそれを土台にした新たな国家論であって、日本人が日本人として国を愛する為には、それは絶対に避けては通れないイニシエーションだと私なんぞでも思うわけです。
 物語は物語として、登場キャラそれぞれの、それぞれにとっての幸せを形にする中で、失われた精神性を発現させつつ、至った結末において、楽園とは本当に人の幸せを保証してくれる場所なのか・・・?と問いかけられている気がするんですよね。
 まあぶっちゃけ、個人主義の極致として、やはり楽園といっていい閉鎖的な物語世界に耽溺している私みたいなエロゲマイスターが偉そうに何を言えた義理でもないんですが。。。


 ともあれ、全体として面白かったのは事実ですし、シリーズのまとめとしてスケール感と迫力は維持したまま、そのまま素直に読み取ればある程度大団円的にすら見えてしまうのですが、あちこちに散りばめられた皮肉めいた警句がシリーズらしさもきっちり下支えしているなあと。
 ただ、やはりイデオロギー的な側面が強くなったことに対するスピード感の欠如と、終幕の雑さが個人的には引っかかるところで、また尺の意味でもフルプライスとしてはもう一歩、というのもあるので、総合して点数としてはこのあたりが妥当かな、と思いました。


キャラ(20/20)

 まあシリーズとしてここにきて完全に新しいキャラなぞほぼ出てこないので、元々築いていたイメージと魅力にどこまで上積みが出来たか、或いはそれぞれのイメージを裏切らない生き方を見せられたか、という部分に評価は終始するのですが、その点では充分に堪能できる仕上がりだったと思います。

 ぶっちゃけこの楽園という物語は一姫無双でもあったので、果実より追いかけ通してきた私にとっては大満足と言えますね。いやほんと、この駄目お姉ちゃん最高ですわ。。。
 今回もまた、それこそ周りの人間を恐懼に陥れて顧みない傍若無人っぷりというか、状況と環境を最大限に使い倒してしらっとしていたり、卑劣と言ってもいいくらいにあざといやり口で徹底的に人心を操作して見せたり、けれどその全てが明確に相手に対する思いやりを含んでの行動であり、更にはその最大目的があくまで主人公1人の為であるところに、この歪んでいるのにやたら根太い人格の神髄を見る想いでした。
 それでいて結構お茶目だったり、世間知らずだったり、ふとしたところでほんのちょっと隙を見せてくれるのが、何より純粋に愛を披瀝してくれるところがまた可愛いんですよね〜。確かにあの環境で更に姉を選ぶとか袋小路の極みなんですけど、それでももうお姉ちゃんエンドでよくね?と思ってしまう次第(笑)。

 その他だと、株が上がったというか、やはり一姫との絡みで色々見せ場があったなあと思うのは天音ですね〜。ある意味この最終作で一番報われているのは彼女じゃないかなあと思うところです。
 幸もあの奪還シーンでの告白の内容そのものは良かったですね〜。ただ状況考えろという全力突っ込み待ちだったのが勿体無いですが。。。
 成長という意味では由美子も蒔菜も見逃せないですし、みちる様?うーん・・・(笑)。

 あとどうでもいいけどおまけHの葎っちゃんがメッチャ可愛くてツボでした。バスケ部面々はどうしてもエンジェリックの状況における印象が強いから、その中では駄目なところしか目立たない子ではあったけど、普通に過ごす分には一番可愛らしい女の子している気がして、基本ヒロインにもそういう素直な可愛さを持っているキャラがいない分新鮮に感じたのもありますね。


CG(18/20)

 シナリオの尺に対してだとかなりの量のCGであり、最後だけあって、必要なところにはきちんとたっぷりつぎ込んできたという感じがします。出来そのものも安定していて、どうしても絵柄の差異には最後までしっくりこない部分はあったけれども良かったと思います。

 立ち絵に関して新規分はヒロインズの私服くらいですかね。蒔菜と一姫の新しい私服が個人的にはお気に入りです。その他諸々に関しては前作、前々作の感想参照ということで。
 あ、でも一姫の表情差分は増えてた気はしますね。どのみちどれもこれも可愛いのですが、特に照れ顔とウインクときつい睨みは好き。


 1枚絵は通常124枚、SD17枚の大ボリューム。無論こういう作風なので全部がヒロイン絡みではないですし、今回は一層抗争関連のそれが多い傾向ですけど、それ抜きにしても充分な量はあるので満足です。
 
 特にお気に入りは2枚。
 1枚目は再会と涙。まあこの天音の表情の素晴らしさといったらないですね〜。がっつり感情が移入してしまう、驚愕と狂喜と陶酔が入り混じった雰囲気はたまらなく好きです。
 2枚目は一姫正常位、あの場面で敢えてそっと身を委ねる強さもさることながら、そういう風に扱われることに無上の喜びを湛えているかのように、少女らしい華奢な肢体を投げ出している構図がすごく好きです。

 その他お気に入りはページ順に、大人の会食、コンビニアイスの誓い、掃き清め、出立、爆弾処理、キアラの糾弾、運転中、試射、怠惰なJB、由美子の宣告、狙撃、幸の糾弾、逃走、切迫のハンドリング、ブッシュアウト、撃墜、蘇生、復活、平手打ちと抱擁、お風呂で挑発、3P愛撫、正常位、天音フェラ、バック、一姫愛撫、バック、新たな生命、天音登場、みちる登場、幸登場、海で、穴の中で、抱擁と涙、主従の誓い、キアラ猫、対面座位、JB正常位、4Pフェラ、葎バック、3Pサンドイッチあたりですね。


BGM(18/20)

 世界観は踏襲しつつ、新生的なイメージを付与したより迫力のある楽曲を投入していて中々の出来かなと。
 
 ボーカル曲は6曲もあるのでお気に入りだけ。
 OPの『FISSION』はシリーズのイメージであるスタイリッシュさに力強さがより多く振り分けられたような感じで、やはり疾走感と迫力が素晴らしいと思いますね。特にBメロの突き放したようなメロディと歌い方が気に入ってますし、サビもパワーがあって好きです。
 プロローグEDの『Eden’s song』は、爽やかな雰囲気の中にどこか地に足のついた重々しさを孕んでいて、リズミカルなのに芯の強さを感じさせつつ流れ込むサビの迫力が好きです。つかこの曲聞くと微妙にすば日々思いだすんですが。。。

 総合して今回はボーカルに関しては悪くはないけどもう一歩という感じですね。個人的にはやはり迷宮が白眉でした。特に物語が完結してみると、OPの『ワールドエンド』、EDの『創世のタナトス』というタイトルが物凄くストレートに状況に即していたんだなとより感じ入るところがありますね。

 BGMは新規分だけで42曲と実に豪華。しかも出来もかなり良かったですね。
 特にお気に入りは『縋るべき縁』、それぞれが絶望的な孤独に苛まれてきた運命の中で、信じたいのに信じ切れないという切ない心情と、それでも、と手を伸ばさざるを得ない擦り切れた心の痛みを強く強く感じさせる素晴らしい曲です。
 
 その他お気に入りは、『並び咲く花』『抜錨のときぞ来たる』『つかのまのひととき』『Manufacture』『Risky thoughts』『moment of inertia』『Thanatos』『Dancing Bullet』『荒野を越えて』『BlancAile』『楽園に実る果実』『小さき芽生え』あたりですね。


システム(8/10)

 基本的に前作準拠ですが、そろそろ配点的には落としていいかな、というところでしょうか。バトルシーンにムービー組み込んでいるのが目新しいくらいで、実際その分容量も重くなっている感じですしね。。。
 ムービーは相変わらずスタイリッシュで迫力があっていい感じではありますが、迷宮のときほどは好みではないかなと。


総合(86/100)

 総プレイ時間16時間くらい。ブランエールが12時間、プロローグとアフターが1,5時間、おまけHが1時間ですね。
 最終作としてのまとまり、そこに至るまでの怒涛の展開と面白味は存分に堪能できましたが、やはり全体としてのバランス、オチに対する考え方の振り分けなど踏まえると、絶賛、といえる出来ではなかったのも確かで、正直ボリュームを考えればカプリスからブランエールまで1本でも・・・と思わなくはないですね。。。
 
 それでも満足度は高かったですし、シリーズ追いかけている人は当然として、まだこのシリーズに触れていない人はこの機会に是非一気にプレイしてみるとすごく楽しめるんじゃないかと思います。
posted by クローバー at 05:33| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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