2013年08月08日

乙女理論とその周辺

 月寄りは面白かったですし、妹攻略も楽しみながら、それ以上に新ヒロイン2人がめっさ可愛かったのでもう迷いなく購入。


シナリオ(25/30)

 紡いだ絆の輪は広がり・・・。


 この作品は、2012年10月に発売された月に寄り添う乙女の作法の続編、という位置付けになります。
 自らの不注意で桜屋敷を放逐され、夢破れて自暴自棄になっていた主人公が再びりそなの元へ帰ってきて、そして改めて仕える人と土地を変えて再度女装主人公として夢を追い始める、今度はパリを舞台とした物語です。

 りそなに先駆けて単身パリにやってきた主人公は、その日から暮らすアパートで運命的な出会いを果たします。
 その少女の名はメリル、奇しくも彼女もまた、フィリアパリ校に付き人として通う為に田舎からはじめて都会にやってきた純朴さ際立つ少女で、その主人のエッテから類稀なる服飾の才能を見込まれており、隣の部屋で暮らしていくうちに、主人公もその天才性に目を見張らされることになります。

 そして、大蔵家内部のゴタゴタを振り切ってようやくりそなも渡欧してきて、本格的に始まるパリ校での服飾の授業。日本に比べて格段に厳しい授業、人種の違いによる差別など、元々引き篭もりだったりりそなには辛い日々を乗り越えていくうちに、りそなにもまた服飾の道への志望が生まれていき、そしてそれは、全員に共通する年度末のコレクションへ向けての意気込みになっていきます。
 果たして彼らは、今度こそ進むべき道を全うできるのか?その行く手にふさがる様々な障害を、如何にして打破し、ささやかな夢を叶えることが出来るのか?これは、人の繋がり、信頼の強さと脆さ両方を通じ、地位や名誉に目もくれずに自分の歩みたい道を邁進する為に戦う、愛と奉仕の物語です。


 あらすじはこんなところです。
 大枠としては、ちょうどこの時期に本格的に勃発する大蔵家の家督争いに否応なく巻き込まれていく血族たち、その巨万の富を巡って、ここの人格と志望がともすれば軽視される中で、その初志を貫く為に誠意と信念を持って立ち向かう、という流れになります。

 テキストはいつも通り、格調高さと品のなさが何故かバランスよく同居した、実にメリハリの効いた読み口に仕上がっていると思います。舞台がパリだけに世界史ネタが多彩で、一方品のない名前いじりも世界水準になっていたりと、いい意味でも悪い意味でもスケールアップしている感じで、といって眉を顰めるほどのものでもないし、素直に笑える範疇ですね。

 ルート構成は特に問題なく、好みのヒロインを追いかけていればOKです。
 基本的には個別ルート序盤の主人公の行動とその結果によって、少しずつ背景の事情にも影響が及んで、それが後々大きな展開の変化に繋がっていく形になっています。極力相互間のネタバレを省いたつくりになっているため、かなりルートごとに温度差があります。

 シナリオは本当に玉石混交というか、質も尺も明確に、りそな>>メリル>>>>エッテという順番ですね。
 簡単にまとめてしまえば、主人公達が向き合うべき問題に対して、エッテシナリオは短絡的に、メリルシナリオは限定的状況の中での限られた誠意を持って、りそなシナリオは全方位的に誠実さと折れない心を持って解決に当たっていて、その程度の差に説得力を負荷する為に、シナリオの尺もそれに準じている格好です。

 特にりそなシナリオの出来は素晴らしいです。今期トップクラスだと思います。
 主人公がこれまでに培ってきたもの、りそなが新たにこの地でコツコツと積み上げてきたもの、そういう、人として正しく美しい誠実さと前向きさが、彼らが窮地に陥ったときにほんの少しずつ力になってくれて、一挙に解決するでなく、そういう小さな積み重ねの結果として辿り着く地平が実に清々しい。
 最終的にこのルートの解決に必要なものは純粋な信頼、であるために、あやふやな人の心のありようを如何に説得的に見せるか、と言う部分が重要ですが、このシナリオはそれを十全に成し遂げていると思うし、やや背景設定で腑に落ちない部分があるものの、それ以外は実に丁寧で効果的な構成だったと思います。

 その中でもやっぱり、一番追い詰められているときのあの再会は卑怯だよなあって。続編、というスタンスであるからこそ出来る業であり、しかもそれを過剰に使い倒すわけではないところに、作り手の誠実さも垣間見えたと思います。
 今作においても主人公は恐ろしいまでに澄みやかな心と、貞淑な献身を見せてくれるわけですが、それもある意味では本編があるが故の読み手の納得、という一面もあるので、それも含めて本当に上手く色々な要素を綺麗にかみ合わせたシナリオだったなと。

 メリルシナリオも中々良かったですけど、ただちょっと不満なのは、これだと単なるシンデレラストーリーの色合いが強すぎて、ラストのショーの意義が、主人公とメリル、2人の清らかな精神性の明確な発露、という以外の強い意味を持ち得ないところですね。
 折角作中でも髄一の才能であるわけだし、りそなシナリオでもその才の全貌は隠されたままに終わらせている以上、もっと大向こうを唸らせる、そしてその才のみでも世を渡っていけるんだと果敢に世界に挑戦状を叩きつけるような、迸る展開に終盤持ち込んでくれればより素晴らしいシナリオになったんじゃないかな、と思う次第。
 しかし、このシナリオ最大の見せ場は、メリルが自身の素性を知っての率直な反応ですよね〜。普通の感性のキャラに言わせたら、わざとらしくも白々しい開き直りに見えてしまう台詞が、メリルという特異なまでに純粋なキャラの言葉であるだけで、心に深く染み入る反応に思えてしまうあたりが設定の勝利だと思います。

 エッテは本当におまけに近い形ですね。
 作中の様々な謎も、それぞれの人物の真意も隠されたまま、短絡的な行動の結果、そもそも2人が恋仲であることがたまたまうまく転んだ、というだけであって、ちと食い足りない内容。まあ立ち位置的にそうなってしまうのは仕方ない面もありますが、最初にプレイ推奨です。


 テーマとしては、やはり信頼の在り方に尽きるかなと。
 信頼が疑いに転化するには、それこそたった1つの瑕疵でも充分なのに、その逆はすこぶる難しい、いくら細かく信頼を積み上げようとも、たった1つの心の壁がそれを妨げてしまうというのは、悲しいまでに人間社会の現実であって、そういう悪意の壁に対して、常に飾らない誠実な自分で向き合うことで、少しずつ壁を溶かしていくのは本当に大変なことで。

 主人公に関しては、元々の気質がそうであるのと同時に、女装して相手と対しているという特大の負い目が1つあるが故に、普段以上に朝日の格好においては誠実さが際立っていて、またりそなもりそななりに、そういう主人公を見て自分の生き方と信念を変えていきます。
 メリルに至ってはそれしか生き方を知らないが故の直情的な純朴さがあり、そこには、駿河が問うた、人の性質は血によるものか、環境によるものか、という疑問に対する答えも埋まっているのかなと。

 そして、そういう信頼の在り方は、いざというときに助けになってくれる人を増やすという明確な見返り(といっては誠実ではないかもですが)があり、それは時に立場や権威を超えて作用する大きな力にすらなりうる、という可能性を、この作品の、特にりそなシナリオは丁寧に築き上げたといえるでしょう。
 それを納得させしめるだけのキャラ性と構成を組み上げたところに、この作品の真価があと個人的には思っています。


 以上、りそなシナリオだけで名作判定出してもいいかなと思うくらいにはインパクトがありましたが、細かい部分での瑕疵は結構見受けられることと、他ルートとの温度差、注力度の差異がどうしても目に付くのはあり、この点数が妥当かなと。

 
キャラ(20/20)

 ベースとなるキャラ性がとても魅力的な上に、程度の差はあれきちんとヒロインの成長を書けている内容でもあるので、その分だけ思い入れは強くなりますね〜。

 一番好きなのはやはりメリルですね。
 あまりに純粋で、かつ天然で天才過ぎるわりに、その立場はかなり不遇でもあり、その純朴さが都会において仇となる部分も多くて、それでもそういう辛い、しんどい部分を極力表に出さずに明るく前向きに振舞える心の強さがあって、何より主人公に心を預けているときの愛らしさ、微笑ましさといったら素晴らしいものがありました。
 確かに考え方が、教科書的に規定されている部分が多く、そのあたりでの人としてのふくよかさはちょっと足りない子ですけど、それ故に、切所での他者の悪意を顧みない純真な受け答えに際立った個性が溢れていて、特に個別の主人公との関係性のくだりでのそれは物凄く気に入ってます。
 惜しむらくは、そういう性質ゆえに、主人公との男女関係が、本当に神の前での誓いの契り、という面しか見えてこないところですかね〜。一時の快楽に溺れすぎてしまって懺悔するメリル、とかちょっと見たかったのは私だけでしょうか?

 次いでりそなになりますね。まあこれはシナリオ補正が大ですが。
 それまでの抑圧された環境から解き放たれて、更に主人公の性質により一層感化されて、生活に慣れていくに従って少しずつ自分なりの誠実さをみらつけていく流れは実に滑らかで無理がなく、その中でも主人公に対する一途さは失わずにいることが、りそなのというキャラの芯になっているのがしっかりわかる骨格だったと思います。
 意地っ張りなところも程好く可愛いですし、実は血統的に見てもギリギリセーフなはずで、それでも近親婚に対する色々な葛藤も含めて純良な関係性を見せてくれたと思います。

 エッテは普通に可愛いけど、なんだろう、立ち位置としては湊のやや劣化版?みたいなイメージですね。元々のどうあっても崩れない立場があるゆえの気楽さや甘えが、闊達な魅力になっている部分と、切所での短絡振りの両面に生きていて、個別もああなだけにあまり成長は感じないキャラですけど、あくまでメリルの生き方を支える、という位置においてはブレのない、この作品に欠かせないキャラであるのは間違いないです。

 あと大家さんはいい味出してたな〜。妙に印象が強いです。
 兄に関しては、本編で語られなかった真情などを見せたことで、マイナスの印象はある程度払拭できたと思うし、その意味でも成功ですね。まあ母親は色々と駄目だけど。いや、ある意味一番駄目なのは爺の気はするけど。。。


CG(17/20)

 アペンドまだ触れてないので、そっちの資産価値を2000円と切り分けで採点しています。
 質・量共に本編ほどの丁寧さと華やかさは感じなかったですが、FD水準と見做せばまあ水準クラスではあるし、悪くはなかったと思いますね。

 立ち絵に関しては、新規キャラが多いのでそれなりに新作の趣ですし、満足度は高かったです。
 ポーズは1人2種類、サブは1種類と多くはないですが、それぞれ個性はきちんと生かしつつですし、みんな可愛いので特に文句はないですね。
 特にお気に入りはメリル正面とやや横向き。正面向きの清潔で清楚な雰囲気はすごくいいし、やや横向きの、胸前で指を組み合わせている雰囲気も、実にメリルらしい敬虔さが滲み出ていて大好きですね。
 その他お気に入りは、エッテ正面、くらいか、なんだかんだ元々いるキャラも多いですしね。

 服飾はヒロインで6種類、サブで3〜4種類でしょうか。これは季節を跨ぐ分の必然もありますし、量としてはそうならざるを得ない最低限、という感じですが、それでも丁寧なつくりですし、デザインも本編より洗練されている気がしますね。
 特にお気に入りはメリル秋私服と寝巻きでしょうか。やはりこういう、清潔で貞淑な雰囲気の漂う、それでいてきちんと可愛らしさも含まれている服装には私本当に弱いのです。
 その他お気に入りは、メリル夏私服、夏制服、冬制服、コート、りそな夏制服、私服、コート、エッテ冬制服、夏私服、寝巻きあたりですね。

 表情差分は多くはないですし、パターンも結構いつも通り、という印象ですが、まあそれで充分に可愛いからいいかって感じ。
 特にお気に入りはメリルの困り眉と明るい困惑顔、とにかくこの子はどうしよ〜、って感じの表情が似合いすぎてます。ぴゃあぁぁぁ〜〜〜、も相当に好きだしね。
 その他お気に入りはメリル笑顔、怒り、照れ怒り、祈り、憂い、半泣き、わくわく、戸惑い、りそなジト目、照れ焦り、笑顔、睨み、大泣き、エッテ笑顔、ジト目、からかい、怒り、照れ目逸らしあたりですね。

 ・・・と、こう書くと本気で私メリルの立ち絵好きだなあと。多分今期トップクラスに好きですね〜。


 1枚絵は全部で64枚、若干物足りないかな、とは思いますが必要なところには用意されているのでいいかなと。出来も本編よりは安定感ないかなと感じました。
 お気に入りはページ順に、りそな桜の下で手を繋ぎ、採寸、贈り物、キス、ショーの舞台、お姫様抱っこ、輝いて、初H正常位、兄妹仲良く、メリル来訪、無邪気に椅子と、脚光、蚤の市、帰郷、添い寝、待ち人、苦渋の涙、裁縫、スピーチ、初Hお口遊び、ドレスアップ、お姫様抱っこ、エッテ裁断、抗議、愛撫2、追跡者、シャワー室で、添い寝、ドレス翻し、手を繋いで、桜の樹の下の再会あたりですね。


BGM(17/20)

 新規もそれなりに用意されているし、元々の曲の雰囲気のよさともマッチして、全体的にこの世界観がすごくふくよかになった印象ですね。

 新規ボーカル曲は3曲。
 OPの『Fragile』はやはりどこか厭世的な印象のあるメロディに、それでも前向きに歩んでいく強さを塗した、本編OPと似通った方向性に思えますが、流石にあれほどの出来ではなく、それなりにいい曲、どまりかなと思います。
 挿入歌の『Sweet Heart Cherry』は、これまた本編のショー曲にイメージを合わせた、華やかで颯爽とした雰囲気が色濃い、中々インパクトのある曲ですね。特にサビのリズム感はかなり好きです。
 EDの『恋吹雪.花吹雪』は、どこか回顧のイメージが強い、それでいて明るさとしっとりした情感も含んだ柔らかく綺麗な曲かなと。ちょっとサビの歌詞が即物的に感じる以外は基本好みの曲です。

 新規BGMは15曲、本編の曲もかなり多用されているので、上手く混在して雰囲気を相乗効果で高めていると思います。
 特に好きなのは『光を』。この透明感と柔らかさと懐の深さをすごく想起させる、実に美しいメロディラインと素朴なフルートのコラボが最高ですね〜。本当にこの作品、1枚絵以外のメリル関連が私のツボをつきまくって仕方ないです。。。
 その他お気に入りは、『メヌエッテ』『パリと乙女と恋するなにか』『地下アトリエのパリジェンヌ(たち)』『DESIR』『僕たちのオルレアン包囲戦』あたりですね。


システム(8/10)

 基本的には本編準拠なのですが、やや演出の注力度が本編より低いかなと思ったのと、あとムービーも、今回もそれなりに雰囲気よくまとめてはいるけれど、屈指の完成度だった本編には及ばないかなというところでちょい減点です。
 あ、でもシステムにはサスペンドとかちょっと追加あるのですよね。使ってないけど。。。


総合(87/100)

 総プレイ時間20時間。りそなとエッテ個別の中に共通部分あるのでそれはりそなに寄せて換算して、共通7時間、りそな7時間、メリル4時間、エッテ2時間くらいです。その他はほぼおまけ程度ですしね。
 やはりテキストの勢いとキャラの個性、そして設定の面白味でグイグイ牽引していく作品であり、それでいてきちんと締めるべきところは真面目に締めているのが印象的。もう少しルート間格差が少ない、無論りそな寄りに、であれば、本編以上の評価も出来たかもしれません。
 
 本編やった人ならまずプレイして損する事はない堅実な出来ですが、特にりそなに思い入れが強い人には勝ったも同然の破壊力があるので、是非に手にとってみるといいと思います。

 2013/12/25追記、シナリオ+1点。
posted by クローバー at 04:30| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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