2013年12月17日

十六夜のフォルトゥーナ

 元々こそっと注目していたタイトルでしたが、体験版での絵の美麗さ、音楽の素晴らしさ、キャラの可愛らしさに打ち抜かれ、シナリオ面でも存外面白そうだったのでとても楽しみに購入しました。


シナリオ(22/30)

 宿業からの解脱と、魂の再生を求めて。


 主人公は京に居を構える、古来より隆盛を誇る祈祷師の一家に生まれつきました。
 その血統ゆえに生来の力として霊を見ることが出来たり、未来視という特殊な力を備えていた主人公ですが、自身は幼い頃よりその力を忌み嫌っており、また純血主義ゆえに近親での婚姻を繰り返していた一族の中で、唯一心を許していた婚約者にまつわる軋轢があって、生家に絶望した主人公はある日全てを捨ててふらりと出奔し、放浪の旅に出ます。自身の生きる意味を、本当の価値を求めて。

 そのように気儘な放浪の旅を続けて1年半、ある夏の盛りの日に立ち入った五条町は、町と呼ぶのが憚られるほど寂れており、そこに至るまでに体力を使い切った主人公は、駅舎で野垂れ死にそうになっているところを、この町の教会のシスターであるルシアに助けられます。
 手厚い看護のみならず、食の面倒まで見てもらい、さしあたりその恩を返すためにしばらくこの町に滞在することにした主人公ですが、過疎により高齢化した町では、主人公の旅の間の生業である似顔絵書きではさっぱり稼げず、そんな主人公を心配して心づくししてくれるルシアへの恩は嵩む一方でした。

 そのようなゆったりした日々の中、主人公を生家から、新たな婚約者である乙女が追いかけてきたり、双子の姉妹である時雨や小菜とも知り合いになったりで、少しずつこの町での柵、関わりが積もっていく中、にわかに殺人事件のニュースが町中を震撼させます。
 閑静で平和だけが取り得の様だった町に降りかかった突如の事件、それは主人公にも大きく余波をきたし、様々な事情と理由から、より一層知り合った女の子達との関係性を強めていくことになる主人公は、果たしてその繋がりの先に如何なる運命を見出すことになるのでしょうか?

 失われた魂の救済。
 残されしものの慟哭。
 絡み合い、変転する運命の輪。
 事件の真実とその陰に潜む不条理の刃。

 誰もが予期し得ない、生得的な宿業と、後天的な宿業がもたらす悲劇に涙暮れつつ、それでも生きる意味を求めて彷徨い、強く真っ直ぐに進んでいく勇気を得るために、人は絆を結び、傷と向き合っていく、これはそんな、救済と再生の物語です。


 あらすじはこんな感じですかね。
 全体的に語るとネタバレすぎることが多い作品なので曖昧さが表立ってしまいますが、大枠としては誰か1人のヒロインと深く関わることが、小さな運命の羽ばたきとなり、やがてそれが大きな波紋となって2人の関係に影を落として、それに立ち向かい、克服することで新たな生きる意味を模索していく、という流れです。

 テキストは全体的に良く言えば典雅、悪く言えば平凡ですね。
 閑寂とした田舎町の雰囲気に見合ったゆったりとした空気感とざっかけない人間関係を丁寧に描写しつつ、異邦人である主人公の存在を軸にして会話のリズムや思考の在り方にも新風を吹き込む、というイメージで、共通からほぼ個別のラスト近辺までは1日刻みで物語が進むのもあって、蓄積されていく空気感に浸れれば楽しい、という感じです。
 逆に言えば変化に乏しいともいえ、ある程度状況に緊迫感はあるものの、どうしても読み手側がじれったく感じてしまう部分はあったりで、とにかく起伏が少ない、緩やかなスロープを転がり落ちていくような構成に合わせたテキスト組みではないかと思います。

 ルート構成は、最初は双子のみ攻略可能で、その後乙女、最後にルシアが解放される仕組みですね。それぞれのタイミングで追加選択肢が出て、基本的にそれは双子に寄らないつくりになっていて、本質の流れとしての強制力は一番にルシア、次に乙女に流れていることを示しています。こういう工夫がはっきり見えるつくりはいいですね。
 双子に関してはどちらかと言えば時雨のほうが後半の物語との関連性、親和性が強いので、小菜を最初にクリアするのが個人的なお勧めです。

 シナリオに関しては、いい面と悪い面がはっきりしているつくりですね。
 というのもこの作品、個々のシナリオとしてはかなりいい出来なんですが、全体の構成としての整合性に関しては、おそらくですが意図的に無視しているからです。端的に言えば、それぞれの個別シナリオがパラレルになっていて、外的要因に見えることであっても一切別シナリオでは発生しない形式で、どちらかと言えば全体の調和を高く評価する私にすると、あれ?となるところですが・・・。

 ただ、そうする意味はちゃんとあるのですよね。
 公式ページや、OPにも銘記されているように、これはあくまで偶然、運命に翻弄される物語であり、どんな些細なきっかけであっても大きく人の運命を狂わす可能性を秘めている、という、より現実の在り方に近い構造を意図していて、物語の枠組みで後付けで見た場合の必然性はかえって足枷になると判断しているのでしょう。
 本来共通から分岐、派生する物語の在り方としてそれは正着なのかという根源的な議論はここでは別口の問題にしておくべきなので、あまり踏み込むことはしませんが、ともあれそういうつくりを志向する事で、全体の整合性を犠牲にした代わりに、個々のシナリオでの心情・思想的構造においては完璧に筋の通った物語を展開できているわけです。

 その両方を両立できれば大傑作になるのですが、昨今だとお手盛りで表層だけ整合性を整えて、その分個別でも踏み込みが浅く無難な物語になってしまう、どっちつかずな傾向が強まっている中では、ある意味この割り切った選択も、書き手の力量とも関わって1つの正解なのかもなあと思います。少なくとも、半端に整った物語より読んでいる最中は楽しい、というのは間違いないので。

 物語としては大枠で触れたように、とにかくそれぞれのヒロインや主人公が背負った様々な宿業や傷から、日々の何気ない触れ合いの積み重ねの中で少しずつ解脱を模索していく、というのは共通していて、また主人公の能力などを含む超常的なあれこれも物語に密接に絡み合ってきて、アップダウンは少ないけども押し寄せる高潮のような波濤の勢いがある作品だと思います。
 個人的には双子シナリオのほうがより地に足がついている印象で(ネタバレ⇒幽霊譚なのに地に足がついていると表現するのも不可思議ではありますが。。。)、全体のイメージも切なる悲しみを含みつつも穏やかに進むので好きかなあと思います。

 無論ルートロックした分だけ、乙女、ルシアのシナリオにはダイナミズムがありますが、上に書いたように何故それが起こるのか、という必然の伏線は特に引いていない作品ですので、あまりに超展開だと読み手がその流れの中から心情を汲み取りにくくなる、というのはどうしてもありますね。
 設定的にこちらのほうがドンパチが多くなる、という部分も含めて、派手さはあるのですがやはり浮き足立ったまま駆け抜けてしまっている印象は拭い切れていませんでした。それでも特にルシアはじんわりと染み入るようないいシナリオなんですけどね。

 またこの作品、どちらかというと恋愛要素は薄めになりますが、その過程においても一切派手さがない、劇的な感情の変化、というものはほとんどなくて、とにかく丹念に日々を積み重ね、想いを重ね、優しさに触れていくうちにいつの間にか恋に落ちていた、というつくりを採用しています。
 それは前提として、他に気がかりになることが多くて恋愛にかまけていられないという状況もあるし、表面的には牧歌的な平和な町で暮らしてきた上で培われた精神性にも反映される所で、昨今目立つ、1つ2つ心が近づく都合のいいイベントを経てすぐに恋人になりH三昧、といったようなものとは真反対のつくりを志向していると思えます。
 それの善し悪しはやはりこの作品単一で踏み込む話ではないですし置いとくとして、少なくともこの作品に関して、確かに恋愛面やHシーンの量に対する物足りなさが全くないとは言えませんが、それぞれのヒロインの本質に見合った流れでのシーンにはなっていたので、その意味で不満はなかったですね。

 
 テーマとしてはやはり、運命の変転に翻弄される中で、それに溺れないために必要なものは何なのか、という部分かなと思います。

 十六夜のフォルトゥーナ、というタイトルは色々な読み方が出来るとは思いますが、私はテーマ性との関連で、運命の曲がり角、という捉え方をしています。十六夜の月は満ち満ちているようで、でも僅かに欠けはじめている、いわば陽から陰に転ずる象徴であり、魔に魅入られる契機としてのイメージも強いですので、特に後半2人のシナリオの折り目の劇的さとは重なって見えますね。

 そして、人が窮地に陥ったときに、その助けになるものとは何なのか、という問いにもまた、いくつかの答えがありますし、それぞれのルートでそれを具象化しているわけですが、一言で括ってしまえば絆、に尽きるのですよね。
 血の繋がりがもたらす安心と恩恵、信仰がもたらす断固たる信念と寛容、日常がもたらす積層する繋がりと古色蒼然たる村意識、そういう様々なものが、前に進むときでも、自分1人で進んでいるのでなく、すぐ横に手を繋いで一緒に歩んでくれる人がいる、という安らぎを生み出すわけで。

 もし様々な苦難に囚われて歩みが遅くなっても、それでもそれを待って一緒に歩いてくれる人がいる、というのは、どうしようもない悲しみの海にたゆたって、ただ苦悶に打ちひしがれるしかない、最終的には過ぎる時間の中で自分の力で折り合いをつけるしかない問題に向き合う上で、これ以上ない助けになるのでしょう。
 逆に、そういう痛みの理解者を得られず、伴走者もないままに生きる事を余儀なくされると、その苛む孤独が一層痛みを拗らせ、心の奥深くに根付かせ、宿阿となって人生の歩みを縛る、時に他者をも巻き込んで暗闇の渦に引きずり込もうとしてしまう、というのが、例えば乙女シナリオでの悪霊、ルシアシナリオでのノエルの存在に象徴されています。

 ただ個人的には、先天的にその宿業を背負っていた乙女やルシアシナリオよりも、後天的に運命に悲劇に文字通り巻き込まれただけの双子(ネタバレ⇒ぶっちゃけ主人公と乙女がこの町にこなければ、悪霊の活動も活発化せず、小菜も殺害されずに済んだんじゃない?という推察が成り立ってしまう作品ですので・・・)のシナリオのほうが、より痛みの手触りが身近というか、折り合いをつけていく流れの丁寧さがより染み入るように感じましたね。


 以上、総合的に見て、非常に偏った構成の作品でして、善し悪しを総合して考えるとやはり凄く高評価、とはいかないのですが、全体の尺もすこぶる長く、それでいて心の救済に必要な流れ、最後の恋愛に至る流れとしてそれが入用であった、というイメージは確固としていて、ゆったり穏やかながら個性の強い、大河のような物語であったという印象です。


キャラ(20/20)

 物語としてすんごく長い割に登場人物はかなり少ない作品なので、その分1人1人の描写は濃密で、心の襞の部分までATSなども駆使して踏み込んでいくので、愛着は湧きやすいつくりだと思いますし、何よりもヒロイン達の淳良さとひたむきさが煌めいていて素晴らしかったと思います。

 一番好きなのはルシアですね。まあとにかく可愛かったです。
 信仰、という強い背骨を持っているが故に、生き方そのものからして世俗を超越しているかのような雰囲気、無論日常での篤実さも光っているのですけど、それ以上に慈悲や寛容の精神性が輝いているヒロインだったと思います。
 そして、本質的に人は神の前に平等、を地で行くような優しさを振り撒いていて、けれどその分だけ、慈悲の笑みは浮かべても自分が楽しいがゆえの微笑みに乏しかったのが、主人公と深く関わっていく中で、時に純粋で素朴な笑みや焦燥や照れなど、女の子らしい愛らしい仕草や素振りを見せてくれるようになるのが凄まじい破壊力だったなあと。

 主人公も人を愛することに対してのトラウマ持ちですし、ルシアも高潔で超越的な精神構造の為に、恋愛に至る経緯がたどたどしいのも一番頷けるところで、それだけに自身の内に宿る愛に気付いてからの真っ直ぐさや直向きさも愛おしく、更に一段と甲斐甲斐しくなったりで本当に青天井の魅力だったと思います。
 シナリオ面でも、構成上の不満こそあれ、ルシアの生まれの意味と信仰の在り方を示す意味では瑕疵のないつくりでしたし、そもそも総合的にこの作品がルシアをベースにして作られているのだなあと思わせるに足る素敵なヒロインでした。この子も殿堂入りは確定かな。

 次いでは迷うけど時雨のほうでしょうか。
 出会いの形が最悪だっただけに基本主人公に対しては当たりが強いし、作中全体を通してどうしたって癒えきらない痛みを抱え、精神のバランスを保つのに苦慮しているヒロインなので、そのフィルターを通してみれば刺々しい言動や一見甘えに見える行動も看過できるというべきか、ただそこに元気でいて、たまに屈託のない笑みを浮かべてくれるとすごく心が躍るようなヒロインでしたね。
 浮世離れした印象のヒロインの中では一番女子校生っぽい現金さや我が儘さも見え隠れしていて、ただ決して行き過ぎではないし、本質的には優しく心に決めたことには真剣に取り組む一途さもあるから、出来すぎな他ヒロインと比べても魅力で劣ることは決してなかったと思います。それに、恋愛に対してはこの子が一番あまやかだったと思いますし。

 んで微差で小菜です。
 この子の場合は本質的に出来すぎの部類に入るだろうに、それを発揮する機会を与えられていない不憫な子でもありますし、与えられた立場ゆえに制約も多く、ヒロインとしての奥行きを見出すにしてもかなり狭い道の中での選択の幅になってしまうので、その分だけ最終的に時雨に負けたかなあという感じ。発展性の差、としてしまうのは繰り返すもあまりに不憫なのですが仕方ありません。
 ただそれでも、日常の中でこういうキャラが率先して明るさや笑いを振り撒いてくれるのは作品のイメージにも安心感を与えていましたし、そういう健気さは凄く光っていたと思います。

 乙女も直向きで一途、という意味では間違いないのですけど、如何せんあまりに盲目的過ぎるというか、好き好んでではあるにせよ運命を自身の意志で強固に縛り付けているようなイメージがあって、それがときに言動に傲慢さとなって滲んでいたのがちょっとなあ、という感じ。
 色々シナリオ的にはキーキャラになっていたり、縁の下の力持ち的に活躍してはいるのですけど、ヒロインとして他3人が凄く魅力的だったのもあり、私の中では一番下になってしまいますね。


CG(19/20)

 いやはや、公式で見ただけでも絵のレベル上がってるなあとは思ったんですが、実際プレイしてみると素晴らしい出来でしたね。元々体験版で、時雨の慟哭の1枚絵を見て買うことを即断したくらいですし、まあ塗りの繊細さもあるのでしょうけど、本当にあののっぺりして躍動感、情感が感じられないと散々くさしたAreasのときとは雲泥の差といっていいでしょう。
 元々方向性としては大好きな部類の可愛い系の絵柄ですし、今回はそれが洗練された上に1つ1つの素材が凄く丁寧に描かれていて、ほとんど文句ありませんでした。減点の理由は只1つ、量が少ないってだけですね。これで水準量だったら間違いなく満点つけてました。

 立ち絵に関しても、素材量は水準クラスですが質は磐石ですね。公式のキャラ紹介だと少し縦に潰れていて幼さが強く出てしまっている気がしますが、実際にプレイする中での立ち絵はそんなことなく、大人びた雰囲気と愛らしさが程よく絶妙に噛み合っていて、特にルシアと時雨の出来は垂涎ものだったと思います。

 ポーズは後ろ向きまで入れて1人4〜5種類とかなり豊富ですね。特にルシアは差分も含めてかなりポーズが多く、実際に動きのあるシーンも多いのでその分躍動感を感じさせ、同時に平常の淑やかさとのメリハリがしっかり効いていて素晴らしかったです。
 
 特にお気に入りはルシアやや右向きと時雨左向き。
 表情も含めて、ではありますが、ルシアの右向きは口元に添えた手が本当に淑やかつさと愛らしさを際立たせていて、特に微笑んだときや苦悶に満ちての線目のときの可愛らしさはもはや奇跡の1枚と言っても過言でないくらいの破壊力がありました。
 時雨左向きも、ある意味で時雨の精神性を的確に捉えた立ち絵であり、故にこそ邪気のない微笑が心に刺さるというか、綺麗なんだけどどこか悲しみの影も過ぎらせていて物凄く好きですね。
 その他お気に入りは、ルシア全部、時雨正面、左向き、小菜やや右、左から見返り、乙女正面、やや左、ゆり子左あたりですね。

 服飾は1人3〜5種類と、まあ学園生活はほとんど出てこないしその中では揃えたほうかなと思います。デザインも素朴な色使いが多くて舞台設定としっくり馴染んでいていいと思いますし、可愛らしさも引き立っていたと思います。あと制服の胸元のそこはかとないエロスが最高でした。。。特に小菜の制服は妙にそそるものがありましたね〜。
 お気に入りは、ルシア制服、シスター、私服、寝巻き、時雨制服、冬制服、私服、寝巻き、小菜制服、乙女和服、ゆり子シスターあたりですね。

 表情差分は数そのものはそんなに多くないですけれど、1つ1つの表情が丁寧で、細やかな感情の機微も上手く描き分けている感じで、それでいて絶対的な愛らしさ、可愛らしさは常に健在という感じで素晴らしかったです。上でも触れたけれど、特に目を細めて笑う表情が全員可愛すぎですね。
 特にお気に入りはルシアの笑顔と苦悶、そして時雨の笑顔ですね。ポーズの所と少し被っていますが、とにかくこの表情には淳良さと儚さが際立っていて、はっと胸を締め付けられるような暴力的な破壊力があったと思います。
 その他お気に入りはルシアきょとん、苦笑、はにかみ、真剣、祈り、ギャグ焦り、叱り、不安げ、時雨蔑み、怒り、ジト目、いらだち、照れ怒り、嘆息、小菜笑顔、驚き、ジト目、からかい、照れ焦り、げんなり、乙女朗らか、にっこり、キラキラ、拗ねあたりですね。


 1枚絵は通常が70枚、SDっぽいのが5枚の計75枚と、ヒロインが少ないにしても流石に水準を大きく割り込んでいて、そこだけは物足りない所です。ただ逆に1枚1枚の丁寧さは群を抜いている印象で、冗談抜きで外れの絵がほとんどないという驚愕のクオリティを誇っており、量の物足りなさを質で相殺できるくらいの威力はありますね。

 特にお気に入りは5枚。
 1枚目は時雨の慟哭、もうこれは奇跡の1枚と断言して申し分ない破壊力で、見上げの構図、夕陽の鮮烈で物寂しいイメージ、糾弾の表情の溢れ出る悲しみと怒りの迫力が相俟って、凄まじく美しく印象的な1枚ですね。
 2枚目は時雨H背面屈曲位、これもボディラインの美しさもさることながら、時雨のうつろに蕩けた表情の淫蕩さと愛らしさが凄まじく、大好きな1枚です。
 3枚目は集合写真、ある意味でこの作品の穏やかな日常の繋がりを象徴しているような、あでやかで明るく、けれど舞い散る粉雪が時節の流れと変わりゆく現実の儚さを透過している様で染み入る1枚です。
 4枚目はルシアの祈り、この横顔の神聖さを宿す透明感と、こちらに向き直ったときの愛らしい少女のイメージのギャップが実にルシアの本質を抉っていて、はっとする美しさがありますね。
 5枚目はルシアH愛撫、この寄り添う姿勢と恥ずかしげに見上げる視線の威力が素晴らしく、また曝け出された胸からお腹のラインの美しさも群を抜いていますね。

 その他お気に入りはページ順に、ルシア膝枕、小菜との出会い、時雨の祈り、側にいるよ、ルシアのお風呂、縁側の語らい、乙女とお風呂でばったり、パーティ、ルシアにプレゼント、焚き火が映す横顔、ルシアに膝枕、一緒にお風呂、祓う、触れ合いで宿る力、血路の果て、添い寝、天使の羽、別れ、私服デート、墓参り、フェラ、正常位、乙女デート、手当て、十六夜の告白、囲炉裏を囲んで、天女の宿命、赦し、ブーケ、初H愛撫、フェラ、公園Hバック、時雨神社うたた寝、草むしり、着替え、妄執、お菓子をどうぞ、告白とキス、寝転んで思案、69、騎乗位、旅立ち、最愛、小菜着替え、出会い、手を繋いで、奇跡と別れ、触れ合いたい、幻の口付け、夕日の下で語らう、騎乗位、フェラ、正常位、SD熱射病、タイムサービスあたりですね。

 ・・・うん、結局ルシアと時雨って全部じゃん。


BGM(20/20)

 こちらも概ね期待通り、世界観とぱっちり噛み合った迫力と情感の満ち満ちたボーカルに、郷愁を誘うような柔らかくしんみりとした楽曲が揃っていて、かなり満足度の高い仕上がりになっています。

 ボーカル曲は2曲。
 OPの『fortuna on the sixteenth night』は紛うこと無く神曲ですね。全体としての完成度も素晴らしいですし、とにかく疾走感、切迫感を感じさせる中でも滑舌のしっかりしたメッセージ性の強い歌詞が切なさと柔らかさを醸し出していて素晴らしいです。
 メロディとしては特にサビがやはり一番素敵だと思いますし、それに輪をかけて気に入っているのが、サビのメインになっている歌詞、「この手が触れる君に優しさをそっと伝えること出来たら」というフレーズですね。
 メロディの勢いだけだと断定的に聴こえてしまうところなのに、言葉がもたらす柔らかさ、優しい手触りが、その最後の部分をcanでなくwish、イメージで言うと出来たら、の最後に…がついて、「出来たら……」という、祈りを紡ぐような印象になっていて、その両面性が作品のイメージ、引いてはルシアのイメージにあまりにもそぐわっていて感動しました。

 しかしEDの『With the right』がそれに輪をかけて神曲という。。。まだ今年の作品いくつか残っているけれど、ほぼ間違いなくエロゲの中では今年一番好きな曲になると思います。
 滔々と押し寄せてくる波のように、水の柔らかさと浸潤性の高さ、強さを同時に感じさせる、じわっと滲むような切なさと索漠さを取り込みつつ、それを糧にして疼く痛みに浚われないように手を握ってゆっくり歩んでいく光景が目に映るようなメロディと歌詞で、本当に素晴らしい曲ですね。
 特にBメロからサビにかけてが神がかっていて、サビのメロディの染み入る悲しみの震えのようなビブラートが最高ですし、歌詞も凄く素敵です。1番で吐露する孤独に対して、巡り廻って辿り着く、真実と生きる意味を見つけた場所の暖かさを示す最後の歌詞の改変が絶妙で、聴いていると感性が刺激されて涙が滲んでくるくらいに好きです。

 
 とまあ、圧巻のボーカルに対して、BGMは曲数は33曲と水準級、出来も上に書いたように作品のイメージときっちり親和していていい出来ではあるのですが、ボーカルに比べてしまうと流石に奥行きと深みに欠ける曲が多く、これは、となるほどの曲が見出せなかったです。でも正直ボーカルだけで満点でもいいくらいの好き度合いなので、素直にそのまま点をつけたというところです。

 お気に入りは『chapel』『living room』『sorrowful』『unassuming lucia』『cheerful sigure』『kaguya’s theme』『feel』『more feel』『old life』『十六夜』あたりですね。
 個人的には『sorrowful』の奥行きがなかったことが1番残念だったなあ。この曲も時雨の慟哭シーンで一発で気に入っただけに、後半の作りこみがより切なさを煽るような膨らみがあれば特別クラス間違いなしだったのに。


システム(7/10)

 演出は全体的にもう1歩というか、野暮ったいというか、微妙な所ですね。
 システム面とも連動してクリックで飛ぶのと飛ばないのかせあったり、結構動きと連動し切れていない部分があったりするし、音のつくりや繋がりも雑で、全体的に動きそのものも、立ち絵同期はしているとはいえもう1歩なんですよね。どちらかというとSEのほうが力入っている感じですが、それも空回りしているような・・・。
 それに、結構ドンパチするシーンが多い割にはそのあたりのエフェクトは貧弱で、スピード感や迫力を欠いてしまっているので、そういうインパクトがないままに突然展開してしまったりと盛り上がりを助長するイメージがあまりありませんでした。
 ムービーは立ち絵と1枚絵の切り崩しですが、スピード感に合わせての細やかな動きと印象的な見せ方はセンスがあって、中々いい出来だと思います。

 システム的にはまあおおよそ問題はないですね。最低限揃ってはいます。
 選択肢ジャンプが欲しい所ではあるけれど、スキップははかなり高速なのでそこまで不便には思わないし、飾らないつくりで使いにくいということもなかったと思います。
 あと上で書き忘れたのでここで触れておくと、テキストの誤字脱字、誤変換は流石に多すぎますね。折角読み応えのあるところにそういうのが多いと流石にげんなりするし、大変だろうけどデバックはちゃんとしようよと言いたくなります。


総合(88/100)

 総プレイ時間28時間くらい。共通が7時間、個別が5〜6時間の間という感じで、とにかくボリュームがあります。しかも日数経過がきっちり1日刻みで、状況がガラッと激変する場面など数えるほどしかなく、概ね長閑で閑暇な日常の中での穏やかな交流に終始するつくりなので、多少ならず読み手にもどかしさを与えてしまう部分はあるかもしれません。
 それでも、そうする必要性はしっかり組み込めている作品ですし、文章そのものに特段の面白味はなくてもキャラの魅力で充分に楽しめる部分はあるので、私としては結構お気に入りですね。
 割り切ったつくりとか、デバックの甘さなどの欠点を消し飛ばして余りあるキャラの魅力と絵の美しさ、BGMの素晴らしさと、全体に1本意志の通った総合的な出来の良さが目立っていて、少なくとも公式でパッと見の印象より格段に面白い作品なので、冗長さに耐性があるならこっそりお勧めしておきたい作品です。ぶっちゃけ売れてなさそうだしね。。。
posted by クローバー at 05:35| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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