2014年03月27日

12の月のイヴ

 体験版で、シナリオ構造には興味湧いたけど、しかしヒロインが巨乳村過ぎるのにいい加減辟易したのでスルー、してたんですが、結局我慢が効かずに買っちゃいましたとさ。。。


シナリオ(22/30)

 諦めない強さが生む奇跡。


 クリスマスイヴ。
 自身の誕生日でもあるその日を、今年も由紀は一人で迎えます。
 正確には、家に父親はいるけれど、決して姿を見せようとしない、二つの特別が重なった日。

 物心つかないときに母親が身罷り、それ以来無気力になってしまった父親との関係性を回復出来ないままに幾星霜、今年こそは、と気合を入れても引き篭もる父親の前に空回りするだけ、どうしてこんな風になってしまったのか――、そう嘆きつつケーキに火をつけた瞬間、突然にそれは訪れます。

 世界が逆転するほどの強烈な、眩暈。
 ピクリとも動かせない体。

 痛烈なまでに“死”を予感させる症状に戦慄し、何もわからずただ朽ちていく自分、という在り方に根源的な反撥を覚えた由紀は、いつしか目の前に揺らめく炎を、覚束ない手のひらでギュッ、と握り締めていました。
 その途端、更に世界は変転し――。

 
 クリスマスイヴ。
 今年も代わり映えせず、みずかと杏鈴、幼馴染の椎名姉妹とのささやかなクリスマスパーティを楽しむためにケーキ屋に向かっていた主人公は、ふとすれ違った女の子に強烈な既視感を覚えて立ち止まり、振り返ります。
 すると向こうも同様に振り返っていて、刹那目が合い、そして少女の口から言葉が零れだします。

 『また、未来で――』

 イヴからイヴへ。
 時を跨いで駆け巡り続けた少女の望みはただひとつ、生きたい、ということ。
 そして少女の存在は、今を時に小さく、時に大きく揺さぶり、様々な分岐をもたらしていきます。
 
 果たしてその末に待っている未来とは?少女の運命とは?
 これは、運命に抗い、それ故に更なる苛酷に苛まれつつも、諦めずに意志を貫く、残酷な輪廻に絡め取られた魂の救済の物語です。


 あらすじはこんな感じでしょうか。
 どうにも全体構造からしてネタバレ満載の作品なのであらすじも書きにくいですが、基本的な大枠としては、主人公がどのヒロインと結ばれるか、それにある程度恣意的に方向性が与えられ、その結果としてもたらされるそれぞれの試練、それを乗り越えた所にある未来の形を提示する流れです。

 テキストはルート毎に若干の差異は感じますが、概ね軽妙なやり取りと、こてこてのキャラ個性を存分に生かしたライティングになっていますね。
 楽しく平和な日常がある故に、シリアスな場面においてもメリハリが効いているし、痛みの部分をかなり根深く掘り下げていく書き方は、如何にもこのメーカーらしさが出ていると同時に、読み手の心境を大きく揺さぶる力はあると思います。

 ルート構成は・・・一本道です。選択肢すらありません。
 正直作品全体の構造そのものが、ひとつのテーマ、そして主人公と由紀の存在の根源的な部分のネタバレになっているので、それを強調する為に読み手の意図的な分岐は介在させる余地がない、といえばその通りで、そこを一切斟酌しない代わりに構造と展開には手を抜かない、というイメージです。
 なのでゲーム、というよりは完璧にドラマ、物語そのものですが、元々そういう傾向の強いメーカーですし、そこはプレイヤーも織り込み済、という共有認識を前提としていますね。

 シナリオに関しては、あくまでみずかと杏鈴のシナリオは、それぞれ固有の物語は付与されているとはいえ大筋においては前座であり、由紀の物語が主題そのもの、となります。二人の物語を踏まえて、という部分すら実質はほとんどないので、その意味では本当に割り切りがはっきりしてます。

 内容評価としては、みずかは及第点、杏鈴はもう一息、由紀は思うところは多々あるけれどお見事、というところですね。
 みずかシナリオは、由紀の干渉ありき、故にやや拙速に深まっていく関係の中で起こった事故、そこからの怒涛の変転と、みずかの心情、心境の負の部分も含めた丁寧な紡ぎは見事で、けれど最終的に、そういうことは起こり得るの?と思わせる状態まで踏み込んでいるので、大枠の設定を加味しても・・・となりますね。
 
 杏鈴シナリオはみずかシナリオに比べると、根底にある問題はもう変化しないものなのに、今の状況に即して常にそれを引き比べて云々、という杏鈴のめんどくささが、本当にめんどくさく書かれていて、加えてみずかシナリオとの構造の関連で、みずかも序盤はやたらめんどくさいからイライラした所が多かったです。
 設定と展開そのものは地味だけど切実なテーマ、という感じで悪くはないのですが、ちょっと負の部分の見せ方に、他のルートより難アリ、という感じでした。

 由紀シナリオに関しては、時空を隔てての未来改変、というテーマそのものはそんなに珍しいものではないものの、そのテーマを生かす為に作品全体の構造がそれに準拠していることと、主人公との関係性の特異さ、そこから紡がれる展開の斬新さには目を瞠るものがありました。
 ざっくり切り分けてしまえば、生きたい、という由紀の強い想いと、生きて欲しい、という主人公の想いが合致を見たときに、その意志の強固さ、純真さが因果を超越して奇跡を引き寄せる、ということになり、そういうつくりは実にらしいな、と思う所ですね。

 以下徹底的にネタバレ、構造解析するので白抜きです。

 現状の私の解釈をざっくりまとめていきます。
 まずこの作品の時空超越には、意識だけのタイムリープと、実体を伴ってのタイムスリップがあり、元々主人公はタイムリープを可能にする遺伝子を持っていて、更にそれが特定の遺伝子と結びつくことでタイムスリップの能力を目覚めさせる、ということでしょう。

 構造上、物語冒頭の由紀は既に何周かループを繰り返した後だと推測されますが、けれど最初の最初、一番最初の由紀を由紀自身が産む、という因果は成立しないので、そこは椎名姉妹のどちらか、ということになる筈です。そして姉妹だからこそ、どちらと結ばれても関係なく能力は発現する、という流れかと。
 その上で、その時空を超える行き過ぎた能力が、因果律を根本から崩壊させる危険性がある故にこそ、それを排除しようと働く力が由紀の病気、という形で表現されていると考えています。

 次にルート毎の時間軸の問題ですが、これはまず、最初に二人が出会ったクリスマスイヴの時点では、主人公は椎名姉妹のどちらとも結ばれていない状況にある、と解釈します。もし何の干渉もなければ、おそらくその後に穏やかな形で姉妹のどちらかと結ばれる歴史の流れ、原初の由紀が産まれる流れが存在したのだと推定します。
 由紀の認識が絶対、と前提に置くならば、凛との出会いの場面の時間軸は常に一定で、その後すぐ、クリスマスイヴの夜に主人公とはじめての邂逅を果たすわけですが、その時に由紀が口にした言葉が、その後の流れを決定付けるファクターになっているのだと思います。

 『また、未来で――』、この言葉を発した場合、由紀の無意識下において、自身がこの時代で深く主人公(=父親)と関わる気はない、という宣言になり、同時に、未来で自分が存在することをより強固にさせる引力が働くことになります。
 また、一周目は元より、二周目の由紀にしても、時空を超越することに絶対的な意志を介在させているわけではなく、全てを振り捨てて、とまでの覚悟がないため、その跳躍は中途半端なものになっている、と推測します。

 証拠として挙げられるのは、由紀がみずか及び杏鈴ルートにおいて、その関係を一気に変転させうる可能性のある時空まで更に遡行している、すなわち夢に近い状況を作り上げていることですね。みずかシナリオの結果を経て、杏鈴シナリオの流れに干渉するときに、更に巻き戻っているのが実証のひとつになります。
 そして、夢に近い、つまり本当の意味で実体を伴わない跳躍ゆえに、その状況では薬を飲まなくても体調を崩さないし、あとこれは完璧に精査してないので確実性は薄いですが、みずかと杏鈴ルートの由紀って、あれだけわいわいやっている割に身体的接触は全然ない、と思うんですよね。それもまた、本当はそこにいない、という傍証のひとつにはなるかと。
 ついでに言えば、由紀ルート早々で主人公に体当たりしたり、凛と改めて友情の握手を交わしたりと、そういう今ここにいる、という実感を強くさせるイベントが由紀ルートで強調されているのも、その文脈で解釈できるのかなと思っています。

 ともあれ、可能性としての母親交換において未来は大きく変わらないと実感したことで、由紀の中により深く刻まれた絶望と反撥が、自己の本心と強く向き合い、生きたい、という意志を強靭に鍛えることで、より完璧なタイムスリップを敢行できる体勢が整い、その決意の程が、『また、学校で――』という、由紀にとっては過去に積極的に干渉していく宣言に繋がったと見ています。
 
 そこからのウロボロスな展開は遺伝子上必然となり、その円環構造に気付いたが故の無気力からの脱却、主人公自身の資質を発現させての双方向からの意志の干渉に至るまでは読んでの通り、ですが、やっぱりもうひとつネックになるのは最後の解決の状況、なんですよね。
 上で書いた通り、二人の強固で純真な意志が因果律を超越し、過去で培った由紀の意識、記憶を、未来において遺伝子上はまったく無関係の由紀に塗り替える、という決着は、本来主人公から産まれない限り時空改変の能力も持たない、という前提を加味すれば、かなりの力業ではあると思います。

 ですが、その時代の流れの中で、やるべきことをやり遂げた場合のみ未来に戻れる、という特性と、その中でどこに自身の軸足を置くかという覚悟、そういう多種多様な条件をクリアした場合にのみ、過去から未来にも干渉できる可能性をもたらす、というのは、タイムリープとタイムスリップが区分けされている理由付け、主人公は健常なのに由紀には病魔が付きまとう理由付けとして、間接的ではあれ補完されています。
 加えて、それを可能にするための努力の形も綿密に提示されていますし、感情的な解釈が理屈を上回るように骨子を組んではいると思うので、そこを穿り返す私みたいなのは野暮、というべきなんでしょうね。

 最後に、しかしこの二人、実年齢的にもそうだけど、精神年齢的にはもっとすごい年の差カップルだよなぁ(笑)。ましてや娘であり、恋人でもあり、両方の実感を維持しつつ付き合っていくのって、それはそれで今後苦労しそうに思えてしまうのは余計なお世話でしょうか。。。


 テーマに関しては、ネタバレで長々と書いた中におよそのエッセンスは含まれているので割愛。というかもう力尽きたよ(笑)。
 
 総合的に見て、あくまで由紀の為の物語、ではありつつも、他の二人のヒロインの物語もないがしろにしているわけではない、という構造は、よく思いついたなぁ、と言えるものですし、そこでの出来の差や、由紀ルートでの諸々の引っかかり、まぁしっかり考えてある程度は解消できましたけど、すっきり感動、といかなかった部分も含めて、いい作品ではあるけど絶賛できるほどではなかったのでこの点数にしました。


キャラ(19/20)

 そもそもの登場人物が少ない、というのと、きちんと個々の深い部分まで抉った物語ではありつつ、その個性と考え方の部分で気に入らない所は結構目に付いたりで、苦難を乗り越えての、というプラス評価よりそっちが先に来てしまうのは勿体無いなと。その分減点させていただきました。

 当然一番好みなのは由紀ですね。
 彼女が背負った運命の過酷さは、その大半が外因性であり、かつ先天的でありながら後天的な部分もある、というにっちもさっちもいかないものですが、その運命の過酷の結び目をひとつひとつ、絶望を噛み殺しながら解きほぐしていく様は、普段の楽天的な明るさと相俟って心を打ちます。
 逆に言えば、本質的に楽天的で前向きな強さを備えていなければとても超克できないと思わせるもの故に、キャラ設定の絶妙なバランスが光りますし、また彼女の思慕の形にしても非常に独特ながら説得性があって、素直に可愛かったし、幸せになってくれて嬉しい、と思えますね。

 他の二人は・・・正直あんまり好きになれなかったなあ。
 みずかも自分のルートでの記憶にまつわる云々では健気さや強さを見せてくれましたけど、他では本当に刹那的というか快楽主義というか、だし、杏鈴もあまりにテンプレすぎるツンデレの割に、そこから一歩踏み出したときの内面のめんどくささがどうにもね〜。
 凛や真奈美の便利キャラぶりも、どうしてそうなった、的な部分に言及がなかったのもありやや不自然で、そのあたりは由紀の設定と個性を引き立たせるために犠牲となっている気もします。まあ真奈美が、由紀を看取ったときに発した台詞はこの作品で一番クラスに格好良かったですけど。


CG(18/20)

 三人原画ですけど、以前よりも差異性が薄くなり、またエロ特化の方向性により統一が取れていて、その意味で安定感はあるのですが、弾み歪む巨乳が、むちむちのボディが、やっぱり好みとは一線を画したところにあるなぁと、出来のよさは評価しつつこれ以上の点はつけられないかなと。

 立ち絵は水準、よりは豊富でしょうかね。ヒロイン三人は流石に力入ってます。
 ポーズは後ろ向きとか含めて大体6〜7種類はあるでしょうか。腕差分的な細かいのも結構ありますし、動きの多彩さと個性の表現という意味ではしっかりしていると思います。
 お気に入りは由紀万歳、前のめり、正面、横向き、杏鈴見返り、横向き、みずか正面、前のめりあたりでしょうか。

 服飾はコートまで含めて4種類ずつですかね。まあ必要な分はそろっているし、デザインも嫌いじゃないんですが、やっぱり胸が強調されすぎててそこはね・・・。
 お気に入りは由紀制服、私服、コート、杏鈴私服、みずかコート、寝巻きあたりですね。

 表情差分は動きほど多彩には見えなかったですね。結構遊びの部分も多いのでコミカルで可愛かったですけど、すごく深みを感じる、というのはやはり1枚絵に譲っている感じです。
 お気に入りは由紀笑顔、照れ笑顔、拗ね、膨れ、><、しょんぼり、怒り、杏鈴困惑、照れ焦り、目逸らし、みずかしたり笑い、照れ困り、ぐったり、きょとんあたりですかね。


 1枚絵は、表示方法が違うのでボリュームで一概に計れないのですが、差分や人物以外のスチル全部含めて264枚、確か夏ペルやすぴぱらよりは多かったような・・・。まあ大分エロ特化な色合いも強いので、全体のバランス踏まえれば適正なのかなと。
 そして、特に、クラスはなかったし、気に入ったの全部書くと日が暮れるので割愛。。。特に、に程近く好み、という水準で、みずかとの別れ、杏鈴お弁当、電話ボックスフェラ、由紀膝抱き、河原騎乗位、最後の薬、幸せな腕組みあたりですね。


BGM(18/20)

 幻想性と重苦しさが程よく入り混じった雰囲気の楽曲で、要所で勢いのある曲もあって、全般的に好みではありました。

 ボーカル曲は2曲、なんですけど、EDはクレジットがないからなんて曲かすらわからん。。。
 OPの『Run,Eve,Run』は扱っているテーマの割に悲愴感は薄く、ただ前に、強く強く駆け進むイメージが色濃く出ていて、爽やかでいい曲ですね。
 しかしどちらかと言えばEDのほうが好き。この加速した疾走感と、要所に散りばめられた幸福の残滓のような音の跳ね方が好きなんですけど、でもなんて曲かしら?

 BGMは全部で47曲とかなり豪華。出来も安定して美しくも深みがあり、まあシナリオがそんなに長くないので、ぶっちゃけプレイ中に印象に残った曲ってせいぜい5〜6曲なんですけどね。。。
 お気に入りはこっちも面倒なのでナンバーで。5、7、11、13、15、21、22、25、28、31、32、39、43、45、47あたりです。


システム(9/10)

 演出は流石に丁寧ですし、このメーカーとして斬新さはあまりないけれど、確かに表現力の出来る限りを費やした、という売り文句に偽りはなかったかなと。
 ただどうしても、数年前にこれを見たときに比べての圧倒的な凄み、はもう少なからず時代が追いついてきて薄れた感はありますし、あと個人的に時折SEが微妙に外してる気がしなくもなかったり。。。加えてエロ表現の巧みさは、キャラそのものに思い入れがナイトそこまで響かないという(笑)。
 ムービーも夏ペルよりはマシになってますが、やはりすぴぱらまでのここのイメージからすれば食い足りなさはどうしても出てしまいますよね〜。由紀がツリーの前で天を仰ぐシーンとかはかなりお気に入りですけどね。

 システムももう少し改善は欲しい所。選択肢がないのもあるけれど、やはりシーンジャンプ系のあれこれは欲しいなって。スキップもPCスペックに左右される部分はあるにせよ、基本はやい、とは言えないだろうし、一々自分でセーブデータ作らないと見たい場面をスッと見返せない、という憾みはあります。


総合(86/100)

 総プレイ時間16時間くらい。みずかと杏鈴が4,5時間ずつ、由紀が7時間くらいのイメージですね。フルプライスよりはちょっと安いですし、ヒロイン数も踏まえれば尺としては充分でしょう。ただ、内容的に特に杏鈴は水増し感が強くて、その分めんどくささが際立ってしまっていたのが勿体無いなと。
 シナリオとしては実にらしさが出ていて満足は出来ましたし、ヒロインも可愛くもエロい、というバランスがうまく取れてはいるので、キャラが好みであれば特にお気に入りの作品になれる質の高さは誇っていると思います。まあ私的には、由紀がいたから何とか、という部分はあり、由紀にしてもトランジスタ的にボインちゃんですからね〜。
 一点特化の方が売れる、のかもだけど、品乳村の住人としてはせめて一人くらい、と思ってしまうのは贅沢でしょうか?
posted by クローバー at 06:14| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。