2014年07月08日

セミラミスの天秤

 安定のおとボクコンビですし、今回は更にコンセプトが思考実験的で、物語性はそこまで濃くはないだろうけど、絶対私好みだろうなあと思えたので購入。


シナリオ(25/30)

 Thinking of you,always――.


 主人公は一人暮らしをしているごく普通の学生でしたが、ある日ふざけていて階段から転げ落ち、頭を打って、その日から謎の幻聴が聞こえるようになります。
 
 それと軌を一にして、クラスに転校生がやってきます。
 神尾愛生、と名乗った少女は、独特の雰囲気を振り撒いてあっという間にクラスに溶け込み、そして謎の幻聴は彼女に対してからかい混じりの声で警告を発します。気をつけたほうがいい――と。

 果たしてその日の夕方、家に戻る途中でバッタリ愛生と出会った主人公は、彼女の巧みな話術と、その境遇に流されるように、愛生を自分の家に招き、求められるままに体を重ね、しかしそのいじらしいポーズは全て罠でした。
 朝起きると、そこには情事の決定的証拠を写真に収め、主人公の世間体を担保にして脅しをかけてくる、悪魔のような少女がそこにいました。とはいえ、極端に不当な要求をするわけではなく、自分の境遇そのものは本当で、住まう場所が欲しいこと、これ以上は脅しもしないし、むしろ相棒としてやっていきたい、などと殊勝なことを言われ、やはり主人公はそれに頷いてしまうのです。

 かくして唐突に始まった愛生との同居とも同棲ともつかない奇妙な生活、そしてその日から、愛生の存在は否応なしに主人公の生活圏に大きく食い込んできます。
 幼馴染で隠れ作家の塔子との朝の登校に一緒するようになり、聖女と呼ばれる先輩の映瑠、可愛い後輩の芙美香や響と、少人数で和気藹々とやっていた占術研にも入部し、映瑠とは水と油のようで常に口論を繰り広げながら、愛生は学園という社会の縮図に蔓延る様々な火種をせっせと掘り起こしては、パタパタと扇いで大火事にしていくという所行を繰り返します。

 その、まるで人の心を操るかのような手管に、主人公含めた周囲の人間は、恐怖を覚えながらも目を離せない、まるで畏敬のような感情を喚起され、愛生が真紀子押した状況の変化は、やがて占術研に塔子や、クラスの女王として君臨していた直緒を引き入れることになります。
 唯一論理的にも心理的にも、愛生の手管に対抗できる存在である映瑠は常にそれに苦言を呈し続け、やがて部内において、主人公が最終的に愛生と映瑠のどちらの意見を採用するか選択する、というルールが出来て、その都度主人公は自身の倫理観、人生観を試されることになります。

 様々な状況、意見がある中で、自分なりの答えを模索して事象とも結果とも向き合っていく主人公は、やがてその心理の天秤を大きく変化させていくことになります。
 その変化は果たして悪魔の元へ伸びるのか、それとも天使の元に進むのか――。
 これは、善意と悪意で常に大きく揺れ動く社会に身を置く中で、自分の立脚点を如何にして求めていくか、どのように他人に寄り添っていくのか、その覚悟と信念を問うた物語です。


 あらすじはこんな感じでしょうか。
 大枠として、共通がかなり長めに設定されており、基本として愛生が積極的に巻き起こす事件や変化に翻弄されつつも、その都度に自分らしさを立ち止まって見つめ、また側にいる女の子達の誰に殊更心を寄せていくか、その選択の繰り返しの中で、ほろ苦い現実を飲み込みながらも、自分達なりの幸せを、生き様を画定させていく、そういう流れですね。

 テキストは流石の格調というか、一定の小難しさはありつつも簡潔に、理解しやすくまとまっている文章だなあと思います。
 今回は物語そのものが主軸、という感じでなく、あくまで実践を伴う思考実験的な色合いが強いので、状況そのものはありがちでも、それを如何に愛生がその方向へ誘導していくかや、そのやり口や状況に対する思想的知見に対する掘り下げがかなり徹底されていて、何気ない日常の、大枠で雑把に捉えて見逃しがちな本質を見事に抉っているなあと感心しきりでしたね。

 そういうつくりなので、ヒロインの魅力を書けているかと言うと、あくまで与えられた立場、状況の中での一面的には、としか言えないですけど、それでも充分に個性は際立っているし、語り口も含めて誰しもが頭良すぎじゃね?とは思うけど、そういう丁々発止のやり取りも存分に楽しめました。
 やはり愛生というキャラクターが相当に強烈なので、彼女のあり方、考え方に全く共感できない、という人には厳しいかも知れませんが、純粋に読み物として興味深く楽しめるテキストだと思います。

 ルート構成は、一応ヒロインルートが五人分用意されているのに加え、何も起こらない形式のバッドエンドと、あと行き過ぎたバッドエンドが二つあるのかな、その辺全部クリアするとグランドエピローグみたいなのが見られるつくりですね。
 画面右上に倫理メーター的な天秤が用意されていて、選択の結果によってそれが天使と悪魔のどちらかに振れ、途中からはロウとカオスどちらに進むかで共通の内容も変化があって、ヒロインもその資質、本質に合わせて振り分けられている形式です。
 
 正直結構この色調整って難しくて、そのヒロインの選択肢選ぶと赤に振れるのに、本人のルートは青のほうにあるとか、その他の選択との兼ね合いをしっかりしないとルートに入れなかったりするので、ゲーム性としてもそれなりに歯応えがありますね。
 それでも愛生と映瑠はもう立ち位置的に当然、という部分はあるので簡単・・・と思いきや、その認識、思考停止に強烈な罠が仕掛けられているという構造は実に巧みに考え抜かれていて、ぶっちゃけこの構造と、それがもたらす結末こそがこの作品の真骨頂では、と思うくらいにインパクトがありましたね。

 シナリオ的には、とにかく共通から濃いというべきか、愛生の恣意、悪意が強烈に迸った展開の羅列で、それでも結果的に誰にも恨まれない状況に着地させるという悪魔的手腕を発揮する上、きちんとフォローまでこなすので、読み手にとっても愛生というキャラの一挙手一投足から目が離せないイメージです。
 物語、ドラマ性という意味では決して派手ではなく、本当に日常の中で、偶然にでも何かが噛み合えば簡単に起こり得る事象を、敢えて愛生が誘導して発生させ、その構造分析と、その信条的是非を細かく繰り広げる、という形なので、一々立ち止まって小難しいこと考えさせられるのは肩肘が張る、真っ平だ、という人には全く好まれない構成かもしれませんが、私にはべらぼうに楽しく感じられましたね。

 作中でも言及されているように、普通に暮らしていれば目に映らないような内情まで懇切に抉って楽しむ、というのは、あたかも周りの認識力を下に見ているような底意地の悪さと性格の悪さは滲んでいるかなあとは思うのですが、そういう優越感そのものを楽しむ、という部分まで人の業の在り処をつついているようで、実に示唆に富んだつくりだなあと感心するのです。
 まあ映瑠が慨嘆するように、この愛生の能力が善性に基づいて発揮されれば、それはそれは素敵なことなんでしょうけど、中々そう上手くはいきませんよね、ってのが世の中の常、無常な部分でもあるのかなと。

 ともあれ、この作品は共通の比重が高く、テーマ性としてもそこに存分に盛り込まれているので、個別はどちらかと言えば主人公が自分の立ち位置を明確に決めたことに対する余勢、というイメージもありますね。
 面白いのは、あくまでヒロイン個々との好感イベントを積み重ねるような色合いは薄めで、まずそれぞれの立ち位置、信条的共有感がどれだけ合致するか、という部分がヒロイン決定に大きく寄与しているつくりです。
 似たようなつくりだと、置き場がない!とか思い出しますけど、パラメータ的にそういう部分が明確に見える作品ってのは本当に少ないので貴重だし、それぞれのヒロインの元の位置もさもありなん、という感じなので、恋愛にいたる描写が少なくとも、その二人がくっつく、ということを説得的に仕上げられているとは思います。

 加えてこの作品の独特な部分は、その主人公選んだヒロインと、その二人が共有する立ち位置次第で、愛生の思想にも少なからず影響を及ぼす、という部分で、これは悪魔のような愛生でも、やはり人がましい部分は充分に備わっているし、周りの変化に動かされるのだという思想的意味合いを付随させるのに一役買っているのかなと。
 なので、ヒロインルートとはいっても結局愛生が獲得していた、主人公に対する独特の関わりの清算と、新たな関係性の構築がメインであって、特に直緒と塔子のシナリオはかなり薄めかなと思います。

 結構好きなのは芙美香シナリオで、これは上の思想もしっかり反映させつつ、芙美香自身の事象、状況、心境含めて多角的に丁寧に物語の動線に乗っかっていて、着地点も含めて、切なさは余韻として引きずりつつも一応平和裏に終わるし、芙美香が幸せそうなので満足度が高かったですね。
 メインである愛生とその対極の映瑠にしても、あくまで個々のシナリオの仕掛けとしては突き抜けるほどではなく、やはりそれぞれの立場に主人公が的確に寄り添えるか、そこがメインとなりつつ、特異の塊である二人と歩んでいく為にどうすべきか、何を清算すべきかが中心になります。
 
 個人的に愛生シナリオの、主人公に出し抜けを食らって肩透かしになりつつ、困ったように微笑ましく笑う愛生の様子は、それまでかそれまでだけに、ああ、いいなぁ、と思えてしまいますけどね。悪魔にだって、幸せはあっていいと。
 冒頭に書いた一言も、この愛生シナリオ終盤の言葉を拝借したんですけど、敢えてそこに一言alwaysと付け加えさせてもらっているのは、本質的な意味で側にい続けるならば、或いはそれは必然的に内包する概念かもしれないけれど、そこに至る過程でならばそれは意識されていないといけない、という部分を、バッドエンドが強烈に示していると思ったからですね。

 確かに愛生と映瑠は、天秤の両端に程近いところで、それぞれの思想の極北であるかのように振舞っていますけど、それでもやっぱり人なのだと。
 一定以上にその思想性に心酔し、盲従して、彼女はこうである、と早々規定して思考停止してしまって、その方向性のままに選択を続けていくと、いつしかその仰ぎ見ていた相手の観念すら飛び越して、本当の極北に辿り着いてしまうわけで。
 そういう振る舞いは、裏返してみればやはり自己の立ち位置を自分で決められていない、ということになり、結果としてその行き過ぎは誰にも幸せを呼び込まないし、陶酔していた相手にも突き放されたり、利用されたりと、散々な結果になってしまう、という事実を、この二人のバッドエンドは強烈に展開しています。

 本当に相手に寄り添いたいと思うなら、単に想うだけでなく、常に想い続け、このうつろいやすい世界の中で、その相手だけは不変であり続けるという幻想を振り捨てて、現実に真っ直ぐ向き合い続けていなくてはならないと、特に一歩間違えば崖下に真っ逆さまの地平に存在する相手には細心の注意が必要なのだと、そのあたりは実に物語的劇的さがあって、個人的に一番面白い、と思った部分です。

 あとちょろっとだけ、考察し切れてない残念さはあるけどネタバレ込みであれこれ。

 やっぱり気になるのは幻聴の正体と、最後のシーンの解釈ですよね。
 ただ、いきなりポン、と出てきて若干読み流してしまって、挙句あのグランドエピローグ一回しか見られないっぽいので、何とも言い切れない部分があるのですけど、あくまで私の解釈だと、あのシーンで筆を揮っているのは愛生、ですよねぇ。

 無論髪の色、名前の部分を見れば、っていうのはあるのだけど、それはミスリードの一貫ではないかなと。
 どうしたって傍証しか出せないけど、まず基本的にこの最後の1枚絵、髪の色こそ金だけど、スタイル的にはやはり塔子のグラマーさとは一線を画してるし、髪のウェーブ感を踏まえれば、愛生が髪を変装的に染めている、と思えるなって。
 当然ペンネーム云々の意味深な物言いも含めて、その方向でも解釈できるように語られていたし。自分の身に起きたことを物語としておこした存在、という点で、あのペンネームは誰にもっとも相応しいのかって。

 あと作品構造的に、ここまで全部を分析的に、総合的に見て、実際は起こらなかった事象の部分にまで思考実験的に踏み込んで構築できる能力、物語内の塔子でもそれはない、とは言い切れないけど、大枠としてその場で起きた全てを俯瞰出来るのは、というアドバンテージを考えるなら、やっぱり愛生のほうが適任だろうなって。
 主人公の幻聴にしても、結果的にそれが主人公の行動や意志を大きく左右したりすることはないんですよね。ただ細かいところで思考の方向を少なからず規定したりというのはあって、その在り方は如何にも愛生っぽいし、実際に思っていたことを投影して、みたいなニュアンスも感じるわけで。

 ただ、そうやって状況を確定させた場合、この愛生は誰にも想いを寄せない悪魔のまま、やっぱり復讐を首尾よく遂げて、誰の目にもつかないように、変装までして逼塞して生きている、という着地点も付随してくるわけで。
 ただ生きることに必死で足掻き、当面の目的を達成した後に、そういう自身の生き様に対する空漠さ、虚しさが押し寄せてきて、けれど人として一線を超えてしまった自分に後戻りが効かない事は痛いほどわかってしまっていて。
 だからこそ、せめてもの警鐘として、そして自身に対する救いとしてこの物語を紡いだ、と考えると、それはそれで非常に切ないというか、最後の最後まで世界の厳しさと、人と寄り添えないことが更にそれを加速させるという現実を抉り出しているのかもなあと思うのです。

 あとここまでとは全く関係ない構造に対する疑問だけど。
 基本的にこの作品、主人公の心情の変化がまた愛生の心情、関心の方向性にも影響を及ぼして、結果的にそれが向かった方向に展開が動く、というのは、共通のカオス・ロウ分岐も含めて納得できるのですが、ロウルート最終章の水城の集団レイプ、あれだけは外的要因に見えてしまうんですけどね。少なくともあれを直接的に愛生が示唆して起こせるとも、起こしたいとも思わないだろうし。

 設定的に言えば、こっちはロウルートなので愛生は比較的大人しめだし、愛生が何もしなくても事件は起こってしまうのだ、という象徴でもあるのかもだけど、としたらカオスルートではこの事件に言及されないのは何故かなって。
 時系列的にカオスのほうが前で、この事件が起こるまで物語が展開してないという解釈も出来るし、或いはその直前のさっちゃん事件の顛末や、主人公と愛生がそこで醸し出す空気感などが、それこそバタフライエフェクトのように影響して、カオスルートでは水城の用心度合いが上がっていて未遂で回避した、とか穿ってみることも出来ますけど、確定出来るだけの材料はないし、表面的に見てしまうと瑕疵に見えてしまうのは残念なところです。


 テーマはここまでで一緒に織り込んでしまっているのでいいでしょう。むしろテーマをそのまま書き下したような作品だし、感想としてシナリオと不可分すぎるわこれは。。。

 全体的に、キャラありきの普通の萌えゲーとはかなり趣の違う、非常に考える点の多い、メッセージ性の強い作品に仕上がっていると思います。
 ある意味で現実的な色合いが強いというか、ヒロインとの関係の深まりが、劇的なイベントでもたらされるのでなく、もっと穏やかな、些細な共感の積み重ねで成り立つという部分もそれっぽいし、ただいくら学園を舞台として、それが社会の縮図だといっても、ああまで事件が頻発するはずはなくて、そこを愛生というキャラが狂言回しとして、物語的な特異性を説得的に組み込んでいる、という構造は本当に見事でしたね。

 感動する、とか、心温まる、という方向性ではなく、どちらかというと、うぇ〜っ、て現実的なシビアさにゲンナリする部分も多いんですけど、そういう現実を甘んじて享受するのでなく、自分の意志で、想いで、少しでもいい方に変えていかなくちゃ、という色合いの部分に作品としての個性、強さが滲んでいて、私としてはすごく評価の高い作品になってます。
 無論欠点を論えば、ってのはあるし、パッと思いつくだけでも、例えば時系列の変化がわかりにくい、季節感が乏しくてそちらからの連続性が感じにくい、説明的に過ぎる、敵役がアホ過ぎて盛り上がりに欠ける・・・なんて出てくるのですけど、そういう欠点を補って余りある魅力はあった、ということで。


キャラ(20/20)

 テーマありきの作品なので、ヒロインもその文脈の中での限定した方向性の魅力に特化している感はあり、恋愛面での繊細な機微とか、女の子らしい愛らしさ、可愛さとか、そういう部分に期待しすぎても仕方ない、ってのはありますね。
 加えて、どうしたって愛生ゲーなので、愛生が好きになれるか、もっとも愛生の何もかもが可愛いと思えるのは相当にハードルが高いので、少なくとも美点と欠点を天秤に載せて、嫌いではないと思えるかどうかでキャラ評価は大きくぶれそうな感じです。
 
 私としては愛生が何故か最初から好きになれたので、その点で問題なしですね。このあたりは、やはり立ち絵という視覚での魅力を大いに発揮できるADV作品だからこそ引き出せるバランスというか、正直文章で追いかけるだけだったらもっと不気味なイメージが固着しそうですけど、立ち絵でのバランスの取れた妖艶さ、あどけなさ、屈託のなさが、おいたも可愛げ、と思わせてくれているなと。
 端から見て愛生の行動、思想は悪意的ではあるけれど、それはそこまでの生き方が規定した必然でもあって、また少しずつでも主人公達と関わることで軟化していき、人らしい情緒もルートによっては獲得していく、そしてきちんと寄り添ってくれる相手さえいるならば、愛することだって出来る、そういう成長、というよりは気付き?の部分での人としての開花感がいいなあと思わせるところ。

 無論その過程での、奔放さや屈託のなさ、才能の迸りにおいても惹きつけるものは大いにあるし、何よりやたらとエロ可愛いし、むきになってるときとかの可愛さはかなりの破壊力だし、うん、やっぱりなんだかんだで好きだなあと。
 構造的にも、私が解釈している通りならばすごく立ち位置的に不憫であり、かついじらしいなあと思わせるから、それも込みで、やはりこの作品を代表するヒロインに相応しい魅力だったと。

 んで、同じくらいに好きなのが芙美香。
 この子が一番人との関わりの中で成長を見せつつ、一番ヒロインらしいいじらしさ、ひたむきさ、一途な愛を思わせてくれる部分はあって、とことんまで庇護欲をそそる可愛い子だったなあと。
 やっぱりかなり不幸な境遇にいるのだけど、その分だけ人と痛みを分かち合えるというか、それでも社会に絶望したりせずに、なるべくいいところを見つけて、楽しく明るく生きていく強かさもあって、キャラ付けの意味でもシナリオ的にも印象度としては一番高いヒロインでした。

 次いで映瑠ですかね。
 彼女の境遇もやっぱり相当ですし、それゆえの隔絶した個性が、ちゃんととことんまで寄り添っていけば氷解していくという過程の示し方が綺麗で、その中で見せてくれるあどけないといってもいい素朴な可愛さは中々の破壊力でした。
 世情を無視しても倫理に拘るような思考形態は、愛生との対立の中では時に面倒に思える部分もあったけど、その点も含めて個別では縛られない自分になれているし、全体としてもイメージよりだいぶくだけていて良かったと思います。

 塔子はステータス的にあまりプラスにならないってのと、シナリオ面での奥行きが、私の解釈の方向だと広がらないというか、どうにもあてつけじみているというか・・・。幼馴染としてのあれこれもないままに、単にずっと好きでしたで終わってしまう部分も含めてもう一歩。
 直緒も悪い子じゃないのはわかるけど、愛生と親和性が高いだけの事はあるというか、どこか冷めた雰囲気が恋愛面でも真剣味を削いでいたというか、そういう流れに持ち込まれてるならいっか、くらいの軽さを感じてしまって。
 あとやはりこのシナリオは後味もそんなに良くないですしね。芙美香あたりと比べるとそもそも立ち位置として不遇ではあるし、仕方ない面もありますけど。


CG(16/20)

 質そのものはいつも通り、よりは少し上というか、特に愛生のエロ可愛さに関しては中々だったんですけど、やはり全体の素材量がフルプライスとしてかなり物足りない水準だったのと、総合してみれば質もそこまでじゃないので、おまけしても点数としてはここがギリギリかと。

 立ち絵に関してはかなり貧弱ですね。
 ポーズは愛生と映瑠だけ2種類、後はヒロインでも1種類、腕差分などもほぼなく、動きの乏しさは否めないです。そして響の立ち絵は悪意があるのだろうか、と思うほど間抜けっぷりを露呈してるんですけど、序盤のシリアスなシーンであれはどうなのと。。。
 お気に入りは愛生正面、やや横、映瑠やや横、芙美香正面くらいですかね。

 服飾もヒロインで多くて2種類、下手すると1種類なので、学園ものとしてはかなり寂しいことになってます。
 そもそも時系列的に余裕で半年スパンくらいの作品なのに、一切衣替えも服飾に関する言及も敢えてなのかオミットされているから全く季節感がないし、それを考えれば必要最低限、というのも憚られるのですよね〜・・・。
 お気に入りは愛生制服、芙美香制服、寝巻き程度かなあ。

 表情差分もやはり多くはなく、多彩さを感じたのは愛生くらい、映瑠もそこそこデフォルメ的なのあったけど、彼女の場合あまりそれが似合ってないという切ないオチ。。。
 お気に入りは愛生笑顔、にやり、困り笑顔、ギャグ焦り、ギャグ怒り、冷笑、拗ね、照れ困り、芙美香はにかみ、驚き、ほくほく、半泣き、映瑠微笑、真剣、憂い、しゅん、塔子おろおろ、響笑顔、焦りあたりですかね。


 1枚絵は全部で73枚とやや少なめ。SDなどもないからフォローもしづらく、出来も突出していいなと思うのはあったけど、トータルで見るとやや不安定、かなとは思います。

 特にお気に入りは2枚。
 1枚目は愛生正常位、最初のシーンでもあり、この誘っているようでどこか儚げに、それでいてやたらとエロい構図には打ち抜かれましたね〜。
 2枚目は芙美香自販機、隠された想いの懸命さが端々から伝わってくるような構図、ほっこり感で、あぁ可愛いな〜としみじみ思ってしまいますね。

 その他お気に入りはページ順に、竜虎、盗み聞き、水城バック、ファストフード、調べもの、首締め、食事風景、愛生お風呂、着替え、満身創痍、圧し掛かり、屈曲位、バック、添い寝、直緒映画、告白、塔子居眠り、料理、初H愛撫、騎乗位、芙美香添い寝、抱きつき、初H愛撫、正常位、対面座位、映瑠告解、抱きつき、初H愛撫、正常位、3人デート、愛生と一緒に、映瑠初詣あたりですね。


BGM(17/20)

 全体的に緊迫感、刺々しさが強く出ている曲調の中で、時折潜む優しさ、爽やかさがいいアクセントになっていたかなと。
 ボーカル曲は3曲。
 OPの『Hanging garden』は疾走感、圧迫感があり、突き放したようなボーカルのイメージと合わさって、この作品の雰囲気とすごく合致してますね。曲としてはややBメロが弱い気はするけど、総合してかっこよく仕上がってるし、サビの迫力は好きです。
 挿入歌の『restinguitur』は、寒風吹き荒ぶような世間の荒波、苛酷な現実と直面しつつも、地に足をつけて、胸を張って生きていく、その背中をじっと見ているような気分にさせる曲ですね。噛み締めるようなサビの強さ、メロディが好みで、この作品のボーカルでは一番好きですかね。
 EDの『Beyond the night』はタイトル通り、まだ仄暗い中でも、手を取り合って進めば光に辿り着ける確信をイメージさせる、柔らかくもやさしい曲ですね。その分インパクトとしてはやや弱いのですが、サビのメロディが綺麗でこれも結構好きです。

 BGMは全部で22曲とやや少なめ、でも突出して好きなのこそないけど質は悪くないですし、タイトルのつけ方も独特のセンスに溢れていて、どうしてこの曲にこのタイトルつけたのかなって考えると楽しいですね。
 お気に入りは『ヒヨスのみる夢』『Angelique the lcy』『コレジオ・ペタンディス』『Incentive』『Overture〜The Scales of Semiramis〜』『余型論的解釈』『エーデルヴァイス』『水中花』『シャニダールの柩』『添薬のソワレ』あたりですね。


システム(7/10)

 演出は貧弱、ですかねぇ。
 立ち絵はほとんど動きがないし、背景やSEの演出もあったりなかったりで安定しないし、元々そういう面を強調するつくりではないにしてもやや残念ではあります。
 OPムービーは中々迫力があり、沸々と先の戦慄を予感させる構図でかなり好きではあります。

 システムもかなりよろしくないですね〜。とりあえず今からプレイするなら、先にパッチ充てるのは必須です。私みたいにプレイ途中で1.2充てたら、既読判定が全部抹消されてすごく面倒なことになるので。。。
 項目設定としてもかなり最低限、って感じですし、それでも選択肢ジャンプあるから楽かな、と思っていたのですが、しかしこのジャンプ滅法重いんですよね〜。そりゃスキップで進めるよりは速いのかもですけど、コンシューマゲームのロードみたいな画面で延々待たされるとイライラしてきます。これは贅沢というものかしら?
 しかも微妙にジャンプは既読判定が怪しいし、スキップ自体もかなり遅いので、選択肢がかなり多い&バランス調整が難しいゲームでこの操作性はいただけないなと。
 
 といって、じゃあダイジェスティブ使えばいい、とも思えないのは、あっちだとたぶんバッドエンドは拾えないからなんですよね〜。この作品の真骨頂はそこにあると思うので、親切だとは思うけど余計なお世話でもあるかなって。それやるくらいならもっとコンフィグ充実させて、ストレスフリーにプレイさせてくれよと。
 あとメッチャ地味なところなんだけど、起動して最初の注意書きの部分、普通あれも一回見ればクリックで飛ばせるようになるはずなのに、これはいつまでたっても同じだけ時間食うので、私の気が短すぎるだけかもしれないけど地味に嫌だったりね。。。

 総合的にもう一点下かも、とは思うんですけど、ムービーが好みだったのと、ちょっと全体バランス踏まえておまけでこの点数です。


総合(85/100)

 総プレイ時間、スキップとかしてた時間は除いて純粋にだと16〜7時間くらいでしょうか。共通が10時間くらい、個別は1〜1.5時間とかなり短めですが、この作品で表現したいことは濃密に詰め込まれているし、説明的でありつつも先が気になり続けるという絶妙のバランスも保っているし、私としてはすごく楽しめましたね。

 ただやはりゲーム総合としての評価は低くなってしまうし、それでもせめてAクラスにしてあげたかったので、若干恣意を絡ませてしまいましたが、構成の尖り方を含めて万人に受けるものでは決してないと思うので、まず体験版プレイ推奨、そこで愛生との相性、テキストとの相性を見極めてからのほうがいいと思います。そこで合う、と思えたなら、最後まで楽しめると思いますね。

 セミラミスという古代の女王の持つ幅広いイメージに仮託された、人間性のうつろいと善悪の極北、非常に哲学的であり、思考的である作品で、いい意味でも悪い意味でも凡俗な作品とは一線を画しているので、私としては広く受け容れられて欲しい作品ではありますけども。
posted by クローバー at 06:43| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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