2014年08月25日

そして明日の世界より――― 2014ver

 言わずと知れた大傑作のそし明日ですが、発売当時に書いたこちらは、感想執筆始めた当初のもので書式的に色々不満があるのと、あと丁度10月にコンプリートボックスで再販されるので、さらっとでも書き直すにはいいタイミングかなって。
 ちなみに2007年版はネタバレに一切配慮されてないので、その点は留意ください。


シナリオ(29/30)

 世界の在り処。


 そこは、何もない島でした。
 かつては炭鉱としてそこそこに栄えていたものの、石炭需要の低下と共に過疎が深刻化し、今ではほんの数百人の住人が、漁業を中心にひっそりと暮らしている穏やかな島。

 そこで生まれ、立派な両親の薫陶を受けてのびのび育った主人公は、隣家の大切な幼馴染の朝陽と夕陽、親友の青葉と共に日々を楽しく暮らしていました。
 今年の夏前からは、珍しくこの島に移住してきた病弱少女の御波もクラスメイトに加えて、この平穏で何も変化のない島で、それぞれが自分たちの役割をそれと意識しないままに遵守しつつ、それでも彼らは十分に幸せだったのです。

 しかし、そんな彼らの平穏を激変させる事態が出立します。
 なんと、地球に彗星が墜落し、あと三か月で人類の歴史の痕跡はことごとく滅ぼされる、というのです。

 その絶望的な現実を前に、実際に星が落ちてくる前から、世界は呆気なく滅んでいきます。そう、何よりもまず、それぞれの人の心の中で。
 けれど、幸か不幸か過疎の島中では、世界に蔓延る大混乱の余波も最低限にしか受けずに済み、けれどそりすらも、個々人が強く受け止めるには大きすぎる出来事ばかりで。

 世界の変化、でなく、単なる認識の変化に大きく翻弄され、かつての輝かしい日常を、平穏の在り処を一時に見失ってしまった主人公たち、しかし、残りの日々を彼等は彼ららしく過ごすために、その認識に、残酷に、勇敢に立ち向かっていきます。
 これは、平和な島にほんの二週間ばかり訪れた変化の物語。
 それさえなければ物語として語られることもない、人の心の中で大きく揺れる世界の在り処を、その美しさを綴った物語です。

 
 あらすじはこんなイメージですね。
 大枠としては、今までずっと一定の形で安定していた主人公を中心とする人間関係が、星の墜落という情報を契機に変化し、それぞれのそれまでを反映した思惑の中で、新たな歓びを、かつての自分を、あるべきすがたを再発見していく流れです。

 テキストはとことんまでらしさに溢れた語り口。
 元々このライターさんのテキストは、例えクレジット明記されなくても10分も読めばわかるだろ、ってくらい癖は強いです。非常に心象含めてロジカルで、丁寧に順番に積み上げていった上で、これこれこういうことだったのだ!と。。。とにかく物語の幹を堅牢に作るのが非常に上手く、この作品に関しては枝葉もそれなりに茂っているほうですね。
 
 またキャラの個性に関しても、善人通り越して高潔と言っていい精神性を誰もが有していて、この作品で言うなら、自分の死よりも、自分の変化が周囲に災いを振り撒くことのほうがよほど怖い、と純粋な心で誰もが言えてしまうあたり、眩しいとは思えても、感情移入がどっぷりできるか、は人を選ぶところ。
 ただこの作品の場合、非常に身近な例に落とし込んでの記述が目立つので、その非日常を日常と摺り合わせてダメージを受ける、という過程は実に繊細かつわかりやすく書けてるかなと。

 笑いの取り方なんかも非常に独特で、直感的な面白味でなく、どちらかと言えば海外的な、エスプリを効かせてクスッ、となればいい、みたいな、迂遠で地に足の着いた語り口なので、たまに、あれ?それどこが笑いどころ?と、読み手の基礎教養の欠落を突き付けられる事態が勃発します(笑)。
 少なくとも2014年現在で考えれば、発売当時よりも更に一般性からは乖離している印象で、今時に求められる軽妙さ、わかりやすさからは一線を画した内容、と言い切ってしまっていいでしょう。

 ルート構成は、基本的には狙ったヒロイン追いかけていけばいいんですが、選択肢自体は結構難しくて、誰か選んだ後に、更に特定のヒロインイベントへの分岐があったり、そもそも序盤のイベントひとつ取り逃すと、その後に派生するはずの展開がすっ飛ばされてしまったりで、そういう部分もヒント的な要素は薄いので、初見だとそこそこ大変かも。
 選択肢ジャンプもないですし、効率よく進めるなら序盤から選択肢ごとにセーブ作っておくのが無難だと思います。結構あからさまに、選択肢次第で共通の内容からガラッと展開が違うので、特に御波などはそれが顕著なので、そこは注意しておくべきですね。

 あと、実はこの作品、ヒロインシナリオがメイン、ではなかったりします。
 誰のルートにも入れなかった場合のノーマルエンドがあるのですが、実はそれがメインのシナリオで、全員クリアした後に読めるアフターシナリオと直結する内容になっています。
 ちょっともうルートロック状況まで調べてられなかったのですが、少なくともこのノーマル、ヒロイン1人でもクリアすれば入れるのは過去の私の痛恨からも確実なので、出来ればこのノーマルは一番最後にクリア推奨です。
 
 といっても、選択肢が難しめで自然に入ってしまう場合もあるのですが、最低でもゲーム内日付8/14でセーブしてみて、個別に入っていればセーブデータにヒロインの顔がうっすら表示されるので、最悪そこで判別し、引き返せば手遅れではないです。。。
 本当にこのルートは、全員分のヒロインシナリオの精神性を引き継ぎつつ、新たな可能性を提示する大切なルートなので、くれぐれも注意をば。


 シナリオ的には、過去の感想でも結構触れているので、改めて思った部分を軽く、に留めておきます。
 
 とにかくこの作品のヒロインって特異というか、多分星が墜ちてこなければ誰も主人公とは明確に恋仲になれてないだろうな〜、最悪10年くらい過ぎて、まともに恋愛する前に夕陽と事実婚みたいな生活してそう、って思うんですよね(笑)。
 それは、この島の安穏が、変わらないことが何よりという保守的な意識の遍在が織りなす部分であり、この高潔で大らかな精神性を養う意味では説得的で、けどそうした誰もが自分の役割に固執して、世界の形がそれで全てだと思い込んで。

 個人にとって世界とは、心の在り方そのものに他ならなくて。
 三か月後には否応なく世界が滅ぶ、という外的要因、圧迫がもたらした変化は、その自分の世界を疑う、或いは本当にそれでいいのかと噛み締めるための土台になっていて、どちらかと言えばその変化はヒロインの側で起こり、それが化学反応的に主人公にも波及してくる、と見做すのが適切かなとは思います。

 なのでイメージとしては、ヒロインシナリオはかつてそうありたかった自分を取り戻す物語に感じますね。
 そこが一番顕著で圧巻なのは青葉シナリオであり、逆にその部分が弱いかわりに、一心に変わらずにいられる強さの源泉を抉っているのが夕陽シナリオ、中間的な意味での朝陽シナリオがあって。
 そしてこの三人が、どうしても元々の関係に縛られてめんどくさくなってしまうのと一線を画するように、御波の健やかで衒いない真っ直ぐさが爽やかさを添えて。

 このあたりは、ヒロインの煮凝った個性に対する好みの差でも評価は上下するでしょうし、トータル的に読みやすいわけでは決してないですが、その分だけ個々の切実さ、一心さ、前向きさはヒシヒシと伝わってきて、どれも良く出来ています。
 改めてプレイしての個人的な評価だと、青葉=御波>夕陽>>朝陽くらいですかね。無論その二つ上くらいにノーマル&アフターがきます。

 ノーマルに関しては、ヒロインルートが世界の復元、再構成であったのに対して、世界の創生、あくまで健やかに、外側の事情を考慮に入れず、ただ自分の心のみにこれからの在りたい自分、あるべきすがたを問いかけて進んでいく、という意識が明確に示されていて、何より凄みがあるのは、その後の在り方を一切決めることなく、その時に自分の在りたいように、という泰然自若とした精神性を見せつけてくれるところです。
 その結果、としてのアフターの破壊力はやはり空前レベルの仕上がりで、人が生きるとはどういうことなのか、あくまで個人の世界に完結していては絶対に辿り着けない境地を示してくれていて、本当に美しい物語、美しい世界の在り処を、理屈の上でも感情の上でも、この上なく読み手に提示してくれています。

 今回改めてプレイして、満点でもいい作品だよなあ、とは思ったのですが、やはりラストにそれが待っている、とわかっててプレイするのとそうでないのとでは、道中の張り合いが違うだろうし、やっぱし御波以外の三人のルートはしちめんどくさいなあ・・・、とは思ってしまったので、ここは点数動かさず、にしました。


キャラ(20/20)

 正直ヒロインの大半はめんどくさいし、可愛いけど時々鬱陶しくもありますが(笑)、やはり清涼剤としての御波の存在感が私的には際立っているのと、周りの大人達の、こういう言い方は何だけど、きちんと気負いなく立派な大人をしてるなあ、というイメージが、キャラに対する愛着を高め、引き締めている感じですね。

 まあとにかく、御波は問答無用で可愛いのです。化け物クラスです。
 恋愛に至る心理の変遷が、この設定でなければ有り得ないような独特の色合いを孕んでいるため、その示し方も実に一心かつ明け透けで、それでいながら楚々とした空気、本質的にはこうまで前に出られるタイプじゃないという、一種のちぐはぐさが、だんだん本来の個性と混ざり合って、オンリーワン的ならしさを紡いでると思いますね。
 会話面でもいい意味で落ち着いているうえにエスプリの効かせ方が絶妙の塩梅で、なによりこの状況下においての気兼ねなさ、という、そこまでの共通の在り方との逆転的な一種雑な扱われ方が、読み口として本当にすがすがしく、素敵な魅力を引き出せていると思います。何度プレイしようと色褪せない、さすが殿堂キャラでも上位の貫録です。

 そしてなんだかんだ青葉も好きだなあ私。
 大切な人の世界を守るために、自分の世界の一部を削り取ってでも差し出すという献身は、そうでもしなければいたい場所に食い込めない、という悲しい自覚のもとになされているとはいやはり崇高で、個人的に女の子らしい青葉ってすごく好きなので、それが報われるのはうれしいところです。
 まあそこに至るまでの面倒さ、狂いっぷりはかなりの破天荒さですけれどもね。。。

 んでやっぱり、なんか私の中では夕陽と朝陽ってヒロイン枠じゃないのよね(笑)。
 実際家族みたいなものだし、恋愛が付随してもそのイメージのほうが強いままなので仕方ない部分はありますね。
 そして夕陽シナリオのあまりの夕陽っぷりは、いじらしいけど私にゃ絶対こんな子面倒見きれないだろうな〜って思わせる、独特の重さがあるなあって思います。お姉ちゃんはやっぱり色んな意味で趣味じゃないからなぁ。このルートは夕陽の不憫さも際立つし。

 そしてじいちゃんと父さんはやはり神。この二人の存在感は、特にノーマルでのそれは圧巻ですよね。
 単に真っ当で立派な大人をやってるというだけでなく、その境地に至るのにそれぞれに苦悩と後悔を抱えて、それでも立ち上がってここまで来たという自負と、それまでの自分と関わってきた人々に対する真摯な責任感が滲み出ている書き方なので、本当に心に響いてくる存在感だと思います。
 ノーマルルートでの夕陽の、絶対がんちゃんは私たちよりおじいちゃんのほうが大切なんだよ!は実際その通りだと思う。だからこそあのルートは、エロゲとしての存在意義をうっちゃってる、とも思うんですけど。。。


CG(20/20)

 ・・・いや、これ圧巻の美しさでしょ?なんで昔の私、18点なのよと思う。
 確かにムラがない、とは言わないし、枚数的にも水準の域以上ではないけれど、背景含めてのトータルコーディネイトの完璧さ、立ち絵素材の豊富さ、要所での圧巻の1枚絵の迫力を踏まえれば、最低でも19点だよなあって思うし、改めて見ると本当に御波可愛すぎるので満点でいいでしょこれ。

 立ち絵は確実に当時の水準ははるかに凌駕してますね。登場人物が少ないとはいえ、まったく手抜きがない。
 ポーズはヒロインが3種類ずつ、サブは1種類ずつですね。しかもそれぞれに非常に躍動感のあるポーズで、腕差分などはないけれど十分に活気を感じさせます。
 特に御波の正面と右向き前かがみ、青葉の横向き頭の後ろで腕組のポーズは大好きですなぁ。

 服飾はヒロインで5〜7種類、サブは1種類だけど大人ばかりだしそれは仕方ないでしょう。何より、ほとんど出番がない服飾でも、シーン上必要なら妥協なく用意しているがために、ヒロインの服飾はかなり充実してます。
 特にお気に入りは御波の私服、水着、寝間着、体操着、青葉のサマードレスあたりかな。やっぱりレアリティの高い服飾は記憶に残るし、しかもそれのデザインがすごく好きという。超贅沢をいえば、御波の寝間着は引きの立ち絵で見てみたかったのです。むろん制服の黒ストも好きだけど、あのロングスカートだと目立たないのがね。。。

 表情差分はかなり多彩で、ヒロインのコミカルさ、シリアスさを中心に、喜怒哀楽のメリハリがよくつけられた素晴らしい出来。特に夕陽と御波は優遇されている感じがしますねやっぱり。御波は元がああだけに余計に新鮮さが強いですし、もう一々かわいいかわいい。
 特に照れ上目遣い、脹れっ面、したり顔、泣き笑い、真剣あたりはものすごく好きです。


 1枚絵は全部で82枚かな、これだけだと水準ですけど、背景としての画面演出がものすごく多彩で、そこにかなり注力されているので、見た目以上に手間暇かけられてるだろうなあとは思いますね。

 特に好き、クラスだけ抜粋すると、御波の団扇扇ぎ、手を伸ばせば届きそう、キス、初H愛撫、騎乗位、図書室Hバック、青葉変身、クローゼットの中の私、そこにいる君に会いたい、初H騎乗位、背中の語らい、我々のあるべきすがた、あたりですね。うん、本当に要所での出来は圧巻だと思います。


BGM(19/20)

 こちらも改めて聴くと、まあ少し上乗せしないとなあって。さすがに満点は量的な部分もあり出しにくいけど、世界観を彩る、という意味では完璧に近いし、EDボーカルの豊富さも、きちんと聴き込めばそれなりにこれは、と思えたりもしましたし。あとアメージングをこの作品のもの、と当時は評価してないと思うけど、それ抜きにしてもね。

 ボーカル曲は7曲もあり、さすがにヒロインEDのすべてまで素晴らしい、とは言えないけど、OPの『For our days』は今でも時々聴くくらいの神曲だし、ノーマルのED曲も中々にいいし、アメージングの圧倒的な世界観はやはり素晴らしいなと思います。ヒロインED曲に限ると、何故かそこだけは朝陽のが一番好きだったりする。

 BGMは20曲ちょいと当時でもやや少なめ、しかもアレンジも多いってのが評価下げ気味の原因でしょうけど、でも質は素晴らしいですよねこれ。
 特に、と書いていいクラスで『Happiness』『長い雨』『苦悩』と、野球のセンターライン張りに決め所が揃ってるし、その他もすごく雰囲気がよく出ていて、御波のテーマ曲とかも特に、にまでは至らずともすごく好きですね。


システム(9/10)

 ここも表面的なシステムのあれこれだけ見て、だけど、もう少し演出のトータル的な作りこみの丁寧さ、完成度を評価すべきだろうと。
 2007年の作品である以上、そりゃものすごく動くわけではないけれど、でも必要な場面ではきちんと表情の変化などにも溜めを作ったり、移り変わりを示したりして工夫されてるし、立ち絵素材の使い方もうまいし、SEや光源演出は非常に丁寧に組み込まれていて、とても世界観、臨場感が伝わってくるなあと。
 個人的に、御波が普通の真実に気付いて慟哭するシーンでのひぐらしの声があまりに印象的すぎるのですよ。
 ムービーも派手さはないけどすごく綺麗にまとめてあるし、好きですね。

 システムはまあこの当時でもボイスカットがないのはちょっと切ないけど、いや、それはきちんと全部のボイスと演出を見てくれ!という意思表示と思うことにしましょう(笑)。
 スキップはまずまずはやいです。ジャンプを期待していい時代じゃないので、選択肢的に難しいけど頑張りましょう。セーブデータのキャラ別振り分けとかは親切だし、簡素だけど必要なものは揃っているから、別に今プレイしても遜色はそこまでないですね。


総合(97/100)

 総プレイ時間は27〜8時間ですかね。共通からかなりヒロイン別のイベントが多彩なので、個々で何時間、と区切りにくいですけど、大雑把に言って共通5時間、個別が4〜5時間の間、ノーマルは3時間くらいで、アフターが40分くらいかな。

 まあ読み口も内容も、かなり人を選ぶ作品です。
 設定だけ見るとパニックものっぽいけど、決してそんなことはなく、非常に地味で普遍的で、けど何より大切なテーマをコツコツと語りつくすような内容なので、安易なイメージで突入するとあれっ!?ってなりそうだし、道中も心情の変化が些細でありつつ時に大胆で、色々めんどくさいと思ってしまう部分は多いです。
 ですが、それも楽しいと思える人には十分に楽しいし、そこを乗り越えてのノーマル&アフターの出来はエロゲ史上でも屈指、といって過言ではないと思うので、私としてはぜひぜひに、こうしてわざわざ太鼓持ちするくらいには改めてフィーチャーされてほしい作品ですね。
posted by クローバー at 04:03| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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