2014年12月25日

彼女のセイイキ

 いやもう、シナリオなかひろさん、原画涼香さん、メインヒロインのCV遥そらさんとか、ぶっちゃけ私の好みに完璧にカスタマイズしてくれてるよね、としか言いようのない素晴らしいラインナップなので、お値段もお安いですしノータイムで購入。


シナリオ(21/30)

 その想い、あればこその・・・。


 主人公はある日、満員電車の中で急ブレーキの際にうっかり美少女のお尻を撫でてしまうという失態をやらかします。
 痴漢と間違われて電車から降ろされ、しかしその相手をよく見ると、それは昔馴染みで当時の憧れの女の子、冬華でした。当人も主人公のことに思い当たる節が有りそうながらも、口では否定し、そして当時の面影とはだいぶ違う、当たりのきつい高慢な態度で、もしも痴漢の罪で警察に突き出されたくなければ、私の執事になりなさい、という謎の命令を受けます。

 無論それに釈然としない主人公ではありますが、飛び切りの美少女に育った冬華に対し、かつての思慕が湧き上がってくるのも感じ、勿論本当に警察に突き出されても困るので、とりあえず冬華の言うとおりに、彼女の執事として日々の送り迎えなどをこなします。
 その中で、やはり節々にかつての思い出と絆があることを滲ませる冬華ですが、けれど高慢に命令する一方で、些細なことに遠慮したり、バイトに勤しんでいたりとお嬢様らしからぬ行動も目立って。

 しかし、その心理の襞に踏み込むよりも早く、執事という役柄を逆手にとってのおしおき、という名目で、何故か冬華の方から性的なアプローチを受けて、どうしようもなくそれに流されてしまいながらも違和感は募るばかり。
 それでも、この偽りの主従関係が存外に心地よくて、こそばゆく嬉しくて。
 少しでも長く今の関係が続けばいい――、そんな甘い思いが、彼女の真実に踏み込むことを躊躇わせて、それでもいつか、その日はやってきます。

 果たして、冬華は主人公に対してどんな思いを抱いているのか?
 別れていた間に、彼女に一体何があったのか?
 改めて近しい存在になった彼女と、主人公はいかなる関係を築きたいと希求するのか?

 これは、素直になれないハリネズミの少女の、棘の奥にそっと大事に隠され続けた聖域に踏み込み、かつての絆を取り戻すことで今を変えていく物語です。


 あらすじはこんな感じですかね。
 大枠は書くまでもなく、冬華の真実を知って、じゃあどうする?という流れ。二人の関係性のスタートラインの特異性などから、最後の選択に多様性を持たせているのが特色と言えばそうですかね。

 テキストは実にいつものなかひろさん。むしろ尺が短い分、キャラの個性の引き出し方などはより尖っていて、いつもながら確実に人は選ぶ読み口。
 同じ台詞や似た台詞を幾度も繰り返しつつ、それを用いる状況や心境を少しずつ変えていって、そのニュアンスから想いの変遷をくっきり浮き彫りにする手法も、内面を噛み締めるような連続の語りからの、我に返ったかのようなセルフツッコミや意地張りを発動するやり口もいつも通りの安定感で、信者としてはそれだけで心浮き立ってしまうところ。
 そして、傍目からはわかりやすいくらいの反応なのに、あくまでも当事者意識に主軸を置いての意識のズレや怖さを疎かにせず、丁寧にその齟齬や隙間を埋めていく手法もやっぱりらしさ全開ですね。
 今回は特にシナリオの尺が長くはないので、そういう特異性がより頻繁に露骨に用いられており、今までなかひろさんのテキストに触れたことがない、って人には、合うか合わないか、これ以上なくわかりやすいリトマス試験紙になりそうなテキストでした。

 ルート構成は基本一本道、そこまでの二人が辿った関係性の特異さがもたらす、結果としての関係性の選択が最後に出て、そこで結末が変化する仕様で、しかしまあどれが正着かというのははっきりしてるので、あくまでそれをラストにしつつ、他の色合いも楽しみましょう、という感じ。

 シナリオもじつになかひろさんらしいつくり。
 特に冬華というヒロインの個性の作り方、それに至るまでの境遇の設定は実に丁寧で、傍から見れば些細に思える出来事が、当人の中ではどれだけ大きいものであるか、そのズレを浮き彫りにしつつも、当の本人が一番その差異を、一番知らせたい相手に知られるのを恐れるという、当事者意識の難しさを存分に噛み締められる展開。
 こういう作品なので、二人の関係が結ばれるきっかけにせよ、そこから性的な関係に雪崩込む契機にせよ、一方ならず強引に思える部分はあるけれど、最低限冬華の意識の中では、その時点で一番正しい、或いは自分に出来る精一杯を見せているという健気さと不器用さを感じさせます。

 道中においてはそれは主人公との明確な温度差として表現され、けれど主人公にも冬華と関わり続ける内に徐々にその熱が伝染し、それでも一旦迂回して築いてしまった、どうしようもなく心地いい関係を壊してまで前に進むべきかという別口の葛藤が発生して、そういう互いの心境のズレが化学反応して、渦を描きながらも少しずつ中心の、冬華が携え続けてきた「たったひとつ」、彼女のセイイキに辿り着くために奔走するわけですね。

 結果論的に見て、冬華はおそらく主人公との再会の時点で、身も心も今の生活に倦み疲れ、ボロボロだっんたじゃないかなぁとは思えるし、それでも心の芯にずっと持ち続けていた愛しい思い出の存在が、完全に折れるのを留めていたところでの運命的な再会・・・なのに出だしは痴漢だったりするからなんだかなあ、なんですけど。
 でもきっとこの二人の場合だと、普通に再会したところで通り一遍の触れ合いに終始して、互いの距離を縮める努力をせずに終わってしまいそうな精神性は感じさせるので、その意味では紛いなく救いの運命ではあったのかと。

 惜しいな、と思う部分は、全部終わってみれば幼い主人公ってすんごいいい奴だよなあ、と思えるのに、こういう一人のヒロイン特化のつくりのせいか、いきなり本筋の物語にズドンと流し込まれてしまって、今も変わらない主人公の誠実さとか、そういうものの片鱗を醸すことが出来なかったところですかね。
 大抵はそういうの、共通ルートがあればそこで、ってなるし、そこはもう少しフォローがあれば、って思いました。一応家族との関係とかで、雰囲気は示しているのかもだけど、あの妹ツンデレからそれを汲み取れ、というのも中々に無茶な要求だ(笑)。

 あと一応お嬢様のくせに、体で繋ぎ止めるという認識だけはきちんと持ってるってのはどうなんだ。。。まあそうでもしないと、このシーン数実装する理由づけに乏しくなるから仕方ない部分はあるでしょうけど、なんだろうね、このえちぃシーン頻出する作品×なかひろさんっていう部分の据わりの悪さは。。。
 勿論悪くはなかった・・・けど、全般的に冬華の感度良過ぎるだろってあたりで、エスカレートの匙加減は決して上手くはないかなあと思うし、その辺は本当に、その時点の冬華の心情をきちんと把握し共感した上で見てあげないとなので、悪い意味でめんどくさい気はしました。可愛いけどもさ。

 ともあれ総体的に、fengといえばツンデレメインヒロイン、の原点的な色付けに立ち戻ったようなコテコテに可愛いツンデレの冬華の、けれどその陰に隠れた様々な葛藤や抑圧、一途さや健気さがきちんと楽しめる、実に味わい深い作品に仕上がっているとは思います。
 どうしても全体的に性急さは滲んでしまう事(厳密に言えば、なかひろさんの作る話としては、ってなるけれど)、劇的さは薄いし、丁寧な心情変化を楽しめないタイプの人には合わないだろうしなあと、万人に勧めにくい作品ではありますが、まあ信者の私としては期待通りくらいには楽しめたし、中々に染み入るいい話だったと思いますね。


キャラ(20/20)

 いやぁ、冬華ほんっっっっとうに可愛いですよね〜。
 わかりやすすぎるほどにコテコテのツンデレ、意地っ張りなんですけれど、高慢さを演じようとしてもどうしても滲んでしまう思い遣りとか思い入れとか、合間に醸し出す可愛げが非常にきゅんきゅんくるし、その土台あればこそ罵りの言葉ですら愛らしさ満点で。
 挙句にCVがCVでしたから、もう私としては大歓喜、基本M属性はないはずなんだけど、こんな可愛い罵りならいくらでも受けたいです!みたいなダメな気分にさせられる素晴らしい演技と塩梅でございました。
 何気にデレてから、とか、子供時代とか、メイドモードとか、幅も広く楽しめましたしね。あんなあざとい萌え萌えきゅん、まともに喰らったら即死じゃね?って真顔で思ってしまうくらいには可愛かった。。。

 それら含めて、今まで形成してきた自分の殻をいかにして打ち破るか、その為の勇気もまた彼女のらしさ、在りたい理想像を描いていて、そこに辿り着くまでの不器用さも加えて本当に大好きな子になりましたね。流石に殿堂ラインには乗らないけれど、しかし本当、今年の好きな声優部門は独壇場に近いぜよ・・・。
 
 妹も面白可愛かったし、個人的にはマイカもかなり好き。ただまあ、あくまで設定がこうだと他の子に・・・とはなりにくいし、そこは納得してる部分。


CG(19/20)

 いつもながら華やかでシャープで絢爛で、可愛いツンデレにはすごくしっくりくる絵柄ではないかと。何気に星架か以来の気もするし、でもよくよく考えれば空シリーズのツンデレ枠はつばすさんの独擅場だった気もするし、星架かでもツンキャラ担当ではないから、その意味では新鮮味もあるのか。
 質量ともに、クォータープライスとしては充分だし、かなり満足できましたね。

 立ち絵も値段考えればそこそこではないかと。
 ポーズは冬華2種類にサブ1種類、基本的に全部可愛い。。。特に冬華の正面向きは大好きです。
 
 服飾は冬華3種類にサブ2人が2種類かな?確か巫女服立ち絵はなかったよね?
 基本的にすごく可愛く華やかなデザインですし、小物までしっかり配慮が効いていて、個人的に帽子被ってるヒロイン大好きなので、今年はエロゲ界隈で帽子が流行っててすごく嬉しいのです。。。
 お気に入りは冬華制服、私服、メイド服、マイカ私服あたりかな。

 表情差分もそれなりに数はあり、特に冬華は微細な感情の機微も上手く描き分けている感じで素敵でしたし可愛かったですね。
 特にお気に入りは冬華の眉も下げての潤み気味な笑顔ですかねぇ。これは終盤にならないと出てこない、それこそ心の底から相手に寄りかかれて嬉し泣きしそうな雰囲気がばっちり出ている決め打ち的な表情なので、これ見ただけで、ああ、良かったねぇ・・・とこっちまでほっこりしますです。
 後は冬華笑顔、怒り笑顔、焦り、憂い、ギャグ怒り、ジト目、照れ焦り、はにかみあたりかな。


 1枚絵は通常23枚、SD2枚の計25枚。値段相応ではあると思いますし、質も抜群、とまでは言えないかもだけど、やはり土台の美しさはあるし、好みの絵柄でもあるから評価は高くなっちゃいますね。
 
 特にお気に入りは2枚。
 1枚目は初H愛撫、気の強さを潜めて素のままの不安げな、だけど嬉しげな表情と、柔らかそうなボディラインが素敵でしたね。
 2枚目は電車痴漢プレイ、うん、基本的にあの制服と黒ストが好きなだけなのは否めないけど、なんかすごくこれ構図的に好きなんですよね。。。

 その他お気に入りは、メイド、部屋フェラ、脚舐め、自慰、手コキ、正常位、パイズリ、足コキ、69、背面騎乗位、巫女露出、立ちバック、プリクラ、スク水、対面座位、ボンテージ騎乗位あたりですね。


BGM(18/20)

 地味に良かった項目というか、素朴ではありつつもすごく内面を噛み締めるような語り口にマッチした曲をBGMではチョイスしつつ、ボーカルの華やかさと勢いに切々と押し寄せる心情が滲んでいて、そのバランス感がいいなあと。

 ボーカル曲は2曲。
 OPの『冬に咲く華』は、OPムービーないから最初どこで流れるの?って思ってたけどタイトル画面の曲でしたね。華やかでありながらどこか孤高で、寂しさを感じさせるBメロ迄から、伸びやかで喜びを謳うサビへの流れの自然さと情感がかなり好きですねこれ。
 でもEDの『夜明けのベルが鳴る』のほうがもっと好きだったり。これも淡々とした出だしから、手にした幸せと覚悟を噛み締めつつ少しずつ気分の高揚に合わせるように曲も走り出して、サビでの盛り上がりを非常に先鋭に、切実に感じさせてくれますね。特にサビの出だしの畳みかけるようなメロディが気に入ってます。

 BGMは全部で14曲、アレンジも多いので実質的には10曲程度ですけど、まあこれも値段考えれば妥当でしょう。普通にミドルプライスやフルプライスでもこれくらいしかないのとかたまにあるし、そう考えれば優秀。出来も悪くないです。
 お気に入りは『今も完璧なお嬢様Arr』『猫耳イカ娘』『おやすみ前のひととき』『とても素直な本音』『巡り合わせの結末』『冬に咲く華piano』あたりですね。


システム(8/10)

 演出はごく普通、かな。
 一応立ち絵同期もするし、それなりに動くけれど、そもそもあまりそういう見た目の演出を必要としないテキストってのもあるからか、特に目立った部分はなく、必要な部分は抑えて、という感じ。ムービーもないですし、その辺は低価格ならではと思うべきかな。

 システムは一応刷新して色々使えるようになってるし、基本機能も揃っているので特に問題は無し。
 しかし敢えてここで書くことでもないけれど、全般的に解像度の変更とかどのくらい差異があるものなのか、未だにイマイチわかってないPC音痴の私だし、あと最近は結構標準搭載気味のマウスジェスチャーも使いこなせた試しがないので(笑)、それがあることをどのくらい評価していいのか困るんだよね。。。


総合(86/100)

 総プレイ時間5時間、かな。クォータープライスなので素直に1/4と考えればほぼ水準ではあるし、内容としても冬華というヒロインに1点突破のわかりやすい構成ではあるし、内容的にもきちんとらしい物語には仕上がっているので、私としてはかなり満足度が高い作品になりましたね。
 正直シーン数が多くとも実用性が高いか、って言われると首を傾げるところはあるし、自然なエスカレート、というには少しばかり粗雑な気はして、後半全部エムパシー的になっちゃってるのが逆に笑っちゃったけど、シナリオとしての必然性はちゃんと感じられたし、本当に好みの要素だけギュッと絞って抽出しているので私得でした。

 当然万人に合う、とは言えませんし、でもなかひろさんが手がける作品としては例外的に短めの作品ではあるし、抱き枕付きにしなきゃ値段も手頃だから、今まで手にしたことの無い人の試しとしては最適かなと思うし、少しでも気になる要素があるなら手に取って見て欲しいですね。
posted by クローバー at 05:02| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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