2015年01月03日

ChuSingura46+1 武士の鼓動

 本編の綿密で多角的な歴史検証ぶりが好みでしたし、悲嘆や凄惨も避けて通らない潔さとそれが故のバトルシーンの迫力も気に入っていたので、こちらも当然購入。


シナリオ(23/30)

 この作品は2013年5月に発売されたChuSingura46+1のFDになります。
 コンテンツとしては、本編最終周の大晦日の決戦の前に、姿を晦ませていた赤穂浪士たちが何をやっていたか、という幕末編と、全てが終わって主人公が現代に戻るまでの穏やかで賑やかな日常を描いた後日談を織り交ぜて展開し、その他エクストラストーリーを少しずつ、という格好ですね。
 FDではありますが充分にフルプライスに相応のボリュームと、濃密な内容であり、今回も非常に楽しめました。

 あらすじとしては、元禄時代に本当の敵と対峙するために、策を弄して赤穂浪士達を生き延びさせた、その歴史に対する介入の歪が徐々に大きくなり、そのままだと幕末の動乱において、幕府の崩壊が発生しないかもしれない=現代との繋がりが完全に断たれるという可能性が生じ、それを防ぐために一魅によって主人公たちが幕末に送り込まれる、というもの。
 歴史の流れを決定づけた薩長同盟の立役者である竜馬の存在をスポイルすることで、長州で唯一に近い先見の明の持ち主であった桂小五郎の身を、主に新選組の兇刃から守り、かつその意識変換を求めていくという筋書きの中で、歴史上の史実の凄惨さと、変遷していく時代のうねり、その中であるべき武士としての姿を探求していきます。
 また、主人公自身の歴史としては、元禄時代の移り身である直刃が子を為さねば自身の決闘に繋がらないという危機があり、内匠頭の残留思念の介入で、かつてのループの際に愛し合ったヒロイン達の記憶が戻り、誰と結ばれるのかの争奪戦も並行して行われることになります。

 テキスト的には本編同様に、コミカルな部分と重々しい部分の腑分けがしっかりと出来ていて、文字通りやるときはやる、という雰囲気を醸しつつ、歯切れよく読み込ませてくれる感じですね。
 ルート構成は単純に、後日談のラストで元々のヒロイン誰を選ぶかで、一応の個別ルートに分岐する格好。それより前の段階で、赤穂浪士の面々ともHに雪崩込む選択肢がいつくかあり、その辺は回収作業、という感じです。

 シナリオとしては、史実に忠実に展開しつつも、その中で嘘にならない程度に主人公たちの介入の影響を織り交ぜていく無理のない形。まあ序盤のつむぎなどは少し強引さはあるものの、中心人物である小五郎を守るようになってからは実に面白く読めましたね。
 主人公たちが降り立った1864年は、長州にとって最悪の年と言っても過言ではなく、また小五郎にとっても辛い潜伏を強いられた時期で、そこに主人公たちの手引きがあり、助けがあったという設定は良く発想したなあと。
 またこの年は、池田屋事件などで新撰組の名が台頭する年でもあり、その敵役としての信条、思想性なども丹念に探っていく中で、この時代が生んだ精神性と、元禄時代にはまだ残留していた本質的な武士としての在り様との対比を軸にしているのも見事な構成。その上で、本当の決戦の叩き台的な位置付けで新撰組との激突を用意しているのも胸アツですね。

 武士道とは何か?という問いに対して、確実な答えがあるわけでなく。
 ただ少なくとも、赤穂浪士が討ち入りで体現したものは、元禄という時代に失われつつあった戦国期から醸成され、形式美となっていった武士道にそぐうものであり、だからこそあれほどの賛美がもたらされたもので。
 翻って幕末、しかしこの時代は、既に武士道は形骸化しており、かつ黒船来航からの戦いというものに対する意識の変革が、本質的な武士道そのものすら時代遅れの固執に置き換わっていて。
 その中で、武士道の中核的なエッセンスは残しつつ、時代が要求するスタイルに適応して立ち回れた大人物がどれだけいるか、と言われればそれは本当に数少なく、高杉晋作や桂小五郎はその系譜に連ねられる人物ですが、新選組はその波に乗り切れなかったわけですね。

 武士という身分そのものの価値が下がって、そもそもは農民の出である近藤勇や土方歳三にも手の届く身分になって、それでも本物の武士、という腐りかけた看板は、そういう成り上がりを軽視する性質を振り捨てることは出来なくて。
 元が武士でないからこそ、より強く本質的な武士道に憧れを抱き、けれどその憧れに相応しい自分達になる為には、どうしてもこの動乱の中で、画期的な手柄を立てるなどして、その偏見という弊害に打ち勝っていく必要があったために、本来は内部統制的に用いられていた鉄の規律や残忍さが徐々に外側にも漏れ出していって・・・という思想の変遷、そのあたりの機微をこの作品はとても丁寧に、賛美も非難もせず淡々と紡いでいる感じです。
 赤穂浪士を理想とする武士像、しかしそれは幕末に相応しい精神性ではなく空回りするしかなかった悲しみに対し、例えば沖田総司に数右衛門が語った、武士としての死に場所を与えてやる、という意思の示しは、武器の発達で命の価値が減衰した時代においてそれだけで救いになる観念だろうなあと思う次第で。

 その行いに正当性は見いだせないと突き放しているからこそ、残酷なシーンも振り捨てずに淡々と活写し、けれどその根源的な精神性の純粋さとそれに対する価値に関しては認めたい、という歴史観がすごく良く滲んでいる構成だったと思うし、翻って滅茶苦茶に晋作贔屓ではあるよなあと思うけど、そのあたりの評価はすごく私の理解や感性とも噛み合っていたのでその点で満足度は高いです。
 どうしても最終的な着地点が決定しているという部分に加え、戦闘面でもどうしたって死ななければいけない人物と、死んではいけない人物という制約もあるから、バトルシーンなどは結構窮屈にならざるを得なかったはずですけど、それでも先が読めてもワクワク楽しませてくれる迫力と臨場感は出せているし、面白かったですね。
 個人的には高田馬場の決闘のエピソードと、あと池田屋事件にまつわるくだり全般が特にお気に入りです。あとエクストラの誉れの三百石もすごく好きなエピソード。

 後日談からの個別の、個々の足跡を現代で追いかけるという試みも面白かったし、その中で必然の別れを前向きに捉え、強く生きる覚悟を、また違う視座での武士道の体現と捉えることも出来て、この忠臣蔵の物語を閉じるにあたってとても清々しい景色を残してくれたと思います。
 流石に本編の濃密さ、周を重ねるごとに先が読めなくなることと、ループの弊害による緩急の付け方などがもたらすのめり込むような面白さには届かなかったとは思いますが、シリーズとして期待される面白さは充分にあったし、ただ点数としてはこれくらいになりますかね。惜しむらくは、ってか完全に個人的事情ですけど、今作で1、2のお気に入りの源吾と小五郎にえちぃシーンなかったのは微妙に痛恨なのです。。。


キャラ(20/20)

 本当に個性豊かで素敵なキャラが沢山沢山出てくるし、きちんと一人一人をないがしろにせず、素敵なエピソードはなるべく拾っていきたいという姿勢そのものも好感が持てて、とっても楽しかったですね。
 元々の立ち絵キャラの積み増し、という部分では特筆するほどでなく、ただやっぱり内蔵助の深謀遠慮は凄まじいし、安兵衛のかっこよさは際立ってるなあと。そして孫太夫の活躍が本編以上に目立っててそこは嬉しかった。あの変態さん大好きですわ。。。

 新規立ち絵キャラだと、まず赤穂浪士では源吾ですね。
 シナリオ上の必要から、ってのはあるだろうけど、あのハキハキとした明るさと、芸事に達者ゆえのほんわりした雰囲気が非常に可愛かったし、シナリオ的にかなり緩急を強いられるキャラでもあったから印象深いですね。
 それにまあ、私的に遥そらさんだから余計に好き、ってのはどうしてもあるのです。十太夫もそうだけど、芯のあるキャラの芯の部分をしっかり演じ切るのがいつもながらすごく上手いよなあとしみじみ噛み締めてしまうのです。

 そして小五郎ぶち可愛かった。。。
 高慢ロリキターーー!は次プレイ中の作品(残念事情)ですけど(笑)、自分の信念に対して強い自負を持っていて、誰よりも仲間想いでありながら、歯を食いしばって生きることに執着できる強さ、それをとても上手く表現できていたと思いますね。恋愛要素はおまけ的ですけれど、あれはあれで可愛いし、素直になれないツンデレはいいですよねぇ。
 こっちもCV的にすごくキャラに嵌ってたし、この人は燐音もそうだけど、感情の上げ下げが大きい、演技に極端を求められるヒロインのほうがより光る気がします。何が攘夷だっ!とか、最後の、お前なんかぶち嫌いだ!臍噛んで死ね!とか、くっきり印象に焼き付けられるインパクトがありますもんねぇ。

 そして晋作は真っ当に素敵すぎる気が。。。
 やっぱりもうちょっと天才肌ゆえの奇矯なイメージはあるし、ここだとむしろ小五郎との対比で抑え役にすら見えちゃうからなあ、その意味では素敵だけどこれじゃない感はありつつ、やはりこの人の人生、まさしく幕末を終わらせるために生まれて死んだような生き様は痺れます。
 私個人としても、圧倒的に不利な条件下の中で、彦島租借問題を相手に取り下げさせたことは、幕末史の三指に入る金字塔だと評価しているので、その辺余さず示してくれたのは嬉しかったなあと。


CG(18/20)

 FDとは思えない圧倒的な物量と差分量は本編同様の賑やかさと華やかさを見せてくれるし、本当にチョイ役にもきちんと立ち絵を用意したりと、すごく思い入れとリスペクトが感じられて印象はいいですよね。
 絵の質も本編は数年分一括りだったせいかそれなりに粗はあると思えたけれど、今回は絵そのものも塗りの質も一段と良くなっていると感じます。まあすごく好きなタイプの絵柄、というわけではないのでここまでの評価ではありますが。

 立ち絵に関してはそれなりに既存キャラにも追加差分などは用意しつつ、後は本当に歴史の流れの中で一瞬の光芒を放ったキャラにもしっかり立ち絵つけたりしているのは、それが好きかどうかはともかく評価したいところだなあと。
 とりあえず源吾と小五郎はとっても可愛いし、あと十太夫とお仙姉妹がめっちゃ可愛い位ですよねぇ、あれだけの出番なのが本当に勿体無いし、二人揃ってなんて豪華なCV使ってやがるとね。。。

 ヒロインには現代編でちょろっとだけでも私服モードとかもあったりするし、相変わらず服飾に関しては露出過多が目立つけれどもおおむね可愛いですね。
 表情差分に関しては一々言及するにはキリがない程キャラ多いし、サラッと新規で当たると、源吾の笑顔、苦衷、小五郎の眉潜め、傲然、慟哭あたりは好きですね。


 1枚絵は全部で114枚と、フルプライスとしても充分水準は超えているし、出来も安定して艶やかで可愛くエロいと思いますね。個人的にはこのピンク過ぎる乳首の塗りはむしろ好き。
 
 特にお気に入りは2枚。
 1枚目は血盟の契り、ここの安兵衛と菅野叔母との真剣ながら深い思いやりを感じる構図はとてもいいなあと、後のシーンの凄惨さを踏まえるに心を打ちます。
 2枚目は孫太夫フェラ、基本的に孫太夫さん関連のエロスは全部素敵ですけど、特にこのシーンのボディラインと表情の艶めかしさが大好きですね〜。ホントこの人可愛いしエロくて好きですわ。

 その他お気に入りはページ順に、、孫太夫こけし弄り、ロリフェラ、初バター犬、小夜バター犬2枚、墓参り、寝起き、すり寄り、新選組、新六フェラ、屈曲立位、唯七フェラ、背面屈曲位、将監顔射、死闘、決闘の決着と、瀕死の又次郎、惨殺、孫太夫準備万端、愛撫、正常位、花見風呂、病床の晋作、小倉城陥落、対新撰組5枚、病床総司、内蔵助撞木ぞり、騎乗位、正常位、我が子、安兵衛正座、69、主税愛撫、バック、対面座位、写真、右衛門七バック、正常位、新八郎寄り添い、騎乗位、屈曲位あたりですね。


BGM(17/20)

 時代性を意識しつつ、疾走感のある楽曲が揃っていていい感じですね。
 曲数は水準クラスなんですが、ぶっちゃけ本編の曲にはタイトルがついてなかったため、どのくらい流用されてるのか正直わからず、いつくか聞いたこともあるのあるかな、とは思うんですが、その辺の進歩も含めて今回は一応ほぼ新規という前提でつけています。

 ボーカル曲は3曲。
 OPの『薔薇色事変』はとっても爽快感と疾走感があり、その中にしっかり覚悟というか芯というか、強さを感じさせるボーカルとの噛み合いが中々いいなあと。ただメロディとしてはすごく惹かれるというほどではなく、サビの入りだけは好きなんですけども。
 ヒロインEDの『二人の鼓動』は個人的にかなりの名曲。この淡々とした中に潜む悲しみ、歓び、意志がとても丁寧に紡がれていて、というか存外みやびー歌上手いっすね。。。ネガゼロとBlueflame以来だと記憶してるけど、こういうしっとりした雰囲気の曲に声質は合ってるなあと。
 曲としてもAメロとBメロがかなり好きで、サビも悪くないしトータルの完成度が高い曲だなあと。どこまでも想いよ届け、というばかりに伸びやかになる部分がいいですよね。
 新八郎EDの『一つの願い 一つの祈り』も悪い曲ではないですが、より単調でしんみり淡青さを醸していて、およそ新八郎のイメージからするとびっくりする感じですね。後半生の彩りを踏まえてなんでしょうけど、曲としてもそこまでは惹かれなかったかな。
 そしてやはりこのシリーズでは『仇華』が白眉ですなぁ。最後のバトルシーンで流れてテンション上がる上がる。。。

 BGMはボーカルアレンジ込みで31曲とほぼ水準。出来はそこまで深みは感じずそこそこ、って感じですけど、重く切ないシーンの曲は特に印象深いです。
 お気に入りは『悠久』『壊』『襲撃(左廻り)』『死闘』『元禄』『悲運』『Fire dream』『悲願』あたりですね。
 完全に余談ですけど、『死闘』の出だしの部分聴いてると、戦国ランスの魔軍戦をすっごく思い出すのは私だけでしょうか?あ〜、戦国ランスも久々にやりたいですねぇ・・・。


システム(10/10)

 演出は圧巻ですね。圧倒的な物量と多彩かつ奔放な動き、バトルの表現力は突出していて、本編よりも更に進化して素晴らしいと思います。というか、どうして私本編のこの項目8点なんだろう?流石に9点つけてていいと思うんだけどなぁ。
 とにかく日常からすごくキャラが自由自在に動くし、一回しか出てこないような小物差分も惜しげもなく突っ込んでくるし、バトル演出は立ち絵モーションと一枚絵を絶妙に組み合わせて臨場感を素晴らしく引き出せているし文句なしですね。
 挙句主要ヒロインだけとはいえ、Hシーンにアニメーションなのかエモート的演出なのかは知らないけど動的な要素まで追加されていて、胸の弾み方が露骨に過ぎるきらいはあるけれどやはりないよりは当然あったほうが嬉しいですね。というかその意味で、新八郎って優遇されてるよね。。。
 ムービーも色使いが非常に濃密で、影絵などが世界観のインパクトをきっちり踏襲していて悪くない出来ですね。

 システムも素晴らしいとは言えないですけど必要なものは揃ってるし、回想なども使いやすいかとはともかく充実はしているので、取り立ててマイナスに思う部分はなかったかなと。強いて言えば人物録はもう少し作中の活躍に突っ込んだ記述まであっても面白いのに、とは思います。
 満点だと少し甘い、とは思うんですけど、やはり演出が素晴らしかったのでそこはおまけですね。


総合(88/100)

 総プレイ時間20時間くらい。本編が15時間くらい、そこからの個別分岐で40分〜1時間、エクストラが合計で1時間半くらいです。
 流石に本編の膨大な質量に比べると標準的になってしまいますが、それでもFDという位置づけの中では非常に濃密に仕上がっているし、その辺は値段もフルプライス付けだからそれで標準、とは言えるのですが、まだこれだけ掘り下げられるものがアあったんだと思えば、歴史に対する造詣の深さと、本当に好きなんだなと思わせる作品でしたね。

 私はどちらかというとあの本編ラストの展開を絶賛はしていないクチですし、それを前提にしての今回の話もその部分は引きずらざるを得ないですが、幕末という舞台の中で改めて武士道の意義付け、意味づけを為した点は高く評価したいですし、充分に日常もバトルも面白く、きつい場面も含めてこのシリーズならではの味わいは楽しめました。
 本編が瑕疵なく大好き、って人には当然お勧めですし、忠臣蔵にはあまり造型はなくても幕末や新選組には興味ある、って人が、改めて本編からプレイする機会となればいいなと、歴史を扱った作品としては本当に歴史に対する真摯さが明確に滲んでいるし、その視座からは大変にお勧めできますね。
posted by クローバー at 05:00| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。