2015年01月08日

ヒマワリと恋の記憶

 元々少し気になってたタイトルで、体験版やってるヒマなくてとりあえずスルーしてたけど、面白いっぽかったので後追いでこっそり購入。


シナリオ(25/30)

 イズライフ、ビューティフル?


 主人公は前の学園時代まで続けていたサッカーを辞めてからは、ごく普通の学園生として目立たずに暮らしてきました。
 一年の頃から、クラスのマドンナ(死語。。。)である亜依に、一目惚れに近い鮮烈な恋心を抱きつつ、サッカーを辞めた自分には取り柄などないという後ろ向きな観念も手伝って、中々その距離を縮める機会は訪れず、精々が放課後に、彼女が音楽室でピアノを弾くのを遠くから眺めて満足する日々。
 そんなある日、隣の席のごく普通の騒がし系女子である茜が、主人公の親友でありサッカー部のエースでもある隼人を思慕していることを偶然知ってしまい、しかし亜依の親友でもある茜は、主人公にそれを知られた腹いせに、主人公が放課後亜依を影ながら見つめていることを暴露しようとして。

 互いが互いの親友に恋していることを知った二人は、その気恥ずかしさと何とか折り合いをつけ、知られてしまった以上仕方ない、むしろその事実をプラスに転じようと、それぞれの恋を叶える為に同盟を結ぶことになります。
 想い人のことをよりよく知る為、或いは距離を少しでも近づける為、主人公達は乏しい経験を補い合うように色々とアイデアを出して。
 そうした二人の関係の変化は周りに敏感に察知され、それが触媒になって、主人公をずっと見守ってきた幼馴染のカナや、クラスでも目立たない、幽霊について調べている不思議系の女の子の汐里などとも関係が深まっていって、亜依や隼人との距離もジリジリとでも近づいていきます。

 けれど二人はまだ、恋の本質を知らなかったのです。
 初恋は実らない、とよく言うけれど。
 それでもその初恋と思しき感情を起点に関係が始まっていることで、それをないがしろにするのは互いにとっても裏切りのように思えて。
 日々の触れ合いの中で刻々と変化していく気持ち、それに蓋をしたままに空回りしていく恋の同盟は、果たしてどこに向かうのか?
 そして、その恋の果てに辿り着く世界は、人生は美しいのか?
 これは、恋がもたらす様々な感情を内包しつつ、人が生きる上で支えになり、人生を輝かせる愛の在り方を求め続けていく物語です。


 あらすじはこんな感じでしょうか。
 大枠としては、恋の同盟関係の中で様々な事を試みて、それが触媒となって想い人当人のみならず、色んな女の子との関係性が深まって、その関係の中から本物の恋を見つけていく青々しい流れになりますね。

 テキストはなんというか、敢えて洗練してないというか、青春ならではの気恥ずかしさ、葛藤、自尊などを出来るだけ等身大に表現しようと努力していて、たまにそれが空回りしているようなイメージですかね。読みやすくはないし、テンポも良くはないですが、その分当事者視点での躊躇いとか、恥じらいとか、開き直りとか、青臭く幼い感情の表現に瑞々しさが出せているかなと。
 改行しないのにスペース使ってたりするのは、息遣いの上ではともかく読みにくいのは事実だし、概ね勢いを示す部分で「っ!」を頻発し過ぎて暑苦しく、場面によっては不必要に上滑りしている感じも否めないですけど、ただ作品の雰囲気を高めるのには一役買っているし、むしろ勢いと語感重視のテキストより内実的には深みがあるので、こういうものと思ってじっくり楽しむべきテキストですね。
 テクニック的に、ヒロイン視点を唐突かつみだりに使いすぎ、とも思うけど、そこも含めて味わいかなぁ。

 ルート構成はそこまで難易度は高くないですが、道中の選択肢がほぼ移動選択に近くて、そのくせどれが誰だかは予想しづらいので、素直にセーブロード推奨。基本的には目的のヒロイン追いかけてればいいんですけど、唯一同盟継続の是非を問う選択肢は、亜依&茜ルートに入るには必須になるみたいです。
 一応本筋としては亜依と茜、それ以外の可能性を探る物語としてカナと汐里、という位置づけでいいかなと思います。
 全員クリアするとトゥルーストーリーが解放されます。

 シナリオに関しては、取り立てて劇的さはないものの、とにかく丁寧に、密接に、経験に乏しいゆえの空回りしがちな恋愛模様を描写していて、ステップバイステップとでもいうべきたどたどしさ、じれったさと、けれどそこに通う瑞々しく淡い恋情と空気感を楽しむ、基本的にはそういうイメージですね。
 当人たちのやり取りは非常に稚拙でこっぱずかしいのですが、反面その関係性の中から、初恋が実りにくいメカニズム、恋する気持ちの本質的な部分を比較的ロジカルに炙り出していて、その点も私としては評価したいポイント。
 そしてそれにとどまらず、大枠的にもうひとつ仕掛けが施されていて、それを踏まえてのトゥルーの展開の中で、すれ違いや誤解の派生でない本物の愛の尊さと、その純粋さを保ち続ける難しさ、大切さを示していて、非常に色々と考えさせてくれる構成だったなあと思います。

 個別評価としては、トゥルー=茜>汐里=亜依>>カナくらいのイメージですかね。
 突出して面白いルートがあるわけではないですけど、どれも高い水準でまとまっていて、概要だけ抜き出せば陳腐に思われがちな手垢のついたテーマを、しかし懇切丁寧に、俯瞰的にでなくなるたけ等身大に見せることで、一周回って新鮮に感じさせてくれる恋模様でした。
 誰しもが、それぞれに恋に落ちるに足る理由があって。
 それ自体は些細であって、けれど落ちてしまえば転がっていくしかなくて、その本質的に制御の効かない感情を、同盟という枠組みでギリギリまで撓めている状況の破却、という見せ方そのものは、ぶっちゃけ構造質的にとらドラまんまだよなあとは思うけど楽しかったですね。

 個々にサラッと触れると、カナは予想通り一番当たり障りない感じというか、幼馴染シナリオとしては凡庸な展開ではあるのだけど、特筆すべきはカナ視点の多さで、主人公と同水準の当事者視点が垣間見られた分だけ、いい意味でじれったさ、甘酸っぱさを楽しめました。
 加えて主人公たちの過去にまつわる因縁、傷との対峙という視点でもしっかり青春ぽくまとまっていたし、愛と未練の分水嶺、という視座でも面白味がありましたね。
 ただこのルートでカナが見せる主人公に対する愛情の深さを思うと、他ルートはやけに素っ気ないよなあとは感じるところで。その辺はやはり、カナという存在がこの世界では・・・って部分が影響してるのか、その意味でも本筋の外枠の物語、という位置付けなのに違いはないですかね。

 汐里は期待通り、ヒロインとしては一番可愛かったですし、シナリオとしても外枠でありつつ、トゥルーとも連関する重いテーマを秘めていて。
 彼女の視座に置いては、この世界の特殊性は最初から浮き彫りになっていて、ただそれはなぜか、という部分を紐解くと共に、そういう世界であればこそ、汐里もまたはじめての恋心というものに耽溺できる土壌があったと示す内容で。
 終盤の展開はかなり使い古された感はあるけれど、その切なさの中でしっかり互いに向きあえている結末だし、面白かったと思います。
 ラストの解釈に関してはネタバレで書きます。

 亜依の場合はなんでしょう、どこまで確信犯でああだったのか、ってのはありますが、基本的には素のままに、気持ちのままにあろうとしているのかなと。それとも茜ルートの場合のみ、そういう役割に位置付けられるよう意識付けされているのか。
 主人公と同様に、自身の後悔を持ち込んでの状況展開、ってのは違いないところですし、その中で決して無理な介入はしてないだろうけれど、少なからず自分の青春を取り戻す観点での期待感はこもっている感じですよね。基本的に主人公側の意識の選択に左右される部分だから厳密に追及すべき部分でもないんでしょうけど。
 ともあれ、彼女が託す不良という観点には、どうしたって親の束縛から脱却して自分の意思で生きてみたかったという色合いが濃くて、けど一方的に親を悪者にはしていない、そのあたりの匙加減は上手かったし、その中での稚拙な抵抗や煩悶、克服の展開は瑞々しくて素敵だったかと。

 
 その意味では、亜依シナリオはあのラストシーンからはじめて本物の恋に変遷していくイメージもあります。そこまでの亜依は、そりゃすることはしちゃってるけど、はじめて等身大の自分を見つけてくれた異性、という部分のウェイトは大きいですものね。
 好意的な視線を意識し、自身の内部に浸潤することで、感覚が同調しちゃうタイプ、行為を向けられる喜びを自身の恋心と勘違いするタイプは結構多いし、亜依はその色合いが強かった気もするので、そこも茜との対比で考えると面白いなって。
 

 茜シナリオは期待通りの真骨頂でしたね。
 そもそも最初の関係性から予想できる部分での、恋の瑞々しさや青臭さ、一方での初恋に関するメカニズムなどを綺麗に織り込んだ上で、しっかり二人の関係性をみんなのサポートもあって進めていく流れは、恋という感情そのものに翻弄される若々しさを如実に示していて、けれどそこに、疑いのない恋の発露は意識させて。
 そういう結びつきだからこそ長く続くし・・・という部分も説得的ではあるし、恋よりも先に、互いの深い部分を理解しあった事が、その後の支え合って成長していく生き方の基盤を決定づけている、という思想性は素敵だと思います。
 ただ敢えて言うとね、茜のその生活、普通に学校行って家事に追われて、かつ夢も追いかけつつ恋愛もしっかりこなすとか、如何せんキャパオーバーじゃね?とは思ったり。家庭環境的にのばらを思い出したのもあり、余計にそう思ったのですけどどうでしょ?

 トゥルーはいい意味で亜依と茜シナリオの合いの子的な見せ方の中で、その揺れる心情の上で引き出せる想い、原点感情を想起させる試みは、確実性はあるのかと言われれば微妙だけれど、感情的にはすごく飲み込める構成だったなあと思います。
 茜のその後の見せ方とか、ぶっちゃけひこうき雲のオマージュじゃね?とか皮肉りたくもなりますが(笑)、ともあれそれだけのものを経てなお・・・という残酷さと、それでも、という真善美的な観念、価値観の噛み合わせ方がとても上手く、すごく感動するわけではないけれど、切々と心に染み入る物語に仕上がってるなあと。

 以下細かい考察など、ネタバレ白抜きです。

 まずここでの恋のメカニズムについての私的解釈について。
 初恋が実りにくい理由とは、単純にそれまでに恋という感情の経験がないから、一方的な投射である憧れとの勘違いを起こしやすいのと、契機の比重が外的な要因に重い分、関係が近くなっていくにつれて、自身の理想像との乖離が発生しやすい、という部分で。

 主人公の亜依に対する想い、茜の隼人に対する想いは概ねそういう部分に寄りかかった感情で、またそれは、自分が持っていない輝き、失った輝きに対する屈折した希求でもあって、だからこそ同盟によって少しずつでも近づいて、等身大の相手を知るうちにズレが派生していくわけで。
 加えて、それでもその道中では自分が恋をしているという錯覚に翻弄されていて、その感情は、出来るだけ相手に自分のいいところを見せたいという虚栄心、かっこつけにも繋がるから、相手にも誤解を与えやすい部分はあるのかなと。

 ただ結局のところ、端的に言い切るのは語弊はあるだろうけど、あくまでこの作品のテーマに沿って見るなら、恋する、という感情の契機は、どれだけ相手の深い部分を知り、共感できるかにかかっていて。
 だから主人公と茜は、同盟を結ぶ契機となった、互いの想い人を知る、という、かなりパーソナリティの深くて、なるべく隠し通したい感情に触れ合い、共感を抱いてしまった以上、当人たちがどこまで無自覚的でも、恋は始まらざるを得なかったのだろうと感じます。
 その上、一旦深みまで知り得てしまった以上、自分を糊塗する必要もなく、等身大で向き合えるから、余計に互いの本質を、憶測や誤解に塗れずに知ることも出来て、それはどうしたって、他の女の子、特に亜依に対しての相互理解が深まるよりも加速的にならざるを得ないんだろうなあと。

 だから、という言い方もなんですけど、個人的な見方としては、もしも亜依シナリオが正史であった場合、やっぱりこの関係ってどこかで破綻してそうだなあって。。。
 きちんと相互理解を経て、誤解の余地なく恋の本質を噛み締めて進展していった茜とでも、環境と状況でああいう訣別を迎えかねないのを見ちゃうと、何回も自身の気持ちに向き合ってからの主人公はともかく、亜依の恋情は軽く、相互理解には遠くて、ましてやああいう境遇のお嬢様ですからねぇ。
 物語としてはそれでも、二人はそのすれ違いを克服してハッピーエンド、が普遍なのでしょうけど、この作品は敢えて、そうでない可能性、現実の悲しみ、残酷を感じさせる構造にもなっていて、だから亜依シナリオはああいう、酷い言い方をすれば全く覚悟を感じさせないフワフワしたつくりになってるのかなって。

 裏返せば、最初の恋を起点として、同盟関係の中で恋の本質を、憧れとの差異をしっかり理解して結びつけることは素晴らしい幸運であり、そしてどういう過程であれ、その恋の本質に対する相互理解と、互いを恋する原点の部分を揺らがずに持ち続けていられることが大切で、けれどその瑞々しさを保ち続けるのもまた難しくて。

 この作品のテーマ曲っぽいBGMのタイトルがライフイズビューティフルなのも、そのあたりを強く意識してるのかなと。
 かの有名な映画は、私は概要しか知らず、映像で見た事はないのでかなり知ったかぶりになりますけど、あれはどんな過酷な状況下でも、愛する気持ちと前向きさを失わなければ、人生は美しいものなのだというメッセージを発している作品と認識してまして、ヒマワリと恋の記憶、というタイトルの由来も、前向きさをヒマワリに投影、愛する気持ちを恋の記憶に投影してのものになるのかなと。

 それは人生観の問題でもあって、死を迎えるにあたって自分がどれだけ幸せか、その生に満足できるかの本質は、その時点で抱えている愛の総量に直結すると思えば、どれだけ財を築こうと、名声を積み重ねようと、それは身近に存在する愛の結晶の一欠片にも及ばないものなのだ、というメッセージを、主人公の愛の挫折と復元に端的に織り込んでいて。
 それを示す構造自体はファンタジーだけど、ある意味ではクリスマス、という、愛を記号化したようなイメージそのものが、かつての瑞々しさを蘇らせる契機になりうる、という視座でもあって、この作品のように、そっと愛に満ちる生き方に導く天使がいるという信仰が結実する美しい世界の中で、美しい人生を歩もうという前向きな観念を感じます。

 そして、それがこの作品のテーマと見做した時に、汐里シナリオとその結末ってのは中々に示唆的だと思うんですよね。

 まず私なりのあのラストの解釈ですが、あれは今度は汐里の記憶が主体になっての夢、主人公の世界で得た想いと記憶を混在させて都合よく組み替えた世界だと認識しています。
 そう決め付けるのは難しいんですけど、傍証としては、主人公の記憶の世界に同じタイミングで巻き込まれたとしたなら、目覚めの季節は冬であるべきなのに普通に夏の終わりであること、坂本が汐里の現実に対して死に掛け、という表現を用いていた事、同姓同名とは考えづらい、別人生の主人公が存在していること、小鳥が向日葵の種を啄んで空に飛び立つ描写の同一性が、ふたつの世界観の同一性をも暗示していることなどでしょうか。

 そもそも汐里は何故主人公の記憶の世界に混在したのか。
 それは当然、坂本が示唆したように死に掛けの遊離した意識体であった事が根源的な理由でしょうし、そんな自分では何も出来ないと表面的に諦観を示しつつ、内心では諦めきれない、輝く生と、そして愛に対する強い憧れがあって、それがより、愛を取り戻すために築かれた世界との親和を示した、と見做していいのではないかと。  そして、主人公主体の世界の中では、どうしても汐里が求めた愛は、輝く生は、必然的に断ち切られるしかなくて、沢山の未練を残したまま決着を迎えてしまって。

 上の方で愛と未練の差異、という視点にも触れたけれど、愛とは主体性を剥ぎ取られたときに未練に転じやすい、というイメージはあって、それを補填するために汐里はああいう世界を作り出せた、と見たいんですね。
 無論それは天使のサポートがいるけれど、そこはああ言いつつ坂本の気遣い、手助けがあったのかなと。僕はカップル専門で、生死を司るわけではない、と一見突き放しているけれど、裏返せば生死はどうにも出来なくても、その終着点に対する満足に、すなわち愛を携えたままに終わりを迎えられるか否か、という部分に介入できないとは一言も言ってないですし。

 だから私の理解としては、汐里は死に掛けで、ずっと昏睡状態のままで、延々と主人公の世界、自分の世界の夢の中を漂っていて。
 そして、改めて自分の夢の中で望んだ青春をやり直して、きちんと求める愛を手にして、満足を得たところで静かに息を引き取っていくのではないか、となります。
 それは不遇ではあるけれど、決して不憫でも不幸でもない生の終着点だと見ることは出来るし、誰しもに平等に訪れる死に対する備えのためにも、愛を涸らさずに生き続ける大切さを暗喩的に示しているのかなと感じましたね。


 以上、書きたい事が多過ぎて無駄に妄想的、掘り下げ過ぎのきらいもあるけれど、ともあれ非常にシンブルでありつつ深いテーマ性を備えつつ、丹念で煌びやかな恋模様も楽しめる、派手さはないけれどすごく沁みてくる作品だなあと思います。
 結構空気感に癖があるし、爆発的な感動や面白味があるわけではなく、構造としても等身大をイメージしている分物語しては間延び感、たどたどしさはあって、その辺をどう評価するかもあるけれど、シンプルに表面だけ追いかけるでもわかりやすく素敵な構造だし、思索の糸をあちこちに広げる余地のある、噛めば噛むほど味の出る作品かなと。
 なので結構点数は迷ったし、ネタバレで展開したような部分の思い入れ込みでだともう少しあげてもいいかも、とは思うんですけど、トゥルーの構造が多少ならずご都合的でもあったし、もう少しその辺で感動を喚起してくれてればなぁ、って部分含めてこの点数に落ち着かせました。

 
キャラ(20/20)

 ヒロイン達それぞれ、非常に瑞々しい感性と若さを見せてくれますし、その上でしっかり一歩一歩恋の本質に向かって成長していく過程、無意識的な足踏みも含めて鮮明に示してくれていて、凄くイメージの固着しやすいキャラづくりだったかなと。

 一番好きなのは・・・ん〜、単純に好き度合いだと汐里に軍配上げたいんですけど、やっぱりシナリオ補正などコミコミで考えると茜にはなりますかね。
 序盤こそかなり当たりのきつい部分もあるけれど、それもある意味では彼女の生活の余裕のなさからきているという部分を知るにつれて、茜の頑張り、前向きさとその心性の純粋さ、乙女っぷりがどんどん露呈していって、本当に加速的に可愛くなっていく過程が楽しめますよね。
 同盟関係が育む恋情と、ずっと恋情と勘違いしていた想いとの乖離、けれど互いにそこだけ勘違いしたままのもどかしい関係の中での切実な心情の見せ方も上手くてすごくいたいけだなあ、けど素直になれないところが可愛いなあと思わされちゃうし、しかしどうしてもあの境遇で、学園も家事も夢も恋も、ってのは無理があり過ぎるじゃろ、とだけは思っちゃう。
 或いはそういう無理を押しちゃう性格だからこそ、後々成功してもそれを貫き通して、歪が大きくなって、という伏線的な要素なのかも、と思うくらい、本当に頑張り屋で、けど自己評価は低くて、だから尚更に頑張ってしまうところに愛おしさが集約される感じですねぇ。

 汐里はやっぱり見た目的に唯一のど真ん中、ってのもあるし、性格的に基本人馴れしていない分だけ純粋で、淡々としていつつも仄かに滲む感情の色合いが徐々に好意に傾いていくのが本当に可愛かったと思います。
 恋愛模様としても変に阻害要因がなくて甘酸っぱさをとことん堪能できましたし、刹那を貪るようなのめりこみっぷりも、上で触れたような境遇と規定すればさもありなんと感じ入る部分は大きくて、すごく可愛くて大好きですね。

 亜依はどうしても私の中で踏み台感が強いというか、無邪気に恋に恋することのできる幸運が、逆に境遇などの足枷をより重くしている感じはあります。
 それでもこの子供っぽい純粋さと思いやりの強さ、壁のなさは可愛いなあと思うし、付き合って苦労するタイプだとは思うけど、その苦労を厭わないでいられる愛嬌もあるなあって。

 カナは恋愛モードの一心ぶりは中々だけど、やはり幼馴染という土台が、ただそれだけで好きを規定している部分もあって、他のヒロインの歩み寄っていく感覚に乏しいのがあるし、立ち位置的にNPCみたいなものだからどうしてもね、ってのはある。
 あれだけ好きなのに、他でああも淡白な理由づけもそこにあると思うと、やっぱり入れ込みにくい、それこそ作品的に不憫な子ではあると思いますね。


CG(17/20)

 すごく上手い、ってことはなく、むしろ洗練されてない朴訥さ、野暮ったさを感じる絵柄ではあるのですけど、それが逆に作風にはドンピシャにマッチしているし、塗りの雰囲気なども、Hシーンなどで目立つ仄暗さもまた、秘め事という雰囲気を醸していて、総体的に結構好きになれましたね。
 ぶっちゃけ最初スルーしてた理由にあまり絵に惹かれなかった、ってのもあったので、ここは嬉しい誤算になった感じです。

 立ち絵は水準にはもう一歩、くらいでしょうか。
 ポーズはヒロインで3種類、サブで1種類ですね。腕差分は多分なかったと思いますし、元々派手な動きの要する作品でもないので、きちんと個性が示せているし悪くないでしょう。
 お気に入りは茜正面、前屈み、汐里やや右、正面、亜依やや右あたりですかね。

 服飾はヒロイン4種類、サブで2種類とまず標準。とりあえずシンプルなピッチリ系のブラウスと体操着はいいデザインセンス。私服が2種類あるのも素敵な配慮ですけど、特に亜依の部屋着とか一回しか出てこないのは勿体無いねと。
 お気に入りは茜制服、体操着、ミニスカ私服、汐里制服、体操着、サマードレス、ワンピース、亜依制服、体操着、部屋着、外出着、カナピンク私服あたりですね。

 表情差分はさほど多くはなく、ふんわりしたイメージが強くてあまり細かい機微までは感じられなかったけど、概ね可愛いです。
 お気に入りは茜笑顔、怒り、拗ね、照れ怒り、呆れ、目逸らし、汐里笑顔、微笑、きょとん、ジト目、悲しみ、拗ね、亜依笑顔、ワクワク、悄然、照れ笑い、カナ驚き、からかいあたりですかね。


 1枚絵は、通常83枚のSD12枚、全部で95枚とほぼ水準クラスですかね。
 逆の意味での贔屓目はあるだろうけど、若干カナだけ出来が良くないなあと思いつつ、他もそこまで上手い、というほどでなく、ばらつきも目立つけれど、印象的なシーンでの雰囲気の付け方、淡く情緒溢れる気配の出し方はすごく上手いなあと思うのが結構ありましたね。

 特にお気に入りは5枚、って結構あるなあ。。。
 1枚目は茜の平手打ち、このシーンの亜依の涙する表情は物凄く美しいし、その分だけ切迫した感情が響いていて好きです。
 2枚目は亜依浴衣H膝枕、この正座の姿勢と恥じらいの表情がたまらなくいいですし、かつ事後の、髪を下ろして母性感あふれての膝枕の印象との差異も素敵だなあと。
 3枚目は茜と突然の再会、ある意味一番の見せ場ですし、流石に気合入った素敵な絵になってるなあと。驚きと喜びの加減が絶妙だと思います。
 4枚目は茜初H正常位、ひじょ〜にスタイルの良さが引き立つ構図の上に、胸の描き方がめっちゃ綺麗で、その上で醸す初々しさ、秘め事感がすごく好きです。
 5枚目は汐里体操着Hバック、これね、お尻のライン、ブルマのずらし方と張りの具合がものすごくそそるのですよね何故か。。。超可愛いし艶めかしいです。

 その他お気に入りはページ順に、、亜依二人乗り、ぬいぐるみ、着ぐるみ、バス寄り添い、ヒマワリ畑、膝枕、初H愛撫、バック、騎乗位、フェラ、正常位、開脚バック、騎乗位、体操着正常位、茜誘い、ピアノ、帰宅、ステージ、ヒマワリ畑、パイズリ、対面座位、教室愛撫、騎乗位、カナ正常位、二人の道行き、汐里頬つつき、笑顔、キス、あーん、始まる青春、背面座位、69、初H愛撫、クンニ、正常位、パイコキ、対面座位あたりですね。


BGM(18/20)

 非常に切なく甘く、それでいて朗らかで前向きな気持ちにさせてくれる曲が多くて、耳触りも良く印象にも残ったなあと。

 ボーカル曲は2曲。
 OPの『恋の記憶』は、素朴で爽やかな印象と、ボーカルのイメージが寄せる情感が非常に上手くマッチしていて、淡々としてはいるけれど綺麗で中々好きな曲です。

 EDの『First Love』は問答無用で神曲。初恋の甘酸っぱさと苦しさ、切なさを丹念に丁寧に歌詞にもメロディにも詰め込んで、その秘めた想いを切々とサビで滲み出していくイメージが非常に鮮烈。
 メロディとしてもAメロのしっとり感、Bメロの切迫感、サビの疾走感が抜群に調和していて、高音域のビブラートが物凄く綺麗に曲の雰囲気に嵌っていて、更にDメロ、ラストのサビの編曲具合が抜群に切なさを増幅させてくれる素晴らしい出来だと思います。
 ただこれね、作品中の立ち位置としては茜が学生の、まだまともな初恋も失恋も知らない時点で作った曲、ってなってますけど、それにしちゃあまりにシビアな失恋の歌詞だよなあって。。。
 穿ってみれば主人公の記憶の混在で、二人の空白期間に茜が作った曲を混同してる、って思った方がしっくりくるというか、少なくともトゥルーでない茜エンドのED曲としてばっちりかと言われると微妙。そして亜依で流れると逆に意味深。。。

 BGMは全部で25曲とギリギリ水準あたりですかね。やはり派手さはないけれどしみじみいい曲が揃ってるし、好みにばっちりでした。
 特にお気に入りは『Life Is Beautiful』、果たしてこれがかの映画からのオマージュなのかどうかは私にはわかりませんが、非常に透明感がありつつ、朗らかで温かくて、人生のふくよかさをしみじみと噛み締めさせてくれる、そんな曲に仕上がっていてすごく好きですね。
 その他お気に入りは『今日もまた晴れ』『Memory』『また君に恋をする』『はじめての恋』『ひまわり』『影踏み』『月が綺麗な日は君を思い出す』『夢が覚めるとき』『アカネ』あたりですね。


システム(7/10)

 演出は良くはないですかね。そこそこキャラは動くし、1枚絵での演出の情緒などはかなりいいんですけど、やっぱり相対的に見ちゃうとかなり稚拙ではあるし、もっと演出力で情感を引き出せたのでは、って場面も、紙の上ほどではないけど散見するから惜しいとは思います。
 ムービーはまあ普通、でしょうか。

 システムも今一歩、最低限は揃ってるけど使いやすい感じではなく、デザイン的にも最低限ですしね。
 スキップ遅くはないけど、結構選択肢多いのでジャンプないのは面倒ではあるし、段落の付け方が微妙で読みにくい、フォントもほぼ変えられない、あと誤字脱字も結構多いと、やはりそのあたりの徹底度合いが甘いのは総合力という視点でもう一歩、と評価せざるを得ないかなと。


総合(87/100)

 総プレイ時間22時間くらい。共通5時間、個別3〜3.5時間、トゥルーは2時間ちょいくらいの勘定ですね。
 かなり恋愛模様の機微の進展や、付き合いだしてからの進展も遅々として、そのたどたどしい甘酸っぱさを楽しむ作品なので、少なからず間延び感は出てしまう部分はあるし、道中は含みも多いのでアレですけど、構成はシナリオ的にもテーマ的にもブレなくしっかりしているし、トゥルーでちゃんと全ての謎を帰結はさせている(と私は解釈している)ので、すごく意欲的な作品だったと思います。

 テーマが普遍的、かつ見せ方も王道的に過ぎて、流石に絶賛と言えるほどの凄みはなかったんですが、それでも充分に面白かったですし、メッセージ性も強くてすごく興味深く楽しめました。
 構造的にヒロインの誰に思い入れるかの部分で当たり外れは出るし、作風としても尖ってはいないけど独特ではあるので、誰しもに合う作品では決してないと思いますが、味わいの深い恋愛を楽しみたいと思うならうってつけの一本になるかもしれませんね。
posted by クローバー at 06:04| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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