2015年01月27日

あの晴れわたる空より高く

 元々キャラデザが好みでなさ過ぎてスルーしてたけど、2014年屈指の名作でもあるようだったので、誘惑に負けてこっそり購入。


シナリオ(27/30)

 ひたむきな青春の輝き。


 主人公はロケット開発拠点として有名な常夏の島で生まれ育ちますが、父親がロケット打ち上げと真っ向から対立する漁業組合の長である関係で、これまでロケットとは無縁の生活を送ってきました。
 前の学校で、それまでの夢や拠り所を見失う経験のせいもあり、生来の明るさこそ失っていないものの、AXIPというロケット開発者養成組織主導で作られた、ロケット開発を学ぶのに最適な環境である今の学園でも、心から熱中することを見つけられないままに落第生になりかけていました。

 しかし、進級をかけての追試の嵐に見舞われていた春のある日、勉強にうんざりして部屋を抜け出し、海に向かったところで、主人公に運命の出会いが待ち構えていました。
 そこにいたのは、ビャッコという弱小のロケット部を率いる少女、有佐。
 彼女が夜の海に向かって打ち上げたペンシルロケットの迫力、そして有佐のロケットに傾ける怖いくらいの情熱に打たれ、宇宙まで届くロケットを死んでも打ち上げるという有佐の意気込みに感化されて、すなわちそれまでの反動のように、一瞬でロケットの魅力に取りつかれてしまうのです。

 しかしビャッコは前年の不祥事で部員数も激減し、部長の有佐とその親友で先輩の那津奈の二人しかいない始末。
 学園最大のロケット部であるARCの予備の基地候補としてに目をつけられ、廃部寸前にまで追い込まれていたのですが、主人公が入部し、主人公の後輩で幼馴染でもあるほのかを引き入れ、そしてすったもんだありつつ、ARCで活躍の場を失った夏帆を仲間に引き入れることに成功し、かろうじて存続に足る人数を確保します。

 けれどそれも時限条件付きで、夏が終わるまでの公式大会で優勝しなければ、改めて廃部にすると勧告され、かくして彼らはたった五人で、大空をどこまでも切り裂いて飛んでいく、ロケットの製作に本格的に乗り出します。
 それぞれが個別の部門でのエキスパート的な資質こそあれ、部員同士の軋轢や、ド素人の主人公の存在なども時に足枷になり、角を突き合わせ、互いの信念を剥き出しにしながら漕ぎつけた初めての小さな大会では、見事それまでの大会記録を破る結果を残すものの、試験目的で参加してきたARCに圧倒的な力の前に屈してしまいます。

 その絶望にも思える頂上との距離、しかし主人公たちは決して挫けることなく、むしろ闘志をむき出しにして、改めて夏の全国大会に照準を合わせます。
 その中で、主人公にもロケット製作の主要な四部門の中から何を専門にしていくかの選択が迫られます。夏の大会は部門ごとに特別ルールで実施される競技があり、それの優勝でも条件を満たすため、数少ない戦力のリソースをどこに傾注するか、それと同時に、誰と息を合わせて製作に取り組みたいかが問われたのです。

 果たして主人公たちは夏の大会を勝ち抜き、無事に部を存続させられるのか?
 それぞれに数多くの難問が待ち受ける製作の中で、どのようにヒロインと心通わせ、道を切り開いていくのか?
 その先に、部の最大の目標である、宇宙に届くロケット打ち上げに繋がる未来はあるのか?
 これは、ロケットという取りたてて生産性のない、けれどとびっきりのロマンが詰まったバカ高いおもちゃに魅入られ、青春の全てを費やしてその夢の実現を目指す少年少女の、絆と成長と、そして子供の意地の物語です。


 あらすじはこんなところでしょうか。
 大枠としては共通での大会で、総合力でも個々の部門でもARCに圧倒され、本番でより有機的に連携しつつ、如何に質を高めていくかの選択の中で、個々のヒロインに寄り添って、という特化型の解決に導く流れになっています。その後、の話については思うところ多々あるので後々。

 テキストはかなり専門的な部分まで深く掘り下げつつも、説明的になり過ぎない配慮は為され、特にその辺は図示の力を上手く使って制御していたなあと思います。
 基本的にキャラは全員結構変で、でも基本的な前向きで明るく楽しくがモットーでもあり、時に衝突もするけれど、単なる感情でなく必然を伴って表現しているので重くもくどくもならず、という軽妙さを最後まで維持できているかなと。
 ギャグ的な部分では概ね主人公弄りがメインでありつつ、それを豪快に受けて笑い飛ばす資質が生きていて、青春!って雰囲気を多分に味あわせてくれますね。

 ルート構成は選択肢は二つだけでキャラ選択なので単調、全員クリアするとグランドルートが展開される仕組みになっています。
 ヒロインルートへの選択が、誰に興味を持つか、というより、どの部門に興味を持つか、のほうが比重が大きく、それを選択した上で二人三脚で基礎的な開発に勤しむ、作中表現では空白の一カ月があって、その間に否応なく絆が育まれてそこから恋愛への契機が派生する、というイメージで、それこそエンジンに恋する、じゃないけど(笑)、選択肢からの恋愛的要素の深みは見いだせない構成ですね。
 でも、基本ロケット作りを見せたい作品としては、上手くバランス取ってると思うし、恋愛に至る流れとしてもそれなりの説得性は有しているので(ルートにもよるけれど)、目くじら立てるほどではないと思います。

 シナリオに関しては、とにかくトライアンドエラーの連続、積み重なる挫折にもめげずに、必死にひたむきに開発に取り組んでいく姿勢が実に清々しく、その上で恋愛要素を程よく息抜きというか、張り詰め過ぎない緩衝材のように使っていて、その気分転換の場面で本線であるロケット開発に対する斬新な発想を想起する、というパターンが多いですね。
 正直ほのかシナリオに関してはそれが顕著にやりすぎのイメージもあるけれど(笑)、概ねその積層の質が実に丁寧だから、それを土台にした後半の克服展開に納得をもたらす構造に仕上げられていると感じますし、理屈を下敷きにしつつ最後は感情の発露とか根性論が分水嶺となるあたり、青春っていいよね!という爽快な読後感をもたらしてくれます。
 あとトータルとしては、ルート毎の細かい齟齬がほぼなく、不可解で散発的な外的要因もなく、主人公の選択次第で個々の身の振り方も少しずつ違っているという匙加減は中々見事。この点でもほのかシナリオだけ少しグレーゾーンがあるので勿体無いですが。

 個別評価としては、有佐>グランド=夏帆>>>那津奈>>ほのかくらいですかね。
 結構振れ幅は大きいですが、一番どうかなって思うほのかでも水準レベルはクリアしているし、基本的には上三つが抜けて面白い、という評価でいいと思います。
 そうなるのは、より具象的な部分がフィーチャーされてる那津奈とほのかに対し、有佐と夏帆が抽象的な、メンタリティの部分での納得を有して、より物語に深みをもたせているから、とまとめられますかね。グランドに関しては少し違って、あっちは見せたい構造そのものの評価はすごく高いのですが、そこに至るメンタリティの裏付けの部分の齟齬が気になっていて、その分有佐シナリオよりは下につけている格好。

 以下はネタばれ全開でとりとめなく。

 有佐シナリオは、直接細かくロケット製造に関わるわけではないので、その分余計に二人のメンタリティの部分にスポットが当たっていて、二人が心に抱えた痛みと、それを糊塗するために被った殻を打ち破っていく過程の示し方がとても好きなんですよね。
 二人が最初から意気投合に近い形で惹かれ合った理由づけとしても、互いの心の奥の欠損した部分の相似性を直感的に感じ取った、という色合いがスッと沁みてきますし、それは端的に言えば、頼れる相手がいない、ということに尽きて。

 有佐は先輩たちの打ち上げを台無しにしたという自責に加え、自らの宇宙に対する思い入れと、難しい仕事に携わる両親への誇り、けど裏腹に普段から側にいない故、両親の存在が安全基地とはならず、頼る相手がいないまま途方もない夢への執着だけが突出していて。
 主人公は母親の死を契機として、本来の漁師になるという夢と、寄りかかれる頼もしい父親像の二重の崩壊に直面し、けれど守るべき存在である妹のゆいがいたから、自分の弱音を押し殺して、ただ明るく強く真っ直ぐあろうとしていて。

 表面的にどう映るか、という違いはあれど、二人のそれはどうしようもない囚われ、枷であって、けれどそこから脱却し、頼ることを覚えなければチームプレーが全てと言っても過言でないロケット開発の成功など覚束ない中で、有佐の誓いがあって表に出せないながらも、二人が想いを通わせ合い、互いを頼れる存在と認識したときに、元々抱えていた殻に対しても解決の標が浮かび上がってくる、という構造はやはり素敵の一言。

 有佐は光との関わりを通じて、そこにあるのはやはり一年間必死に夢を追いかけてきた中で培った絆の残滓であり、何もかもが無駄ではなかった証左でもあるなあと感じるところ。
 
 主人公を救ったのは直接的にはゆいの、父親に対する強諫に尽きるし、ロケット絡みの諸々に比べて地味ではあるけど、個人的にあのシーンがこの作品で一番好きです。
 そしてその背景になったのは、一に主人公が意地を張って、ゆいの頼れる存在であり続けた、ゆいの愛着を欠損させなかったからこそで、かつ有佐との関係で、その強がりを、ゆいにはどうしようもなかった強がりを解されたからこそ、ゆいにもそれまでの感謝を形として返せる契機を作り、意気に感じさせた、という精神的な論旨がくっきり浮き彫りになっていて。
 それはすごく理想的な、あるべき家族の支え合いを体現していて、だから私は、あのシーンを紡ぐためなら、ゆいはごく普通の妹であるべきだと納得できましたね。ぶっちゃけビジュアル的にはトップクラスに可愛いし、この手のゲームだと何で攻略できないんだ〜、って憾みになりかねない立ち位置なんですけど、ここでこうしちゃった以上、この子は攻略できたら作品として矛盾しちゃうとはっきり言えます。

 ともあれ、そうして二人がそれぞれの心の問題を解決したことが、巡り巡って具象的に夏の大会の突破要素に、有機的かつ説得的に絡んでくるのがまた見事でした。  共通の最初から示された理事長の理念は、ある意味作品の流れを完全に通貫していて、その文脈、意図に添った結果を残すならばそれを最大限に評価する、という姿勢にブレがないところは、非常にこの作品を語る上で大切な部分だなあと。

 曰く、学生にロケット開発をさせることの意義とは、当然技術の裾野を広げることが一義ではありつつ、その中から既存の後追いに満足せず、自らの脚でロケット開発の歴史に新たな足跡を残す、一種向こう見ずな発想と意志を兼ね備えた若さの発現の土壌となる、という部分も同じくらいに重要視されていて。
 だからこそ、多少なりともこじつけ感はあれ、主人公の父親の協力を得て、今までのロケット開発の歴史で為し得なかったことをやってのけた、そこに至る道を決して諦めず、妥協せずにやり遂げたことを第一に評価したというのは心に響くのですよね。

 また、有佐シナリオに関しては、グランドでの思想性との連関も踏まえて考えるとより深みがあります。
 とりあえずこの時点で触れておくことは、青春とは何か、って、大仰に構えるとどこまでも話が膨らむ点なんですが。。。

 私の好きな青春小説に、若さとは自由であり、かつ潔癖でなければならない、という台詞があって、この作品における潔癖とは、思想的、道義的な部分の意味合いが強くて。
 具体的には自分の気持ちを裏切らない、誤魔化さない、ってところに結実するのかなと私は理解しているのですが、この作品にもその感性はすごくしっくりトレースできるなあって。

 一途に好きを追い求め、子供の我が儘と知りつつどんな手を使ってもそれを成し遂げると覚悟している有佐の在り方は、だからそれにまつわるどんなことでも誤魔化しや妥協は許されなくて、それをしたら夢の全てが脆くも崩れ去ってしまう、あまりにも危うい綱渡りの中で凛然と咲いているのですよね。
 だからこそ、一旦恋愛禁止を口にした以上それを反古には出来なかったし、それでも自分の本心を裏切ることも出来なくて、その夢に向かう在り方を守るための唯一の方法論が、あの不器用に過ぎる恋愛模様なんだろうな〜、って思うのです。
 
 まあ個人的に有佐というヒロインそのものはそこまで好きではないので(笑)、あの個別最後の改めての告白シーンも、まあやると思った、って感覚に終始してしまってはいたのですが、振り返って考えてみるに、それが有佐の精一杯であったのだと理解を深められたので、時間を置いた価値もあったというものです。。。

 次に夏帆シナリオ、これに関しては本当に私好みの要素が満載だったと。
 まず構造として、ロケット製造にかかわる部分と、夏帆のメンタリティに対するケアの部分のバランスが物凄くいいですね。那津奈やほのかよりもかなりバックボーンの部分の掘り下げが深くて、それが主人公と寄り添っていく上での説得的な理由にもなっていて。

 「おいで」のような端的で、でも抱擁的なイメージの台詞に象徴するように、夏帆には母性というものに対する強い憧れと、そして渇望があります。
 その欠損は、同じく母親を亡くしている主人公の琴線に触れるに充分な理由づけであり、かつそれを克服しようと努力している姿勢にも共感と尊敬を抱けるのだろうなと。
 共通の最初で夏帆がトライしていた逆上がりは、一見脈絡なさそうでも結構その精神性の深い部分と連関していて、臆病な自分から踏み切る、目の問題で出来ないことが増えても、新たに出来るようになることもあるという自分への叱咤、加えて空への強い憧れを同時に満たすチャレンジで。
 
 その直前に、有佐との関わりで空に魅入られた主人公にとって、それはある意味、一番想いが高揚しているところに引っかかってきた同一視できるなにか、ではなかったかと思うんですよね。
 もしあれが逆上がりじゃなかったら、ああまでお節介に干渉する必然を呼び込めたか?とまで言うと言い過ぎかもですけど、地味ながらもこの二度目の出会いの在り方は、有佐に負けず劣らず運命的だったと私は感じるのです(多分感情移入し過ぎ。。。)。

 また、かつての事故で徐々に目が見えなくなる、という切ない部分もすごく私のツボに入るわけで。
 プライミニスターの千里シナリオとか、ゆきうたの由紀シナリオとか大好きですし、色んな思い入れやそれに伴う恐怖の観念もあって、失明というトピックは惹かれるものがあり、そしてその中で、目は見えなくなっていって、出来ない事も増える、それでも見えないなりに出来ることはきっとある、という前向きさをシナリオ上で体現してくれたのが実に嬉しいのです。

 視覚という五感の一つを失えば、他の感覚が鋭くなる、というのは良く聞く話ですし、それをロケット製作と絡めて、ブレイクスルーに至る発想の契機や、必要条件を満たす技術への到達にすごく上手く使っているなあと思うし、その上で、主人公のそれまでの生き方も報われる結末であるからこそ、この二人ならでは、というイメージはどのシナリオよりも強かったと思います。
 
 加えて、他シナリオでの夏帆の在り方もその部分にきっちり規定されているのが切なくも納得できて。
 目の状態の変化には、当然体調やストレスが大きく関わってくるし、その結果として大会の結果にも直結してくる、その変化の度合いの示し方が絶妙だったと思います。
 有佐シナリオである程度どの部門もしっかり下支えされているところでは、ほのかのサポートでもそれなりに結果を出せて、だから不必要なストレスにならず自分の部門でも出来る限りの結果は出せていて、主人公がほのかのサポートに回っていたところでも同様で。
 けど那津奈シナリオでの、サポート万全でなくほのかとの共闘で結果を出せなかったストレスとプレッシャーが、本職にも影響を与えて残念な結果になる、本当にこのあたりは匙加減が完璧だなあと感心するところです。

 ともあれ、夏帆との関係性に関しては、有佐と並んで必然と納得がメンタリティの部分で非常に上手く表現されていて、純粋にこの作品で図抜けて夏帆が好き、っていう思い入れも含めての評価になってますね。単純にシナリオの構造質だけで言えば、有佐やグランドのスケール感、構成力には届かないですけど、好き嫌いで言えば一番この作品で好きなシナリオ。

 最後にグランド、これは正直私の中では毀誉褒貶の大きいシナリオ。
 まず褒めるべきは、当然ながら最後の打ち上げに至るまでの苦闘とその経緯の導き方、示し方ですよね。

 一見順調と思えるところからの頓挫と、大黒柱である有佐の脱落、そしてその事故をきっかけにしての大人の理屈の介入による妨害からの、みんなの力を合わせての逆転劇、復活劇という構図は、宇宙に想いを馳せるのと並行しての夢物語のようなつくりであり、あざとくはあるものの、その背景にある有佐の並々ならぬ覚悟の源泉を見ると実に印象的なんですよね。

 有佐の口癖である、「死んでも」ロケットを打ち上げる、あれが単なる比喩でなく、本当に自分が死んだ時のことも考えて計画を備えていた、という所には、一年前の不祥事の渦中にいて、今のメンバーでほぼ唯一、そういう時の大人の理屈の必要性と、大を守るために切り捨てられる小の悲哀、苦衷を知り尽くしていたから、という背景があって。
 厳密に言えば那津奈もその渦中にはいたはずですが、失礼ながら彼女にはそういう部分の機微を汲み取ったりするのは無理だろうな、って思わせる印象があるし、むしろその点を強調するためにあんなぶっ飛んだ個性に仕上げているんじゃ、と穿ちたくなるくらい。。。

 有佐が事故に遭って、打ち上げの中止を通告されて、他の面々はそこでようやく有佐の覚悟に追いつき、その孤独と、それを貫くほどの意志の重さを知って、その有事に対する周到さに舌を巻くことになって。
 上で書いた、青春に必要な潔癖さに触れて、それを貫き通した有佐への敬意が、他の面々の想いの純粋性も高める要素になっていて、だからこそあれだけのみんなの協力も得られたし、成功に導くことに出来たと素直に思える部分は見事ですし、最後も綺麗すぎるくらい綺麗に締めてますからね、その辺は文句ないのです。

 ただ気に入らないのはその土台の部分で。
 このルートだと主人公は誰とも恋仲にならず、八面六臂に全ての手伝いをこなして全部門を優勝に導いた、って経緯になってるけど、いやいやいや、それは無茶だろうと。。。
 個別であれだけ一つの問題にかかりきりで何とか成し遂げたものを、言い方は悪いけど片手間なアドバイスだけで乗り切るとか無理ゲーだろ、って思うし、そもそもヒロインと深い仲になって、心を通わせることでロケット開発の重要な部分の発想に辿り着く、って描写もかなり多かったじゃないですかと。
 なかんずくほのかとか、いっつもエッチしては次のステージに進めているようなつくりだったし、そこまで極端ではないにせよ、夏帆も那津奈も、それぞれの深いところを知り尽くしてないと厳しいよなあとどうしても思っちゃう。

 逆に技能三部門制覇なら、PMは突出した何かがなくとも優勝できるのかもだけど、それはそれでテーマの具象化の視点ではすっきりしないですし、個人的には技術面での底上げは残りの時間でも可能になるのだから、このグランドは有佐シナリオからの派生で良かった気はするんですよね〜。
 多分恋愛絡ませず、純粋に青春の息吹というか、仲間の絆の在り方を示したい故の構図だとは思うし、それでなければできない後半の展開もあるにはあるから理解は出来るのですけど、やはりそこは、後ろの構成ありきで無理にこじつけた感じが否めず、感情的には納得しきれなかったところ。

 あとやはり気に入らないのは、絆ちゃんの使い方ですよね〜。
 この名前からして皮肉が効いているというか、改めて同じ地平で絆を紡ぐための契機を作った子にはなっちゃうのですけど、この子の背景の部分がかなり薄いよなあって。どうしてああまで無茶をしてロケットの発射を見たがったのか、その心理が曖昧、ってのは気に食わないし、そもそも子供にボートで潜入なんて出来るのかよ!とは突っ込まざるを得ない。

 基本的にどのシーンでも、子供の割に物わかりは良くて、でも主人公と有佐をパパママとか呼ぶあたり、やはり愛着には恵まれてないのかな、いい子を演じるしか術がないのかなと思わせるところはありますが、そういう頭のいい子だから潜入も出来た、と定義すれば、じゃあなぜこの場面でだけ我慢が効かなくなってるの、というエクスキューズと矛盾するわけで。
 そこだけ子供だから純粋な渇望に我慢できなかった、けれど正攻法での頼みは通じず、周りには頼れずに大胆な手段を取るしかなかった、とすれば、それは主人公や有佐に通じる心性の発露として一元化できるのかもだけど、結局絆の家族の問題は兄で止まっちゃってるから裏付けが薄く、それにもやっとするわけです。

 ついでに言えば、有佐シナリオでだけは兄と遊ぶ約束を取り付けられていて、その過程である程度渇望も解消されたのか、と思わせる特異性があるだけに、逆にそこがネックになってグランドに敷衍できなかったとすれば何とももったいない話。
 どの道共通の出番だけでは、あの侵入の真意の説得力に欠けるのは否めないのだし、改めて有佐との後日談的な流れの中で、より深く絆と関わってその心理を、幾許かの触れ合いでは埋めきれない欠損を、せめて夏帆シナリオくらいには掘り下げておいてからあのグランドの流れに入る、って構造にしてくれればなあと。
 
 そうすれば、あの地点からのスタートでは解消できない齟齬も前付で解決できるし、少なからずボリュームは必要になっちゃうけど、せっかくここまで綿密に作ったんだから、そこまで徹底的にやって欲しかったなあと思うのでした。
 だってねぇ、書き手の意図はどうあれ、グラントの物語、どうしたって有佐ありきの話なんですもの。個別にしても唯一個人のメンタリティに留まらず、ロケットそのものに捧げる精神の在り方を提示できているわけですし、いくら優遇になろうとその延長線で、というのが自然に思えちゃいますよそれは。

 そこまでして、グランドが有佐シナリオを踏み台により深みのある物語として展開されていれば、満点に近い評価を出せる作品になったと思うだけに、私としては画竜点睛を欠く、という感じですごく残念でした。いや、充分過ぎるほどに面白かったし、高望みにも程がある、贅沢過ぎるとは思いますけどね。。。


 以上、文句なしに名作ではあるけれど、「歴史に残る」という形容句をつけるにはあと一押し足りなかった印象ですね。
 個別の出来の差もそれなりにはあるし、シナリオのつくりを優先する故に、ヒロインの魅力を存分に引き出せたのは夏帆くらい(有佐はああでなければならない、って部分では完璧なんですが、可愛いかって言われると、好き嫌い出るよね。。。)かなって思うし、その辺踏まえてこの点数になりました。
 
 かえすがえす、グランドに突き抜けて欲しかった。どうしても小奇麗にまとめ過ぎというか、小手先で詰め込み過ぎた感じがねぇ・・・。


キャラ(20/20)

 少なくともかくあるべき、ってキャラの掘り下げが出来てたのは有佐と夏帆だけかなって思うし、構成上仕方ないとはいえもう一工夫、可愛さの幅が欲しかった気はしてます。とはいえバランスは取れてるし、普通にみんな可愛かったし、とりわけ夏帆が絶好球だったのでギリギリ満点かな。

 とにかく私にとっては夏帆ゲーでしたね〜。唯一のロリ担当でもあり、性格的にも奇矯で攻撃的なヒロインの占有率高い中で、多少口数少なく変わってはいるものの、一人だけすごく常識的で優しく、包容力があって、その心性もすごくひたむきさに溢れていて、本当に可愛いなあと。
 その精神性の根幹的な部分に対する掘り下げも、主人公との共感という視座も含めてしっかり出来ていたと思うし、その感応を十全に生かし切ったシナリオ構成の中で、そこかしこに愛らしさを垣間見せてくれたので実に満足でした。地味にエロ可愛いしね〜、ああいうシーンで素朴に「おいで」とか、逆に破壊力あるよねと。。。
 シナリオ補正も地味に高いので、ギリだけど殿堂ライン乗りますね。追加しときます。

 有佐は作品に対するヒロインとしてはほぼ完璧だったけど、恋人としてはすんごくめんどくさい子だよなあって。。。
 基本的に意地っ張りだし暴力的でもあるし、まあ本心の部分はきちんと透けていて可愛げもあるのですが、どうにも塩梅として意地っ張りの強さがきつくて、しかもシナリオの制約上、実質恋人になっても心から寄りかかって、というシーンは数えるほどしかないし、その点で不完全燃焼。私がグランドでああしろ、と主張する一因として、この子がきちんと恋人してるところも見たい、というのはありますね。
 無論このとことんまで愚直な不器用さと信念の強さこそが至高、って感じる人も結構の割合でいるとは思うんですけど、私には女の子としては刺さらなかった、という感じです。

 ほのかは狼少年ならぬ少女過ぎるのでやっぱりめんどくさい。
 あそこまでやって全部照れ隠しだよ、ってのはちょっとやり過ぎ感はあるし、色んな意味でほのか関連での勇み足が多い作品ではあったと思います。

 那津奈は宇宙語なのでやっぱりめんどくさい(笑)。
 先輩キャラのくせ実に頼り甲斐が薄いから、主人公の良さをあまり引き出せてない気もするし、三角関係での有佐のほうが可愛く思えちゃうわと。この子もシナリオで触れた制約ありきの奇矯さなのかな、と思えば納得的でありつつ切ないのですが。。。

 ゆいは実に普通に可愛い。。。
 特に屈託も不純さもない、家族としての素直な愛情と信頼があればこそ、あのシーンで迷いなく父親を論破できるのだと思えば、この子は普通に可愛いのが正しいと改めて私は断言しておきましょう。
 未練なんかない未練なんかない未練なんかない・・・(嘘つけ。。。)

 まあでもね、同じチュアプルでも、もっさんのときに、なまじ半端に攻略できてしまったせいで完成度を損なった、って書いたし、枠組みに強いテーマ性を打ち出す作品であるならば、そこは一貫させてくれた方が私の評価としては高いんですよ、って話。

 男キャラでは理事長の筋の通った姿勢がかなり好き。あの開会式での裏演説と、それを下敷きにしての有佐シナリオでの演説は痺れましたよね〜。


CG(17/20)

 正直全部プレイし終わって、キャラに愛着が出来た今でも、絵の質としてはイマイチだなあと思わざるを得ないですねぇ。
 ただ量的には充分だってのと、ヒロインだけでなくロケット関連の一枚絵の使い方がすごく贅沢だったこと、あと立ち絵も日常一枚絵も存外なのに、何故かHシーンの一枚絵だけはそこそこツボに嵌ったので、諸々おまけしてこの点数ですね。

 立ち絵に関しては水準ちょい下くらいですかね。
 ポーズはそれぞれに個性を見せつつ一応ヒロインで3種完備だからまずまず、夏帆のちょい横向きは可愛いです。
 服飾は有佐以外が4種、有佐はPMなのでバイオスーツ立ち絵なくて3種ですね。でもバイオHは全員完備しているのでそこはGJ。デザインはまぁ・・・、まぁ・・・。
 お気に入りは夏帆の制服と水着と私服とスーツ・・・まあ夏帆だけは何でも可愛いよ。。。
 表情差分もそんなに多くはなく、遊びも少ないしそこまで可愛くもなく、かなぁ。
 好きなのはやっぱり夏帆の、微笑とか拗ねとかしんみりとかその辺。

 一枚絵は通常が84枚、ロケットと図説で39枚あるのでそこ含めて水準ちょい上、って感じですかね。
 質はやっぱりそこまで良くはないけど、上で触れたように何故かHシーンだけは琴線に触れたのです。。。あと夏帆が少し優遇されてるのは私得。

 お気に入りはページ順に、有佐正常位、69、対面座位、騎乗位、バック、起こしにきて、夕陽の向こう、演説、告白、夏帆初H愛撫、屈曲位、背面座位、69、正常位、バック、二人乗りブランコ、添い寝、プール、抱きしめと涙、ほのか背面座位、フェラ、バック、口移し、キス、婚姻届け、那津奈パイズリ、立ちバック、騎乗位、バック、飛び跳ね、ブリーフィングあたりですね。


BGM(18/20)

 量的には水準ギリくらいですけど、質は全体的に高く、作品の雰囲気を高めるのに時に主張も強く、かなり印象深い出来でした。

 ボーカル曲は3曲+α。
 OPの『ロケット☆ライド』は、出だしのコミカルさとは裏腹に、曲が進むごとに深みと広さを感じさせる構成で、ボーカルのはきはきした歌い方も素晴らしくマッチしていて、Bメロからサビのメロディ構成がすごく滑らかかつ疾走感があって好きですね。

 EDの『Over the Skyblue』は、有佐verと他ヒロインverでかなりアレンジが違う、実質AメロとBメロは別の曲だけど、コード進行は同じなのかな?
 個人的には明らかに情感度合い五割増し、って感じの有佐verが断然好きですね〜。メロディの繋ぎとしてもこっちのほうがサビの良さを活かせていると思うし、澄み渡る空を見上げて想いを噛み締めて、っていう雰囲気にピッタリ嵌り過ぎの素晴らしい曲です。このサビのメロディはすごく好き。

 グランドEDの『into the cosmos』も中々にいい曲。後ろを振り返らない前向きさとひたむきさを、広い宇宙へ向けて放つイメージと被り、メロディラインの奔放さもそれを助長しているかなと。曲としては上二つより好みではないんですけどね。

 BGMは全部で24曲と若干少ないものの、質は安定して高く、色んな意味で感情を強く揺さぶる曲が多かったなと。
 お気に入りはナンバー1、5、6、10、12、14、16、18、19、21かな。アワード組み込みしなくていい感想なので手抜きで失礼。。。特に10と16は好き。


システム(8/10)

 演出は、ロケットにまつわる部分は頑張ってるけどそれ以外は平凡かな。
 ロケット関連もかなり一枚絵の力を擁している格好ではあるし、カットインとか含めて上手く見せてはいるけれど、もう少し迫力は出せたかも。オートカウントダウンはこの作品としては必要素だと思うべきでしょう。
 ムービーはコミカルでスピード感があってワクワクさせる出来ですね。

 システムは特には問題なし。強いて言うとシーンジャンプしかなくて、区切りが短いから選択肢からの個別までがちっょと面倒かな。


総合(90/100)

 総プレイ時間24時間。共通7時間、個別3〜3.5時間、グランドが2.5時間くらいですかね。かなり深い知識に至るまで掘り下げているけれど、その読み口を面倒に感じさせない工夫はしっかり対策出来ていたし、次から次へと問題発生しての緊迫感は中々で、ずっとワクワクしたままラストまで走り続けられる作品ですね。
 
 後追いがいっぱい出てなお評価が崩れなかっただけのことはある、実に骨太で衒いなく、何より作り手の情熱が感じられる作品で、総合力的な部分で多少ならず引っかかったり、点数にしてももう一点下にすべきか考える項目多かったんですが、これはSクラスにすべき作品だろうと。
 本当に強いて言えばグランドの構成の簡略化が惜しいなあと。グランド後半の展開の構成は見事だけど、そこまでの土台がちょっとだけ脆くなっちゃったせいで、問答無用の感動に至り切れなかった感じで。重箱の隅つつき過ぎとは思うけど、気になっちゃったものは仕方ないですしねぇ。
posted by クローバー at 06:22| Comment(2) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
小生は今年購入したエロゲは3本と、経験の浅いエロゲ初心者ですが、
個別ルートでのロケットの夏を満喫する物語も良かったけど、ラストのみんなの願いが流星☆キセキとなって降り注いだときの感動は圧巻でした
思わずキャラと一緒に感動を味わってしまったよ
エロゲらしく意味のあるエッチシーンといい、エロゲ初ライターとは思えないプロの犯行でしたよ
たまに当たりがあるからエロゲはやめられない
Posted by at 2015年01月27日 14:19
ラストの場面に限らず、幾多の苦難と蹉跌を乗り越えて、遂に成否の審判が下る・・・、という場面での、間の取り方、息の飲ませ方が実に巧みなライターさんでしたね。
 それがもたらすカタルシスだけでも、充分に名作たりえる仕上がりでした。
Posted by クローバー at 2015年01月27日 19:24
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