2015年02月03日

時計仕掛けのレイライン −朝霧に散る花−

 待望の、ほんと長く待たされすぎて待望過ぎの(笑)、レイラインシリーズ完結編なので私が買わない理由があるわけもなく。。。


シナリオ(26/30)

 人として正しくあるために。


 この作品は、2012年7月に発売された時計仕掛けのレイライン −黄昏時の境界線−、及び2013年1月に発売された時計仕掛けのレイライン −残影の夜が明けるとき−の続編にして、シリーズ完結編になります。
 ここまでの大まかな流れは以前の感想参照なのですが、今回トリロジーボックスとしてシリーズ全作収録発売もされていますし、はじめてプレイする人は特にネタバレ一切なしでやるべきですので、この感想も含めてクリア後推奨となりますのであしからず。

 今回の大枠としては、残影までで一応の憂緒の本懐は遂げられたものの、それを手にするために払ってしまった犠牲に対する無念と、まだそれを取り返せる可能性があるかもしれないという発想に基づく、より根幹的な学園の謎に迫る流れになっていて、その中で主人公にまつわる諸々の謎も解決していく、という格好です。

 テキスト的には特に変化なく実にレイラインの世界観、という感じ。流石にシリーズ重ねるとそういお約束みたいな部分がすごくカチッと嵌ったり、逆にその嵌り方そのものが上手くギミックになっていたりもするので普通に読んでいて楽しかったですし、大切な1ピースが残影で欠けたとはいえ、新たな面々も含めての特査でのワイワイやってる感じはすごく好き。
 そして睦月がいることで、これまで以上に憂緒が動揺したり、言い負かされたりアワアワしたりする場面がすごく多くって、加えて保留絡みでの掛け合いといい、遂に憂緒のヒロイン力が本気出してきた!!と高ぶること請け合いです(笑)。

 ルート構成は本編は完璧に一本道、選択肢も恒例の推理に対する正解を選んでいくものだけで、その結果で見られるおまけCGが違いますよ〜、的なものなのでお気楽に、ですかね。
 基本的にすぐ後の憂緒の反応で正解かはわかるし、選択肢バックもあるから総当たりで問題ないけど、折角ならその設問に対し立ち止まって自分で推理してみるのがレイラインフリークとしては垂涎の楽しみ方ではないかと。
 今回はイチャラブ関連は全部アナザーにまとめられていて、多少ならずifの観点は含みつつ、しかし基本的に憂緒がむっつりであることを赤裸々に露呈する劇場のような(笑)。個人的には残影ラストの流れから当然本編ヒロインは、ってのはあるし、そこは風見鶏にならずしっかりまとめてくれたのは大変に嬉しかったですね。


 シナリオに関しては、相変わらず細かい部分まで圧巻の伏線回収ぶりであり、中盤くらいからそれなり以上の緊迫感を保ちつつの、その背景の説得性をしっかり有した作り込み、そして王道的な骨太のストーリーはとても楽しめました。
 ファンタジーゆえの力業、特に魔女絡みでのあれこれが多少ならず目立ってしまったり、緊迫感はあるのだけどバトルシーンの描写が演出含めてしょぼめで盛り上がり切らないな〜、って感じたり、細かい粗とか見ていくとそれなりになくはないけれど、全体的な思想性の部分でのブレのなさと、それを無理なく積み重ねた部分は高く評価できますね。
 完結、という意味で最後は大団円的な結果ももたらされてますが、その分残影での衝撃感には多少及ばないか、って気もするし、前作のせいで読み手がハードル上げて、王道でいけばこうだけど、更にもう一枚裏があるんじゃ・・・と深読みしたい部分は全部すかされて王道一本道だったなぁ、という感慨にはなるけれど、話として実に綺麗にまとまったと感じます。
 
 と、遠回しにあれこれ紙幅を費やしてももどかしいので後は超ネタバレ感想白抜きに。

 第一章がかなり中途半端だったせいで、色々設定的に見切り発車なのではと疑ったりもしましたけど、全て終わってみればあの当時から実に細かい部分にまで設定は作られていて、そのレールの範疇でしっかり物語を収束させていたんだなあと如実にわかる丁寧なまとめ方でしたねぇ。それっぽいミスリードなども含めて巧みでしたし、非常に楽しめました。

 まず純粋にシナリオからのシーン拾っていくと、アーリック登場シーンからの一気の加速と、でもそれにきっちり思考速度では追いついていく流石の憂緒、という中での、真弥の使い方は非常に面白かったですねぇ。
 私個人としては、あのベットメイクのシーンに至る思考の回転、特に常に最悪を想定しつつ、それを回避するための最善を導き出す意識の在り方に、ええぇ、めっちゃ憂緒っぽい、それいくらなんでも便利キャラ過ぎね!?と突っ込んだくせ、発覚するまで本当にそうだと思わなかったので微妙に痛恨。
 ラズリットそのものである、時に干渉しつつ自身の存在を看破されたら消滅に至る、という遺品がもたらす相当のリスキーさを把握しつつも、あの場面でそれがここまでを導いた事実に気付き、そして躊躇なく選べる憂緒であるのが実に素敵ですよね。

 だからこそ、じゃないけど、あのベットメイクに仕掛けられた罠の在り方は本当に好き。この後にいくつか素晴らしいシーンはあるけれど、個人的にはこの作品で、あのアーリックに対して公正、という添え書きを残したことに対する二人の反応が一番気に入ってます。
 後々で詳しく触れるけど、例え魔術という非日常に与していようと、もし人として生きようとするなら、決して超えてはならない一線は確かに存在していて、ここでの憂緒の公正、という言葉の選択は、その部分を的確に抉り出しているなあと。 
 すなわち、それは人として生きる魔術者にとっての公正であり、それを曲げることがあれば、貴方の矜持も、魔術者としての存在価値もこの世界から消え去りますよ、と暗に脅しつつ、なすべき選択をするように懇願もしているんですよ。
 そのバランス感、理で突き詰められる部分の限界まで追求しつつ、最後の最後に人を動かすのは情であり、人の本質的な善性に他ならないと知悉してのやり口は、はっきり憂緒の人としての成長と、過去の痛みからの克服を示していて、私の求めるヒロインの理想像に近い精神性を見せてくれたなあと感動しきりでした。

 その辺の活躍もありつつ、ようやく味方の手札が全て解放されての最終決着の手前での、取りうる手段を、憂緒が認識している理の範疇の全てを出し切っても、けれど届かない絶望、というシーンはまあ膝を打たざるを得ない。。。
 その、これだけ頭が良くて諦めも悪い憂緒に、どうしようもない袋小路という現実を突きつけて絶望を抱かせたいという気持ちはすごくわかるというか、実際私もそういうシーン書いたし(笑)。
 そしてそこから憂緒の理の外の助けが飛んでくる、けれどそれも本質的には、彼女含めて全員が望む未来の形を諦めなかった故の可能性の開示であるという納得があるのが素晴らしいと。

 何故ならそれは、憂緒の成長と、あと静春の成長が不可欠であり、魔術世界にどっぷりと関わりつつも、魔術そのものに対しては直接の関連がない二人が、あくまでも人としての情理の中で、魔術に翻弄され、時に手に余る力に道を踏み外しかねない相手を、理解と共感の両方を持って支えられる強さを得なくては辿り着けなかったからで。
 三厳と満琉の真実をアンデルが開示できたのも、それ以前にそうしてしまっては二人の心が壊れてしまう、特に満琉は耐えかねたろうし、それを見た三厳も不安定さを引き込んで結果的に暴走の道を辿りかねなかった、でも今ならそれぞれに、その気持ちと孤独と罪を理解しつつ共感してくれる相手がいるから平気だと判断したからじゃなかいなと。
 当然それに加えて、そうしなければ事態を打開できない状況も後押しはしているし、それはアンデル自身の覚悟を試す意味合いもあって、あのシーンのそういう心理的な部分の葛藤を手繰り寄せていくと本当に沁みますね。

 共感とは、人の心を再復させる効力があるというか、傷ついた心を癒すのには最適な感性ですが、ただそれにどっぷりつかって、それ以外の観点を持たないと成長を及ぼすものではなくて。
 だからこそ、魔女たる存在を人の理の範疇に留めておくには、魔女の本質の恐ろしさ、悲しみを理解しつつ、人として超えてはいけない一線を、ただの人だからこそ切実に理解出来て、そうあって欲しくないとその気持ちをぶつけて切磋琢磨できる相手がいてはじめて、魔女と人は、人の理の中で“公正”に生きていけるのではないかと思います。
 けどそれを背負うべき憂緒も、物語最初の時点では、睦月を喪失した結果受けた傷と停滞が、それを可能たらしめてはいなくて、それは静春も春霞に対する負い目から似たような部分があって、ここまでの物語でそれを丹念に解消してきたからこそ、その恐ろしさも含めて抱き止められる器を醸成できたのだろうと。
 無論それは、元々は健全な人としての在り方ありき、でもあるので、憂緒がずっと、天才ではあっても魔術には関係のないただの人であったことは、その意味で非常に大きい要素だと思っています。

 外伝読んでないので、思想の流れという部分で確定できないのですけど、ラズリットがアンデルの気持ちを根本的に改善できなかったのも、やはり共感の部分が強すぎて、心の本質の部分からそれは間違いだと突き付けきれなかったから、という気はするんですよね。
 それは優しさでもあるけれど、人としての優しさではなかった、といったら厳しいかもですけど、その半端さがあの悲劇を生んだ事実は厳然として存在するし、それを踏まえての後悔と、それを取り戻すための手段すらも、人の理を外れた概念に託したことで歪んでしまったという。
 誰も悪くないのに現実は残酷に転がり落ちていく、というのはありうることですけど、それをここまでの悲劇にするためにはやはりファンタジーならではの文法があってこそだなあって思うし、そのあたりは非常に上手く処理できていたと感じます。
 
 余談だけど、後々静春と満琉ってくっつくのかな?
 結構お似合いだとは思うし、ドラマCDでのスミちゃんの傾倒ぶりからして、いざとなったら強引に推し進めそうな気もするんだけど(笑)、上に書いた観念からすると、まだ二人は共感の段階で、満琉の傷が、憂緒の支えでしっかり生きていけている三厳の姿を見届ける中で癒されていってのち、改めて自分の罪と向かい合い、その為にこれから何をすべきか、と思い至ったところで、改めて静春がその意識のズレを改善するためのトリガーになる転換があって、そこからかなって気はする。
 
 のみならず、満琉はただの人になったわけだから、より一層それまでとの意識の乖離は大きくて、そういう機微を理解しつつ支えていけるのはやっぱり静春しかいない、とは思っちゃいますね。まあほら、春霞にはヒメちゃんがいるし(笑)。
 アナザーで、そこだけ百合かよ!?って全力で突っ込んだけど、まあ確かにスミちゃんらしいと言えばらしい。つかドラマCDでその話題の最中に眠子の名前が出るたび、タチとネコしか頭に浮かばなかったのは救いがない、というかスタッフ絶対確信犯だろと。。。

 ともかく、色々話題がとんだけどシナリオの時系列に戻すと、三厳と満琉の本当のわかり合いのシーンもやはり素晴らしいですねぇ。
 魂の改竄、という悪魔的な能力がある故に、逆説的に人の心を信じられる要素がない、って設定は、本質的に人の心はわからない、だからこそ信じたいし、信じようという人としてあるべき前向きさを欠損する部分であり、人として触れ合っていく上では致命的な欠陥で。
 最初にこの場面見た時に即発想したのは、シャノンかよ!?って。本当の本音を知る為には、まずそのための障害を取り除かなくちゃいけなくて、けどそれをすれば知りたくない辛い事実に向き合わなくちゃいけない可能性もあって、その満琉の恐怖自体は誰にも、いや厳密に言えばアンデル以外には共感は出来ない観念だからこその、それを振り払うための勇気を振り絞る別口の共感が必要とされていて。

 それを克服した上で開示されるのは、非常に健全な家族としての愛情であり、これはついこの前のあの晴れのゆいにも通じる、健全な家族であったからこその兄と妹の関わり、支え合いなんだろうなあと。
 魔女の力に延々翻弄された二人だからこそ、ちゃんとそれを抱き続けていられたのは凄く奇跡的で、かつ逆説的にはそれは、魔女の力を通じて繋がっていたからこそより深く醸成しえたという見方も出来て、散る花の意味は何か、と考えた時に、かすがい、という言葉がスッと出てきますね。

 二人を繋ぎ止めていた、本来は不自然である、けれど二人には切実に必要だった何か、それは残影でのおまるの在り方ともオーバーラップするし、だからこそ一度は散らなくては先に進めなかった、という意味でもとても示唆的だったなと思います。やたら抒情的でもあると思うけど。

 おまるの復活とその後の後日談については、まあおさらい場面でああ告知されたうえで真弥がああだったし、残影の夢のシーンとかも含めて考えればなんとなく予期できた部分ではあるけれど、やはりわかっていても感慨深いし、すごく清涼感のあるラストシーンだったなと。
 タイムパラドックス的な意味での疑念はどうしても付き纏うし、実際憂緒にあれこれ考えさせてでも答えは出ない、ってところで力業的にけむに巻いてる印象もあるけれど、真弥=憂緒の部分から鑑みるに、ラズリットの力において、確定されていない事象に対する揺らぎを運命論的に固着させる力と、それを実現に漕ぎ着けた時にきちんと意識の修正というか、上書きはなされるのだろうと。

 だからもう少し現実のおまるが野暮だったら、その世界の在り様は破綻していた可能性もあるから、その意味でもめっちゃキーキャラだなあと思うし、いくら自分の意識の中で無事だったとわかっていても、あの不穏な学園に平然とそあら送り出して信じ切れるところは実におまるだなあと最後まで呆れまじりに感心させられました。

 んであとアナザーに関しては、まず憂緒は、本編で人としての在り方においての成長を導いたところで、きちんと愛の上での成長も抑えてきたなあと。
 きっかけはああであまりにもなんですけど(笑)、ただ思うのは、愛とは概念的だけど、愛し方に関しては実存的であり、そして人とはその時々で求める愛し方が違う生き物なのだと。

 別に憂緒は、ああからかいまじりに虐められるのが嫌なわけじゃない、けどたまにはストレートに優しく愛して欲しいという欲求は常にあって、ただその機微に応えるチャンネルが以前の三厳にはなかったと(それは満琉の魔術の影響も含めて)。
 でもその枷が外れ、そして偶発的とはいえそういう憂緒の欲求を知った以上は、今後は二人は愛し方の上でも切磋琢磨していく関係になれるだろう、そしてその互いの共通認識が備わっていてこそ、生涯添い遂げる相手として相応しいだろうと感じさせるつくりだったと思います。
 そういうの考えてると、かにしのの殿子の、「愛してください。あなたに出来る、全てのやり方で」って台詞をついつい思い出すわけですが。。。確かにあれは欲深いというか、愛に飢えていた故にこそ、愛の本質を知らず看破していたんだなあと今更に思わせてくれますし、その機微に通じる二人のやり取り、触れ合いで非常に満足度は高いですね。憂緒さんマジ可愛い。

 そしてその他おまけは色々状況が許す限りでの無茶仕掛け、って感じではあるけど、思想的に深いのはやはりリトだなあと。
 これは前提が、アンデルが満琉に力を移譲せず、その上で暴走も抑え込んできた、という本来的には有り得ない状況ではあるけれど、それ故に三厳の性格付けがなよっとしているというか、どこか依存的なイメージを醸していて。
 その中でリトとの関係を深め、彼女の危機に本当の自分の気持ちに気付いて能力を暴走させ、魂を与えてしまったことで派生する諸々の喜びと悔恨、その辺はある意味本編のアンデルとセディの焼き直しな部分もあるのですけど、それを致命的な失敗に至らしめないで済ませたのは様々な薫陶あってのことだし、或いはそこまでで育んだ人としての健全な魂の在り方故、なのかなって。

 その上で、あくまでリトの表側に出てくることはなくなった想いの余韻は、けれど様々なところに刻印を残しているのだという、切なさと甘酸っぱさが入り混じる着地点は、ホムンクルスとの関係を考える上でも非常に示唆的で面白かったなあと。
 「懐かしい」という言葉の意味を、記憶ではなく経験の形そのものから抽出するというのはすごくらしいですし、バルドスカイのジハードのサビがポッと浮かびますね、言葉よりも記憶よりもこの手が憶えてる〜ってやつ。

 テーマ的にはもう、最初から定められた運命の連環の中で、けれど多分一歩人としての正しさを踏み外せばその連環そのものが崩壊していた危うさを孕みつつ、結果的に見れば憂緒を信念を揺らがせずに真っ直ぐ歩いてきたからこその物語なのかなと思うしかないですかね。
 人と、人ならざるものの架け橋、そういう立ち位置を知らず求められて、それまでの自己の理から逸脱するものを様々に見せられて、けれどだからこそ、そういうファンタジックな要素の中でこそ浮き彫りになる人としての規範、あるべき姿と超えられないもの、それを全て聡明な理解力で自家薬籠中の物とし、愛情として還元してみせたところが、愛する人に遭いたい、守りたいと思う強さが、この作品の真骨頂ではないかと思います。

 あと、ここで書くことかは微妙なんですけど、残影の感想で、私が一番構成で引っかかっていた部分、すなわち学園長の思惑をやや飛躍的に発想してつき走った部分に関して補記。
 よくよく考えればあれは、数多の可能性を検討しつつ、現実的に可能なものを搾り込んでいって、その淘汰の上でヒメちゃんの確信、魔女の勘という担保があればこそ、その信頼を前提に動いている、と考えられるんですね。

 それは上に書いた、理を尽くしたうえで情が導き出すものを信じる、という姿勢とも連なる感性であって、それなら本質的には非常に私好みの展開だったんじゃないの?と、ペットボトルロケット作ってるあたりでふっと、本当に今更思い至ったのですよね・・・。
 そう考えると、残影のシナリオ配点そのものも、もう1〜2点は上だったかなと思うし、その信頼の積み重ねの結実が、と思えば尚更に敢えてここに書いておくべきかなと。
 普通は感想って一度書いたきりでそこまで考え直す機会ってないけど、連作ものだとそういう部分での面白味もありますね、売り方として認めにくいのは確かですけど。。。

 あとさしあたりの名言ストックは、『・・・ただいま帰りました』と『相変わらず、お前は可愛い大事な妹だ』ですかね。



 以上、足掛け二年半のなかで、色々と思い入れの深い作品となり、思い入れの深いヒロインも多くて、とても愛着のあるタイトルだからこその、その思想性を揺らがせずにしっかり納得のある完結編を作ってくれたことには満足しています。
 それでも突き抜けた感動、というほどではなく、結構しみじみとあれこれ踏まえておかないとわかりくい部分も多かったりで、完結したとしてもとっつきやすい作品ではないな〜というのはあるし、後は設定の先出し後出しのルール付けの部分で、どこまでそれがなされていたかの確定が、どうにも外伝に目を通さないとどうにもならなさそうなので、現状はその部分での加点を抑えて評価しています。
 近々に外伝はどっかで手に入れて読んで、その上で明確に出来る部分があれば追記、加点も含めてやっていこうかなと思っています。


キャラ(20/20)

 とにもかくにも、憂緒が、私の期待する強くしなやかな精神性を持つ盤石のヒロインとして、けどラブ方面に関してはちょろくもある愛らしさを保ったままで、辿り着くべき境涯に届いてくれたなあ、というのが嬉しい限りです。
 シナリオでも触れたけど、基本的に理を尽くせるところまでは理を重視しても、ギリギリの部分での情の大切さをないがしろにしない、というのはすごく難しい在り方だと思うし、最初期の憂緒には当然それが出来ていなかったわけで。
 けどその在り方は、やっぱり前提として理に勝った部分がないと無理なので、ずっとそうなればいいな〜と希望を委託し続けられるヒロインでもあったし、思い余って自分でもその方向を突き詰めてみたりもしたし。

 ともあれ、保留中のもどかしい可愛さも、事件の渦中にあっての意志の強さ、凛々しさも、その解決の為に必要な各子を備えた情念の温かさ、大きさも、様々な愛し方を知って、少しずつでも素直さを出せるようになっていく部分も、全部ひっくるめて素晴らしい女の子、ヒロインになってくれたと感慨しきりですし、これで延々殿堂“候補”と一時保留(笑)してたのも解消されて、晴れて今年の年末には殿堂リスト入りですね。

 そしてスミちゃん好きだ〜〜〜!!ほんっとこの森ガールきゃわいいよねぇ・・・。
 まあ今回はあんまり見せ場なかったし、ヒロインとして攻略されるんじゃなく、この子がヒメちゃん攻略しちゃってるよ!?的なズレもあったけれども、それもひっくるめてすんごく可愛いと思います。もう君はヒメちゃんと結婚していいよ(笑)。
 つかこの子の制服姿超見たかった・・・。それはすごく心残り、設定資料には乗ってるのになんてこったいと。
 とりあえずあれだ、静春と満琉がくっついて、三厳や憂緒とも末永く親戚付き合いしていくほのぼの後日談出しませんか(笑)。

 睦月も好きだ〜〜〜!!期待以上に明るくて底抜けにお人好しで、屈託がなくて、憂緒とのコンビでもすごく輝いてたし、他の面々とも相性良さそうだよねぇ、個人的にはやっぱりスミちゃんとあれこれ絡ませたいよこの気質は。

 満琉も可愛かったですね。
 きちんと妹として、という分は制御されていたし、その中で兄にだけ見せる家族ならではの明け透けな姿と、他の面々に対する人見知りっぷりのギャップがとても可愛かったですね。
 絶対静春にはもう懐いてると思うし、そこから愛情に飛躍するのはまた難題だとは思うんだけども、そういう未来見たいよね〜。
 つか全然関係ないけど、三厳と憂緒、もしくは静春と満琉の結婚式とかになったら、奴が全力でニコニコと仲人してそうな気がする。。。これもほのぼの後日談か(笑)。

 リトも、世界観を壊さない範疇で、様々な手練手管を用いて少しでも可愛い部分や、その立場の中で許される郷愁的な観念を引き出そうと頑張ってくれたおかげで、今まで以上に印象深い素敵な子になってたし、元々外見的にはストライクど真ん中ですからね、実に可愛かったです。

 ルイとハイジもいい味出してたし、静春も相変わらずだけどいい奴だな〜って思うし、そしてアーリックのかませ犬っぷり。。。最後に散々ルイに罵倒されて凹んでるのが実に笑えた、つかヴァインベルガー家の面々はどこか名門の矜持に胡坐かき過ぎなのでしょうよ(笑)。

 アンデルに関してはもうちょい掘り下げ欲しいなあとは思うけど、もしやそれも外伝?現状あれこれいい辛い部分はありますし、見えてる範囲では自分の中での最善は尽くしてる必死さはわかるけど、色々難しさはありますねって。


CG(16/20)

 枚数はギリギリなんだけど、何だろ、今回は前二作より全体にシルエットが硬い気がするというか、シリアスに触れている範疇はいいんだけど、可愛い!って感じが絵によってさらに加速する〜みたいな感覚は薄かったなあと。
 そして致命的に立ち絵素材の追加が少ないのがねぇ・・・、スミちゃんの制服くらいは実装してくれと。まあ作中の行動範囲の問題もあるし、必要最小限は満たしてると思うけどね。

 立ち絵に関しては、ぶっちゃけシリーズトータルで考えてみたら物凄い不足感ではないかと。基本どのキャラでも二種類以上服飾ないしねぇ・・・。
 とりあえずはじめてみた、という意味でスミちゃんの蛸口は可愛かった。新規だと睦月の正面は色々可愛かった、というより元気さ溢れて微笑ましかったです。

 一枚絵は通常60枚のSD10枚で計70枚、シリーズとしては平均だし、ミドルプライスとしても水準ではありますかね。質は上で触れたように、突き刺さるほどすごくいい、って感じのは残念ながらなかったなあ。
 お気に入りはページ順に、ラズリットの迎え、睦月特査に入ります、おんぶ、抱き留め、気まずい、ネコキス、ペンの遺品、後ろ抱き、消える憂緒、リトの感慨、ただいま、アンデル降臨、キス、兄妹の抱擁、さよならまた未来で、特査再出動、リト着替え、フェラ、正常位、憂緒愛撫、対面座位、正常位、立ちバック、指輪、リトバック、ハイジバック、ネコ弄り、明るいリト、ぼふぼふあたりですね。


BGM(17/20)

 新規自体はボーカル2曲にBGM6曲くらいしかないので、この作品単体としてはその評価にしかできないですねぇ。無論全体としての底上げはあってこの点数ですし、トータル評価はすごく高いのですけど、小出し感は否めないので・・・。
 いつも通り曲に対しての説明がついてるのはすごく嬉しいです。

 OPの『Clockwork Ley−Line −The Last episode−』は、まんまそのまま過ぎるタイトルですけど、実にこの作品の世界観をギュッと煮詰めて詰め込んだような、荘厳でどこか孤高と戦慄を交えつつ、余韻の部分で希望をスッと差し出してくれるようなメロディラインの構築が流石だなあって。
 確かに自分で歌うには敷居の高い曲だけど(笑)、聴き込むほどに味があって、残影のOPより上、黄昏のよりちょい下、くらいの好き度合いですかね。

 EDの『Places where you are』は互いの成長と、あるべき姿の為にどうしようもなく訪れる別れに感懐と哀愁を切々と漂わせつつ、その先にちゃんと望む未来はあるのだという喜びと希望にも満ちた、すごくのびやかで清涼感のあるいい曲だなあって。
 つか歌詞で視点替えたと言われても、鑑賞には一番しか入ってなくない・・・?くっ、やはりちょっと高いサントラと割り切ってトリロジー買うべきだったのか、むしろサントラ買ってこいという事か・・・っ。

 新規BGMではやはりありきたりだけど『Ley−line』は刺さりますね〜。シリーズ通しての様々な思い入れや感慨をギュッと詰め込んで、それがあればこそ辿り着いたのだというイメージを切ないまでに膨れ上がらせてくれるメロディは沁みる沁みる。
 『Break the fate』と『laska』も好き。

 シリーズトータルではやはり『Vanish』が図抜けてますね、今回もすごくいい場面でこの曲かかるたびに震えてました。


システム(8/10)

 演出は何とも。
 概ねシリーズとしての水準は保ってますが、今回は結構やり合うシーンも多くて、そういう場面での演出の薄さは結構酷いなあと思ったり、その他にも物足りなさはありましたかね。
 ムービーはいい意味で不安を煽るような構図と迫力が出せていて、結構長い中にその緊張感を途切れさせずに世界観を示し切れていて中々いい出来だと思います。

 システムもいつも通り、必要最低限だけど使いにくくはなく、ですね。
 でもアナザーでセーブロードできないのはどうにかして。


総合(87/100)

 総プレイ時間13時間くらい。本編が10時間ちょい、アナザーが2時間半くらいかな。まあミドルプライスとしての範疇ではあるし、今回も本編は加速度的に緊迫感を増しつつ、怒涛の展開でだれる部分はなかったし、一気呵成に楽しめました。

 結果的に、一気呵成に楽しむのと、一々立ち止まってああでもないと想いを馳せてここまで来た方が楽しめるのか、何とも言えない部分はありますが、今まで手を出してなくて、トリロジーどうしようかと思ってるなら、是非買ってみてください、とは断言できますね。
 確実にシナリオゲーなので、あまりキャラに対する好みだけで吶喊するのはアレですし、結構難解な物語でもあるので、それなりにじっくり時間を取って読み込む余裕がないと楽しみ切れないっていう敷居の高さは感じる作品ですけど、ファンタジーならではのテーマ性の掘り下げ方とその説得性の高さ、構成の圧巻さはそうそうみられるものではないと思うので。

 ちなみに、トリロジーの値段設定を踏まえてシリーズトータルで採点するとしたら、シナリオ27〜8点、キャラ20点、CG17点、BGM20点、システム8点で92〜3点、って感じになると思います。シナリオに幅持たせてるのは今回と同じ事情、CGは全部合わせりゃ200枚くらいあるけれど、立ち絵素材の乏しさ考えるとねぇ。。。

 以下、2015/02/19に補完。

 外伝を読み、それを踏まえての補記を執筆しました。
 その上で、採点として保留にしていた部分がおよそ自分の中ですっきり解消できましたので、シナリオ点は2点追加しています。
 ただまあ、あくまでも外伝ではあり、そこで思想性を補完するという方法論がユーザーに優しいかというとまた別問題ですので、極端にそれでプラス評価はしにくいのですけどね。。。
 補記でも触れましたけど、本来は今作でデジタルノベル化してあれば完璧でした。もしくはトリロジーに同梱するとか・・・、や、それはずっと追いかけてきた人に優しくなさ過ぎるけれど。
 ともあれ、もしFD出るなら、そっちで改めて期待します。
posted by クローバー at 06:11| Comment(0) | 感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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